夜と霧の誘拐
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初版刊行(参考)
種別
長編
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あらすじ
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評判
夜と霧の誘拐の評価:
0.00/10点 レビュー 0件。 C ランク
夜と霧の誘拐の総合評価:
6.40/10点 レビュー 10件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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矢吹駆シリーズは、私にとってお気に入りでしたが、先日、2022年に刊行された前作「煉獄の時」を読んで、深く感銘を受けました。
そこで、シリーズ最新作である本作品を読むこととしました。
【率直な感想】
このシリーズの特色は、本格ミステリの体裁を取りつつ、現象学という哲学的要素を作中に取り入れていることです。
この「哲学」と「本格ミステリ」の融合という点において、本作品は、ひとつの到達点に達した作品として、評価しています。
<意外な真相のインパクト>
本シリーズは、「哲学」を取り入れているとは言え、やはり「本格ミステリ」としての骨格が優れているかどうか、ということは、重要な評価要素になると思います。
本作品では、まず、最初に起きる誘拐事件が黒沢明監督の名作「天国と地獄」でも取り上げられた、誘拐する相手を取り違えてしまうという、特殊な設定となっていることに興味をそそられます。
また、その誘拐事件と並行して殺人事件も発生しており、「誘拐」と「殺人」の二つの犯罪が独立のものではなく、密接に絡みあっているという複雑な様相を呈していることから、私は、物語に強く引き込まれていきました。
そして、最後に明かされる真相は、これがとても意外なもので、「本格ミステリ」の醍醐味は、「意外な真相」にあると考えている私にとって、高評価の作品と言えます。
<現象学による推理の巧みさ>
現象学という哲学的な思考から事件解決への推理を行うというのが、本シリーズの定番ですが、今回は、この推理法でなければ、真相にたどり着けないのではないか、と思わせるほど、見事な推理でした。
普通の探偵役の推理でも意外な真相には違いありませんが、「哲学」の要素を取り入れていることで、真相の意外性が強く読者の心に迫るものになっていたと思います。
<ホロコーストについて>
本シリーズではしばしば、ユダヤ人の大量虐殺という歴史的事件を作中に取り入れています。
本作品の題名の一部である「夜と霧」は、ユダヤ人の強制収容所で体験を綴った、ヴィクトール・フランクルによる世界的な名著「夜と霧」を意識してのものであることは間違いないでしょう。
また、作品の冒頭には、ハンナ・アーレントの著作からの引用文が掲げられていますが、彼女は、ナチズムについての鋭い分析を行った、世界的に著名な思想家です。
また、作中で矢吹駆けと論争を繰り広げる架空の哲学者の名前が、【「ハンナ」・カウフマン】というのも意図的な命名でしょう。
このように「ホロコースト」が物語に関係してくることを示唆しており、実際に本編を読むと、この歴史的事件が巧みに織り交ぜられており、強い印象を残す作品となっています。
【全体評価】
本作品は、「哲学」と「本格ミステリ」が見事に融合した作品であるとともに、「ホロコースト」という歴史的事件を物語の背景に織り込んで、強い社会的メッセージも盛り込んでいることから、シリーズの到達点とも言える傑作であると感じました。