過去ある女 ―プレイバック―
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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チャンドラーの「プレイバック」には2作品がある。1958年発表の小説版(清水俊二訳)と、1948年に完成していた映画シナリオ(本書、小鷹信光訳)である。本作「過去ある女-プレイバック」は映画オリジナルとして書かれたシナリオ版だが結局映画化はされず、また本作品にはフィリップ・マーロウは登場しない。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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いわば手作りの訳です。現代人、しかも日本人には絶対分からないチャンドラーが仕掛けた伏線についてはさりげなくヒントをくれてます(でも分らないけど。種明かしが実に面白い、一杯食わされる快感)例の名文句も辞書を見ても絶対出てこない言葉で登場。しかもちゃんと会話として成り立ってるんです。全体の会話は軽快で笑える、だけどシリアス。マーロウがエスメラルダを忙しく動き回わる、さらにロスを往復する、その様子がまるで映画みたいに浮かんできます。いくらAIが進んでもこんな風に訳すのは無理じゃないかな。 | ||||
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地図とイラスト、時系列表を見ながら読むとすんなり話が頭に入り、その分余裕で楽しめる。特にホテルの構造など、想像も出来ないものだった。イラストなしには到底誰がどこに何しているかわからなかった。訳自体も明快で分りやすかった。会話がとにかく面白い。例の名文句も会話の流れに溶け込み、一番自然で一番しっくりすると思えた。さらにあとがきが面白かった。あとがきを読むとチャンドラーのすごさがわかる。とにかく一ページの無駄がない、クラレンドンの話も重要ファクターだとわかる。タクシー運転手の一言の重みに驚く。チャンドラーファンだけでなく、だれでも楽しく読めるのではないかと思う。 | ||||
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無事に届きました、有り難うございます! | ||||
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ハードボイルド小説作家の大家であるレイモンド・チャンドラーは、その活動期間の中盤の或る時期に於いて、シナリオライターとしてハリウッド映画界にその身を置いていた。とは言え、自らの小説の映画化に携わったことは殆ど無かった。 他の作家の映画化のための脚本に携わった「深夜の告白」ではアカデミー賞の候補にも選ばれたり、オリジナル脚本を執筆した映画「青い旋律」もヒットし、この脚本でもアカデミー賞にノミネートされた。 その当時のシナリオライターとしてのチャンドラーの株は最高値を示していたのだった。 そして、ユニバーサル映画社は、破格の条件を提示して、チャンドラーにオリジナル脚本の執筆を依頼する。 執筆期間中、週四千ドル、さらに映画が興行的に成功した場合、利益の一部が比例配分で保証されるというものだった。 二度に亘って期限を延期したうえで、1948年3月24日にチャンドラーが脚本を完成させた時の映画界は、戦後の不況の余波の中にあった。ユニバーサル社はこの企画を進めることを反故にせざるを得なかった。 本書は、37年後にユニバーサル社の資料室から発掘された、その製作がキャンセルされた映画の脚本の最終稿である。 チャンドラー自らが「私が書いた映画脚本の中でも最高のひとつ」と言い放ったというもので、実際、台詞といい展開といい、キレキレで小気味のいい作品となっている。これが映像化されなかったのはなんとも残念だ。きっとフィルム・ノワールの逸品となったであろうと思うと実に惜しい。 惜しんだのは、当のチャンドラーも同様だったに違いない。10年後の1958年に、チャンドラーはこの脚本を元にした一冊の長編を生み出した。 氏の七作目であり、最後の長編「プレイバック」である。 長編小説に於いては、チャンドラーは一貫して私立探偵 フィリップ・マーロウを主人公に据えた第一人称形式のものしか書く気は無かった。 だが、映画脚本ではマーロウ若しくは同類の主人公は登場しておらず、それを小説化するには大変な苦労があった様だ。 結果として脚本のエッセンスはかろうじて残しつつも、仕上がったものは雑でドタバタとした印象を与えるものであり、不遜ながらチャンドラーの作品としては、出来の良いものとはとても言い難い。 脚本では、本書評のタイトルの様なキレのある台詞を放ち、むしろ主人公然としていたベティ・メイフィールドも、小説に於いてはまるで別人の様に思えるのであった。 | ||||
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チャンドラーの長編作品はとても面白い。彼はそれら長編を書き上げるにあたって、過去に書いた短編小説を元に構想を膨らませていたことは有名な話しだ。しかし、この「過去ある女 プレイバック」は、小説プレイバックの元ネタであるけれども、過去の短編小説ではなく映画用のシナリオを土台にしている点が、他の長編と成り立ちが異なっている。 チャンドラーは、かつて(小説創作の合間にというか、生活の糧を目的として)ハリウッドでシナリオ・ライターをしていたことがある。彼はシナリオ面でも優秀で、ワイルダーやヒッチコックとも組んでそのシナリオを担当し、優秀脚本家賞に何度もノミネートされている。訳者によれば、今シナリオは、長い間ハリウッドの倉庫に眠っていた代物で、チャンドラー自身が、自分の書いたシナリオの中でもっとも自信があると誇っていたとのこと。 かつてサンケイ文庫で出版されたが、すでに絶版となっていたが、今回復刻にいたったという。チャンドラー・ファンとしては読まずにはいられないではないか。さっそく購入し、読み始めた。 しかし、ん〜、なんか読みづらい。シナリオを読んだことがないので読み慣れていないせいかもしれないと読み進めたが、最後までしんどい作業となってしまった。ストーリーとしては、面白くはあるものの、絶賛するほどの内容とは感じなかった。もっとも、シナリオは映画制作のためのものなので、俳優・女優、効果音、映像が入ればもっと面白いのかもしれない。シナリオに親しんでいるひとなら、別の感想を持つかもしれない。 シナリオ読了後、巻末の訳者解説を読んだところ、前サンケイ文庫版ではロバート・B・パーカーが解説を受け持っていたらしい。 “ふたつのプレイバックについて” エッセイらしい。パーカーはスペンサー・シリーズで有名な故人だが、ハメットやチャンドラーの文学研究者として博士号をとった経歴の持ち主だ。しかし、今版では、版権の事情からか掲載できなかったとの断り書きがある。大きな興味を惹かれ、さっそく図書館で借りることにした。 読み比べてみたところ、シナリオ本文は同じはずなのに、前版のほうが断然読みやすい。フォントや組文字のフォーマットが異なるだけなのだが、読みやすさがまるで違う。フォントの大きさや、振られたシーン番号にカギ括弧がついているかどうかという差も、見た目には大きいのかもしれない。ふだんシナリオを文庫で読んだりすることのない読者にとっては、前版のほうがシナリオのフォーマットとして読みやすいと感じる人が多いのではないだろうか。さらに、パーカーのエッセイも充実した内容で、チャンドラー・ファンとして十分に満足できるものだった(というか、前版では、著者名チャンドラー/解説パーカーと共著とも見間違うかのような表紙になっている。商売上の理由だと思うが)。 というわけで、復刊してくれた小学館文庫に感謝するとともに、解説でしっかり触れてくれた訳者に感謝したい。その点では★5なのだが、前版と比べると、読みやすさ、パーカーの解説抜きという点で、★を減じずにはおれなかった。もっとも、チャンドラー大好き人間というフィルターがかかているので、中立的な人にとっては、その限りではないと思う。シナリオの勉強にも良いのではないだろうか。 | ||||
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