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ブレイクショットの軌跡
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ブレイクショットの軌跡の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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「ブレイクショット」とは、SUV車の車種名(架空?)とビリヤードの玉を突く初手の二重の意味を含意している。 プロローグは自動車組立工場の期間工がブレイクショットのボルトが1本落下したのを目撃する話で、それが「軌跡」として展開していくのかと思ったら、場面転換していきなり中央アフリカの反政府勢力に引き込まれた少年の話になる。 さらに、第1章は投資ファンドの話、第2章は町工場の板金工の話、第3章はサッカー少年の話と場面が変わり、あたかもオムニバスの連作小説かと思わせるのだが、やがて物語は投資の儲け話の裏側をうごめく特殊詐欺グループとその背後の反社会勢力の登場で、俄然緊迫感が高まってくる。 それにしても、本書の描く特殊詐欺は実に巧みである。表看板は合法的な投資セミナーで、講師たちは善意で受講者に安全な投資方法と詐欺にかからない注意をしているが、その裏で受講者の個人情報や弱点を面接を通じて収集し、その名簿情報を高額で詐欺グループに売却する。講師たちは知らない間に個人情報の収集に協力させられるが、どこかの時点で共犯者として抜けられなくなってしまう。合法の看板を掲げた「闇バイト」のようなものだ。 こうした詐欺グループが繰り返し刷り込む思想は、「世の中に不満があるからといって、世の中を変えようとしても無駄」というもので、ひたすら勝ち組になることだけをめざす。洗脳された者はやがてカモにされるわけである。 格差社会の落とし穴が生々しく描かれていて、背筋が寒くなる。 もちろん、著者はこうした詐欺グループの思想に対し、主人公たちの生き方として、「善良に生きること」、「ルールの中で正々堂々と戦いながら勝利をめざすこと」を対置している。 小説としては、短編連作のような形式を取りつつ、視点と話者を変えたポリフォニックな話法で構成されており、最後にはプロローグの「ブレイクショット」のどんでん返し(あるいは肩透かし)と、意外な人物の種明かしまで用意されており、楽しめた。 | ||||
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間違いなく2025年最高傑作。時間をかけて読むことをおすすめする | ||||
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投資詐欺、インデックスファンド、NISA、youtube、LGBTといった昨今何かと話題になっている言葉が飛び交う世界で織り成される人間模様。国産SUVブレイクショットが糸のように物語の中に控えめに時には大きめに絡んできます。 読了後、何となくドストエフスキーの長編を読み終えたときに近い、心の底から沸き上がってくるある種の高揚感のようなものを感じました。(著者のお姉さんがロシア文学者ということから連想したのかも知れませんが) 映像化するならラストシーンはブレイクショットで決まりってとこですが(読んだ方ならわかると思います)、そのままだと絵的にはスコシージ監督の某作品のラストと似たイメージなので、どう工夫するか、演出家の腕の見せ所ですね。 | ||||
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評価は仮。 第1章でタワマンをあの世のようだと言ったのは、宮苑ではなく霧山の妻ではなかったか? | ||||
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読み終わるのが勿体無くて丁寧に読み進めた。 現代社会を生々しく描いているので、「今」読むことで面白さが増すと思う。 買って後悔の無い名作。 あと、ツイッタラーにはブッ刺さる。 | ||||
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ビリヤードの初手、ブレイクショットの名を冠したクルマ、 それに絡めた幾つもの人間模様を描いた群像劇。 「少女同志よ、敵を撃て」「歌われなかった海賊へ」で 第二次大戦を描いた著者が描く現代劇と言うことで 期待して読みましたが、 こちらの期待を何段も超える凄まじい作品でした。 自分ではどうしようも無い運命に翻弄され、 時には希望を見失いそうになりながらも、 諦めず道を切り開こうとする登場人物たち。 マネーゲーム、地域紛争、特殊詐欺、反社組織、 SNSの功罪からLGBTQや差別意識に至るまで、 世の中にあるどうしようも無い理不尽や悪を 一体どれほど取材すればそこまで描けるの? と思うほどに精緻に描きながらも、 幾重にも張られた糸が最後に1つに撚り合わされていく 作者の構成力が圧巻です。 その一方で絶望や諦念には留まらず、 根底では人間の善性を信じる作者の視点が 希望の光となって全体を照らしてくれていて、 物語の点と点が繋がって線となる快感と共に 最後にとても救われた気持ちになれる、 最高の読後感を与えてくれました。 傑作だと思います。 | ||||
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久々に面白い物語を読んで大満足です。 | ||||
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(長い小説だったので、下記の感想もかなり細かい内容に触れます。ネタバレになるかもしれません)。 国産SUV「ブレイクショット」。 最初のうちは、この車の所有者が立て続けに不幸に見舞われる傾向があったため、「不幸を呼ぶ指輪」みたいな話がメインなのかと思っていましたが、違いました。 登場人物は多いですが、やはり中心は、サッカーのユースチームで親交を深めた晴斗と修悟。 どちらも「ブレイクショット」の所有者だった父を持ち、その後、家庭内の不幸に振り回された2人は、若くして目の前で大きな夢を打ち砕かれます。 年代を問わず分かり切った辛辣な事実―——人生の夢を叶えるには、やはりお金が必要。 特に、晴斗の経時的変化は見ものです。 本のタイトルからもSUVが軸なんだとは思いますが、全般的にTOBや不動産売買、資産形成セミナー等お金が絡む話が多いため、「ブレイクショット」自体の影は薄く、どちらかというと「お金をめぐる人間関係の悲劇」が目立ったように思います。 途中からは、コロナ禍もまた障壁となります。時代ですね。 しっかし出るわ出るわ、心理的に巧妙に仕組まれた投資のワナ、マルチの勧誘、保険金を狙った自作自演の窃盗詐欺、そして裏で操る反社の存在。 ある意味、一見詐欺とは見抜けない悪質商法の複雑なスキームを知るには適した小説かも。 反社がVTuberやアバター、AIを利用している構図も、また時代なのでしょうね。 「ブレイクショット」がビリヤードの言葉でもあることを知ったのは、本書の後半にて。 しかも終盤でよい締めくくりとしても出現。上手いなぁと思いました。 そしてアッコこと、門崎亜子のキャラが好きでした。 長いエピローグで明かされた彼女の正体!最後のビックリ!でした。 | ||||
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