(短編集)

トライ・ザ・ガール: チャンドラー短編全集2



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トライ・ザ・ガール (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-8 チャンドラー短篇全集 2)

2007年10月05日 トライ・ザ・ガール (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-8 チャンドラー短篇全集 2)

すべて当代一流の翻訳者による新訳で、チャンドラーの全中短篇を発表年代順に収録する画期的全集の第2巻。本書には1936年から37年にかけて発表された7篇を収録する。『さらば愛しき女よ』の原型となった表題作と「犬が好きだった男」、『大いなる眠り』に組み入れられた「カーテン」を長篇版と比較するのも一興だろう。また、のちに主人公がフィリップ・マーロウに変更された「金魚」も見逃せない。巻末エッセイ/馬場康夫 (「BOOK」データベースより)




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(8pt)

鬱屈した世を走る男たち

早川書房のチャンドラー改訳短編集の第2弾。本作も前作同様、未読の短編があったため、購入した次第。
で、その未読短編というのが冒頭の「シラノの拳銃」と最後の「翡翠」。「シラノの拳銃」に出てくるテッド・カーマディが収録作7編のうち、4編において主人公を務める。

「シラノの拳銃」はボクシングの八百長試合の約束を破ったボクサーへのマフィアの報復から話から、ある上院議員の隠し子のスキャンダルまで発展し、それが狂言だったという結構奥が深い話。題名の<シラノ>はカーマディが自分の所有するホテルで出会ったボクサーの女が勤めるナイトクラブの名前。
本作は何と云っても最後のシーンが忘れがたい。ナイトクラブの女ジーンが笑みを浮かべながら眠りに就くシーンにしみじみと心打たれた。

「犬が好きだった男」は失踪した娘の捜索を頼まれたカーマディが唯一の手掛かりとしてその娘が連れていた犬を追って、獣医、強盗犯、精神病院へと次々と場面展開していく。題名の素朴さとは裏腹にカーマディの行くところ、死屍が累々と残されていき、激しい銃撃戦が二度も出てくるハードな内容だ。
しかもカーマディが麻薬を打たれて病院に監禁されてしまうシーンは確か長編でもあったように記憶しているがどの作品だったのか思い出せない。ロスマクのアーチャー物でも同様のシーンがあったように思うのだが。

「カーテン」ではカーマディは逃亡幇助を頼まれた友人のラリーが結局自分一人で逃げた矢先に殺されてしまった事から、ラリーの関わった友人の捜索に乗り出す。
物語の展開から予想だにしない結末に至る本作。真相はかなり意外。金持ちの依頼人と蘭の温室で対面するシーンは確かに『大いなる眠り』にも見られたシーン。しかし、真相がこじつけのように思えた。よくよく考えると、なんかおかしい。

カーマディ物最後は表題作「トライ・ザ・ガール」だ。ギリシア人の床屋の主人の捜索でセントラル・アベニューを訪れたカーマディが、たまたま出くわした大男スティーブ・スカラに否応無く彼のかつて愛した女ビューラの捜索に巻き込まれる話。
そう、これこそ正に名作『さらば愛しき女よ』の原形。
ここで現れる一人の女を追い掛ける大男は大鹿マロイではなく、スティーブ・スカラ。最後の幕引きも同じようなものだったか?凶暴かつ乱暴で野獣のように思われた大男。自分の目的のためには人を殺す事も躊躇わない大男。だのに女にはこの上ない優しさを見せる。自分を撃った女に対して「放っておいてやれ。やつを愛していたんだろう」と慈悲を与える不思議な魅力を持った男だ。こういう男は多分に母親の愛情に飢えていたのだと思われる。
そしてこの話の裏テーマというのは8年ぶりに出所した男が直面した、馴染みの店と好きだった街の雰囲気、そしてかつて愛した女、それら全てが変ってしまったことに対する戸惑いと哀しみなのだ。彼は居心地の悪さと居場所の無さを感じていたに違いない。そしてそうした彼の唯一の拠り所がかつて愛した女ビューラだったのだ。あまりに切ない物語。

