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グロテスク
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グロテスクの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.94pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全210件 81~100 5/11ページ
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家族に出稼ぎで日本に来た者がおり、夜の和恵と同じ職業についたものがある人間として…涙なしには読めない作品だった。 和恵が副業を始めた心情が、当時の自分の心情とまるきり一緒で、封印していた思い出がどんどん蘇り途中読むのを何度も中断してしまった。 最終章からは、ストーリーの雰囲気が少し変わってきて星新一のようなブラックユーモアも感じさせる作りで、 結局何だったのかが掴めないで終わってしまった。 美君のように深く愛されたい。 | ||||
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あとがきで、文芸評論家の方が書いている内容がぴったりくる。読み終えた後は、とにかく、人間の持つ負の面を吐き出しきった感がする。読み進めるうちに面白いと感じるのは、自分にもいつか起こりうる人生の悲劇だからであろう。私は思うが、社会、世間という枠の中で、順調にはいあがっていける人には感じれない悲哀をもつ人がいる。それをこの小説はあぶりだしている。だから私は面白いと感じた。それはここでは女ということだが、それ以外にもさまざまなマイノリティな方がいる。世間から弾き飛ばされているのにそれでも前を向いていき続けられるかどうか。前を向いて行き続けるのは決して用意ではない。若いころには希望にあふれていて、できるのものがあると思ってはいても、思いのほか、世間の風は強く、はげしい。それでもなおかつ、はいあがって上り詰めて、自分流の幸福を世間の上に築ける人もいるであろうが、それは非常に険しき道であり、わずかだと思う。 世間の荒波に疲れ、やっぱり無理だと思い始めてときから、徐々に転落の人生が待つ。どんどん自暴自棄になり、次第には自分自身のことすらわらかなくなる。佐藤和恵の人生は、その転落する人生をリアルに描いている。 また、この小説が心に刺さるのは、作者自身の心象風景を描きだしたのにしても、多くの人間が自分の問題としてとらえるほどこの人間の堕落さを多くの人が共感するほど持っていることにほかならない。 私自身、転落人生は、ごめんだが、こうならないとは思えないため、この本を教訓にして、人生の光を必ず見つけ、進みゆきたいと念じずにはいられなかった。勉強にはなったので☆4つ。これを機会に桐野作品をほかのも見てみたいと思う。 | ||||
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レビューを読んでから、本を手に取ったので内容を予想しつつ読みました。女性たちの葛藤の生々しさは、もうたくさんの人が書いているので省略します。私にとって印象に残ったのは(あまり誰も触れていないけど)犯人である張の告白です。女性の内面をむせ返るように描いたこの作品にうんざりしなかったのは、彼の生い立ちのくだりがあったからだと思います。階級社会の優越感バトルで泥試合を余儀なくされる女たちの対比として描かれる中国内陸部の実態。ただ人間らしい暮らしを求めることに伴う想像を絶する壁、壁。彼の視点から描かれる、物質的には豊かな日本で内破するように噴出する毒が、妙にふわふわと軽く感じられるのはなぜでしょう。最終的に、私は張に一番興味を惹かれました。手記でのまじめでひたむきな青年像と、和恵の視点で語られる悪人っぽさの対比も面白い。彼の人物像や、盆栽好きの祖父の存在は、ぎらぎらした女の匂いをうまく中和させてくれていて助かりました。 | ||||
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読み始めてから止まらず、一気に読んだ。 上下巻を通し、下巻の一部をのぞきすべてがそれぞれの人物の立場からの一人称でかかれている。 上巻は主人公の語り、主人公の妹であるユリコの「手記」などから彼女らの幼少期、名門と呼ばれるQ女子高での出来事などが描かれている。 この巻からすでに「主人公の言い分」とユリコの「手記」に記された事実とが微妙に異なっていることがわかる。 何を信じていいのかわからなくなってくるが、一つだけ明確なのは小説の根底にある「悪意」だ。他人と比較して生ずる悪意、他人に己の姿が投影されたためにその他人に向けられる悪意、それらの悪意が抑えきれなくなり無関係の他人にまで及ぶ悪意。 一見悪気のない行動も主人公の語りを通すと悪意が見えるような気がする。その悪意を吸い取りますます巨大化する主人公の悪意。 泥沼のような悪意の連鎖を一見冷静な文体で表現する作者の筆力は賞賛に値するだろう。汚い言葉、罵詈雑言で悪意に満ちた表現をするのは容易だが、上巻にはそういった言葉もほとんどない。そのために主人公の語りを通して浮き彫りになる悪意がますます強烈になる。 実際にあった「東電OL殺人事件」もテーマになっているようだが、それを忘れて読み込める小説だ。 | ||||
