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オイディプス症候群
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【この小説が収録されている参考書籍】
オイディプス症候群の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.09pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全27件 1~20 1/2ページ
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いやあ長かった。 分冊でもない本書ですが、いつもの寝ながら読みには支える手が疲れました。 相変わらず著者も著作も全く知らずに、ただただ「本格ミステリ大賞受賞」というのと、この分厚さに惹かれて購読。なので矢吹駆が主人公の連作とももちろん知らず、とはいえ序章でザイールのジャングルの描写から始まる物語に、期待が膨らむじゃありませんか! ミステリには興味があるものの、”本格”なるものがよくわかっていないのだけど「虚無への供物」や「ミステリオペラ」あるいは(ちょっと違うけど長いということでは)「薔薇の名前」は面白かったので、そんな趣のお話と勝手に思ってた次第。 で、読み進んでいくと、AIDSと容易に想像がつく”オイディプス症候群”という感染症とギリシャ神話、テラーであるナディア・モガールと現象学による探偵役の矢吹駆、そしとその天敵、あとは思想闘争やら推理小説の論評やらが話の中に錯綜して進んでいきますがーいやあ、難しかった。 ギリシャ神話にも詳しくないし、ここで語られるような哲学?論争にも昏い、ましてや”本格”というミステリの理もよく知らない人間にとっては、なんだかよくわからないうちに、それでも引き返せない物語を並走した感じです。 なので印象くらいしか思いつかないのだけれど、”本格”ミステリなるものが、きわめて演劇性の高いものであることと、(こう言っては何ですが)予期せぬことというのが都合よく物語の裏書をしているのは”本格”でも”非格”(なるのもがあるのかどうか)でも同じなんだなあ、と思いました。その点、自分としては、動機にしろ殺害方法にしろ、そういったハプニング抜きの、堅牢に構築された理論というのを期待したかったのですが、その点は少し残念でした。とはいえ、これだけ長い物語を最後まで読ませられたということでは、やはり面白かったのだと思います(多少、歯切れが悪いが)。 著者はミステリの評論でも高い評価を受けているだけでなくSFも著している人らしいのですが、「ミステリオペラ」の山田正紀も元はといえばSF書きだし、自分がなじみの半村良や筒井康隆なんかもミステリ(といわれる)ものを書いてるしなあ・・物語の広げ方と回収の仕方ということでは、SFとミステリも似ているところがあるのかも、なんて関係ないことも思ったりしました。 | ||||
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単行本で約860ページの長編。それに加えて、登場人物の間で繰り広げられる事件や哲学の議論が難解で、思考力を全開にしなければ付いていけず、1ページを読むのにも相当の時間がかかった。ギリシャ神話がモチーフの作品で、ギリシャ神話に関する薀蓄が随所に出てくるが、なにぶん、ギリシャ神話の知識がないものだから、余計に時間がかかる。また、思考力を全開にしても、理解できないところが多々あり、特に矢吹駆の話は難しい。読み手を選ぶ作品だ。 孤島の連続殺人事件で、様々な謎がこれでもかと盛り込まれている。事件に関する議論は、あらゆる可能性が漏れなく検討されていて、極めて論理的。哲学的論争もハーバード白熱教室で取り上げられるような興味深い内容。 事件の真相に関しては、あまりきれいな解答ではないので、おそらく、読者の多くはカタルシスが得られないだろう。個人的には、このような真相は十分に可能性としてありうることなので全く問題はないのだが。途中でナディアが示した仮説の方がすっきりとしていて、面白いと感じる。ナディアの仮説には論理的に瑕疵があることが矢吹駆によって示されるが、おそらく、普通の作家であれば、ナディアの仮説が真相となるような設定にするのだろうなと思った。 孤島に人が集められた理由が斬新。 最終章のまとめ方が素晴らしいと感じた。 | ||||
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「バイバイ、エンジェル」からずっと矢吹駆シリーズを読んできた中で、それまでの作品に勝るとも劣らない傑作と感じます。 が、反面、1作ごとに鼻についてきた推理のしつこさ、登場人物が一言発するたびに、何気ないそぶりをひとつするごとにナディアが犯罪に絡めた推論をしては疑心暗鬼に陥る、その頻度のしつこさが邪魔!作者の悪い癖となっていることを厳重に指摘しておきます。 | ||||
