(短編集)

クイーン犯罪実験室



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初公開日(参考)1976年02月
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クイーン犯罪実験室 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 2-26))

1979年08月31日 クイーン犯罪実験室 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 2-26))

ポーとリンカンの署名付稀覯本が売りに出されたが、売主は公平を期すため、それをある場所に隠し、発見した者に獲得させることにした。ところが売主は急死してしまい、隠し場所を示す記号だけが残された……暗号に挑戦する歴史ミステリ他、知的パズル16篇。クイーンはすべての謎を解決するが、さて、あなたは?(「BOOK」データベースより)




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クイーン犯罪実験室の総合評価:6.50/10点レビュー 6件。Cランク


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No.1:
(7pt)

ワンアイデアミステリの実験室

エラリイ・クイーンの中短編集。

まずはダイイング・メッセージ物の中編「菊花殺人事件」はしかも舞台はライツヴィル。
相も変わらずクイーン印の1編。ダイイング・メッセージ“MUM”の意味、菊(マム)収集家び殺人事件はMUMにそれぞれが何らかの関係を持っている。そしてあらゆる所に散りばめられたダブルの符合(ただしこれは強引)。
このようなガジェットに彩られた犯罪はライツヴィルが舞台になると色合いを増す。それは何か見えない手に導かれるかのように人々が犯罪に巻き込まれているかのようだ。そしてまたエラリイも訪れると必ず事件が起きるということで災厄の使徒のような存在になっている。

次は「推論における現代的問題」というカテゴリーで4編が収録されている。題名からは解りにくいが、それぞれ教育問題、交通問題、住宅問題、がテーマに盛り込まれている。

まず「実地教育」はエラリイが知り合いの女性教師に請われて講演を頼まれたところ、教室内で起きた盗難事件に出くわすという物。
エラリイの論理的思考はあるものの、なんといっても生徒相手に推理を手間取るエラリイの焦燥感が本書のキモといって云いだろう。

「駐車難」は知り合いの女優の前に突如現れた3人の求婚者。そんな矢先、彼女はアパートで何者かによって撃たれてしまう。
しかしこれは果たして推理はいるのだろうか?求婚者の状況を考えればおのずと真相も見えてくるとは思うが。

「住宅難」はクイーン警視が追っている密告者の居所を突き止め、駆けつけてみるとそこには悪名高い詐欺師が撃たれて倒れており、そこには銃を持った金髪の女性が佇んでいたという現場の背景から犯人を突き止める話。
これはかなりアクロバティックな作品だ。それぞれの登場人物をもっと掘り下げて長編ネタとしても十分よかったのではないか。

この項最後の短編「奇跡は起こる」では昨今日本でも問題となっている介護問題がテーマか。
これは犯人は解ってしまった。誰もがみな金に困っているのが華やかなりしアメリカの実状であり、それは今なお日本も彼方も変わっていない。

次は変わって「新クイーン検察局」。そう、短編集『クイーン検察局』で警察のそれぞれの課が担当する事件にエラリイが挑むという趣向の短編がまたもや登場。

まずは<賭博課>が担当の「さびしい花嫁」。
クイーンお得意のダイイング・メッセージ物(メッセンジャーは亡くなっていないが)。

続く2編は<スパイ課>の事件。まず「国会図書館の秘密」は麻薬の取引現場を抑えるためにエラリイが狩り出される。国会図書館の本を暗号に取引の内容を連絡しており、書物に造詣の深いエラリイに白羽の矢が立つという趣向。
これはまさに作者クイーンが趣味で作った作品だろう。
書物が暗号になる。それは題名だったり、内容だったりとその時々でさまざまに変わるという作者が嬉々として取り組んだのが解る作品だ。
しかしエラリイが挑む謎の解答がそれまでの謎に比べてしょぼく感じたのが実に勿体ない。こういう作品は世の書物愛好家には堪らないものがあるのだろうな。

もう1編「替え玉」は死んだ潜入捜査官が遺したスパイの名をダイイングメッセージから探るという物。
これはなかなか秀逸。しかしこんなことばかり考えているのだろうなぁ、ミステリ作家とは。

次は<誘拐課>の「こわれたT」も文字が手掛かりになる短編だ。
言葉遊びが好きなクイーンの小編とも云うべき作品か。アンジェラと云う魅力的な女性と誘拐劇で彩って物語にする着想を褒めるべきか。

