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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.20pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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翻訳によりフィリップ・マーロウが台無しだ。 | ||||
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相変わらずのチャンドラー節で、読んでいて楽しいが、ミステリーとしては最低。 すべての謎が最後の数ページで明かされるが、おいおいそんな伏線どこにあったの。なんでヘリコプターが出てくるんだと思えるほど、後出し。これはないわ。最後まで何が起こっているのかわからず、分かった時には終わりで、えっ!と言う感じ。おそらく遺作と言うから締め切りなのか体力なのか、最後で、いきなり丸めちゃった感たっぷり。 | ||||
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まずはゆーめーなセリフですが 浴室から出てきたベティーは開いたばかりの薔薇の花のように見えた。化粧は完璧で、瞳は輝いており、髪はあるべき位置にぴたりと収まっていた。 「ホテルに連れて帰ってくれる?クラークに話があるの」 「彼に恋しているのか?」 「私はあなたに恋していたつもりだったんだけど」 「そいつは夜の求めの声だったのさ」と私は言った。「ただそれだけのことにしておこうじゃないか。キッチンにはもっとコーヒーがあるよ」 「いいえ、もうけっこうよ。朝食まではね。あなたはこれまでに恋したことってある?私の言うのは、その人と毎日、毎月、毎年ずっと一緒にいたいと思うくらいってことだけど」 「さあ、もう行こう」 「これほど厳しい心を持った人が、どうしてこれほど優しくなれるのかしら?」彼女は感心したように尋ねた。 「厳しい心を持たずに生きのびてはいけない。優しくなれないようなら、生きるに値しない」(3073/3510) When Betty came out of the bathroom she looked like a fresh-opened rose, her make-up perfect, her eyes shining, every hair exactly in place. "Will you take me back to the hotel? I want to speak to Clark." "You in love with him?" "I thought I was in love with you." "It was a cry in the night," I said. "Let's not try to make it more than it was. There's more coffee out in the kitchen." "No, thanks. Not until breakfast. Haven't you ever been in love? I mean enough to want to be with a woman every day, every month, every year?" "Let's go." "How can such a hard man be so gentle?" she asked wonderingly. "If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive." 他の訳は しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない。(清水俊二訳) 男はタフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない。(生島治郎訳) です。 hardとgentleはことば遊びになっています。hardは「厳しい」だけでなく、風呂上りの美女を見て「勃〇している」という意味です。 gentle - Wiktionary en.wiktionary.org gentle (comparative gentler or more gentle, superlative gentlest or most gentle) 1. Tender and amiable; of a considerate or kindly disposition. Stuart is a gentle man; he would never hurt you. 2. Soft and mild rather than hard or severe. quotations ▼ I felt something touch my shoulder; it was gentle and a little slimy. 3. Docile and easily managed. We had a gentle swim in the lake. a gentle horse 4. Gradual rather than steep or sudden. The walks in this area have a gentle incline. 5. Polite and respectful rather than rude. He gave me a gentle reminder that we had to hurry up. 6. (archaic) Well-born; of a good family or respectable birth, though not noble. gentleにはたくさんの意味があります。この小説では「優しいtender」以外に、hardとの対比でsoft、美女に従順でdocile、すぐ手を出さないからgradual、礼儀正しくpolite、誇り高いからwell-bornと、すべての意味が重ねられており、フィリップ・マーロウの人となりを一単語であらわしています。この多義性が文学の本質なのです。訳すときに一度でも辞書を引けば、気づくと思うんですがね。 矢作俊彦氏は 「タフでなければ生きてはいけない。やさしくなければその資格もない」 私は前回、そう書いた。これは誤訳である。あえて誤訳を書いた。何故なら、今、日本でハードボイルドというとき、それは全く誤訳のコンセンサスを避けて語ることができないからだ。「タフ」も「やさしさ」も月賦屋や工員相手の自動車ディーラーのコマーシャル・コピーに堕している。自分を最も気に入ろうとし、つまり、自分が自分であることを何より誇りとしたハードボイルドのディックたちが「資格」なんておごそかな言葉は舌をかんでも使うまい。資格なんかなくても生きていける。 「ハードでなければ生きてはいけない。ジェントルでなければ生きて行く気になれない」 これが正解なのだ。(『複雑な彼女と単純な場所』、p.138) と書きました。ディックには「探偵」以外に「お〇ん〇ん」という意味があります。hardとgentleは本質的に翻訳不可能なのです。 If I wasn't hard, I wouldn't be alive. は、「湯上りの美女を見て勃〇しないなら、男として生きているとはいえない」という意味なので、矢作氏もちょっと違います。また If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive. このeverをみんなスルーしています。たしかに難しいのですが、「生まれてこのかた、これほどまでに」という意味です。 この部分の、日本語はともかく意味的にもっとも正しい訳は ハードでないとしたら、生きているとはいえない。これほどジェントルになれないとしたら、生きていてよかったとは思えない。 です。マーロウは「いい女と出会えない人生はつまらん、お前は最高の女だ」と言っています。 "How can such a hard man be so gentle?" she asked wonderingly. ハード&ボイルドな男がいい女の前でgentleになるのは本能なのです。マーロウが感じているのは「生きてるってカンジ」なのです。