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【驚きの発端】 2002年に刊行された本作品を読み始めた私の眼に、まず飛び込んできたのは、「エボラ熱」という病名。 作品の舞台設定は1970年代なので、アフリカで発見されたばかりの疫病とされていましたが、そのすぐ後に、この病が文明社会にもたらされた場合の恐ろしさが言及されていました。 このレビュー執筆時点(2015年1月)、その想定は残念なことに、現実のものとなっています。 【疫病というテーマ】 哲学探偵とでも呼べる矢吹駆シリーズの第5弾の本作品は、上述のとおり、疫病の暗い影で幕を開けます。 「エボラ熱」自体は、作品のテーマではなく、同じ頃蔓延し始め、現代では世界中に感染者のいる、HIVがテーマ。 1970年代には、謎の病であったため、本作品では、「オイディプス症候群」と呼ばれていたという設定です。 この病に関連して、ギリシアのエーゲ海に浮かぶミノタウロス島に招待された人々が、大嵐で島が孤絶する中、宿泊先のダイダロス館で、一人、また一人と死亡していくという、クローズド・サークル型の本格ミステリとなっています。 【犯人はいない】 これは、ネタばらしではなく、巻末解説からの引用です。 このシリーズを読んでこられた方なら、分かると思うのですが、本作品では、ミステリとしての構成と並行して、作中で哲学的論争が繰り広げられます。 そうした形而学上、「犯人はいない」のであって、ミステリのストーリーとしては、矢吹駆が推理し、きちんと真犯人も指摘しますので、ご安心を。 【押さえおきたい、ユリシーズ】 本作品を読もうとするなら、アイルランドの作家、ジェイムズ・ジョイスの大長編「ユリシーズ」について、全編を読まないまでも、Wikipediaで概略を押さえておくことを、オススメします。 作品全体をギリシア神話が彩る中、この作品のことも知っていると、より楽しめることと思います。 【全体的な評価】 第5弾までの本シリーズ中、最も充実していたのは、前作の「哲学者の密室」だと思います。 しかし、本作品も十分に上質なミステリと言えるでしょう。 前作までの4作を読んできたなら、このシリーズ独特の世界に浸れる喜びは格別なものがあるのではないでしょうか。 | ||||
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本格ミステリ大賞受賞作だが、この本格ミステリ大賞受賞作は初心者には敷居の高い作品が多いが、本作も相当に敷居が高い。 ノベルス版にして700ページ超えというレンガのような厚さで、さらにページにはぎっしりと哲学的な蘊蓄や専門分野の引用、蘊蓄が詰め込まれている。 大長編をものともしないいったん読み始めたたらページを捲る手が止まらない・・・ということはなく、数回に分けて休憩入りで長期戦で挑まないと立ちうちできないような密度の作品である。 クローズドサークルの閉ざされた孤島での連続殺人という王道テーマを再構築しようとしたような作品。 正直、最後まで読むのはしんどいが、それだけの価値はある作品ではある。 | ||||
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みなさんの評、拝見しました。 賛否両論ありますね。 駆ファンとしては、否(というより”非”)のほうがやや多かった、 ですか? 雑誌EQ、連載時はそれなりに興奮して読みました。 そんな記憶がいまだ、あります。 だって、通常の矢吹シリーズと違い、いつになっても 矢吹駆が登場しない!?! ナディアひとりの視点で世界が展開するところが 異常な興奮を生んだ記憶があります。 どこかの雑誌で読みましたが、笠井氏やはりこれではと、 大幅加筆に至ったようですね。 本作(単行本化された方)一度だけ舐め=読み、ましたが、 やはり当時の興奮は、なかった気がします。 あのまま出版するか、両方の版が、読みたいです。 | ||||
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病床の友人から、新種の奇病「オイディプス症候群」に関する資料と報告書を共同研究者に渡すよう頼まれた語り部役、ナディア・モガール。紆余曲折を経て、大企業の経営者が所有する孤島に滞在することになったナディアだったが、その晩、滞在客の一人が墜死した。唯一の交通手段である船は難破し、孤島に閉じ込められることになった滞在客の面々を次々に襲う、不可解な謎と殺人者の魔の手。 どこか「ちぐはぐ」で歪な連続殺人。死体の装飾の意味。滞在客が隠している秘密。そして、所々で見え隠れする狂気のテロリスト、ニコライ・イリイチ・モルチャノフの影――。 連続殺人を惹き起こした、【真の犯人】は誰なのか。哲学者・矢吹駆は、この事件を現象学的にどう読み解くのか。 推理小説なのでネタバレなしで感想を書きたいのですが、なかなか難しいです。ですが、矢吹駆が【真の犯人】を指摘した所が最も驚かされましたね。読んだ時は少し複雑な気持ちになりました。 推理小説として面白い上に、色々と考えさせられる哲学的・社会学的話題も含まれている『オイディプス症候群』。おすすめです。 | ||||