この4編を通じて主人公を務めるカーマディという男の魅力も捨てがたい物がある。議員だった父親の遺産で悠々自適に暮らしている元探偵というチャンドラー作品には珍しい設定ながらも金持ちが故に抱える彼独自の哀しみ。親が汚職で残した汚い金を拒む事も出来ずに自嘲気味にその日を暮らす毎日。
しかしカーマディは2作目以降、「シラノの拳銃」の印象とはだいぶん違ってくる。むしろマーロウに近い感じだ。なぜチャンドラーがカーマディを主人公に長編を著さなかったのかが不思議なくらいだ(この感想を書いた後、解説で木村二郎氏が「シラノの拳銃」のテッド・カーマディとその他3編のカーマディは別人で、後の3編のカーマディはマーロウの原形だったと述べている。正に私の抱いた感想は正しかったわけだ)。

さて残りの3編について。
「ヌーン街で拾ったもの」は麻薬潜入捜査官ピート・アングリッチが主人公。ヌーン街で見かけた金髪の女性の代わりに、一台の高級車から落とされた荷物を拾ったことからハリウッドスターとマフィアとのある企みに巻き込まれる話。
ハリウッドスターの売名行為で裏街のボスの手を借りるというのがちょっといただけない。あとで強請られるのが解っているのに、安直では?タイトルはダブル・ミーニングだろう。ヴィドリーが落とした包みではなく、金髪の女トークン・ウェアこそ「ヌーン街で拾ったもの」だろう。

「金魚」は我らがヒーロー、マーロウ登場の物語。元婦警の友人キャシー・ホーンから行方知れずになっているレアンダー真珠の在り処について有力な情報を教えるから探してほしいと頼まれるマーロウ。報酬は保険会社から支払われる2万5千ドル、これを情報提供者であるピーラー・マードと3人で分け合うという取り決めだった。マードの許を訪れたマーロウはそこで拷問に遭い、ショック死したピーラーの死体に出くわす。ピーラーの家を後にしたマーロウは保険会社を訪れ、正式な代理人として雇ってもらう。事務所に帰ったマーロウに知らない女から電話が掛かり、悪徳弁護士のラッシュ・マダーの許へ訪れるよう脅迫される。
レアンダー真珠を巡る丁々発止のやり取り。ハメットの『マルタの鷹』を換骨奪胎したかのような物語。
とにかく悪役の女性キャロルがいい!ストーリーの運びは定型なんだが、彼女の存在が物語に色彩を与えている。最後のサイプの妻がマーロウに仕掛けるフェイクなど、最後まで楽しめる作品。最後のシーンでビリー・ジョエルの”Honesty”の歌詞が浮かんだ。
“誠実、なんて寂しい言葉だろう”

最後の「翡翠」は「スマートアレック・キル」で主人公を務めたジョン・ダルマス再登場作品。社交界の名士リンドリー・ポールから彼の女友達が盗まれた希少な翡翠のネックレスを探し出すよう頼まれるという話。相変わらず入り組んだストーリー展開だが、霊能者が登場したりといささか意匠に懲りすぎた感も否めない。そのため、なんだかバタバタした展開になっている。

本作では「シラノの拳銃」、「犬が好きだった男」、「トライ・ザ・ガール」そして「金魚」の4編が秀逸。1つに絞るならばやはり「トライ・ザ・ガール」か。
今まで2冊の短編集を通じて感じるのは、20~30年代後半のアメリカを覆った荒廃感が物語の雰囲気を覆っていることだ。それは禁酒法統治下もしくはその余波が澱のように残る20~30年代のアメリカを覆う鬱屈感に他ならない。そんな世の中で誰もが心に病を抱えている。善人は不器用であり、暮らしは楽にならなく、器用な奴は相手を出し抜く事にその器用さを発揮し、誰もが悪人だ。
そしてチャンドラーが描く探偵マーロウ、カマーディらはそんなすさんだ街の中で減らず口を叩きながらも、どこか人を信じることを止めきれない、自分に正しくあろうと自嘲気味に生き抜く男たちだ。彼らは探偵という仕事を自らの糧を得るためのみならず、仕事に関わった自分を納得させるために損得抜きで夜を走っている。それはこの街に失われたと思われた何かがまだ残っている事を信じたいがために真実を追っているかのように思える。

そしてそれを表現するチャンドラーの描写力、文章力の凄さ、改めて痛感した。危険と隣り合わせの人間が配る視線や仕草をとっても、それら人物や状況を語る視点が違うのだ。少なくとも私にはこういった“眼”は無い。
そしてその文章に加えて、質が上がったストーリーとプロット。全てがそうだとは云えないまでも、入り組んだストーリーも単純に捏ね繰り回されているだけでなく、計算づくの上での展開だというのがよく解る。
毎度同じような展開だと思いながらも、なぜだか飽きずに読めるのが不思議だ。
未読短編だけを読むために買ったこのシリーズだが、チャンドラーの凄さを再認識するのに格好の機会になった。残る2冊も買うつもりだ。


