トラブル・イズ・マイ・ビジネス: チャンドラー短編全集4
- チャンドラー短篇全集 (8)
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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早川書房におけるチャンドラーの本邦未発表の作品を含めた全短編を、時系列に纏め、全て新訳で編纂された短編集も本作で最終巻。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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レイモンド・チャンドラーは長編作家である、と断言したい。そして異論のある者も存在しないと確信している。 陸上選手が生まれつき持ち合わせた速筋・遅筋の割合に応じて自らの主戦場とすべき距離を選ぶように、作家もまた文章的資質に応じ短編・中編・長編、あるいは掌編・大長編といったそれぞれの棲み処を選ぶ。たとえば、同じ名をもつ作家レイモンド・カーヴァ―は、長くとも数十ページに収まる短編以外の小説を残さなかった。ジョン・アーヴィングが物語を語るとき、それは内包すべき数々の要素のあまりの分量によって、必然的に長編にならざるを得ない。彼らは自分のストロングポイントがどこにあるのか、自分に適した長さはどの程度なのかということを自覚している。そしてレイモンド・チャンドラーもまた、自分が最も輝かしい実力を発揮できるのは長編だと知っていた。短編が不得手だからではなく、あまりに長編の名手だったからだ。 文章を必要最低限まで、少なくとも過剰なまでの修飾は排さなくてはならない短編形式では、チャンドラーの魅力たる事物への饒舌さが生きてこない。彼の長編と比べ、短編に含まれる景色は明らかに色褪せている。人々は生命力を欠き、奥行きを持たない。チャンドラーの小説の魔法は、作家が思う存分筆を振るうことにあるのだと感じずにはいられない。 とはいえ文章それ自体はチャンドラー節とでも呼ぶべき固有のもので、読んでいて退屈しない。プロットの味気無さを補い切れはしないものの、失望させるには至らない魅力がある。優れたシーンの存在はプロット全体を凌駕するという信念を体現しているといえよう。結局のところ、チャンドラーの文章が読めれば内容はひとまず措いておける。 これは短編集ではあるが、個人的な白眉は「無駄のない殺しの美学」なる素敵な邦題を与えられたエッセイだった。ハードボイルド探偵小説を書くことについて、その分野の第一人者が綴るのだから必読である。本エッセイを読んだ後、記されたチャンドラーの視点を保ちつつ長編を読むのが本書の正当な活用法だと思う。 | ||||
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全集の最終巻である。 レイモンド・チャンドラーの全中短篇を、何名かの翻訳者に割り振っての新訳を施して年代順に編集した全集もいよいよ完結だ。 1938年から1939年前半にかけて発表した五篇の中短編が収められた第3巻は既読の作品のみであったので、流石に目次に目に通してそれ迄とした。 本書では1939年後半以降に発表した八篇の中短篇と二篇のエッセイが収録されている。 実はチャンドラーの中短篇は、最初は別の名前の主人公だったものを、後年フィリップ・マーロウに変えて再掲したものが多い。チャンドラー自身は、主人公は処女作以来一貫した人物として書いた積りだと述べているので、名前の違いは大した問題ではないのであろう。 但し、短篇全集 1に収録の「スペインの血」と、短篇全集 2に収録された「シラノの拳銃」、それから本書に於ける「待っている」の主人公等は絶対にマーロウとは別人だろうというのは個人的に思うところではある。 そんな作品群の中で、「マーロウ最後の事件」のみが初めからマーロウを主人公にした唯一の中篇である。加えて、チャンドラーの死後に発表された遺作と呼べる作品なのである。 また、エッセイは別として、「青銅の扉」と「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」はいつもとは変わった作風で、探偵推理小説ではなくダークファンタジーといった趣きのものだ。特に「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」に至っては、三人称形式ながら登場人物の心情にも筆を入れており、ハードボイルドスタイルを排した作品と言える。 本書に於ける未読作は、「イギリスの夏」と「バックファイア」である。前者をチャンドラーは「ゴシック・ロマンス」と称したと言う。確かに全編を通してかなりメロドラマ的で、このことも、更に探偵物でもないこともチャンドラー作品としては奇異なことではあるが、それよりも何よりも舞台がイギリスの地というのは他には無い大きな特徴だ。イギリス人を評するチャンドラー目線がそこかしこに挿し込まれるのも面白い。 そして後者は、映画の企画用に書き下ろしたものなのだと言う。買い手が付かなかった為に脚本化されることもなく、この粗筋のまま僅かに出版されたのだそうだ。 稀書の数々を読む機会を得ることが叶った全集であったが、これらの発刊のきっかけとなった村上春樹の新訳本出版には敬意を表するところである。 収録作品 「トラブル・イズ・マイ・ビジネス」 訳:佐々田雅子 「待っている」 訳:田口俊樹 「青銅の扉」 訳:浅倉久志 「山には犯罪なし」 訳:木村二郎 「むだのない殺しの美学」 訳:村上博基 「序文」 訳:村上博基 「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」 訳:古沢嘉通 「マーロウ最後の事件」 訳:横山啓明 「イギリスの夏」 訳:高見浩 「バックファイア」 訳:横山啓明 | ||||
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この数年チャンドラーからも読書からも離れていました。読破した本はわずかです。この本は特殊です。異色作2つとエッセイ、映画企画書の粗筋。やっぱりチャンドラーは面白い。SF翻訳家、浅倉久志さんの訳した短篇(異色作その1)や異色作その2「ビンゴ教授」も面白かった。僕はこの短篇全集1巻から順番通りに読んで来ました。解説にいちいち旧訳の紹介がしてあるので旧訳の方が良いのだろうかと思います。でも、この全集が出るまで、チャンドラーの短篇全部読もうと思ったら集めるの大変だったそうです。 | ||||
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当初、大人気のフィリップ・マーロウシリーズ「ではない」短編までも編集部の意向により”マーロウ”と改名されて発表されていたようです。 解説も非常に丁寧で多分にエモーショナルではありますが(笑)とても役に立ちます。 探偵がこづきまわされ殴られてめちゃくちゃな目にあいながらも、ひとりだけ真相を見抜き独自の行動原理に基づいて動くさまが、なんともしびれるくらいカッコいいのです。銃社会のアメリカらしい、怖くてかっこいいハードボイルドストーリーです。 ミステリーだけでなく、幻想小説ふうな一作や評論も収録されており楽しめる内容です。 | ||||
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