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おじさんのトランク 幻燈小劇場



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【この小説が収録されている参考書籍】
おじさんのトランク 幻燈小劇場 (光文社文庫)

おじさんのトランク 幻燈小劇場の評価: 3.50/5点 レビュー 4件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.50pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

レトロな幻想活劇譚

数か月前に「奇譚を売る店」を読んでいたのですが同じシリーズだとは気がつきませんでした。まだこの作家さんの本格推理ものは読んだことがなく、横溝正史の金田一耕助や乱歩の明智小五郎関係も書いていらっしゃるところを見ると、むしろ怪奇幻想味の強い作品が本領という気がします。

結論から言うと、「奇譚を売る店」はとても気に入ったのですが、こちらはちょっといまいちでした。不思議な雰囲気が魅力のとても凝ったお話なんですが、凝りすぎてその構成にやや無理があるように思いました。
主人公は正確な年齢は書いてありませんが50歳前後か?すでに盛りを過ぎて情熱を失いつつある俳優です。そんな彼にプロデューサーから「次の公演をすべてまかせたい」という夢のような話が降ってきます。謎めいた存在である主人公のおじさんをテーマにしたらどうか?というのです。
そこからおじさんの探索が始まるのですが、彼のものらしい古いトランクが偶然手に入ります。
そこに入っていた好奇心をそそられる風変りなものからわかってきたのは、2次大戦中、日本に潜伏していた反ナチのフランス人レジスタンスを助けたらしいおじさん、旧オランダ領東インドで、博物学者の侯爵様と共に幻の蝶を採取しに行ったおじさん、昔走っていた敦賀ーシベリアーヨーロッパを結ぶ欧亜連絡国際列車で、追われていたドイツ婦人を救ったおじさん・・と、まるでひと昔前のヨーロッパ活劇映画のヒーローのような活躍ぶり。いったい彼は何者だったのか?

おじさんの謎、主人公の出生、そしてまかされた1人芝居の公演、それらの結びつけ方がちょっと強引な感じで、それだけが残念でした。
ジャンルは違いますが、サマセット・モームの「アシェンデン」とか井上雅彦の「遠い遠い街角」、古いスパイ映画なんかが好きな人はこの雰囲気は気に入ると思います。
挿絵の怪しい雰囲気がこの小説にぴったりですね。私はたまたま単行本で買ったのですが、持っていること自体が楽しい凝った装丁の本でした。
おじさんのトランク 幻燈小劇場 (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:おじさんのトランク 幻燈小劇場 (光文社文庫)より
4334793967
No.1:
(3pt)

とにかく初心者向けの入門書……それもプライドなんて投げ捨てて、子供向けの本から読むんだ

『奇蹟を売る店』『楽譜と旅する男』と繋がりはないものの、同趣向の装丁+奇譚路線の連作物。
子供の頃に憧れた「おじさん」の遺品が思いがけず手に入り、老俳優が遺品の出自を辿るうち、戦前戦中のミステリアスなエピソードが明らかになる……という構成。ホテルで消失事件に関与したり、幻の蝶を探しにジャングルへ乗り込んだり、「おじさん」はまんま冒険小説の主人公。
各エピソードは30ページ少々のボリュームでして、幻想小説風の味つけだったり、あまりに都合がよく情報に行き当たったりで、推理の要素はいたって薄味であります。主人公が真相を推理するというよりも、調べていくうちに関係者がほとんど真相に近い情報を教えてくれるといったパターン。終盤になって主人公の出生の疑惑が持ち上がり、「おじさん」の真実が明かされるものの、ひねりはあっても物語全体をひっくり返す大仕掛けとまではいかず、奇譚は奇譚のままであってほしかったような。もっとも、それが著者の狙いだったのかもしれませんけれども。

物語とは別に本書で一番感銘を受けたのが、友人の放送作家が語る「付け焼刃のにわか勉強」の秘訣。
「とにかく初心者向けの入門書……それもプライドなんて投げ捨てて、子供向けの本から読むんだ。ほら、図鑑とか読み物とか、いろいろあるだろう。学習漫画とかも、絵の一コマ一コマに考証が行き届いていて侮れないぞ」
ああ、基礎を押さえておかないで壮大な論に走るから、大衆はトンデモ歴史や陰謀論にひっかかっちゃうのね。納得。
おじさんのトランク 幻燈小劇場 (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:おじさんのトランク 幻燈小劇場 (光文社文庫)より
4334793967

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