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Tetchy さんのレビュー一覧
Tetchyさんのページへレビュー数1426件
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今回もクーンツは非常に魅力的な導入部を演出してくれる。
ふと目が醒めると知らない所にいる男、フランク。最初は簡単な依頼かと思われたあるコンピュータ会社の仕事で危機一髪の危難に見舞われる夫婦探偵。このフランクの、見知らぬ場所で目覚めるという設定のオチがテレポートだったとき、『ライトニング』など散々使い古された手の亜流でしかないのかと思われたが、最後に明かされるフランク、キャンディらポラード一族の血縁のおぞましさにはかなりガツンと来た。 これほどの真相はかの名作『ウィスパーズ』に勝るとも劣らない。しかし、ここまでやると次はどんな手が残されているのだろうか? しかし、往々にして苦労して手に入れた小説というものはその希少さゆえ駄作であるというのがパターンとして多い―売れないから重版されない、つまり手に入れにくい―のだが、今回は違った。寧ろ世評が低いのが不思議である。着地も突飛ながら私的には許せる範囲だし、結末もボビーとジュリーのエピローグもあって纏められている。 いやあ、東京、横浜、博多と探し当てた甲斐があったよ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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今回のセイヤーズはつらかった。
これはミステリというよりも殺人を織り込ませた大衆小説である。広告業界内幕小説である。 とにかく物語の進行が破天荒で登場人物たちが広告業界人であるがために一筋縄とはいかず、台詞がとにかく多い。それゆえ、いつもより増して引用文が多く、これは私に云わせれば小説のリズムを崩しているようにしか取れなかった。 つまり今回は全くノレなかったのだ。 前評判から評価が二分化するのは解っていたが私が賛否の“否”になるとは思わなかった。元々事件に派手さはないセイヤーズだが、それでもその緻密さとあっと驚くワンアイデアで最高の悦楽を与えてくれていた。 しかし、今回はそれもなく、しかも最後にピーター卿が犯人に自殺を要求するのはどうか?恵まれた人物が貧者の気持ちを解さずに「なら、死ねば?」と突き放しているようにしか思えなかったのだが。 またピーター卿が広告会社で活躍するのもスーパーマン過ぎて食傷気味。 次からどうなるのだろう、このシリーズ? ▼以下、ネタバレ感想 |
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ある男のひと夏の燃えるような恋の物語。島田氏の青春グラフィティかもしれない。『異邦の騎士』然り、とにかくこういう話に弱いのが私。冷静に一歩引いて本作を観察してみれば、実は喜劇であるという事実に気付くのだけれども。
物語の流れとしては何とも都合のいい展開だなという印象が強い。気の弱いストーカーが冴えない手際で不器用に憧れの君と交際するようになるという展開からしてチープであり、何らかの捻りがあるのかとずっと疑念を抱いて読んでいた。 主人公がヤクザに絡まれ、傷だらけになり、それを謎の多い彼女が看病してメイクラブに至る。更に追っ手に捕まり、かつて夢中になったバイクを駆り、救出に向かう。極々使い古された手である。 困難の末に行き着いた真相は、主人公が可哀想になるくらい呆気ないものだった。ここで生じるのはなぜ彼女が家を飛び出して1人暮らしを始めたかである。 感傷的な島田氏の筆致は上のような陳腐さを頭で解っていても、心にはびしびしと響いてくる。 こういう作品を読むと、結局、小説とは斬新さがなくとも、技術で佳作・傑作が生まれるのだなぁと改めて思った次第。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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素人の手遊びという印象が読書前にあった。実際、最初の方は変に凝ったペンネームの人や、無闇に捏ね繰り回した表現を使う文体が散見され、やれやれといった感じだったのだが、後半の数編にはこれは!!と瞠目させられる物もあり、結果的には満足した次第。しかし、館物、山荘物、密室物が非常に多く、食傷気味である。また40ページ前後の作品にもかかわらず連続殺人が起きたりと贅沢に盛り込みすぎた作品もあり、この辺が逆に素人ぽさを醸し出しているのが皮肉だ。
