(短編集)

地球儀のスライス



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初公開日(参考)1999年01月
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短編集

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地球儀のスライス (講談社文庫)

2002年03月15日 地球儀のスライス (講談社文庫)

「黒窓の会」。西之園萌絵を囲んで開かれるその秘密の勉強会にゲストとして招かれた犀川創平は、古い写真にまつわるミステリィを披露した。屋根飾りと本体が別々になった奇妙な石塔は、何のために作られたのだろうか。S&Mシリーズ二編を含む、趣向を凝らした十作を収録。『まどろみ消去』に続く第二短篇集。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.25pt

地球儀のスライスの総合評価:7.35/10点レビュー 17件。Cランク


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全4件 1~4 1/1ページ
No.4:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

もはや理系作家とは呼ばせない!

森氏がシリーズの節目に刊行する短編集。本書はS&Mシリーズ完結の節目に編まれた第2短編集だ。

最初の「小鳥の恩返し」は昔話のモチーフから物語が転じる様子が鮮やかだ。
いきなり心揺さぶられる短編である。
現代の童話とも云うべき小鳥の恩返しと云うテーマから陰惨な殺人事件の驚愕の真相が立ち上ってくる。寓話的な主題が事件の哀しい結末と結びつく、珠玉の1編だ。

「片方のピアス」もまた幻想的かつ切ない印象を残す作品だ。
双子の兄弟の一方と付き合っていながらも他方に魅かれるというあだち充氏の『タッチ』などに代表されるラヴコメの定番のような設定をこれほどまでに叙情的かつ幻想的な1編に仕上げる森氏の技巧の冴えに感服する。
兄に隠れて逢瀬を重ねる2人。決して叶わない恋の行く末に絶望を抱きながらも好きにならずにいられない2人。そしてサトルが選択した究極の決断。

「素敵な日記」は不思議な話だ。
手記で繰り広げられるその内容は被害者がそれぞれ綴った日記だ。
それはある時は詩であり、それはある時は事件の一部始終を語ったものだ。
山荘でひっそりと亡くなった若い男の密室死。それを発見した恐らくはヒモの男もまた付き合っていた女性によって殺害され、その女性もまた殺害される。そしてその捜査を担当する刑事の手記と日記を発明した最初に亡くなった若い男性の父親の手記を経て日記の正体が明かされる。
人から人へ渡り、その所有者が次々と亡くなる呪われた日記というモチーフがこんなにSF的な意外性を持った結末を迎えるとは。こんな発想はまさに森氏ならではだ。

「僕に似た人」はマンションの隣人同士の交流を語った物語。

終了したS&Mシリーズが短編と云う形で帰ってくる。本書には2編収録されており、まず1つ目の「石塔の屋根飾り」は犀川が西之園萌絵とその叔母佐々木睦子と叔父捷輔、そして国枝桃子と喜多に問いかけるのは萌絵の父恭輔がインドで出逢った巨石を掘り込んで作られた石塔の屋根飾りがなぜか塔の屋根ではなくその隣に建てられていたかを生前の恭輔が解き明かした説を推察する話。
所謂日常の謎系のミステリだが、それを陰の存在である執事の諏訪野が解き明かすのが本編の妙味か。

もう1編「マン島の蒸気鉄道」は観光小説とも云える作品。喜多と大御坊と犀川は偶然イギリスへの出張で一緒になり、それをきっかけにマン島にある西之園家の別荘で佐々木睦子を交えてのディナーに招待される。
逆回転の三本脚の真相は実にしょうもないもの。
それよりも作中で大御坊が出した機関車のクイズの答えの方が気になる~!

さて幻想小説が続く。

「有限要素魔法」は不可解な物語だ。
この2つの事件が並行して語られるが、この関係のない事件がどこか次元のずれた世界で起きているように語られ、物語は唐突に終わる。この平衡世界が繋がりそうで繋がらないむずかゆさだけが残される。

次の「河童」はまだ解りやすい作品だ。
多感な高校生の娘亜依子を巡って翻弄される2人の男。突然消えた親友は果たして手首を切って池に飛び込んだのか?
未だに死体が見つからない彼が消えたとされる池に最後に浮かんでくる頭が真相を示している。森氏にしてはオーソドックスなホラーだ。

そして最後の2編は「思い出」の物語だ。

「気さくなお人形、19歳」は19歳の女子大生小鳥遊練無が出くわす奇妙なバイトの話。
森氏にしては実にオーソドックスな物語だ。典型的な人生の皮肉の物語。
しかし本書の主眼はそこにはなく、やはり小鳥遊練無という少林寺を嗜むボーイッシュで男勝りで恐らくルックスもいい女子大生のキャラクターを愉しむことにある。
彼女の一人称で語られる非常にライトな語り口は過剰なまでにふざけているように感じて最初は抵抗感があったが、物語が進むにつれて彼女の優しさが垣間見えて、最後には実に魅力的な小鳥遊練無像が浮かび上がってくるのだから不思議だ。
そして彼女と彼女が住むアパートの隣人香具山紫子と保呂草は次のVシリーズの登場人物であるそうだ。つまり本編は次シリーズのイントロダクション的作品と云えよう。

