(短編集)

レイディ・イン・ザ・レイク: チャンドラー短編全集3



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初公開日(参考)2007年10月
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レイディ・イン・ザ・レイク―チャンドラー短篇全集〈3〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

2007年10月31日 レイディ・イン・ザ・レイク―チャンドラー短篇全集〈3〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

本書には、レイモンド・チャンドラーが1938年から39年前半にかけて発表した五篇の中短編が収められている。表題作「レイディ・イン・ザ・レイク」は、長篇『湖中の女』の原型となったもの。「ベイシティ・ブルース」もまた、同長篇に組み入れられた。「赤い風」はのちに主人公がフィリップ・マーロウに書き換えられたバージョンでお届けする。伝説のヒーロー誕生前夜の熱気を伝える画期的全集第3巻。 (「BOOK」データベースより)




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レイディ・イン・ザ・レイク: チャンドラー短編全集3の総合評価:9.00/10点レビュー 3件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

バイプレイヤーたちの魅力

チャンドラー新訳短編集第3集。今回は長編『湖中の女』の原形となった短編の表題作が初読の作品。もっとも題名もそのままで、本作では原題そのまま。

まず最初はマーロウ登場の「赤い風」。本作ではマーロウはこの作品のみの登場だ。
後で述べる他の作品と違い、本作での特色はマーロウ自身が自ら事件に乗り出す趣向を取っている。発端はバーでいきなり殺人事件に巻き込まれるが、それ以降は自ら渦中の女を助け、その女に手を貸すといった具合だ。
マーロウの視点で語る本作も、プロットは複雑な様相で物語が流れる。物語の終盤、マーロウの口から語られる事件の顛末は実にシンプルな物であることが解り、チャンドラーのストーリーテリングの妙味がはっきりとわかる。
女のために金にもならない危険を冒すところに他の探偵とは一線を画す設定がある。

次の「黄色いキング」ではホテルで用心棒をやっているスティーヴ・グレイスが主人公。
スティーヴの設定はタフで、女にもてると典型的なハードボイルド・ヒーローといったところ。この一作ではまださしたる特徴があるようには思えなかった。
そしてレオパーディ殺害の真相は、ちょっとアンフェア。まあ、本格推理物ではないので良しとするか。もうちょっと何かがほしかった。レオパーディの造形は良かったが、ちょっと物足りない。
ただ1つ印象に残った文章があった。
「(スパニッシュ・バンドが低く奏でる蠱惑的なメロディは、)音楽というより、思い出に近い」
音楽に関して時折感じる感傷的なムードをこれほど的確に表した表現を私は知らない。どう逆立ちしても思いつかない文章だ。

さて続く2編は短編「スマートアレック・キル」と「翡翠」に登場した探偵ジョン・ダルマスが主人公。
「ベイシティ・ブルース」、「レディ・イン・ザ・レイク」共に、ロサンジェルスで探偵稼業を営むジョニー・ダルマスの許にロスの保安官ヴァイオレッツ・マッギーから依頼の電話が掛かる形で物語は始まる。
まず前者はマッギー知り合いの探偵マトスンを助ける依頼。
後者はハワード・メルトンという化粧品会社支社長の失踪した妻の捜索が依頼。
「ベイシティ・ブルース」は最後に明かされる意外な犯人、複雑ながらもすっきりとする事件の構成など、完成度がかなり高い作品だ。
逆に「レディ・イン・ザ・レイク」は定型を脱していない感じ。
前者と後者でのダルマスの印象はけっこう違う。以前はダルマスもマーロウの原形のように感じていたが、「ベイシティ・ブルース」では減らず口と窮地を脱するのに他人に成りすましてドジを踏むところ、腕っぷしもさほど強くないところなど、若さが目立ち、ちょっと別の探偵という感じがした。
翻って「レディ・イン・ザ・レイク」では、むしろマーロウに近いといった印象。唯一異なるのはあくまでマーロウが己の教義のために依頼を果たすのに対し、ダルマスは仕事の最中に依頼人に金を吊り上げるよう要求したりするように金に卑しいところか。

さて最後は「真珠は困りもの」。遊蕩探偵?ウォルター・ゲイジが主人公。
実は本短編集ではこれが一番面白かった。恐らく親の遺産で悠々自適に暮らしているウォルター・ゲイジが婚約者の依頼で探偵を務める話。
このウォルターが坊ちゃんで、自意識過剰、自信家なところが他のチャンドラーの主人公と大いに違い、逆に他の短編に比べて特色が出た。特にウォルターがいきなり盗難の犯人と目したヘンリーに真珠が模造である事を話すところなど素人丸出しで、チャンドラーが他の探偵とウォルターをきちんと書き分けていることがよく解る。
最後の清々しい幕切れといい、本作でのベスト。