さてミステリでお馴染みの<殺人課>が扱う事件「半分の手懸り」では薬屋の主人の命を実の娘と息子、そして義理の息子までもが襲うという穏やかではない家庭が登場する。
これはやはり作者を褒めるべきだろう。

こんな課があるのか甚だ疑問の<匿名手紙課>が扱う事件は「結婚式の前夜」。ライツヴィルの出演者総出の感がある、コンクリン・ファーナムとモリー・マッケンジーの結婚式前夜に起きた事件にエラリイが挑む。
この真相を日本人が見破るのはほとんど不可能だろう。よほど英米の文化に造詣が深くないとこの違いは分からないし、そこからまた犯人を特定するのも至難の業だ。

続く<相続課>が担当する「最後に死ぬ者」ではもはや絶滅状況にあるとされている執事が極秘裏に設立した執事だけが会員になれるクラブで数十年の歴史があるが、既に会員の執事も2人を残すのみになり、最後の会員がクラブの資金の全てを手に入れることが出来る。
アナログ時代であるが故の推理、といいたいところだが、これは現代でも通じる論証だ。でもこれは案外解ってしまったが。

増補版クイーン検察局最後の1編は<犯罪組織課>が担当する「ペイオフ」はクイーンお得意のダイイング・メッセージ物。
これは単純にクイズのような作品だ。しかしこんなワンアイデアさえも短編に仕上げるクイーンの創作意欲には頭が下がるというか…。

続くはパズル・クラブ物2編が収められている。
まずはエラリイがパズル・クラブに入会するための試験が行われる「小男のスパイ」は第2次大戦のあるスパイがどこに秘密文書の内容を隠し持ったのかが謎。これもクイーンが好んで使った消去法物の1編だが、いささか現実味が乏しいのではないかと思われる。奇を衒い過ぎた解答だろう。

パズル・クラブ物もう1編はなんと大統領さえもクラブ会員に勧誘してしまうパズル・クラブの懐の深さを感じさせる「大統領は遺憾ながら」。
これは日本人には辛い解答だろう。しかしクイーンは古今東西のような知識を競う言葉遊びが好きに違いない。

最後は歴史ミステリ「エイブラハム・リンカンの鍵」はリンカーンとエドガー・アラン・ポーが署名したとされる『盗まれた手紙』の書物を巡るミステリだ。
たった3文字の手懸りから推理を巡らし、隠し場所を推理する。メッセージ物としては極限まで切り詰められた作品だ。
しかし本編の冒頭ではこの隠し場所の暗号は実際にリンカンが考案した物なのか。どこまでが史実なのだろうか。


題名こそ『クイーンの犯罪実験室』だが、中身はミステリとしては作品を支えるには乏しいワンアイデアを基に作られた短編を集めた物。ほとんど推理クイズの域を出ない物ばかりだが、逆に云えばそんなアイデアでもミステリが書けるのかという命題にチャレンジした実験短編小説集と云えよう。

まずはダイイング・メッセージ中編ということで「菊花殺人事件」から本書は幕を開ける。
クイーンと云えばダイイング・メッセージと云われるくらい、そのヴァリエーションは豊富だが、この作品は通常犯人特定の手がかりとなるべきダイイング・メッセージを逆手に取っている。
通常死者が死の間際で遺すメッセージとは自分の事よりも家族のことではないだろうか。そういう意味では最も真実に近いダイイング・メッセージだと云えよう。

テーマ「推論における現代的問題」の各編で特徴的なのは真相が容疑者の背景に関わっていることだ。
「実地教育」では貧しい家の子供がやっているアルバイトの内容であり、「駐車難」では求婚者の家庭状況、「住宅難」も居住者それぞれの事情から絡み合う関係によって事件が入り組み、「奇跡は起こる」は格差社会と介護問題が介在する。

続く「新クイーン検察局」は別の短編集『クイーン検察局』でもテーマに挙げられた色んな犯罪を題材にしたミステリが綴られている。それら犯罪を担当する課はそれぞれ賭博課、スパイ課、誘拐課、殺人課、匿名手紙課、相続課、犯罪組織課ととてもありそうでないものばかり。
この辺についてはもはや突っ込むのは止すが、続編が作られたということはよほどこの趣向が気に入っていたのか。

そして『間違いの悲劇』に収録されていたパズル・クラブシリーズが本書で初お目見えだったのを知ったのは思わぬ収穫だった。しかしたった2編とはあまりに少ない。
しかしパズル・クラブ物は物語風味のクイズで構成された、クイーンコンビの知的遊戯でまさに趣味の世界であることが解った次第。