最後の「僕は秋子に借りがある」は実に切ない物語だ。
この作品には語りたいことがたくさんある。読後、心が秋子で満たされる。それほどこの秋子という女性が魅力的なのだ。後ほど存分に語る事にしよう。


森氏は短編になると情緒が際立つ文系色が出てくると自身でも述べているようで、『まどろみ消去』でもその特徴は顕著に表れていたが、第2集の本書ではそれがさらに洗練さを増している。

とにかく冒頭の3編が素晴らしい。
「小鳥の恩返し」の湛える大事な物を喪った切なさ、「片方のピアス」の禁断の恋に溺れるカップルが迎える悲劇、全編手記で展開する「素敵な日記」の読めない展開が最後に一気に想像を遙かに超えた、そして全てが腑に落ちる驚愕の真相と立て続けに打ちのめされる。

その後には完結したS&Mシリーズが短編で2編収録されているのはファンとしては嬉しいサーヴィスであろう。特にその2編では今まで前作に登場しながらも萌絵の影となり支えてきた執事の諏訪野にスポットを当てているのが興味深い。しかもそれらは日常の謎系のミステリでほのぼのとした雰囲気が心地よい。萌絵の非常識ぶりも抑えられていて、これなら普通に読むことができる。

そして次は幻想小説が続く。

森氏はS&Mシリーズでも感じていたが、どこか幻想小説を好む指向性がある。ミステリでありながら動機にあまり執着せず、トリックと犯人に固執する。シリーズ最終作では殺人事件の犯人や動機よりも真賀田四季の居所が最大の謎だったことからも明白だ。

そんな彼の幻想趣味が短編では存分に発揮されている。「僕に似た人」、「有限要素魔法」、「河童」の3編。幻想強度としては「河童」<「僕に似た人」<「有限要素魔法」の順になろうか。特に「有限要素魔法」は有限要素法とは関係がないように思えるのだが。

そして最後はオーソドックスでありながらもやはり心に強く残る、想い出の物語。
「気さくな人形、19歳」は老人が自分の亡くなった娘にそっくりな女子大生に共に過ごすだけのバイトを頼む。偶々テレビで見かけた自分の娘そっくりな女性を発見したことで適わぬ想い出づくりをしたかったのだろう。そしてその役目を務めた小鳥遊練無の魅力的な事。イントロダクションに相応しい快作だ。

そして最後の「僕は秋子に借りがある」は実に美しい物語だ。
突然現れたいわゆる不思議っ娘、秋子。彼女の話はとりとめがなく、思いつくままに行動し、主人公木元を翻弄する。木元が姉を事故で亡くしたと云えば彼女も兄を工場の爆発事故で亡くしたと云い、家に置くと捨てられるからと大量のファッション雑誌やインテリア雑誌を紐の切れた紙袋に入れて持ち歩く。
面白い所に連れていくと云って亡くなった兄のイラストレーターの友人の家に連れて行き、ただ過ごすだけ。
ある朝突然電話かけてきて近くのミスドに来いと云う。行ってみると木元に逢いたくて30キロもの道のりを徹夜して歩いてきたのだという。

それは木元にとっては迷惑に感じながらもその実とても魅力的でファンタスティックな出来事であったこと。

物語が閉じると同時に木元が感じた思い、つまりそれは題名「僕は秋子に借りがある」と思わされる。
この物語は作者の想い出に似た宝石のようなものがこぼれ落ちて生まれたようなものなのだろう。当然ながらこれが個人的ベストだ。

そして次点はやはり最初の3編「小鳥の恩返し」、「片方のピアス」、「素敵な日記」となる。「僕は秋子に借りがある」がなければ甲乙つけがたく3作同点ベストとなっていただろう。

しかし小鳥遊練無といい、秋子といい、森氏の描く女性は難と魅力的なことか。
西之園萌絵には最初から最後まで辟易し、この短編でも好感度が増すことがなかったので、正直森氏の女性像には失望していたのだが、本書ではその考えを180度変えざるを得なくなった。
いやあ次のVシリーズが愉しみになってきたぞ!