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本作が、笠井作品の中では必ずしも傑作であるとはいえない、という意見が多いようだ。 しかし私は本作を、著者が「孤島もの」という本格ミステリのガジェットのひとつにチャレンジし、実作として実証しようとした作品であると評価したい。 多分、著者が本作の構想や執筆をしたのは、いわゆる新本格が市民権を得たのち、自然崩壊し始めた頃だと思う。本作は、これに対する著者なりの防波堤だったのではないだろうか。ただし、その意図がほとんど効果がなかったことは、その後の本格ミステリシーンを見れば明らかである。本格ミステリは、すでに崩壊した。 山田「ミステリ・オペラ」が、笠井のそんな問いかけに応えようとした作品だったのかもしれない。しかし、あの作品の刊行も、むしろ崩壊を促進したようである。 しかし、何はともあれ本作である。 著者が考える本格ミステリのフォーマットのひとつが、まちがいなくここにある。だから、そのスタイルが好きなマニアにとっては、大変面白い。私はとても面白く読んだ。もちろん、あいかわらずの矢吹ロジックが垂れ流されるが、前4作まではかなり作品世界で乖離が目立った矢吹であったが、本作ではそれがかなり少なくなって、作品世界と随分となじんでいる。その分、前4作よりもかなり読みやすいのは確かである。 もちろん、他のレビュアーの意見のように、熟成度合いが足りない、という感じはある。それは、かなり多忙になった著者の、作品にかける時間の少なさによるものであるのだろう。しかし、今の著者にかつての「サマー・アポカリプス」や「バイバイ・エンジェル」執筆時のような時間をかけて作品を熟成しろ、というのは、多分物理的にも心理的にも無理なのだろう。笠井ファンとしては、それは残念なことであり、できることならばもう一度、若いときの気力と体力で、これは、という傑作を執筆してもらいたいものである。 従って、本作の評価は満点とはいいがたい。しかし、著者のチャレンジ精神は、十分に評価に値する。 | ||||
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本作が、笠井作品の中では必ずしも傑作であるとはいえない、という意見が多いようだ。 しかし私は本作を、著者が「孤島もの」という本格ミステリのガジェットのひとつにチャレンジし、実作として実証しようとした作品であると評価したい。 多分、著者が本作の構想や執筆をしたのは、いわゆる新本格が市民権を得たのち、自然崩壊し始めた頃だと思う。本作は、これに対する著者なりの防波堤だったのではないだろうか。ただし、その意図がほとんど効果がなかったことは、その後の本格ミステリシーンを見れば明らかである。本格ミステリは、すでに崩壊した。 山田「ミステリ・オペラ」が、笠井のそんな問いかけに応えようとした作品だったのかもしれない。しかし、あの作品の刊行も、むしろ崩壊を促進したようである。 しかし、何はともあれ本作である。 著者が考える本格ミステリのフォーマットのひとつが、まちがいなくここにある。だから、そのスタイルが好きなマニアにとっては、大変面白い。私はとても面白く読んだ。もちろん、あいかわらずの矢吹ロジックが垂れ流されるが、前4作まではかなり作品世界で乖離が目立った矢吹であったが、本作ではそれがかなり少なくなって、作品世界と随分となじんでいる。その分、前4作よりもかなり読みやすいのは確かである。 もちろん、他のレビュアーの意見のように、熟成度合いが足りない、という感じはある。それは、かなり多忙になった著者の、作品にかける時間の少なさによるものであるのだろう。しかし、今の著者にかつての「サマー・アポカリプス」や「バイバイ・エンジェル」執筆時のような時間をかけて作品を熟成しろ、というのは、多分物理的にも心理的にも無理なのだろう。笠井ファンとしては、それは残念なことであり、できることならばもう一度、若いときの気力と体力で、これは、という傑作を執筆してもらいたいものである。 従って、本作の評価は満点とはいいがたい。しかし、著者のチャレンジ精神は、十分に評価に値する。 | ||||
