(短編集)

雨の殺人者: チャンドラー短編全集4



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初公開日(参考)1970年09月
分類

短編集

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雨の殺人者  チャンドラー短編全集 (4)   創元推理文庫 (131‐6)

1970年09月01日 雨の殺人者 チャンドラー短編全集 (4) 創元推理文庫 (131‐6)

ハメットのあとを継いで正統派ハードボイルドを確立したレイモンド・チャンドラーの傑作中短編集。本巻にはマーロウものを含めた、雨の殺人者、女で試せ、カーテン、青銅の扉、ヌーン街で拾ったもの、の五編を収録。巻末に付した訳者による「マーロウ誕生の前夜」は、マーロウ誕生の背景を克明に探ったチャンドラー・ファン必読の評伝。 ●収録作品 「雨の殺人者」 「女で試せ」 「カーテン」 「青銅の扉」 「ヌーン街で拾ったもの」(「BOOK」データベースより)




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雨の殺人者: チャンドラー短編全集4の総合評価:8.33/10点レビュー 3件。Cランク


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(7pt)

有名長編の原型収録

東京創元社によるオリジナル短編集第4集。
収録作は表題作、「カーテン」、「ヌーン街で拾ったもの」、「青銅の扉」、「女で試せ」の短編5編。

表題作の主人公には名がないが、マーロウだというのが定説になっている。これは『大いなる眠り』の原形とされる作品。
「カーテン」は探偵カーマディが、逃亡幇助を頼まれた友人のラリーが結局自分一人で逃げた矢先に殺されてしまった事から、ラリーの関わった友人の捜索に乗り出す。
金持ちの依頼人と蘭の温室で対面するシーンは確かに『大いなる眠り』にも見られたシーン。

「ヌーン街で拾ったもの」はヌーン街で見かけた金髪の女性の代わりに、一台の高級車から落とされた荷物を拾ったことからハリウッドスターとマフィアとのある企みに巻き込まれる話。

「青銅の扉」は夫婦仲の悪いうだつの上がらない亭主が散歩中、出くわした馬車に連れられ、ある骨董商の競売に参加し、そこで青銅の扉を手に入れるところから物語は始まる。この重厚な扉は実は時空の狭間とも云うべき無の空間に繋がる扉で、主人公がこの扉で気に食わない人間を次々に消してしまうという話だ。

「女を試せ」では再びカーマディが登場。ギリシア人の床屋の主人の捜索でセントラル・アベニューを訪れたカーマディが、たまたま出くわした大男スティーブ・スカラに否応無く彼のかつて愛した女ビューラの捜索に巻き込まれる話。
ここで現れる一人の女を追い掛ける大男は大鹿マロイではなく、スティーブ・スカラ。最後の幕引きも同じようなものだったか?凶暴かつ乱暴で野獣のように思われた大男。自分の目的のためには人を殺す事も躊躇わない大男。だのに女にはこの上ない優しさを見せる。自分を撃った女に対して「放っておいてやれ。やつを愛していたんだろう」と慈悲を与える不思議な魅力を持った男だ。こういう男は多分に母親の愛情に飢えていたのだと思われる。

本作では『大いなる眠り』と『さらば愛しき女よ』というチャンドラーの2大傑作の原型となった作品が読める。長編と読み比べてどう変わったのか確認してみるのもまた面白いだろう。
従ってベストは「女を試せ」。次点は変り種「青銅の扉」か。

この東京創元社が編んだ短編集には抜けている作品もあり、これらを全て補完したのが後年早川書房から出た文庫版短編集である。ただあちらはこちらと区別するためか題名が原題のカタカナ表記であり、なんとも味気ない感じがする。チャンドラーの持つ叙情性は日本語の美しさと通じるものがあると私は思っているのだが、それが見事に損なわれている。
表紙も含め、チャンドラーのイメージに合うのはこちらの短編集なのだがチャンドラーの作品を網羅しようと思うと物足りない。チャンドラリアンにとって日本の出版事情とはなんとも具合の悪いことだろうか。


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No.2:
(5pt)

射たれたら死ぬんだって覚悟なら、いつでもできている。

この短編全集シリーズには各々巻末に訳者あとがきが掲載されているが、本書では特別にあとがきの他に、訳者による「フィリップ・マーロウ誕生の前夜」が寄せられているのだが、これがいかにもこの全集の最終巻に相応しい。