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.3:
(3pt)

地球儀のスライスの感想

正直、森博嗣の短編集は好きじゃない。
上手く言えないですが、作者独特の詩的な表現が、長編作品より明らかに目立ってしまうためだと思う。
理系作家として名高いが、元々、やはり表現力が独特で、どこか理屈っぽく固く、また軽く深みがないように感じてしまう。
理系作家という先入観がそうさせるのか・・・ただ東野圭吾には全く感じないので。
あくまで個人的な意見であり、好き嫌いの問題かもしれませんが・・・
S&Mシリーズの短編も2作含まれています。
「すべてがFになる」以外は低評価にしたシリーズですが、そんな彼らが登場してくると何故かホッとしてしまうのは何故でしょうね。

全部で10編。
バラエティに富んでいると言えますが、何作か既視感のあるものがありましたかねぇ。
人が殺される話はありませんので、ミステリを期待しているとがっかりするかもしれませんね。

梁山泊
MTNH2G0O
No.2:
(7pt)

記憶がスライスされた

大分前に読んだため、あまり記憶にない。
残念、7点。

かいん
AGLSXFF0
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

地球儀のスライスの感想

第2短編集。今回も短編ならではの森ミステリィの魅力がぎっしり!

ジャム
RXFFIEA1
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.13:
(4pt)

まぁ君

冨樫義博の解説を読みたくて購入。
まさかの2行で解説終了!!とはいえ、一読の価値あり。

久しぶりに手に取ったので「小鳥の恩返し」や「河童」など懐かしかった。
「僕は秋子に借りがある」は確かそれを表題とした自選短編集が発行されていたはず。
当時は「僕に似た人」はよくわからなかったが、次の掲載作品を読んで「ああ!」と納得。
地球儀のスライス (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:地球儀のスライス (講談社ノベルス)より
4061820516
No.12:
(3pt)

無難に楽しめる

前半はミステリ、後半はオカルトよりな短編集で、一つそれだけでは完結していないような
作品があるのを除いて、それ以外はそこそこ楽しめる内容
S&MシリーズやVシリーズの短編も混ざってるので、ファン向けとしても悪くないのではないだろうか
本格的なミステリ作品集ではないので、そういうのを期待しては買わないほうがいいだろう
地球儀のスライス (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:地球儀のスライス (講談社ノベルス)より
4061820516
No.11:
(3pt)

趣向を凝らす

S&Mシリーズ2篇を含んだ趣向を凝らした10作を収録した短篇集です。氏の長篇作品と短篇作品では抱く印象が異なり、長篇作品ではミステリィ色が強く、短篇作品では純文学を意識しているような印象を抱きます。
「生からの離脱のその刹那、無限にして遥かな存在に出会い、認識は沙汰する愚かな幻と化し、死者の抗し難い力に触れるのみなれば、人が願うは一つ、ただ有限の断片に身を委ね、諸々の観念、人と人の相関の一切を排除すべし。あるいは、それを、お望みとあれば、生か死への一瞬の夢をただ今ご覧に入れよう」
地球儀のスライス (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:地球儀のスライス (講談社ノベルス)より
4061820516
No.10:
(3pt)

多彩な作品集

森博嗣の短編集第2弾です。S&Mシリーズの犀川創平と西之園萌絵が登場する作品も2つ収められています。その2作はいずれも殺人事件は起きず、作者がたまたま耳にした興味深い実話を、犀川・西之園の口を借りて紹介したという感じの小品です。
他には詩のような作品やホラーっぽい小説など、様々な系統の作品が並んでいます。『気さくなお人形、19歳』は、この後に書かれるVシリーズの登場人物が出てくる予告編的な作品です。『僕は秋子に借りがある』は青春小説っぽい作品ですが、明確な結論がなく、作者の意図がいまひとつわかりませんでした。
地球儀のスライス (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:地球儀のスライス (講談社ノベルス)より
4061820516
No.9:
(4pt)

感想とまぁ君の正体

森氏の短編集。10の短編が収録されてますが、それぞれのつながりはあるのかないのか謎…。『小鳥の恩返し』『片方のピアス』『素敵な日記』はミステリィで、最後まで楽しく読めます。『僕に似た人』『石塔の〜』『マン島の〜』は、クイズっぽい要素が含まれたS&M関連の短編。『気さくなお人形』はVシリーズ読破の前知識として必須エピソードです。その他の3話は詩的な感じ。 私にはよく分かりませんでした…(>_<)。もしかしたら読みが足りないのか…?解説が富樫義博です。何繋がり?奥さん(セーラームーンの作者)が薬学部出とあり、自分もなので変なところでビックリしてしまいました。『僕に似た人』のまぁ君の正体について。分かると、高笑いしたくなるほど嬉しい発見です(笑)スッキリします!!ヒントは最後の「21階に住んでいる」こと。次の話にも、まあ君出てますよ〜v(^-^)v
地球儀のスライス (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:地球儀のスライス (講談社ノベルス)より
4061820516



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