本短編集で特徴的なのは主人公を務める探偵を食ってしまうようなバイプレイヤーがいることだろう。
まず「赤い風」は終盤に俄然存在感を増すイタリア系刑事のイバーラが非常にカッコイイ。この作品の影の主役と云えるだろう。全然動じないその物腰と肝の据わった態度はマーロウをまだ駆け出しの探偵のようにあしらう。そうこの作品のマーロウはまだ若きフィリップなのだ。このイバーラ、確か他の作品では見なかったように記憶しているが、たった一編の短編で終えるには実に惜しいキャラクターである。
また「ベイシティ・ブルース」では後半事件に関わってくるド・スペインのタフガイぶりが際立っており、ダルマスが食われた感じがした。特に上昇志向が強く、降格された恨みから犯罪まで犯すド・スペインのキャラクターの濃さは本短編集でも異彩を放つ。
そして「レディ・イン・ザ・レイク」では引退した保安官ティンチフィールドが物語に渋さをもたらす。事件の中を模索するダルマスに的確なアドヴァイスを与える老練な男だ。
そして「真珠は困りもの」では途中で仲間になるヘンリー・アイケルバーガーがまた素晴らしいキャラクター。強面で威丈夫の大男。腕に自信のあるウォルターを一蹴しながらも、協力を申し出る好漢だ。大鹿マロイといい、その原形であろう「キラー・イン・ザ・レイン」のドラヴェック、「トライ・ザ・ガール」のスティーヴ・スカラなどチャンドラーの描く大男キャラクターは総じて魅力的な輩ばかりである。チャンドラー自身、これらのモデルになった優しき大男との交流があったのかもしれない。

さて冒頭に述べたように短編集も3冊目。前短編集『トライ・ザ・ガール』の感想では、毎度同じような展開ながらも飽きずに読めると書いていたが、さすがにチャンドラーといえどもこれだけ似たような話を読まされると、疲れてきた。
曰く、事の発端→トラブル発生→死体と遭遇→関係者の間を渡り歩く→真相解明→乱闘シーンで死者が出る、とほとんどこのパターン。
細部の演出は異なるが、話の流れは全てこの流れで進められるため、読後の今振り返ってもどれがどんな話だったのか、ちょっと混在してしまう。

ここにいたって思うにチャンドラーはストーリーテラーとしてはあまりヴァリエーションを持っていなかったようだ。ストーリーの流れは常に定型を守り、そこに女や無頼漢、タフガイを絡め、物語に味付けを施すといった感じだ。そしてそれらキャラクターが途轍もない光彩を放つ時、傑作が生まれるのだろう。『さらば愛しき女よ』然り、『長いお別れ』然り、『大いなる眠り』然り。
最初の頃に見られた卑しき街をしたたかに生きる者どもの姿がここにいたって定型に落ち着いてきているのが、非常に辛いところ。今回の作品群には今までの短編に見られた叙情が薄まっているようだ。技巧で書いているような気がした。調べてみると本作までの短編が第1長編『大いなる眠り』以前に書かれた物らしい。このころおそらく短編に限界を感じたのかもしれない。次々と浮かぶプロットは複雑さを増すが枚数の限られた短編ではある程度妥協点を見出さなければならない。だからこそ長編へと創作姿勢が移行していったのではないだろうか。

今回はほとんどが典型的な話だったので、☆5つぐらいだなぁと思っていたが最後の「真珠は困りもの」が思わぬ拾い物だった。
よってかろうじて☆7つとしよう。


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Tetchy
WHOKS60S
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No.2:
(5pt)

迅速丁寧な対応!

梱包材等もとても手厚く、商品もとても綺麗でした。
またこの出品者から購入しようと思います。
レイディ・イン・ザ・レイク―チャンドラー短篇全集〈3〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:レイディ・イン・ザ・レイク―チャンドラー短篇全集〈3〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704597
No.1:
(5pt)

後半が良かった。

ベイシティブルースが良かったです。チャンドラーの小説は偶然の重なりが多すぎるような気がします。後半の3編が良かったです。真珠は困りものは、これまでに持っていたチャンドラーのイメージからすると意外な感じでした。
レイディ・イン・ザ・レイク―チャンドラー短篇全集〈3〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:レイディ・イン・ザ・レイク―チャンドラー短篇全集〈3〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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