最後は歴史ミステリで占められる。これは恐らく歴史上のエピソードにクイーンが挑んだ作品だと信じよう。

先にも書いたが長編ミステリを著すにはネタとして弱いが、短い話ならば書けるワンアイデアを活かした短編が並ぶ。その中には英米、米仏など異国の文化の違いから生まれる違和感からエラリイが推理する短編もあり、日本人が十分楽しめる知的ゲームとなっていないものもある。しかしそれらは恐らくダネイとリーはいつも2人でこんなアイデアを話して、ミステリの種を探していたのだろうなと云うのがよく解る、知的パズルのような趣を感じる。
逆に云えばどんなアイデアでもミステリ短編に仕立てる雑誌編集者の魂というか、商業根性を感じてしまったが。

特に多いのがダイイング・メッセージ物で、特に短い単語や名前から隠されたメッセージを推理する趣向の作品が非常に多い。実に16編中7編と半分近くがそれに類する。
そしてそれらが単純な犯人特定の手懸りになるわけではなく、そこからまた謎が深まる、もしくはミスリードとして使われているというヴァリエーションも見せつける。

なるほど確かに本書は犯罪実験室だ。恐らくは言葉遊びや知識を競う遊びをして思いついたアイデアの数々。それらを犯罪に応用することが出来るのかがクイーン2人の試みを示したのが本書。
ちょっとした頭の体操をするにはちょうどいい作品が、そして少しだけ感心してしまうアイデアの妙が詰まった作品が揃っている。
そんなアプローチで復刊しませんか?早川書房さん!


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Tetchy
WHOKS60S
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No.5:
(3pt)

短編集です。

特出する作品はありませんが、私個人的に毎晩の寝る前に本を読んでいるので、短編集と言うのは、ちゃんと一作品読み切って寝られるのでいいですね。
クイーン犯罪実験室 (Hayakawa pocket mystery books)Amazon書評・レビュー:クイーン犯罪実験室 (Hayakawa pocket mystery books)より
4150011990
No.4:
(4pt)

たまには短いのはいかが?

全エラリイ作品中では珍しい
短・中編で占められている本。
1作品を除いては本当ページ数は短めなので
ちょっとした時間に読むのに適しています。

ただ、残念なところは数点あり、
言葉遊び的なつもりだったのでしょうが
結局犯罪の真意すらわからない作品が
1作品あります。
これは外国作品の悪いところにも入りますけどね。

もちろん傑作もあります。
最後に出てくる作品がそれです。
ラストの思わぬ真実には驚かされるのではないでしょうか。

数点気になるところはありましたが
悪くはないです。
クイーン犯罪実験室 (Hayakawa pocket mystery books)Amazon書評・レビュー:クイーン犯罪実験室 (Hayakawa pocket mystery books)より
4150011990
No.3:
(4pt)

Q・E・D

「証明終わり」を意味するQEDをタイトルにもじった
クイーンのショートショート中心の短編集
ダイイングメッセージ中編から
現代のニューヨークが抱える諸問題を扱った短編
お得意のショートショート
パズルクラブもの
そして、歴史物と盛りだくさん
クイーン犯罪実験室 (Hayakawa pocket mystery books)Amazon書評・レビュー:クイーン犯罪実験室 (Hayakawa pocket mystery books)より
4150011990
No.2:
(4pt)

ショートショート主の短編集

クイーンの特徴として
後期は軽いタッチの作品が多いということでしょうか
ラジオドラマや雑誌のページ埋めの短編とか
肩肘張らずに推理小説を楽しもうという
気持ちが良く出ています
クイーン犯罪実験室 (Hayakawa pocket mystery books)Amazon書評・レビュー:クイーン犯罪実験室 (Hayakawa pocket mystery books)より
4150011990
No.1:
(1pt)

……???

青年探偵エラリイが非常に格好良く描かれているのはわかる。真相解明にむけ、全力を出して闘う彼の姿は感動的だ。しかし謎とき自体は、「周りの人間が馬鹿なだけなのでは?」と思ってしまうほど、腰くだけなものが多かった。クイーン作品中には駄作も数多くあるのは衆知だし、それ自体は仕方ないことだろう。しかし、16作品中「おお!」と思わせる解決が1つもない短編集というのは、やはり読み物としていかがなものか…。クイーン信者でもない私には、とかく脱力感が大きかった。
クイーン犯罪実験室 (Hayakawa pocket mystery books)Amazon書評・レビュー:クイーン犯罪実験室 (Hayakawa pocket mystery books)より
4150011990



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