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免疫機能を低下させるウイルス性の奇病「オイディプス症候群」に 感染した友人の頼みで、クレタ島南岸に浮かぶ孤島「牛首島」に やって来たナディア・モガールと矢吹駆。 やがて島は嵐によって外部との連絡が断たれ、その状況下で、 ギリシア神話に見立てられたような連続殺人事件が起きる……。 前述の「オイディプス症候群」はHIVがモデル。 通常の病原体とは異なり、それ自体毒性を持たないのに免疫機構を狂わせていくこのウイルスに、 意図することなく、神託通りに父を殺して母を犯し、テバイの町に災いをもたらした、ギリシア悲劇の 主人公の名前が与えられているところに、本作のテーマが集約されているといえます。 また、本作では《孤島》という、ミステリにおいては定番の舞台が選ばれていますが、駆は その本質を「出るために作られた檻、第三項が生じるように引かれた線」と捉えています。 犯人は内と外を同時に鳥瞰しうる第三項に位置すべく、 内と外とを分割する《孤島》という舞台を選びます。 そうして特権的位置を占めた犯人は、内と外を自在に往還し、 関係者を支配しようとしますが、本作においてその目論みは、 内と外の境界を無効化し無差別に襲い掛かる「オイディプス 症候群」という疫病に含意されるものによって、頓挫すること が運命付けられているのです。 それは、十人もの死者を出す連続殺人事件の引き金となったのが、 悪意のない、ある人物のささいな不注意であったということからも 窺うことができます。 | ||||
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謎の奇病「オイディプス症候群」の蔓延に端を発する、連続殺人事件。 それを背景に、世界的テロリズムと矢吹駆の暗闘は続く。 このシリーズにおける最大の魅力といえば、やはりなんといっても、現代思想家をモデルにした登場人物たちが、主人公と論戦をくりひろげる部分でしょう。 しかしながら、今回登場のミシェル・ダジール(フーコー)を相手に、主人公・矢吹駆が、あまり刺々した議論を戦わせることはありません。むしろダジールの助けを得て、自分探しをしているようにも見えます。 重要なのは、この『オイディプス症候群』に登場する思想家は、フーコーのほかにもう一人いる、という事です。それはひょっとすると、『テロルの現象学』の著者の、若き日の姿ではないだろうか?と、そのように僕はにらんでいるのだけどどうでしょう。 …なんかこう書くと、いろいろな誤解を生みそうな気もするのだが。 | ||||
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哲学的な論議や文献、ギリシャ神話への薀蓄など、すべてが分からないでも、何か高級な書物を読んだ気分になる。この作品はもう一度、読み直さなければならないと感じている。それだけの内容がある。 一方で、ミステリーとしての充実度はどうだろうか。伏線や理屈などきちんとつながってはいるが、ストーリーとして盛り上がりに欠ける感はないだろうか。読んでいて恐怖感もない。カケルvsイリイチの対決もいいが、作品ごとに、もっと輪郭をくっきりと描かなければならない。「知ってる人は知っている」ということでファンに頼っているのはいただけない。実際のところ、笠井潔氏の作品を相当程度まで理解している読者は少ないのだ。 | ||||
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哲学的な論議や文献、ギリシャ神話への薀蓄など、すべてが分からないでも、何か高級な書物を読んだ気分になる。この作品はもう一度、読み直さなければならないと感じている。それだけの内容がある。 一方で、ミステリーとしての充実度はどうだろうか。伏線や理屈などきちんとつながってはいるが、ストーリーとして盛り上がりに欠ける感はないだろうか。読んでいて恐怖感もない。カケルvsイリイチの対決もいいが、作品ごとに、もっと輪郭をくっきりと描かなければならない。「知ってる人は知っている」ということでファンに頼っているのはいただけない。実際のところ、笠井潔氏の作品を相当程度まで理解している読者は少ないのだ。 | ||||
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テロやプレイグ等の様々な事件をメタファーとして織り込み、ギリシャ神話をモチーフにした物語を語って行く。孤島をテーマにした綾辻作品や、英国女流作家の複数の作品を彷彿させるモチーフを複合構築させて、俗にいう新本格推理小説は進んでいく。「外論」など、途中執拗に繰り返される哲学的な記述は、後半、密室トリックの文学的な位置付けに取り組んだ著者の姿勢が判るようになっているところも評価したい。探偵小説の評論も著す笠井独自の世界を堪能できる作品になっている。ずしりと感じる本の重さに背かない、重厚な作品といえよう。最後、犯人が**するところだけ、唯一不満を感じた。 | ||||