これも文学の本質なのです。 この場面は冒頭のミス・ヴァーミリアとの会話の再演(プレイバック)になっています。 「あなたに関してひとつ気に入ったところがある。あなたはみだりに人に触ったりしない。そして礼儀正しくもある――ある意味ではね」 「愚かなやり方だ。触るなんてね」 「そしてあなたに関してひとつ好きになれないところがある。なんだかあててごらんなさい」 「すまないが、わからないな。世間には私が生きているというだけで、頭に来る連中もいるみたいだけれど」 「そういうことじゃなく」(80/3510) "There's one thing I like about you. You don't paw. And you have nice manners-in a way." "It's a rotten technique-to paw." "And there's one thing I don't like about you. Guess what it is." "Sorry. No idea-except that some people hate me for being alive." "I didn't mean that." ミス・ヴァーミリアが言うには There's one thing I like about you. / You don't paw. And there's one thing I don't like about you. / Guess what it is. ですが、上のone thingと下のone thingはおなじものを指します。マーロウがpawしないのが彼女が気に入ったところであり、不満でもあるのです。 Definition of PAW www.merriam-webster.com 2: to feel or touch clumsily, rudely, or sexually ミス・ヴァーミリアは出会ってすぐ、マリリン・モンローのパクリでマーロウを挑発しています。 「クリスチャン・ディオール」と彼女は言った。私の心を読むのはさぞや簡単だったに違いない。「それしか身につけないの。火をお願いできる?」(39/3510) "Christian Dior," she said, reading my rather open mind. "I never wear anything else. A light, please." a lightは煙草の火ですが、いわゆる、キラッ☆となるやつのことでもあります。 ミス・ヴァーミリアは最高級のキャディラックに乗っています。 私は彼女のあとから階段を降り、車のドアを開けてやった。安物の車だった。ただのキャディラック・フリートウッドだ。(81/3510) I followed her down the steps and opened her car door for her. It was a cheap job, a Fleetwood Cadillac. cheap jobは(この小説によく出てくる)反語ではなく、ミス・ヴァーミリアのためにドアを開けることです。cheap jobはあとでまた出てきます。 私は頭の中で、ミス・ヴァーミリアを彼女の隣に置いてみた。彼女は決してやわで気取った澄まし屋には見えなかったが、その隣にあっては、かのヴァーミリア嬢はただのお手軽な街の娘だった。(106/3510) Mentally I put Miss Vermilyea beside her. She didn't look soft or prissy or prudish, but she made the Vermilyea look like a pick-up. 定冠詞のついたthe Vermilyeaは最高級のキャディラック・フリートウッドのことですが、これがピックアップトラックにしか見えないということです。ピックアップトラックの荷台には天井がなく、荷物を簡単に載せることができます。つまりミス・ヴァーミリアはだれでも乗せる、だれとでもヤるという意味です。マーロウがpick upすることと、ミス・ヴァーミリアがpick upすることが多義的ですが、後者がよりおもしろいという意味で正しいです。 フリートウッドとピックアップトラックの画像をネットで調べると、たしかに似ていると思えるでしょう。 原文にはこの手のエッチなダジャレが頻出しますが、もう一か所だけ挙げると 私は夕刊の早刷りを持ち、その背後に顔を隠して彼女を観察し、彼女についての知識を増やしていった。確かな事実と呼べるほどのものは得られなかったが、それでも暇は潰せる。(156/3510) I had an early morning edition of the evening paper and behind it I watched her and added up what I had in my head. None of it was solid fact. It just helped to pass the time. マーロウは美女を盗み見ながらエッチな妄想をしました。お〇ん〇んがsolidになりましたが、妄想なのでfactではありません。とてもいい時間を過ごすことができました。 あと、プレイバックには「バックでヤる」という意味もあります。 | ||||
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原尞の小説を読み尽くしてしまったので、原尞が影響を受けたというレイモンド・チャンドラーに手を出したという次第だ。はっきり言って、期待外れもいいところだ。物語の作りもつまらないし、惹きつけられる場面もない。拍子抜けの事件だしね。村上春樹の翻訳もなんだか統一感のない分かりにくいこなれていないものだ。「彼女をピックアップして」だって?ちゃんと日本語にしろよな。「タフ」というカタカナも頻発していて、鬱陶しい。あの有名なセリフ「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」も、確かに小説の中では浮いているなあ。出てくるさまざまな人物模様は楽しめるところがあった。原尞の小説のほうがはっきり、きっぱりと言うが、面白い。 | ||||
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「大いなる眠り」は村上春樹氏の翻訳版しか購入できず、こちらでは村上春樹氏の翻訳ではない旧翻訳の本を入手できて読みましたが、比較するとかなり滑らかで雰囲気が出ていてやはりこちらの方がいいなと思いました。 登場時の人物像と話が進んで行くについて変わっていく重要人物と、最初から変わらない本筋に関係のない人物の対比が面白いなと思いました。 ただ、「大いなる眠り」の後で読むとマーロウが別人物かと思えるほど女性にだらしなく、依頼人も抱くというところにブレを感じました。 昔自己啓発書で読んで気になっていた「男は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」が少し異なる翻訳で「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」と出てきますが、出てくる文脈が、依頼人の女性と一夜を共にした後で女性から皮肉気に「なぜそんなにしっかりしているのにやさしくなれるの?」と聞かれた時の返答という想定外にナンパな下りで驚きました。先にこの本を読んでいたら特に頭に残らない言葉だったかもしれません。 | ||||
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「強くないと、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない。」(但し、本編では「しっかりしていないと…」になっている)誰もが知っているハードボイルドの定番のような台詞。この小節の一節である。これまでのフィリップ・マーロウを主人公にした小説の中で最も短編で、艶っぽく、粋な台詞の多い作品です。反面、タフさや男臭さを感じる場面も少なくないので、名作「長いお別れ」の次に書かれ、またチャンドラーの遺作でもあることを考えると読み終わった後、何か不思議な感じのする作品です。 | ||||
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