しかし、現在ミステリ作家として活躍している柄刀氏の短編は、最後に人情のスパイスを仕込むなど、他の作品にないサムシング・エルスがあり、感心した。 最も驚いたのは新麻氏の「マグリットの幻影」。何よりも実体験的にトリックを実証する趣向が抜群で、正直度肝を抜かれた。正に「目から鱗」である。 今後このシリーズは更なる深化を遂げるのか、はたまたマンネリに陥るのか、期待と不安が入り混じっている。 |
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乱歩の目指す本格というものがよく解らなくなったというのが本書の正直な感想。がちがちの本格というよりも恐らくは当時乱歩は海外ミステリでよく行われていた「どんでん返し」の趣向に強い憧れを持っていたのではないだろうか。つまり一筋縄ではいかない結末を用意することに固執していたように思われる節がこの短編集では散見される。
しかしその趣向が上手く機能しているとは云い難く、はっきり云って蛇足に近い。二流の作品で終える予定が三流の作品に貶めているように思う。つまり最後の結末があまりにしょうもなさ過ぎるのだ。 ここに至り私は、乱歩は本格推理小説家としての才能は初期の短編の一握りの物にしか見られないと判断する。乱歩は本格推理小説を最も書きたがった通俗ミステリ作家だったのだ。 |
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A・E・W・メースン!!大学生の時に『矢の家』を読んだくらいで、その作品も詳細はもはや定かではないが、秘密の通路をメイントリックにしていたのにとてもガッカリした記憶が鮮明に残っている。
そのメースンの作品を再び読むことになろうとは全く思ってもいなかった!!しかも映画原作というから二重の驚きである。よくもまあ100年以上も前の作品を映画化しようと思ったものだ。 で、前述のように『矢の家』では大変失望させられたメースンのこの作品、予想以上に面白かったというのが正直な感想。 「臆病者」の烙印を押された元将校の主人公が自らの誇りを取り戻すため、かつて「臆病者」呼ばわりした同僚を危難から単独救出に向かう。要約すればこれだけの話で、至極単純な構成なのだが、今回は婚約者の女性も同様に主人公を「臆病者」呼ばわりするのがミソ。しかも結構きつい性格をしており、おいおい、ここまで云うかとばかり主人公を貶める。だって周囲を誤魔化すためのダンスでようやく終わりが見えた時に、「何で私がこんなに苦しまなきゃならないの!」なんて云うか、普通!?ここらへんの容赦なさといい、更にこの女性―エスネという名前―を苦しめる盲目になった主人公の登場といい、作者はかなりの小道具を要して物語を盛り上げる。 最初の同僚の救出劇は同僚の口から元恋人に告白されるだけだったので、迫力に欠け、物語の主題は専らこのエスネの揺れる恋心を綴った先駆的ハーレクイン・ロマンス物かと心配したが、やはりトレンチ救出の顛末はもう迫力もので、いつ計画が破綻するものかと緊張感に満ちており、非常に堪能できた。 とにかく、100年以上も前に書かれた作品とは思えぬほど、中東戦争の描写の丹念さや物語の登場人物が織り成す心の綾などが非常に丁寧に描かれ、はっきり云って21世紀に残る作品といっても過言ではないだろう。メースンの評価を改める必要があると本統に痛感させられた。 |
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クーンツ初の本格冒険小説は、やはり他の作品と変わらず、実にクーンツらしかった。
欧米の水不足を北極の氷山の欠片を持ってくることで解消しようという田中芳樹の冒険小説を髣髴とさせる大胆な設定を皮切りに、いきなりの海底地震によって寸断された氷山に取り残されたプロジェクト・チーム、彼らを襲うのは皮肉にも自らが仕掛けた爆弾だった。しかも途轍もない嵐によってあらゆる救助は不可能。そして正体不明の殺人鬼がメンバーの中にいる。 どこまでも読者を飽きさせないこのサービス旺盛さ。あいかわらずメンバーの個性は類型的だが、読んでいる最中は気にならない。アリステア・マクリーンに敬意を表した作品だというが、私は彼の小説を読んでいないので正当な判断はつかないけれど、どうもその域には達していないように思われる。 この過剰なるサービス精神が名作を残すのを妨げているように思われるのだが、どうだろうか? |