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テロやプレイグ等の様々な事件をメタファーとして織り込み、ギリシャ神話 をモチーフにした物語を語って行く。孤島をテーマにした綾辻作品や、英国女 流作家の複数の作品を彷彿させるモチーフを複合構築させて、俗にいう新本格 推理小説は進んでいく。「外論」など、途中執拗に繰り返される哲学的な記述 は、後半、密室トリックの文学的な位置付けに取り組んだ著者の姿勢が判るよ うになっているところも評価したい。探偵小説の評論も著す笠井独自の世界を 堪能できる作品になっている。ずしりと感じる本の重さに背かない、重厚な作 品といえよう。最後、犯人が**するところだけ、唯一不満を感じた。 | ||||
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密室と化した孤島、複雑な間取り、ギリシャ神話、正体不明のウィルス菌の増殖と、本格ミステリーファンが触手を伸ばさないはずがない。おまけに容疑者はそれぞれに当てはまるとくれば、ここは笠井潔の真骨頂。分厚い単行本とともに脱帽である。 ただ、身近に犯人がいるにもかかわらず、その恐怖心が表現出来てなかったり、心理状態には多少の難はあると思うが、極力こうした叙述的部分は廃して、状態の結果と探求に徹したところはさすが笠井潔である。 『哲学者の密室』を凌ぐ大作となった本書。それよりは物語の展開を追い易い作品となっているが、いずれにせよ今世紀を代表するミステリーであるのには間違いない。本格推理ものはかくあるべしと世に問いかけた一大傑作。これを読まずに日本のミステリーは語れない!! | ||||
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密室と化した孤島、複雑な間取り、ギリシャ神話、正体不明のウィルス菌の増殖と、本格ミステリーファンが触手を伸ばさないはずがない。おまけに容疑者はそれぞれに当てはまるとくれば、ここは笠井潔の真骨頂。分厚い単行本とともに脱帽である。 ただ、身近に犯人がいるにもかかわらず、その恐怖心が表現出来てなかったり、心理状態には多少の難はあると思うが、極力こうした叙述的部分は廃して、状態の結果と探求に徹したところはさすが笠井潔である。 『哲学者の密室』を凌ぐ大作となった本書。それよりは物語の展開を追い易い作品となっているが、いずれにせよ今世紀を代表するミステリーであるのには間違いない。本格推理ものはかくあるべしと世に問いかけた一大傑作。これを読まずに日本のミステリーは語れない!! | ||||
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フーコーが主人公とともに謎のウイルスが絡んだ殺人事件に巻き込まれるという意味でネタとして面白かった。哲学者のキャラが推理探偵に変身するわけだが、ウィトゲンシュタインを使ってもなんか書けるだろうなと思った。そういえばずっと前のヴァンパイヤーウォーズではマイケル・ポランニーや栗本慎一郎とおぼしきキャラが出てたっけ。 | ||||
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フーコーが主人公とともに謎のウイルスが絡んだ殺人事件に巻き込まれるという意味でネタとして面白かった。哲学者のキャラが推理探偵に変身するわけだが、ウィトゲンシュタインを使ってもなんか書けるだろうなと思った。そういえばずっと前のヴァンパイヤーウォーズではマイケル・ポランニーや栗本慎一郎とおぼしきキャラが出てたっけ。 | ||||
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「嵐の山荘」あるいは「途絶の孤島」を舞台とするミステリに対するメタフィクション。よくできたメタフィクションはその分野の名作になりうるという例。このタイプのミステリに一般的な難点は「犯人が限定される状況であえて犯行に及ぶ」という犯人の行為の不自然さですが、「オディプス症候群」はこの問題に対して説得力のあるモデルを提示します。この作品の結末は十分すぎるほどフェア。犯人を同定する論理が魅力的です。犯行の構成自体はある新本格派作家(... 今となってはひどく懐かしい言い方ですね)の作品に類似しているのですが、私はこちらの処理のほうが好みです。事件と並行する思想的な論争は今回は「外部と権力」をテーマに進展しますが、「アポカリプス殺人事件」や「哲学者の密室」ほどには、事件自体と深い関係を切り結ぶところまではいかなかったように感じられました。しかしとにかく凡百の推理小説からは屹立した傑作です。 | ||||
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