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Tetchy
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No.4:
(5pt)

「手を挙げなさい。天井に届くかどうかやってみるのよ」

ハードボイルド探偵小説界に於ける希代の名作家レイモンド・チャンドラー。その全中短篇を網羅しようという短篇全集の第2巻目に収録されているのは、1936年から1937年にかけて発表された七篇である。
今回も、一作毎に翻訳者を変えており、読み比べてみれば、気安い口調を用いてみたり、余計なものを削ぎ落とした様な表現を用いたりと、少なくないそれらの表現の差異もなかなか興味深い。
この全集はほぼ発表順に作品が編まれており、チャンドラーの作家性の足取りが追えて有難い。
そして、本書では「シラノの拳銃」が私にとっては初見のものであったが、その主人公であるカーマディという男は、かつて街の大物であった男の息子で、父親が残した汚い金に頼って生きており、疎ましく思いながらも、その生活を捨てることも出来ずに無為に生きているという設定は意外でありユニークに感じた。何故なら、普段チャンドラーが描く主人公たちは自らの足で立って世間を渡り歩くしたたか者で、そして決して裕福ではないからだ。
この様な作品に今更にして出会えるとは、改めて村上春樹の新訳本出版によりチャンドラーの作品ににわかに注目が集まったことに感謝すべきなのだろう。

尚、旧訳版の殆どでは、主人公は自らを指して「ぼく」と称していたのに対して、本書では「おれ」と表しているのが目立つ。これはやはり違和感を感じさせるのに十分なのだが、作品の内容からして実はチャンドラーとしても「ぼく」なんて言う様な人物を念頭に置いているとも思えていなかったことも事実だ。
そして、「おれ」と主人公達が口にすることによって、よりハードな印象が増すが、反比例するかの様に、その分エレガンスさが打ち消されていると思う。
第1巻に於いては、フィリップ・マーロウを主人公にした一作のみは「おれ」ではなく「わたし」とされていたのは、そういったイメージの変化を施すことを善しとしなかったからだろう。
本書ではマーロウ作品ではないが、三人称形式の「シラノの拳銃」と一人称形式の「犬が好きだった男」で「わたし」と称している。そしてマーロウ作品である「金魚」では逆に「おれ」を使っているが、やはりなんとはなしにタフガイさが増して感じられるのである。
また、「金魚」に於いては若い美人の女の子がマーロウの敵として現れる。これがやたらと強面なのだが、なかなか良い味を出している。三十二口径の銃をかざし、マーロウにホールドアップを促すのである。
チャンドラーの作品に登場する女性達は勝ち気な性格が多いのではあるが、武闘派は珍しい。一読の価値はあろう。

収録作品
「シラノの拳銃」 訳:小林宏明
「犬が好きだった男」 訳:田村義進
「ヌーン街で拾ったもの」 訳:三川基好
「金魚」 訳:木村二郎
「カーテン」 訳:加賀山卓朗
「トライ・ザ・ガール」 訳:真崎義博
「翡翠」 訳:佐藤耕士
トライ・ザ・ガール (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-8 チャンドラー短篇全集 2)Amazon書評・レビュー:トライ・ザ・ガール (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-8 チャンドラー短篇全集 2)より
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No.3:
(3pt)

近所では手に入らない

訳が古いせいか読み進むリズムが難しい。
ゆっくり楽しみながら読みます。
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No.2:
(5pt)

むかしのカリフォルニア

どこかで読んだ覚えのある中短編が入っています。今から80年近く前のアメリカってこんな感じだったんですね。
トライ・ザ・ガール (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-8 チャンドラー短篇全集 2)Amazon書評・レビュー:トライ・ザ・ガール (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-8 チャンドラー短篇全集 2)より
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No.1:
(4pt)

この題名は・・・!!

いや内容に文句など、ある訳無い。マーロウ登場以前の試行錯誤を新訳でたどることでチャンドラーの作家的飛躍がつぶさに見て取れる。
しかしこの題名は何だ!!村上春樹が「長いお別れ」を「ロング・グッドバイ」とした(せざるを得なかった)のとは訳が違う。
安直な映画配給会社並のセンスで、永く早川の出版物に親しんできたものとして悲しささえ覚える。(ホイチョイの馬場氏のエッセイは面白かったけれど)
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