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夜と霧の誘拐
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夜と霧の誘拐の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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矢吹駆シリーズの前作『煉獄の時』からおよそ2年半。思いの外早く刊行に漕ぎ着けたものだ。とは言え、このところ書店巡りも滞りがちなせいか、迂闊にも1か月近くその事実に気付かなかった。大々的に宣伝されるわけでもなく、最早笠井潔の作品はコアなファンにしか届かない存在になってしまったのではないかと感じる。 本作は文芸誌『メフィスト』の2010年 vol.1〜vol.3に掲載されたものである。当時vol.3を買い漏らしてしまい、長らく結末が分からないまま過ごしていたので、漸く最後まで読み切れて嬉しい限り。 ストーリー自体は、同日に起こった誘拐事件と殺人事件が実は一連のもので…という流れなのだが、正直ミステリとしては「う〜ん」。意外な真犯人によるパズルのようなトリックを読まされると、それで説明は付いたとして、そもそも「そんなこと、素人が考え付くものか?」と思う。でも、問題ないのだ。「実は事件の裏には矢吹駆の宿敵たるニコライ・イリイチがいて、彼が全ての筋書きを描いていて…」という展開になるのだから。誠に使い勝手の良いジョーカーである。「それで、彼にどんなメリットがあるの?」と考えなければね。これでは、国際的テロリストでなく、始末に負えないただのサイコパスではないか。 結局、本作で笠井潔が書きたかったのは、終章「森屋敷の少女」における矢吹駆とハンナ・カウフマン(=ハンナ・アーレント)の対話に尽きるのだろう。ナチスによるホロコーストを絶対悪と規定することの政治的含意や、日本が「唯一の被爆国」と殊更揚言することの精神的欺瞞性。私は、極左闘争に出自を持つ笠井潔の思想にシンパシーを覚える者では全くないが、言いたいことは分かる。小説に仮託した形でなければ、寄ってたかって袋叩きになりかねない意見かも知れない。本作の価値は終章に凝縮されているとさえ思う。 | ||||
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