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ブレイクショットの軌跡



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【この小説が収録されている参考書籍】
ブレイクショットの軌跡

ブレイクショットの軌跡の評価: 4.15/5点 レビュー 33件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.15pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全7件 1~7 1/1ページ
No.7:
(3pt)

ミステリ小説と思って読まないこと

前作、前々作に引き続き大きな期待を寄せていたが、正直なところ期待外れだった。
冗長な部分も多く、話の展開がもたついてじれったく感じた。これなら350ページくらいに凝縮した方が読みやすかったのではないかな。
あと、また今回も同性愛が出てきて、しかも結構ストーリーの幹にある部分だったので辟易した。毎回同性愛ってなんなん、、

ただ、著者が伝えたいことはよく理解できた。御本人もSNS絡みで相当苦労されたのだろう。けど、SNSが悪いわけではなく、やっぱり悪いのは人間。文春砲なんかもどうかと思うし、世の中に金がある限り稼ごうと悪だくみする人間が絶えることはない。

今作はミステリ小説と思って読まないこと。ラストはきれいすぎるくらいにまとめていただいて、やや胸焼け気味に。
ブレイクショットの軌跡Amazon書評・レビュー:ブレイクショットの軌跡より
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No.6:
(3pt)

複雑な要素を詰め込み過ぎて解読に苦労

時間軸を移ろい複雑に捻れながら連鎖していく複数の物語の進行の中に、様々な登場人物が人間離れした澱みなさで語るロジカルな蘊蓄談風の台詞が次々と詰め込まれ、読み切るのにすごく疲れる。一編の長編小説として構築するための不自然な設定や辻褄合わせが随所に溢れており、贅肉の目立つ無駄に長い作品であった。
ブレイクショットの軌跡Amazon書評・レビュー:ブレイクショットの軌跡より
4152104112
No.5:
(3pt)

力作、だが私には合わなかった

後半の詐欺師との対決は面白かったし、「ああ本当にそうだよねー」と心から同意できる台詞もいっぱいあった。「偶然」の多さにも目を瞑ろう。だけどこの凝まくったストーリーを成立させるために、登場人物の行動に少しずつ無理が強いられているというか…「団地育ちの神童」という、それだけで心惹かれるキャラクターの将来の夢が恋人のマネージャーというのには正直ドン引きしてしまったし、その彼が自分の人生を更に犠牲にしてヤングケアラーとなり、恋人の教育費まで貢ぐことを、「善」であるはずの母親と恋人が、葛藤はあれど結局受け入れてしまうというのがどうにも気持ち悪くて、物語に上手く入って行けなかった。真摯に描かれた力作だとは思うけど、私には合わなかった。
ブレイクショットの軌跡Amazon書評・レビュー:ブレイクショットの軌跡より
4152104112
No.4:
(3pt)

生きていく上で重要なのは、善良さ。

実に長い長い本だった。とにかく、現在の課題を盛り込みすぎで、消化不良だ。もっとシンプルにしたほうが、深く掘り起こすことができると思うし、むやみに長くして、無理やり回収して、ハッピイエンドにしたがるのは、ジグゾーパズルのような小説的技巧だね。そして、『善良さ』が基調となっている。

 「ブレイクショット」というSUV車を巡る、八つの物語からなる関わった人たちの人生である。ビリヤードのナインボールの第一ショットである「ブレイクショット」のように、最初の衝撃からさまざまな所に弾け飛んでいく様子を表現し、その車「ブレイクショット」に関わる人々が次々と新たな人生の軌跡を描いていく様子を描写している。

 物語の始まりは、自動車工場の期間工である主人公本田昴が、2年11ヶ月の契約期間の最終日に同僚が車内にボルトを落とす場面を目撃するところである。この小さな出来事がやがて、車の所有者を次々と変えながら、投資会社の副社長、職人肌の善良な板金工、悪徳不動産会社の社用車、さらには遠く離れた中央アフリカの少年兵の運転する車となり、連鎖的に物語が展開していく。

 自動車工場において期間工として働く本田昴は、まもなく契約期間2年11ヶ月を満了しようとしている。契約が3年以上になると正職員として採用しないといけないのだ。彼はささやかではあるが、SNSでの発信を生きがいとしている。その最終日、本田昴は同僚がSUVのブレイクショットの車体にボルトを落とすというミスを目撃した。この場面において、見て見ぬふりをすれば無事に契約を満了できる可能性もあったが、彼は不正を見過ごすことができないという強い倫理観に揺れ動く。彼は最終的に、自分の正義感を貫き、不正を告発することを選択した。彼の小さな勇気は、物語全体に希望をもたらす要素へと繋がっていくのである。おかしいことをおかしいということだ。