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1番面白かったのはQ女子高時代の描写でしたね。「わたし」の悪意と和恵の愚鈍さ。和恵の言動、家庭(家族)、初恋に対する「わたし」の目を通した描写。グロテスクというよりコミカルさすら感じました。下妻物語思い出した位。(笑)つまり上巻は面白かった。下巻はがっかり。ユリコですら、必要なキャラクターだったのかなと疑う。「わたし」と和恵、スパイスとしてミツル、この三人だけで良かったんじゃないか?「頭が良くても顔が良くても年とったら女は不幸」なんて浅いメッセージがテーマでもあるまいに…。 | ||||
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文章のみで、人をこんなに物語の中に飲み込ませる力が発揮できるとは、本当に凄いとしか言いようがありません。和恵に、思わず共感してしまう所もあり‥‥夢中でページを捲りました。この小説に漂う重すぎる空気や迫力に、耐えられない方もいるだろうなとは思います(笑)。しかし、こんな小説は他にないのではないでしょうか。私は軽い気持ちで読み始めたのですが、この物語に出会えたことはいい"経験"であったと捉えています。オススメです。 | ||||
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所感は、他の方が書かれている事とほぼ変りませんが、ひとつだけ。 実際に起きた事件がモデルになっている部分がありますが 実際の被害者のご遺族のお気持ちを考えると 主人公の悪意のある目線から描かれた和江の印象や和江の日記の記述は どのように受け止められるものなのだろうか、と複雑に感じられました。 実際の被害者は既にお亡くなりになっているため、忌憚無い言葉で表現すれば死人に口無し状態ですから 愛のある視点での描写(もしくはあとがきなどでのフォロー)も欲しかったかな・・・。 桐野さんは大好きな作家だし、彼女ならではの感性が爆発している傑作だとは思うのですが 「作品にしてみたかった」という作家のエゴだけが際立っている印象が、なきにしもあらず、ということで☆は一つ減らしました。 | ||||
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女だからこそかける女の嫌らしさ。 男性作家には、やはりここまでは書けないでしょう。 自分の中にも確かにある嫌〜な部分を和江や百合子の姉である私の目線から気付かされる。 女である自分の中のグロテスクに気がついてしまうそんな作品。 | ||||
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所謂「東電OL殺人事件」を借景として、人間の持つ悪意や嫉妬、淫蕩と言った負の本性を抉り出した著者らしい作品。意図的に進化論や遺伝の概念を取り込んでいるようだ。物語は前述の事件の被害者をモデルとした和恵の高校時代の同級生の"私"の事件後の回想談や複数の手記で構成される。二人が通ったQ女子高は初等部から大学まで揃えた名門学園。二人は高校からの入学で、特に和恵は柔軟性に欠け、その階層社会に適応出来ない。私の父は在日スイス人で貿易商をしていたが、私の母と妹を連れて帰国する。妹のユリコは重要人物で、怪物的な美貌の持ち主に設定されており、私の悪意の原点となる。私は他者の悪意の記述者ではなく、悪意そのものなのだ。ユリコは母の自殺を機に日本に戻り、Q中等部に編入し、その美貌で他の生徒に圧倒的な影響力を行使する。和恵もその一人と言う意味だろう。ユリコも事件の一年前に同様な状況で殺されると言う設定。 ここで、ユリコの手記を挟んでQ学園での女の嫉妬、イジメ、天性と努力、ユリコ自身の淫蕩性等が描かれる。描写が人工的に過ぎる感があるが、ユリコ自身が"玩具"である事を初めから認めている、即ち、一種の諦観を持っている点に強い印象を受けた。先天性・後天性、運命の問題を論じている様。兎に角、モデルの事件から、被害者の高校時代を描くという発想に作者の独創性を感じた。事件の遠因を探ると言う意味と、事件当時の会社生活を描くより、物語の凄惨・酷薄性が増す効果がある。事件の容疑者張の出身地を中国の地方に設定する事で、作品の幅も広がっている。張の描写にも、ある種の運命論を感じる。オウム事件にも言及する貪欲さ。ラストの和恵の手記のリアルな禍々しさは圧巻。 単細胞生物から突然変異の積み重ねで進化して来た人類そのものが「グロテスク」と言っているかのような、骨太の力作。 | ||||
