捩れ屋敷の利鈍



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捩れ屋敷の利鈍―The Riddle in Torsional Nest (講談社文庫)

2005年03月15日 捩れ屋敷の利鈍―The Riddle in Torsional Nest (講談社文庫)

エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣が眠る“メビウスの帯”構造の巨大なオブジェの捩れ屋敷。密室状態の建物内部で死体が発見され、宝剣も消えた。そして発見される第二の死体。屋敷に招待されていた保呂草潤平と西之園萌絵が、事件の真相に至る。S&MシリーズとVシリーズがリンクする密室ミステリィ。(「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.33pt

捩れ屋敷の利鈍の総合評価:7.12/10点レビュー 17件。Bランク


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全3件 1~3 1/1ページ
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

謎の真相も捩れてます

Vシリーズもいよいよ終盤に差し掛かり、とうとうS&Mシリーズの西之園萌絵と国枝桃子が登場する、2つのシリーズが一堂に会することになった。その記念的作品が第8作の本書。
そしてこのVシリーズに仕掛けられた大きな謎について仄めかされる、森氏としても大いに踏み込んだ作品だ。

但しいつものメンバーが西之園萌絵らと逢うわけではなく、保呂草潤平のみが邂逅する。そしてこの3人が出逢う場所が保呂草がずっと追っている美術品エンジェル・マヌーヴァの所有者熊野御堂譲氏のその美術品を保管している別荘である。

今回の事件は2つの密室殺人事件に1つの盗難事件。1つの密室殺人事件と盗難事件はメビウスの輪をモチーフにした棙れ屋敷で起き、もう1つの密室殺人事件は別荘から棙れ屋敷の間にあるログハウスで起きる。

本書で最も目を惹くのはなんといってもメビウスの輪を巨大なコンクリート構造物として作った棙れ屋敷だろう。
36の4メートルの部屋で区切られた全長150メートルにも及ぶ棙れ屋敷。しかもそれぞれ部屋は傾いて作られ、折り返し地点の部屋は床が左の壁となる90度傾いた構造となっている。更にそれらはドアで繋がっており、入ってきたドアが施錠されると他方のドアが解錠される仕組み、つまり必ず1つのドアが各々の部屋で施錠されている状態になる。
そんなパズルめいた趣向を凝らした屋敷で事件が起こらぬはずがない。

そしてもう1つは何の変哲もないログハウスでの密室殺人。しかもそこで殺された熊野御堂譲氏は「この謎を解いてみろ」と発見者に挑戦状を叩きつけているくらいだ。

しかし予想に反してこれら2つの密室は物語のメインではない。謎とされた密室殺人は実にあっさりと解かれる。

そして今回これらの謎解きには推理がない。冒頭のプロローグの保呂草の独白に「探偵が犯人を言い当てる原理として、これほど風変わりな手法によるものはかつてなかったのではないか」と述べているが、確かに今までのミステリにはないかもしれない。

これらの密室殺人が上記の手法によって解かれるということから実は本書における主眼ではない。
本書のメインは保呂草がずっと追い求めていたエンジェル・マヌーヴァがいかにして持ち去られたかという謎だ。

鎖で棙れ屋敷最奥部の部屋の柱に繋ぎ留められた美術品の短剣エンジェル・マヌーヴァ。その鎖自体もエンジェル・マヌーヴァ本体の一部でそれだけでかなりの美術的価値がある代物。それを引きちぎらずに持ち去るのはやはり大盗賊保呂草潤平だった。この時の保呂草の気持ちは正確には書かれていないが、恐らく物凄く感慨深かったのではないか。
その美術品が出てきたのはシリーズ5作目の『魔剣天翔』からで、この8作目にしてようやく手に入れたことになるが、単に間に3作を挟んだだけの年月ではなく、実に長い年月で…と危ない、危ない。このくらいにしておこう。

しかし色々と惑わせてくれる森氏である。この保呂草潤平が今回偽る名前は1作目に保呂草潤平と称して登場した殺人犯の名前である。そして近くの刑務所から殺人犯が脱走したことがニュースで報じられている。
冒頭の保呂草による独白めいたプロローグが無ければ今回の保呂草はいつもの保呂草なのかそれとも1作目の保呂草、秋野秀和なのか、惑わされてしまう。これもシリーズに隠されたある謎を知らなければ素直に保呂草の茶目っ気と受け止めるのだが、知っていることが逆に不穏さを誘うのだ。
特に今回の保呂草の行動が案外いかがわしく、そして危険な香りを漂わせているだけに。

