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貴婦人として死す



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貴婦人として死すの評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

昭和の香り漂うテーマもカーに掛かれば…

本書はHM卿シリーズ14作目で比較的後期の作品だが、実に読みやすく、また展開も早いため、クイクイ読まされた。

決して許されない恋に落ちた男と女が先のない行く末を儚んで心中する、というよくある悲劇が一転して2人は至近距離で何者かに撃たれた後に崖から転落したという不可解な犯罪へと転ずる。この辺の転調が実にカーらしいケレンに満ちている。

この実にシンプルかつ不可解な事件を調べていくうちに意外なことが次第に判明してくる。

本書のテーマ“信用のならない語り手”の裏には “家族であってもそれぞれが十分に理解しているとは云えない”という実に普遍的なテーマが隠されていた。

駆け落ちする男女を犠牲者にすることで色恋沙汰の悲劇という実にオーソドックスな作品かと思いきや、ディクスンの思わぬ意図に感心させられてしまった。

そして本書ではさらにイギリスに迫りくる第二次大戦も本書にほのかに影響を与えている。

ところで毎回HM卿のコメディアンぶりがこのシリーズの定番になっているのだが、本書でもそれは健在。
足の指を骨折して電動車椅子に乗っての登場となるが、車椅子の性能を存分に試そうといきなり暴走しながら登場する。実にはた迷惑なオッサンである。
毎度毎度カーもいろんな趣向を考え出すものだと呆れるやら感心するやら。未読作品でもこの無茶ぶりが健在なのか、手に入れ次第確認していきたい。

また本書ではカー自身が得意としていた足跡トリックを当時の最新科学でミステリのように偽装することは不可能だと作中で解説しているのが実に興味深かった。作者自らがお得意のトリックを敢えて封じたことに潔ささえ感じた。

今回は新訳改訂版であったため、上にも書いたが実に読みやすかった。せっかくのカーの諸作を旧訳の古めかしい文体で読むよりも遥かにいいので、東京創元社にはこのまま新訳改訂版の出版を継続してもらいたい。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
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