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東電OL事件をこの視点から描くことを思いついた時、すでにこの作品の成功が約束されたのだと思います。ただ、そこからの必然なのでしょうが、それぞれの人物の自立性を約束するためにそれぞれの人物に語らせる構成ゆえやむなしといった側面があるにしても、「ユリコ」にはあえて語らせなかったほうが作品に深みが生まれたような気もします。しかし、そうやって生まれた「深み」もまた、男性と男性社会を憎んだ登場人物たちにとっては戦わなければならない敵だったような気もするので、この作品の長さと相まって作者と登場人物たちの必然であったかもしれません。良くも悪くも女性の書いた必読の作品だと思います。 | ||||
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不十分のように感じました。 悪意を書いてる小説なのに決定的にこの小説から欠けているもの。 それは善意。 善意が欠如した悪意にはリアリティを感じません。 不幸を知らない幸福がないように、強烈な悪意の裏には強烈な善意が あるからだこそと思うのですが。 またここで語られている悪意は、女性が持つ種類のものよりも 男性に近いものを感じました。 もう一つ気になったのが、ところどころ視点を変えてはいるのですが、 全体を通してユリコの姉と同じ目線で書かれている物語のように感じました。 語り口は違えど全員が同じ人間に見えました。 上記はあくまでこれが人の心の闇をリアルに書ききった小説と言うならばです。 なまじ、現実の事件をモデルとしてる分悪意の解釈が不十分に感じてしまうのかも しれません。 ノンフィクションとして読めば秀逸な作品だと思います。 | ||||
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とてつもないホラーだった。母や、妹や父を捨て、裏切り、告発し、最後は自分の悪意の深さに溺れ、売春という自分を貶める道を選ぶ主人公。妹を殺し、二人の娼婦を殺す中国人。セックスを通じてしか、他人との関係を気づけない女たち。人殺しの宗教団体で人殺しを実践する女。同性愛者で、女衒として生きる男。どの登場人物も恐ろしい人間的欠陥を持っているが、読者は読んでいるうちに、引き込まれ、その原因が自分にもある悪意や、欲望や、絶望をこの本の登場人物たちと共有していることに気がつくだろう。主人公たちに、いつか同化しかかっている(あるいは共感しかかっている)自分に気がついたとき、戦慄するだろう。参った。悪い夢を見そう。 | ||||
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読んでいてむかむかしてくるような意地悪な表現が度々ある。 何もそこまで・・・。と言いたくたくなるような悪意。 裕福な人に対する表現は本当にあてはまり、今まで出会った「裕福らしい」人は そうそう、こういう事を平気でする。とうなずき、思い出してはムカムカする。 昨今、格差社会と言われているが見えない格差社会は前からある。 美少女の描写は大抵、読んで綺麗な様子を想像するが、 ユリコは綺麗というよりも気持ち悪いと読者に感じさせるのも悪意。 こんなに意地悪な読んでムカムカさせられる小説を書ける桐野さんがすごい。 下巻も楽しみだ。 | ||||
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繊細な"わたし"が自己陶酔して苦悩ごっこする似非文学ではなくて、 ルイ=フェルディナン・セリーヌ に匹敵する真実の文学! 無駄な苦悩、無駄な努力をしたくない人は必読。 努力が必ず報われると信じている世間知らずの人は、 挫折する前にこれを読んで世の中の真実に気付いて下さい。 語り手の"わたし"は翻訳家に成る夢が破れた37歳の処女のフリーター。 超美少女でモテモテの妹と、 名門女子高時代の同級生達の数奇な人生が彼女によって語られる。 彼女が毒舌で語る美少女や天才少女のエピソードがメインだが、 彼女に語られた人物の手記(彼女に言わせると嘘ばかり)も挿入され、 何が事実なのかを推理するミステリとしての楽しみもあるが、 語り手が捏造してるとしても世の中の真実を訴えた素晴しい文学である。 語り手の"わたし"が、『ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語』 で 有名になったバージェス動物群のファンなのが素晴しい。 ルイ=フェルディナン・セリーヌ が訴えた人生の無意味さを 生物進化論で補強しようとする素晴しい知的興奮に溢れる本。 日本の女流作家にこんな知的レベルの高い人がいたとは驚きだ! 友人も恋人もいなくても楽しく生きていけることを教えてくれる 生命体のバイブル。 突然変異して生き残ったものが、 生命体として進化したとされる勝利者である。 ハルキゲニアのような素晴しい人生になりますように…。 | ||||
