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12番目のカード



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12番目のカードの評価: 8.75/10点 レビュー 4件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.75pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

相変わらずのジェットコースター

ライムシリーズも6作目になるとなんとなく展開が読めるようになるのですが、そこがまたいいところ。
全く期待を裏切らないジェットコースター。
しかもこのジェットコースター、終わりに近づいたかと思うと、ゆっくりと動きだし、またトコトコと登り、真っ逆さまに・・・
違うコースを何周も味合わう事ができて、最後、本当に止まった事を確認したときは何とも言えない爽やかさが残りました

blueridgecabinhome
UHOQT2T1
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

物語として上質

リンカーン・ライムシリーズ第6作目。
今まで『エンプティー・チェア』以外は題名に殺し屋の名前が冠されていたが、本書では殺し屋トムソン・ボイドが現場に残した遺留品の1つ、タロットカードに由来している。タロットカードの12番目のカードとは、作品の表紙にもなっている「吊らされた男」だ。このカードの持つ意味はその絵から連想する苦しみや拷問などというネガティヴなものではなく、それら暴力や死とは無縁であること。つまり精神的な保留と待機を表している。
なぜこれが題名になったのか。それは最後まで読むと明らかになる。

今回の敵は通称“アベレージ・ジョー”と呼ばれる殺し屋トムソン・ボイド。その異名はあまりに平均的な風貌と平均的な人物が身に着ける服装、乗る車とあらゆる個性を殺した男だ。したがって目撃者はいるもののさして記憶に残らないという特徴を持つ。つまり特徴のないのが特徴なのだ。
前作『魔術師』の殺し屋のインパクトが強かっただけにこの“アベレージ・ジョー”はその設定もあって地味なのだが、今までの殺し屋と違い、彼には家庭があることが特徴だ。それは彼が刑務所での日々で無くしてしまった感情―作中では無感覚と書かれている―が恋人とその連れ子を養うことでをかつてのように取り戻す一助になるのではと考えているからだ。風貌や持ち物はごく普通でありながら職業、感情は普通ではない。彼は心底普通になりたがっている殺し屋と云える。

また物語の趣向もこれまでとは違っていることに気付く。今まではシリアルキラーがどんどん人を殺していくのをライムチームが追うという構成だったのだが、今回はジェニーヴァ・セトルという女子高生を殺し屋の手から守るという構成になっている。守る側のいつ敵が襲ってくるか解らない恐怖が今までのシリーズと違った読み所と云えよう。

さらになぜ一介の高校生ジェニーヴァが殺し屋に狙われるのか?その理由が1868年にジェニーヴァの祖先チャールズ・シングルトンが関わったある歴史的事件に関係しているのだ。つまり今回は通常のジェットコースターサスペンスに加え、歴史ミステリ的要素も加わっている。

そして今回はレギュラーメンバーのロン・セリットーがスランプに陥る。事情聴取中に目の前で人が殺されてしまったことでPTSDになってしまい、殺し屋“アベレージ・ジョー”の影に終始怯えながら捜査に携わり、恐怖のあまり誤ってアメリアを射殺してしまいそうになるくらいだ。今回このセリットーがいかに再生するかが物語のサイドストーリーとなっている。

『ボーン・コレクター』で登場したリンカーン・ライムは現代に甦ったシャーロック・ホームズだというのは世のミステリ書評家もそして作者自身も認めているのだが、今回それが改めて強く認識させられた。それは殺し屋トムソン・ボイドの前職について。
捜査を進めるにしたがってどんどん増えていくメモの記述。そこに明らかにヒントが隠されているのに全く気付かなかった。ボイド自身が語る刑務所生活で失っていった感覚、つまり無感覚の境地に陥った話も含め、実に素晴らしいミスディレクションだ。

またミスディレクションと云えばディーヴァーの語りならぬ“騙り”の上手さが今回も光る。

そんな読者を驚かすことに腐心したエンタテインメントに徹しながらも底流に強いメッセージが込められているのだから畏れ入る。
最後に至り、冒頭に書いた「吊るされた男」のカードの意味がじわじわと胸に迫ってくる。カードの意味は精神的な保留と待機。つまり機が熟するのを待ち、それに備えているという意味だ。
そしてその時が来たのだ。

さてもはやお馴染みとなった他作品のキャラクターのカメオ出演だが、今回は前作『魔術師』で登場したカーラと『悪魔の涙』で主役を務めたパーカー・キンケイドが登場する。
特にパーカーは前作『魔術師』に次いで二度目の登場。相変わらずほんの数ページでの客演に過ぎないが、やはりこういう演出は嬉しいものだ。このファンサービスは継続してほしいが、未訳のノンシリーズのキャラが出ていないか気になる。版元はノンシリーズもかつてのように訳出してほしい。

また作者もパーカーをこれほど気に入っているのならばカメオ出演という形ではなく、ライムとパーカーがコンビを組む作品を書いてもらいたいものだ。

リンカーン・ライムシリーズで一般的に人々の口に上るのは『ボーン・コレクター』、『コフィン・ダンサー』やこの前作である『魔術師』で、本書はどちらかといえば地味な印象を持った作品だ。
しかし読後の今、私の中では本書はシリーズの中でも上位になる作品となった。最後に訪れるリンカーンのある変化も含め、希望に満ち溢れた結末が余韻を残す。
まだまだ衰えないなぁ、このシリーズは。天晴、ディーヴァ―!


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

相変わらずの安定感です

期待通りの面白さで最後は止まりませんでした。
登場人物も勢ぞろい。リンカーンファミリーですね。
次も読みます。

Yutaka
Z78W2TO8

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