しかしこうやって読み終わってみると森氏にとって密室トリックや犯人やらは本当に些末なことであることが解る。
メビウスの輪を館として実物にした棙れ屋敷。この36の部屋で仕切られ、180度部屋が反転し、しかも両側に扉を設え、一方が施錠されないと他方が解錠されないという特殊な機構を持つ屋敷を提示しながらそこで起こる事件の真相は実に呆気ない物。
ログハウスの密室トリックは建築学の教授である森氏ならではの奇抜なアイデアが光るが犯人については寧ろ明確に語られずじまい。
エンジェル・マヌーヴァ掠奪の顛末は実にスリリングだが、柱に埋め込まれた美術品の持ち出し方法は案外拍子抜けするほどの内容だ。

つまり本書で語りたかった、もしくは読者に仕掛けたかった、もしくは明かしたかった謎は別のところにあるのだ。それについては後述することにしよう。

さて上にもちらっと書いたが、流石は建築学教授の森氏と思わされる内容が随所にあるが、一番感じ入ったのはこの棙れ屋敷が建築基準法に適っていないことが明確に示されていることだ。
二方向避難、無窓階など色々同法をクリアするのに必要な設備や開口が必要であるのだが、それを敢えて排除し、適法でないことを明確に示している。つまりはこれは建築物ではないことになるのだが、しかし部屋はあることで単なるオブジェとして扱われない。つまり違法建築のまま熊野御堂譲氏はこれを置いていることになる。個人の持ち物だから、建築基準法などどこ吹く風といった感じなのだろう。

またS&Mシリーズファンなら喜ぶであろうシリーズ後の近況が解るのも本書の特徴だ。
国枝桃子はN大学から異動になり、那古野市の私立大学の助教授になっていることが本書で明かされる。西之園萌絵はまだ大学院生だからシリーズが終わってすぐのことなのだろう。

また小ネタとして萌絵が国枝桃子に語る山小屋4人の話。寒さで眠らないように4人が四隅に立って真っ暗な部屋の中を壁沿いに歩いて次の角の人にタッチして、タッチされた人が同じように次の角まで歩いてそこに立っている人にタッチして、を延々と繰り返して寒さをしのぐ話が怖いと萌絵は云うが、国枝桃子はピンとこない。これは本当に起きたら怖いです、実際に。

さて本書の題名の英訳は“The Riddle In Torsional Nest”、つまり「捩れ屋敷の謎」という意味だが、HouseやResidenceとせずにNestとしたところに森氏の建築学教授としての矜持を感じる。

また邦題の「利鈍」は「刃物が鋭いか、鈍いかということ。賢いことと愚かなこと」という意味。
捩れ屋敷そのものは果たして聡い者による造形物なのかそれとも愚か者が作った役立たずの代物なのか。それは本書を読むことでそれぞれの読者が判断することなのだろう。

たった250ページ強のシリーズ中最も短い長編である本書を最後まで読んだ時、森氏がこのシリーズに仕掛けられた大きな謎について大いに踏み込んだことが解る。
実は私は既読者によってネタバレされているのでその驚愕を味わえない不幸な人間なのだが―頼むから森博嗣ファンの方々、そういうネタバレは止めましょうね―、逆にそれを知っていることで本書が実に注意深く書かれていることに思わずほくそ笑んでしまった。
まずこの棙れ屋敷が愛知県警管轄外の岐阜県にあること。今回なぜ小鳥遊練無と香具山紫子たちは出ずに保呂草と瀬在丸紅子だけなのか?
そしてなぜ瀬在丸紅子は西之園萌絵を知っているのか、いや西之園家を知っているのか?
それはあと残り2作となったシリーズ作で明らかにされることだろう。保呂草によって綴られたエピローグに書かれた驚愕の事実。それが解るのももうすぐである―だからネタバレは止めようね、森博嗣ファンの方々―。


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Tetchy
WHOKS60S
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

捩れ屋敷の利鈍の感想

S&MとVのリンクということで、保呂草さんと萌絵と国枝先生が事件に巻き込まれる話。やっぱりS&Mのキャラはいいですね!今回はトリック云々よりも、キャラを楽しむような話で、みんなの会話が面白くてニヤニヤさせられっぱなし。

ほっと
2XKXV6EI
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

捩れ屋敷の利鈍の感想

メビウスの輪をイメージして作られた「捩じれ屋敷」とロッジで起こる二つの密室殺人と秘宝「エンジェル・マヌ―バ」の消失!謎に挑むはシリーズの保呂草潤平とS&Mシリーズの西之園萌絵!そして、犀川先生の代わりに国枝先生が萌絵の保護者役を買っていたのも新鮮で良かった(笑)