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和恵の「堕ち」方は,読んでいてつらくなった。最初はホテトルで身を売っていたのに,年をとったからと解雇され,渋谷で立ちんぼうに身を落とす。8000円で身を売り,その男の指示で,さらに2000円で2人の男に身体を売る。にもかかわらず,自分はQ大を卒業して,G建設に勤めていることをプライドにして生きている。最後のころには,会社でも話題になっていて,殺されなくても,早晩彼女は破滅していたに違いないと思わせる。 和恵の日記である「第7章 肉体地獄」を読むためだけでも,この分厚い本に挑戦する価値はあると思う。分厚いけど,すぐに夢中になって,結局1日で読んでしまった。 | ||||
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普段すましている女の友人にこの本を突きつけてやりたいと思う私の中の黒いものが確かに存在します。 それにしても女は、グロイ。 男性はわからないんだろうなぁ | ||||
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(上下巻通した感想を書きます) 過剰な美貌と性欲のユリコ、過剰な頭脳のミツル、過剰な努力と金銭欲の和恵・・ おんなは、いや人間というものは、放っておくとつねに過剰なものを追い求めるものであるらしい。相対化した価値観しかない世界では、他者と比較することによってしか自己の存在意義を見出すことができない。過剰という鎧をまとうことによってはじめて安心できるのだ、そしてこの価値観は、まさに現代日本そのものである。 わたしたちは過剰な栄養摂取の結果、身体に過剰に(グロテスクに)蓄えられた脂肪によって命を縮めるのだ(いわゆるメタボ)。 過剰に対峙する価値観は「中庸」もしくは「足るを知る」という哲学であるが、一見ふつうの社会生活を送っているかに見える4人の主人公たちの家族もまた実は「足るを知らない」怪物なのである。いや、グロテスクなのはこの小説の登場人物だけでなく、まさにわれわれ普通の日本人そのものなのだ、ここにこの小説の普遍性があると感じた。 信濃追分で隠遁する木島の父、邪宗に染まり服役したミツルの二人だけがかろうじて「足るを知って」いるようだ。 古典的な「美徳の不幸」または「悪徳の栄え」byサド侯爵を想起してしまった。 | ||||
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東電OL殺人事件をモチーフに書かれた作品であるが、よくもまあこんなすごい話に仕立て上げたものだと感心してしまう。 「グロテスク」と言う題のとおり、誰一人として「良い人」が出てこない、と言って「悪人」でもない。 誰もが持っている、心の中の醜い部分、人を差別する気持ち、こんなものがどろどろと描かれている。 少しの嫌悪感を持ちながらも、本を読むことを止められない。 これはそんな本です。 エリートOLから街娼となり殺される女性は事件の被害者をモチーフにしていますが、もう一人とんでもない美貌を持って生まれた 「わたし」の妹、「ユリコ」は宮沢りえのイメージが私にはあります。 ハーフでお母さんには似ても似つかない完璧な美貌。 りえママごめんなさい(笑) | ||||
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上流階級の巣食う私立女子高における格差社会は、公立高校出身の私には恐怖すら覚える内容だった。 彼女たちも、自分の所属すべき場所で地に足の付いた学生生活を送れば、この小説の内容のよな結末を迎えずに済んだのでは?と思ってしまう。 男や社会への憎悪を植えつけられるプロセスは壮絶であり、壊れて行く女性たちの姿は想像を絶している。 今の時代も彼女たちには十分に男社会と写っているのだろう。 グロテスクに変貌して行く、憎悪に駆られた人々を通して、現代社会の格差の構造が垣間見られる壮絶な作品。 気軽に読める作品ではないが、作者の代表作にふさわしい重厚さを持っている | ||||
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執拗な憎悪によって狂気に蝕まれてゆく姉妹とその周辺の人々。悪循環に朽ちていく人間模様が読み応えがあって惹きこまれていきました。 | ||||
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