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私個人としては長編作家としての乱歩は少年期に少年探偵団シリーズで胸躍らせたあの頃で完結しており、『孤島の鬼』などの例外はあるにせよ、通俗すぎてバランスが悪いという印象しかもたないが、短編作家としての彼はワンアイデアで勝負する分、冗長でなく、しかもそのアイデアにキレがある事からかなり評価は高かった。
しかし本書に至っては短編の量産化のためかアイデアの枯渇が否が応にも窺え、小細工を変に弄するがためにギクシャクとした印象がある。各々の作品については述べないが、「恐ろしき錯誤」以降すべてが読者をどうにか欺こう、読者の考えの先を行こうと無理矢理などんでん返しを用意している分、それがなんとも痛々しいのだ。 次の『人でなしの恋』に期待しよう。 |
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クーンツがベストセラー作家として確立されているだけに、ストーリーが定型化しすぎていると痛感させられた。映画にすれば各々の登場人物の演じる俳優のイメージが固定化される思いもした。
導入部はいつもながら物凄い。いきなりクライマックスを迎える。それから膨らむ主人公の周囲を取り巻くエピソードも興味深く、これを貫けばある意味、小説の大家としての地位も確立できるであろうと思うのだが、やっぱりクーンツは怪物や宇宙人が好きなんですねぇ~! 得体の知れない怪物の話は今までになく幻想的で想像力膨らむが、無敵度を強くしすぎたせいか、最後の対決は何ともしぼんだ内容になっている。ここがいつもながら作家としての脆弱さを露呈させているのだ。ベストセラー作家というのが必ずしも良い意味に採られない典型でしょう。 あと、主人公以外の登場人物の使い捨て癖が顕著だった。エドゥアルド・フェルナンデスはプロット上、死ぬことは必要だとしても、獣医のトラヴィス・ポター、弁護士のポール・ヤングブラッドなどは単なる怪異の証言者の1人でしかない。この辺の使い方が書き殴っているようでどうもいけ好かないのだ。 ともあれ、重傷を負った警官とその家族を主人公に、殺人鬼が実はカルト的人気を誇る映画監督だったことから起因する主人公達への冷たい世間の仕打ち、怪異にストイックに立ち向かう朴訥な老人、カウボーイスタイルが似合う老弁護士、宇宙人の来襲を疑問もなく受け入れる男、恐怖や死を知らず憎悪のみを糧に生物を征服しようとする地球外生命体など、エピソードや人物設定などを取り上げれば面白くなる要素ばかりなのだが、それらを十全に活かしきれないクーンツ。 しかし時々『ウォッチャーズ』みたいな傑作が生まれるから目が離せないんだよな~。 |
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またもセイヤーズ、恐るべし、と手放しで歓びたい所だが、今回はどうもそうは行かない。
まず賞賛の方から。岸壁で1人のロシア人が殺されている、このたった1つの事件について600ページ弱もの費やし、さらにだれる事なく、最後まで読ませたその手腕たるや、途轍もないものである。事件がシンプルなだけにその不可能性が高まり、今回ほど本当に真相解明できるのか、危ぶまれた事件は(今までの所)ない。しかも最後の章でまたも驚きの一手を示してくれるサービスぶりはまさに拍手喝采ものである。あの1点でトリックが全てストンと落ち着くのが非常に気持ちよかった。 しかし―ここからが批判である―、腑に落ちないのは結局動機が何なのか判らなかった事。意外な犯人という点では今回は申し分ないだろうが、動機が判らない。 しかしポーの『黄金虫』ばりの暗号解読といい、バークリーばりの推理の連続といい、かなり本格推理小説を意識した作品であるとみた。動機の問題さえなければ星10だったのになぁ。 余談だが、今回は表紙の装画に非常に助けられた。この装画がなければ現場の状況を克明にイメージできなかっただろう。イラストを描いた西村敦子氏に感謝。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
ネタバレを表示する