ジャム
RXFFIEA1
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No.14:
(2pt)

森マニア向け

Vシリーズでは雰囲気が特異だ。
文体の違いか、はたまた紫子と練無がいないだけで、
こうも雰囲気が変わるものか。

一瞬、保呂草、秋野と主語が入れ替わるので、
私は、きたきた叙述トリック、と思って、
緊張を強いられて読むことになった。

でも緊張は要らない。
薄い本なのでたまたま手に取るという場合もあるかもしれないが、
そういう人がいたらかわいそうだと思う。
S&M、Vと読み続けてこなければ、
何が面白いのかよく分からないだろう。

結局、S&MとVのシリーズ間の関係という、
森マニアだけが関心を持つ問題に重要なヒントとなる、
保呂草の古い友人とは誰なのか、
という謎を提示するだけの作品。
捩れ屋敷の利鈍 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:捩れ屋敷の利鈍 (講談社ノベルス)より
4061822314
No.13:
(3pt)

制約下における現象

エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣が眠る“メビウスの帯”構造の巨大なオブジェ様の捩れ屋敷。密室状態の建物内部において、事件が生じ、宝剣も消える。S&MシリーズとVシリーズがリンクする密室ミステリィ。観察される現象は、ある仮定に基づいた認識を解釈した結果に過ぎず、制約があることによってのみ成立するのでしょう。
「変ですか?でも、思いつこうと思わなければ、思いつかないでしょう?考えなければ、アイデアは浮かびません。突然、何もしていないのに思いつくなんてことはないはずです」
捩れ屋敷の利鈍 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:捩れ屋敷の利鈍 (講談社ノベルス)より
4061822314
No.12:
(3pt)

主役は建築物。

メビウスの輪をモチーフにした建物の中で起きる、
エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣の盗難事件と密室殺人事件の話です。
『すべてがFになる』を始めとするS&Mシリーズの、西之園萌絵ちゃんと、
『黒猫の三角』から始まるVシリーズの、保呂草潤平というクールな探偵かつ泥棒、
2つの別々のシリーズ作品で活躍していた登場人物が、
この作品では一緒に登場します。
そんなファン垂涎の設定なのですが、私は≪捩れ屋敷≫の構造が上手くイメージ出来なくて、
おもしろいんだけどイマイチはまりきれなかったです。。。
捩れ屋敷の利鈍 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:捩れ屋敷の利鈍 (講談社ノベルス)より
4061822314
No.11:
(3pt)

S&MシリーズとVシリーズ2大キャラの邂逅。

講談社ノベルスのウン周年記念のための書き下ろしということで、森サンの2大シリーズのメインキャラ、西ノ園萌絵と保呂草順平が相まみえます。探偵さんと泥棒さんの頭脳戦ということで、結構楽しめました.しかし、いつもながら殺人事件は添え物でどうでもいいってかんじですね。もともとお芝居の予定でしたし。なくてもよかったんじゃないかな。メビウスの輪のオブジェにエンジェルマヌーバって、これ知恵の輪ですね、巨大な。ログハウスのトリックもいらないな。まあ、2大キャラの頭脳戦を楽しむのが、このお話のメインですからあとは添え物ってことですね.でも、マンガチックというか、アニメチックというか、絵が浮かぶような作品でした.
捩れ屋敷の利鈍 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:捩れ屋敷の利鈍 (講談社ノベルス)より
4061822314
No.10:
(4pt)

S&MシリーズとVシリーズの交錯

本作はVシリーズの一作品であるのだが,西之園萌絵も登場する。
つまり,S&MシリーズとVシリーズは同じ世界で起こっているお話ということが明らかになるわけだ。
そのうえ,本作を深く読んでいけば,S&MシリーズとVシリーズの関係も見えてくるかもしれない。もし,本作を読んでもわからなければ,Vシリーズの最後まで読破すればきっとわかるはずなので,それから読み返してみると面白いかもしれない。
Vシリーズだけあって,本作の内容は保呂草の叙述という設定になるので,萌絵は第三者的位置づけになり,どちらかというとエンジェルマヌーヴァを追い続ける保呂草の活躍譚という感じである。
萌絵というキャラクタを保呂草の目を通じて見てみると,S&Mシリーズの感じとは違ってまた面白い。
捩れ屋敷の利鈍―The Riddle in Torsional Nest (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:捩れ屋敷の利鈍―The Riddle in Torsional Nest (講談社文庫)より
4062750333



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