 霧山冬至と宮苑秀直のヘッジファンドのベンチャー企業とその不祥事に対する宮苑の鮮やかな退任の決断はステキだ。資金を運用するとは、信用でしか成り立たない。 

 霧山修吾と後藤晴斗は、プロサッカー選手を志すユースチームの少年であり、それぞれが夢に向かって努力を重ねている。修吾の父親は投資会社の副社長霧山冬至を務めていた。そのため最上階のタワマンに住んでいた。その父が会社のインサイダー取引事件に巻き込まれるなどの困難に直面し、経済的にも夢を諦めかけるほど追い詰められる。父親は、プロのサッカー選手になるにはリスクが多すぎるので、とにかくサッカーよりも勉強し、いい大学に行けという。一方、晴斗は、修吾のサッカー能力の高さを認めている。晴斗の父後藤友彦は板金工として誠実に働いている。車修理の偽装修理の問題に直面し、社会の闇や理不尽な構造に巻き込まれることとなる。しかし、友彦の誇りは善良さだった。晴斗は秀悟を精神的にも、経済的にも支える。
 友彦がブレイクショットを購入し、事故が起こる。そして友彦は人格が変わってしまう。
 そんな中でも彼らは、互いに支え合いながら困難を乗り越えようと努力する。「ルールを守って生きる」という共通の価値観を見出し、新たな歩みを始めるのであった。

 後藤晴斗は、1億経済塾の主催者志気にスカウトされ、講師となる。そして、志気は、ヤクザとつるんで、オレオレ詐欺のシステムを構築し、一方で、クリーンと見せるための1億経済塾をyoutubeで行い、フォロワーが50万人を超えていた。それが個人情報を集める仕組みであり、ロンダリング役として後藤晴斗と門崎亜子とくんで、リアルの講座を開いていた。そして、二人は志気の背景はあまり知らなかったが、気がつくことになる。

 ブレイクショットは、窃盗集団に狙われ、そして中央アフリカの戦場で活躍していた。日本車は、中古で、世界を駆け巡る。 

 その一台のSUV車が引き起こす複雑かつ多層的な人生の絡まりを通じて、社会のさまざまな側面や人間の運命が巧みに描かれている。それぞれの人物が抱える葛藤や選択を通じて、人間の複雑さや多様性を浮き彫りにしている。

 希望と絶望の連鎖。登場人物たちは、格差や社会の闇に直面し、絶望に打ちひしがれることもある。しかしながら、誰かの絶望が別の誰かの絶望とつながるように、誰かの希望もまた他者と連鎖し、物語のなかで、希望の光をつかむ。勧善懲悪という物語のパターンがあり、社会を無批判に受容している。

 SNSでの誹謗中傷、フェイクをそのまま信じてしまう傾向、オレオレ特殊詐欺、貧困、国際紛争など、現代社会が抱えるさまざまな問題がリアルに描かれている。「底が抜けた社会の地獄で、あなたの夢は何ですか?」という問いは、作中の人物に問いかけられる。
 そして物語では理不尽で不条理な運命に翻弄される世界の中で、登場人物たちが最終的に「善良であること」に価値を見出す様子が描かれている。そのことで、みんなが支え合うこととなる。本作は人間の多面性や社会の現実を鋭く描きつつ、人間性の本質とは何か?を投げかける。
ブレイクショットの軌跡Amazon書評・レビュー:ブレイクショットの軌跡より
4152104112
No.3:
(3pt)

上手の手から水が漏れた作品

途中までは傑作
伏線を張りまくり見事に回収してます
しかし、それがダラダラ続くので切れ味が悪く
後味が悪く、化学調味料を使い過ぎた料理みたいになったのが残念です
ブレイクショットの軌跡Amazon書評・レビュー:ブレイクショットの軌跡より
4152104112
No.2:
(3pt)

祝・直木賞ノミネート

ブレイクショットという架空のSUV車が繋ぐ現代社会の矛盾が徐々に明らかになってきます。親の経済事情がそのまま子どもたちの教育を受ける権利を阻害したり、期間工と社員との間に広がる大きな格差、性的なマイノリティへの偏見、騙される側(カモ)の取り合い、騙す側も反社に絡み取られてさらなる搾取をされてしまうし、ブラック会社から抜け出せない恐怖、匿名やなりすましでの無責任なSNSでの恣意的な煽り、さらに発展途上国ではいまだに内戦状態が続くなどどうすればいいのか、解答なき闇を疾走する車がひとのこころに光を照らしていくことになります。

