夜と霧の誘拐
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夜と霧の誘拐の総合評価:
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| 【読書のきっかけ】 矢吹駆シリーズは、私にとってお気に入りでしたが、先日、2022年に刊行された前作「煉獄の時」を読んで、深く感銘を受けました。 そこで、シリーズ最新作である本作品を読むこととしました。 【率直な感想】 このシリーズの特色は、本格ミステリの体裁を取りつつ、現象学という哲学的要素を作中に取り入れていることです。 この「哲学」と「本格ミステリ」の融合という点において、本作品は、ひとつの到達点に達した作品として、評価しています。 <意外な真相のインパクト> 本シリーズは、「哲学」を取り入れているとは言え、やはり「本格ミステリ」としての骨格が優れているかどうか、ということは、重要な評価要素になると思います。 本作品では、まず、最初に起きる誘拐事件が黒沢明監督の名作「天国と地獄」でも取り上げられた、誘拐する相手を取り違えてしまうという、特殊な設定となっていることに興味をそそられます。 また、その誘拐事件と並行して殺人事件も発生しており、「誘拐」と「殺人」の二つの犯罪が独立のものではなく、密接に絡みあっているという複雑な様相を呈していることから、私は、物語に強く引き込まれていきました。 そして、最後に明かされる真相は、これがとても意外なもので、「本格ミステリ」の醍醐味は、「意外な真相」にあると考えている私にとって、高評価の作品と言えます。 <現象学による推理の巧みさ> 現象学という哲学的な思考から事件解決への推理を行うというのが、本シリーズの定番ですが、今回は、この推理法でなければ、真相にたどり着けないのではないか、と思わせるほど、見事な推理でした。 普通の探偵役の推理でも意外な真相には違いありませんが、「哲学」の要素を取り入れていることで、真相の意外性が強く読者の心に迫るものになっていたと思います。 <ホロコーストについて> 本シリーズではしばしば、ユダヤ人の大量虐殺という歴史的事件を作中に取り入れています。 本作品の題名の一部である「夜と霧」は、ユダヤ人の強制収容所で体験を綴った、ヴィクトール・フランクルによる世界的な名著「夜と霧」を意識してのものであることは間違いないでしょう。 また、作品の冒頭には、ハンナ・アーレントの著作からの引用文が掲げられていますが、彼女は、ナチズムについての鋭い分析を行った、世界的に著名な思想家です。 また、作中で矢吹駆けと論争を繰り広げる架空の哲学者の名前が、【「ハンナ」・カウフマン】というのも意図的な命名でしょう。 このように「ホロコースト」が物語に関係してくることを示唆しており、実際に本編を読むと、この歴史的事件が巧みに織り交ぜられており、強い印象を残す作品となっています。 【全体評価】 本作品は、「哲学」と「本格ミステリ」が見事に融合した作品であるとともに、「ホロコースト」という歴史的事件を物語の背景に織り込んで、強い社会的メッセージも盛り込んでいることから、シリーズの到達点とも言える傑作であると感じました。 | ||||
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| まだ第二章まで読み進めたばかりだが、すでに助詞などに脱字や段組みの不備などが散見する。推理小説の類ではこのシリーズのみを読み継いでいるが、直近の『煉獄の時』(文藝春秋社)をはじめ、かつて校閲不足を感じたことはなく、講談社ほどの老舗がこの有様とは残念。星の数は、それゆえに二つとしたのであって、小説自体の評価ではない。 矢吹駆シリーズで取り上げられてきた思想家の中でも、本作のハンナ・アーレントは、私の興味をそそらない人物だが、ミルグラム実験、別名アイヒマン実験も、アーレントの著作『イェルサレムのアイヒマン』なくしてはなかったかもしれないとも思う。時代背景を考えれば、本作中にもミルグラム実験の話題が出てきてもおかしくなさそう。 いや、ナチズムとボリシェヴィキ、『全体主義の起源』を考えれば、前作『煉獄の時』の流れを汲むと考えるほうが自然か……。 まだ、1/4ほどしか読んでいないのだし、amazonのレビューで書評めいたことをするのは無粋と考える私としては、これ以上作品内容には触れずにおこう。 ともあれ、第二刷があるなら、あるいは文庫化の際には、著者含め、校正校閲の徹底を期待する。 | ||||
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| 今半分読んだところ。哲学者が出てきて、意表を突かれた。本格ミステリー。すごい。 | ||||
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| 推理小説としての完成度は十分だと思います。ただ長すぎるという感想を持つ人は多いでしょう。 流れる世界観と思想。遥か彼方になった20世紀。タイムスリップをしたような気がしました。その時期に青年期、壮年期を過ごした私からすると相応に浸ることができますが、若い人はどうでしょうか? 当時は東西冷戦中、そして思想によるテロ犯罪も頻発し、今とはかけ離れた時代でした。世界が核戦争で滅びる予感を意識しながら思想も経済も形作られた。ただその思想も今となっては遠い過去のもの。金と市場主義が跋扈する現代で光を失っている。中世の神学のように。 ただユダヤとパレスチナの関係は、現在にいたるまで解決することなく、前者の軍事的圧倒的優位のもとにいったん終結をむかえようとしています。本書にはそれを予感させるものはありませんが、最終的にシリーズをどう締めくくることになるのでしょうか?単にニヒリズムの相対では救いがない。 推理小説に戻ると真相が明らかになった後周りや警察に事件がどう取り扱われることになる、なったかは書かれていません。少し気になります。 | ||||
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| 憎々しい文体に真正面から向き合って進めないと理解が追い付かない文脈は良い。しかし、第二章が邪魔。ここで心折れる読者は飛ばして三章に飛んで良い。が、伏線回収に捉われた作者の視点が見えてしまう構成は文学としては一つ星を落とす。 | ||||
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