レイモンド・チャンドラーの長編作は、幾つかの中編作を元にしていることが殆どなのであるが、その組み合わせ方を読み解くのもなかなか一興である。
本書に取り上げられている「雨の殺人者」は、チャンドラー初の長編作である「大いなる眠り」で主となる事件のあらましがコンパクトに描かれているし、続く「カーテン」は、おお、後の傑作長編作「長いお別れ」はこれが元になっているのかと読み進めてみれば、それはほんの出だしだけで、直ぐに登場人物達の造形迄を含めて、これまた「大いなる眠り」に活かされて、膨らまされている内容であったことに驚いた。中編作を組み合わせるだけでなく、一作の中編作が二つの長編作へと枝分かれしているというのだから、誠に面白い転用例ではないか。

「ヌーン街で拾ったもの」は、チャンドラーの小説ではしばしば登場するハリウッド映画界を巡る話だが、主人公が潜入捜査専門の刑事というのはちょっと珍しい。俳優、ギャング、荒くれ者、そして或ることに利用されようとしている若い女。最初はごくお手柔らかに運ばれた計略の筋書が、たまたま主人公が居合わせたことからいっぺんに荒っぽくなる。クールでドライな一作である。

「青銅の扉」は、ロンドンを舞台にしているところが珍しいダーク・ファンタジー。
初老の小心者、そんな印象の主人公は、散歩の途中で一昔前の流しの馬車に遭遇する。そんな不思議な体験の後には、骨董屋で更に不可思議な青銅の扉に出逢うのである。彼は一瞬の誘惑の念を胸にその扉を買い求めた。

最後に控えし「女で試せ」は、長編作第二作目「さらば愛しき女よ」の原型だ。あの愛すべき巨漢ムース・マロイは本作ではスティーヴ・スカラと名付けられている。

そして、「フィリップ・マーロウ誕生の前夜」だ。これには、チャンドラーの出生から、両親の離婚によりイギリスへ渡ったこと、イギリス人の或る種の陳腐さに飽いて二十三歳で再びアメリカに戻ってきたこと、第一次大戦でカナダで志願し戦争に赴いたこと、ロスアンジェルスで石油会社で実業に於ける成功をしたことや、石油業界に見切りを付け、齢四十五にして小説家に転身する第一歩を踏み出す迄が書かれている。
それからチャンドラーは、二十二の中短編と七つの長編作を残すことになるのである。

収録作品
「雨の殺人者」
「カーテン」
「ヌーン街で拾ったもの」
「青銅の扉」
「女で試せ」
雨の殺人者  チャンドラー短編全集 (4)   創元推理文庫 (131‐6)Amazon書評・レビュー:雨の殺人者 チャンドラー短編全集 (4) 創元推理文庫 (131‐6)より
4488131069
No.1:
(4pt)

既読の短編もあったが楽しめました。

なぜかチャンドラーの短編を、いままで読んだことがなかったので遅まきながら読むことにした、と『事件屋稼業』のレビューに書いたが、読んだことを忘れていた短編が3編あったので思い違いだったようだ。
 本書最初の短編『雨の殺人者』(1935年)を、読み始めていつごろのことか思い出せないが読んだ記憶が蘇った。
 卑猥な稀覯本を商っているステイナーという男が殺されるストーリーで話の筋を思い出した。
 次の短編『カーテン』(1936年)では、マーロウが、デイド・ウィンズロー将軍を、広い邸に訪れて温室で将軍に会うところでストーリーを思い出した。
 『女で試せ』(1937年)では7フィートの大男が刑務所から出てきてバーで働いていた女を探すのに出会ったマーロウが事件に関わるところで読んだことを思い出しました。
 『ヌーン街で拾ったもの』(1936年)と、『青銅の扉』(1939年)の2編は読んだ記憶がない。
 『ヌーン街で拾ったもの』は、人気下降の映画プロデューサーが人気回復のために仕組んだ誘拐事件。
 『青銅の扉』は、古道具屋で20ポンドで買った青銅の扉に気に入らない奴を通らせると消えてしまうというチャンドラーらしくない奇異なSF小説である。(俺はこんなものも書けるんだぞ、と、ほくそ笑むチャンドラーの顔が目に浮かぶようだ。)
 もちろん『青銅の扉』に、マーロウが登場するはずはありません。
 既読の3篇は、Amazonのレビューを投稿を始める以前の大昔に読んだのだろうと思う。
 巻末の訳者による「マーロウ誕生の前夜」は、初めて読んだので興味深く読んでしまいました。
雨の殺人者  チャンドラー短編全集 (4)   創元推理文庫 (131‐6)Amazon書評・レビュー:雨の殺人者 チャンドラー短編全集 (4) 創元推理文庫 (131‐6)より
4488131069



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