「人生のある局面で、人は運転席に座る側になる」「自分の人生から阻害されれば、労働は生きるための苦行だ」「怒りをおそくする者は勇士にまさり、自分の心を治める者は城を攻める者にまさる」など金言もふんだんに盛り込まれています。

ひとつだけ違和感があった描写は「コンプライアンス部門の社員が社内規定に基づく持ち物検査をおこなった」ということですが警察ではないので応じる義務は無いと思いますし、そもそのこの社内規定が違法だと思いました。
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4152104112
No.1:
(3pt)

正直に生きる難しさ、SNSの風刺、多様性への皮肉

(ネタバレあり)

「正直な生き方」その難しさを描いた短編集で構成されている。
昴ー自然体の正直者、天然系。
宮苑ー真の成功者メンタル 心の中と外に嘘がない。
修吾の父ー宮苑の影響を受けるが、それは本当の望みか?
晴斗ー大切な人のため嘘をまとって頑張る、それは間違いか?
志気ー自分の本当の姿に気づく

Aは、かつての出来事から「正直に生きよう」としている。誰かの言葉に従うのではなく、自分自身の言葉で生きようと。それは修吾の父と同じように、背伸びをしてでも「正直さ」にこだわる姿勢だった。だから自然体で正直な昴に惹かれた。AはSNSを「誰かの言葉」が洪水のように流れてくる場だと嫌悪しており「ツイッターにいる人みたいだね」と、昴に悲しげな眼差しを向けたこともあった。ある日、とあるラッパーが「愛を知らないヤツに生きる資格はねぇ!」と発言。これに対してAは「世の中には愛を知らない人もいる。あなたの言葉は差別だ」と糾弾し、そのラッパーを活動自粛に追い込む。
だがラッパーは「言葉のバトル」のパフォーマーだ。彼に「人を傷つけるな」と言うのは、まるで格闘家に「暴力をふるうな」と言うようなもの。それはAが忌避してる「ツイッターにいる人みたいだね」そのもので滑稽ですらある。しかしAは、自分が“世直し”を果たしたと悦に入り、多様性が旗にかかげる虹色の歌、カラフルなビリヤード玉にブレイクショットでハッピーエンドになる。そのクドさには、むしろ意図的な皮肉すら感じる。
昨今では、多様性という言葉の欺瞞があちこちで指摘され、本場アメリカでも世論の分断を招いている。劇中には「巧みな言葉」でSNSの空気を操り、自己利益を最大化するヤマ師が登場する。「みんなが儲かる!」という言葉には疑いの目を向けるのに「誰も傷つかない世界」「誰もが正直に生きられる社会」といった美辞麗句には、なぜか多くの人が無防備に信じてしまう。昔からイデオロギーによって人々の怒りを煽り、自己の利益を拡大してきたのが政治家や、その周囲に群がるこの手のヤマ師だ。「耳障りのいい言葉」が急に社会を席巻しはじめたら、その裏には扇動して利益を得たい誰かが必ずいる。今のSNSも、まさにその「イデオロギー闘争の戦場」となっている。怒れ!怒れ!断罪しろ!もっと票を、バズを、金を!邪魔なアイツを社会から排除しろ!言葉の奔流が渦巻く。Aは「自分の言葉で生きたい」と願っているはずなのに、自分の怒りでさえ「ムカついた」ではなく「私達を”アッチ側”に分類したからであり差別で悪いことだから」と言い換えてラッパーを「優しくない人達」に分類する。それらはもうイデオロギー闘争の“分断の言葉”になっている。そこに「正直な言葉」はどこにもない。。イデオロギーの話を何も知らない昴に驚いて「色々と言葉を教えてあげよう」とAは言うが、それが誰のためになるかは謎だ。

「さあ怒れ!」という扇動が渦巻く社会でアンガー中毒者が増えて、SNSでの公開処刑が現代の娯楽と化している。 中世の処刑が庶民の娯楽であったように。怒りは快楽の面を持つため人は簡単に飲みこまれる。
劇中には善良な人物、友彦が出てくる。彼は怒りを戒める言葉をモットーに、善良であろうといきてきた。それはある意味で、理性という嘘でもある。だが前頭葉を損傷し、理性で自分を抑えられない正直100%になった彼は、家族を傷つけ死を望むほどに自責の念にさいなまれる。しかし彼は、それをも克服し「自戒」を取り戻す。その崇高な姿勢は現代社会への助言にも見てとれる。理性という嘘、自戒。怒りを抑える嘘。 善良とは正直と嘘のバランスの上に成り立つ。
ブレイクショットの軌跡Amazon書評・レビュー:ブレイクショットの軌跡より
4152104112

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