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特捜部Q カルテ番号64



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特捜部Q カルテ番号64の評価: 8.00/10点 レビュー 2件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:4人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

特捜部Q カルテ番号64の感想

楽しみにしていた特捜部Qの最新作。
今回はローセが選んできた23年前の失踪事件を追う物語です。
相変わらず超個性的な3人組は健在で、しかもカールのトラウマとなっているアマー島の事件にも新しい証拠が出てきて、せっかくモーナと上手くいきかけているのに事件から離れることができません。
カール自身が言っているように読んでいても全くわからないアサドの過去は謎が深まるばかり。

失踪事件は、実際にあった事実をもとに国家的犯罪ともいえる選民主義を実にうまくフィクションに取り入れています。とんでもなく酷い話なのですが、現実にはデンマークでも極右政党が支持されたりしていて、作者が伝えたい事を多くの人に感じ取ってもらいたいと思わずにはいられません。

日本は島国であったり長かった鎖国時代のなごりもあってヨーロッパほど移民の問題は切実ではないものの昨今の政治家の発言や、あからさまなヘイトスピーチがニュースになったりと他人事とは思えません。
世界的にも景気が悪くなるとこんな風にどこもが殺伐としてくるのでしょうか。
より良い社会のためには過去の反省をおざなりにしてはいけないのにと思ってしまいます。

転んでもただでは起きない脇役たちも健在で、シリーズでは10作の予定とありましたが、続きが出るのが待ち遠しいです。

たこやき
VQDQXTP1
No.1:5人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

過去からの警鐘が響く

デンマークの人気警察小説シリーズの第4作は、良質なエンターテイメントであると同時に、社会派の作品としても高く評価できる傑作だ。
物語の発端は、23年前のエスコート・サービス経営の女性の失踪事件。未解決事件の再捜査が専門の特捜部Qが調査を始めると、同時期に5人もの行方不明者が出ていることが判明し、カール・マーク警部補を始めとするQのメンバーは本格的な捜査を開始する。すると、デンマークの歴史の恥部ともいうべき事態が明らかになり、しかもその驚くべき犯罪は現代の社会にも影響を及ぼそうとしていた・・・。
物語の最初から犯人と犯罪の概要は明らかにされており、また犯罪の背景となる社会病理についても読者に提示されている。従って、犯人探しは本作の主題ではなく、犯行に至るまでの犯人の人生、それを左右してきた社会悪の追求が主題となっている。
1920年代から欧州を中心に台頭してきた「優性思想」に基づく人権侵害。その行き着く先がナチス・ドイツだったわけだが、同様の気運は欧米諸国にも広がっており、デンマークでも1923年から1961年まで「女子収容所」が存在し、倫理に反した女性、知的障害がある女性に対し、監禁や望まない不妊手術が行われていた。その史実に衝撃を受けた作者は、こうした社会病理が過去のものではなく、現代のデンマーク社会にも大きな影響を及ぼしていることを鋭く指摘し、大きな警鐘を鳴らしている。
人種差別を筆頭に、あらゆる社会的弱者への差別、「生きるに値する者と値しない者」の選別、人権の軽視などは、デンマークだけの問題ではない。現在の自民党の主流派、維新の会などにも同じ思想が隠されており、日本の社会にとっても真剣に対応しなければならない問題である。

iisan
927253Y1

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