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帝王死す



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帝王死すの評価: 7.00/10点 レビュー 2件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(7pt)

クイーンが語るキングの死

今までのクイーン作品の中で最も舞台設定が凝っており、後期クイーンの諸作で深みが増した人間ドラマの一面にさらに濃厚さが増した、リーダビリティ溢れる作品だ。

特に軍需産業で一財を成し、世界各国の政府要人らに絶大な影響力を与えるほどの権勢を誇るキングが君臨する通称ベンディゴ王国はハリウッド映画としても実に映える舞台だ。

しかもドラマチックな設定の中、密室で銃で撃たれるという不可能犯罪が起こる。
被害者のいた部屋は周囲を2フィートのコンクリート壁に囲まれた窓のない堅牢な部屋で弾丸などは通るはずもない。それなのに部屋の外から弾が入っていない状態で引鉄を引かれた銃の弾が被害者の胸から摘出されるというなんとも魅力的な謎が提示される。

しかしこの魅力的な謎の真相は正直期待外れの感は否めない。せっかく魅力的な不可能状況を提供してくれたのなら、読者の盲点を突いた誰もが納得の行くトリックを用意してもらいたいものだ。

しかし犯行の動機には考えさせられるものがある。

そして忘れてはならないのは今回の事件に翳を落としているのはあのライツヴィル。ベンディゴ一族のルーツは因縁の町ライツヴィルにあったのだ。エラリイはいざなわれるようにライツヴィルへ向かう。
正に後期のクイーンにとってライツヴィルはなくてはならない拠り所なのだろう。特に『十日間の不思議』に登場したヴァン・ホーンまでもがキングの被害者になっている件はさらにキングの凄みを彩る。

そして今回着目したいのは作者クイーンが物語に溶け込ました戦争批判。死の商人キングを糾弾するジュダの言葉はそのまま先の大戦に対する作者のメッセージだろう。
人の死という尊厳を大量虐殺で名もなき屍に変えてしまう戦争への怒りがここには込められている。さらに最後死んだ帝王キングの後を継ぐ者の言葉は第二次大戦が終わっても、第二のヒトラーは必ず生まれるのだという作者の警告とも読み取れる。

しかしなんとも暗喩に満ちた作品だ。
まずベンディゴ一族の名前。次弟の名ジュダはキリストの使徒の一人ユダを指し、末弟のエーベルは旧約聖書に出てくるアダムの次男アベルを指す。さらにキングの本名はアベルの兄カインを表すケインだ。
しかもライツヴィルで彼らのルーツを探ると彼らの名前は旧約聖書を辿るかのような運命から故意に名付けられていたことが解る。なんとも業の深い話だ。

しかし最大のメタファーは主人公クイーンに対して相手の名はキングだということだ。つまりチェスや王国ならばクイーンの上に立つ存在だ。
しかしタイトルにあるようにキングは死す。
盛者必衰。
頂点に立つ者はいつか倒れるのだ。この示唆は当時のアメリカのミステリシーンとの何か関係があるのだろうか?

クイーン作品で軍需産業の王の島に連れ去られた中での推理劇という“嵐の山荘物”でありながらも内容が戦争を扱っているだけに冒険小説やスパイ小説の色合いも感じさせる本格ミステリの“キング”であるクイーンならではの作品。
兄弟の生立ちが事件の因縁と繋がるというロスマクを髣髴させるこの路線は正直歓迎なのだが、もう少しカタルシスが欲しいところ。特に今回は部屋の壁をすり抜ける銃弾という謎が非常に魅力的だっただけにその真相に失望してしまったのが大きくマイナスになった。

しかしまだライツヴィルは続くのか。ライツヴィルとクイーンが行く着く果てに何があるのか、今後見ていきたい。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

帝王死すの感想

初のエラリィ・クイーン。

読みやすくて面白かったです

もう一歩踏み込めば完璧な推理が出来たのに……惜しい!

好きですね~

アンコウ
BKBVHN0W

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