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その名が示すようにこれは推理小説でいうレッド・ヘリング物、つまり疑わしき潔白者が何人もいる小説で、セイヤーズにしては珍しく、純粋本格推理小説である。
しかし、レッド・ヘリング物は誰も彼もが怪しいという趣向であり、とどのつまり、意外な犯人というものが真相にならない。従って、途中で「もう誰が犯人でもいいや」というある種の諦観を抱くようになるのだ。 それは本作も例外ではなく、キャンベルという嫌われ者の画家が殺されるという1つの事件だけで、460ページ弱を引っ張るのはあまりにもきつい。しかもレッド・ヘリングでは尚更なのだ。 さらに今回は西村京太郎ばりの時刻表解析があったりと、好きな人は堪らないかもしれないが、興味がない、いや寧ろ苦手な私にとってみれば、退屈以外の何物でもなく、はっきりいってこの段階で興味を失したのはまず疑いない。 セイヤーズの小説はなかなかノレないのにもかかわらず最後は素晴らしいカタルシスを提供してくれるので今回も期待したのだが、どうも読者を置き去りにしてしまった感が強い。苦言を呈して今回は2ツ星としよう。 |
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これは小説というよりも小説の体裁を借りた島田流都市論と云った方が正鵠を射ているだろう。まあ、内容としては都市論に留まらず、日本人の特質から根幹を成す行政論も展開しており、江戸の鎖国から連なる日本人の閉鎖性など、日本人の欠点をこれでもかこれでもかという所まで徹底的にバッシングしている。云わば“島田荘司の青年の主張”であり、内容としては密度が濃い。しかし、それがために同じ事の反復が目立つのもあり、いささかくどくなっている。つまり、小説にスピード感がなく、流れとしては非常に悪く、ノレなかった。
話としては、ある寺が虎を飼っており、主人公はその虎に魅せられ、世話をするようになる。ある日、大きくなった虎は檻から抜け出し、東京の街を疾走する。東京の街は当然ながらパニックになり、主人公は虎を守るべく虎と共に東京の街を疾走する。これだけである。 このトパーズという虎に島田氏は象徴性を持たし、主人公の理想はその虎に集約される。主人公はかつて若き日に研鑚し、勝ち得た肉体、躍動感が社会人となって蝕まれ、朽ち落ちていく毎日に絶望を抱いている。そのかつての姿を彼は虎の中に見、その姿が永遠である(と彼は信じている)ことに羨望を抱く。従ってこの虎はあくまでも幻想的である。そこが私のイメージとどうしても重ならなかった。 主人公の虎に抱くしなやかさ、躍動感、強靭さ、敏捷性はどうも私にはチーターのそれとしかイメージできない。虎はガタイが大きく、短足である。そこがどうも東京の街を疾走するイメージと重ならないのだ。 しかし、そんな瑕疵を抜きにしても、今回の作品はどうもつらい。主張が強すぎて、あまりに島田氏の考えに傾いており、ニュートラルではないからだ。 すまん、島田氏。今回、私はいい読者ではなかった。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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通常、作家には2種類の作品がある。作者のありとあらゆる粋を結集させた渾身の作品と、印税稼ぎで仕方なく書く量産作品である。そして本書はまさしく後者で特筆すべくも無い全くスタンダードな作品に仕上がっている。
事件は4つ起こり、その内密室殺人が2つ起こる。と書くと豪勢な骨太ミステリのようであるが、内容は2時間サスペンスドラマの域を越えない陳腐なもの。犯人、というか事件の黒幕的存在も途中で判ったし、それも戦慄を憶えさせるような余韻を残す内容ではない。 どんでん返しがどんでん返しになっておらず、ミステリに日頃触れない人たちならばある程度満足できたであろう内容だ―実際、母はこれを面白いと云っていた―。 黒星警部との再会は懐かしさを感じたが、思えばこの警部が出てくる作品は傑作がなかったんだったよね。 |
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やられた。
