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ブレイクショットの軌跡
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ブレイクショットの軌跡の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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(ネタバレあり) 「正直な生き方」その難しさを描いた短編集で構成されている。 昴ー自然体の正直者、天然系。 宮苑ー真の成功者メンタル 心の中と外に嘘がない。 修吾の父ー宮苑の影響を受けるが、それは本当の望みか? 晴斗ー大切な人のため嘘をまとって頑張る、それは間違いか? 志気ー自分の本当の姿に気づく Aは、かつての出来事から「正直に生きよう」としている。誰かの言葉に従うのではなく、自分自身の言葉で生きようと。それは修吾の父と同じように、背伸びをしてでも「正直さ」にこだわる姿勢だった。だから自然体で正直な昴に惹かれた。AはSNSを「誰かの言葉」が洪水のように流れてくる場だと嫌悪しており「ツイッターにいる人みたいだね」と、昴に悲しげな眼差しを向けたこともあった。ある日、とあるラッパーが「愛を知らないヤツに生きる資格はねぇ!」と発言。これに対してAは「世の中には愛を知らない人もいる。あなたの言葉は差別だ」と糾弾し、そのラッパーを活動自粛に追い込む。 だがラッパーは「言葉のバトル」のパフォーマーだ。彼に「人を傷つけるな」と言うのは、まるで格闘家に「暴力をふるうな」と言うようなもの。それはAが忌避してる「ツイッターにいる人みたいだね」そのもので滑稽ですらある。しかしAは、自分が“世直し”を果たしたと悦に入り、多様性が旗にかかげる虹色の歌、カラフルなビリヤード玉にブレイクショットでハッピーエンドになる。そのクドさには、むしろ意図的な皮肉すら感じる。 昨今では、多様性という言葉の欺瞞があちこちで指摘され、本場アメリカでも世論の分断を招いている。劇中には「巧みな言葉」でSNSの空気を操り、自己利益を最大化するヤマ師が登場する。「みんなが儲かる!」という言葉には疑いの目を向けるのに「誰も傷つかない世界」「誰もが正直に生きられる社会」といった美辞麗句には、なぜか多くの人が無防備に信じてしまう。昔からイデオロギーによって人々の怒りを煽り、自己の利益を拡大してきたのが政治家や、その周囲に群がるこの手のヤマ師だ。「耳障りのいい言葉」が急に社会を席巻しはじめたら、その裏には扇動して利益を得たい誰かが必ずいる。今のSNSも、まさにその「イデオロギー闘争の戦場」となっている。怒れ!怒れ!断罪しろ!もっと票を、バズを、金を!邪魔なアイツを社会から排除しろ!言葉の奔流が渦巻く。Aは「自分の言葉で生きたい」と願っているはずなのに、自分の怒りでさえ「ムカついた」ではなく「私達を”アッチ側”に分類したからであり差別で悪いことだから」と言い換えてラッパーを「優しくない人達」に分類する。それらはもうイデオロギー闘争の“分断の言葉”になっている。そこに「正直な言葉」はどこにもない。。イデオロギーの話を何も知らない昴に驚いて「色々と言葉を教えてあげよう」とAは言うが、それが誰のためになるかは謎だ。 「さあ怒れ!」という扇動が渦巻く社会でアンガー中毒者が増えて、SNSでの公開処刑が現代の娯楽と化している。 中世の処刑が庶民の娯楽であったように。怒りは快楽の面を持つため人は簡単に飲みこまれる。 劇中には善良な人物、友彦が出てくる。彼は怒りを戒める言葉をモットーに、善良であろうといきてきた。それはある意味で、理性という嘘でもある。だが前頭葉を損傷し、理性で自分を抑えられない正直100%になった彼は、家族を傷つけ死を望むほどに自責の念にさいなまれる。しかし彼は、それをも克服し「自戒」を取り戻す。その崇高な姿勢は現代社会への助言にも見てとれる。理性という嘘、自戒。怒りを抑える嘘。 善良とは正直と嘘のバランスの上に成り立つ。 | ||||
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