クーンツがこんな作品を書くなんて。 はっきり云って昨日までは世評に云われているような言葉を理解できる犬と人との交流がさほど感動的ではなく、寧ろベストセラー作家クーンツの感動させようというテクニックが透けて見え、あざとさを感じ、せいぜい9ツ星どまりだと思っていた。この評価は最後のシーンでちょこっと加点されたが、今回の「やられた」感のキモはここではない。 私は<アウトサイダー>にやられたのだ。 まさか最後の最後で<アウトサイダー>にああいう事をさせるとは思わなかった。何とも哀しい末路である。 しかしこの結末で非常にニュートラルな感慨を抱け、最後の静謐なエピローグがより際立って感じた。これこそがまさに単なる物書きと作家とを隔てるサムシング・エルスなのだ。 しかもクーンツの悪い特徴である素っ気ない結末で締め括られるわけでなく、カチッと最後のピースが当て嵌まるかの如く、素晴らしいエンディングを用意しており、心にずっしりとストーリーが残った。 殺し屋ヴィンス、追跡者レミュエル、これら脇役が全てプロットに最後の最後まで機能しているのもクーンツにしては珍しい。 文句なく満点である。 |
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毎度の事ながら連休に差しかかった読書というのは運が悪く、本書も連休のせいで途中2日間の中断を経て読了した次第。だから真相は頭に入ったが、印象は薄い。
ともあれ、本書がピーター卿シリーズの主要登場人物の1人、ハリエット・ヴェインの初登場作ということで、確かCWAかMWAの賞を貰っていたはず。つまり、ここからがセイヤーズの本領が発揮されることになるのだろう。 しかし、今回の毒殺のトリックは現在に於いても画期的ではなかろうか?正に発想の大転換である。通常ならば“如何に被害者に毒を飲ませたか?”という命題は実はもっと正確に云えば“如何に被害者のみに毒を飲ませたか?”とかなり限定されることになる。そういった先入観を与える事を見越してのこの真相。 先ほど印象が薄いと述べたが改めて振り返ってみるとしみじみその発想の凄さに感嘆する。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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典型的なノベルス・ミステリで火曜サスペンス劇場もしくは土曜ワイド劇場、金曜エンタテインメントの2時間ドラマの題材に使われる類いの作品である。
列車「白鳥」をテーマにした旅情ミステリで、時刻表も掲載されているため、鮎川哲也・西村京太郎ばりの複雑な時刻表トリックの作品かと思っていたが、さにあらず、時刻表が事件の解明の要素になりこそすれ、それを犯人がアリバイ作りのトリックとしていないために非常にシンプルで解りやすい内容になっていたのは救いだ。 しかし、やはりこういうのは出張の際の軽い読物を意識して作られたのだろうか、キャラクターも非常に類型的で、どの女優・男優が演じてもイメージを損なうことは内容になっている。つまり明日になれば名前さえも忘れるような主人公達であったという事。 たまにはこんな軽いのもいいか。 |
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上下合わせて1000ページ強の超大作でしかもクーンツにしては文字のぎっしり詰まった作品で、なんと読むのに3週間弱を費やしてしまった。とにかくクーンツは冒頭が素晴らしく、今回もその例に漏れない。夢遊病の作家、突然遁走の危機に見舞われる若き女医、神を信じられなくなった神父、暗闇恐怖症のモーテル経営者など、一見何の関係もない彼ら・彼女らがある1つの場所に収斂していく手並みは流石。
ただ、なんかシドニー・シェルダンの作品を読んでいるような各登場人物のエピソードが非常に長く感じたのは確か。彼らの抱える悩みがある1点に収束していくのをクーンツ特有の「出し惜しみ文体」でちくりちくりと小出しにしていくのだが、とにかくくどい(まあ、その内容は結構面白いのだけれど)。 冒頭はサイコ・サスペンス、続いて軍事スリラーに、そして最後はSFと、かなり贅沢な作品であるのは間違いなく、当時としてはクーンツの集大成的作品だったのかもしれない。しかし、最後がいやにメルヘンチックな締め括り方をしていたのと、やはりどうにも無駄に長いという感が拭えず、総合的には平均的な佳作だと結論に至った。面白くないわけではないんだけどねぇ…。 |
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