(短編集)

事件屋稼業: チャンドラー短編全集2



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初公開日(参考)1965年06月
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チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)

1965年06月01日 チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)

正統派ハードボイルドを確立した巨匠チャンドラーの中編を編集したアンソロジー。ネオンの渦まく巷に一抹の哀歓をただよわせる不朽の主人公フィリップ・マーロウ。チャンドラー独特の斬新な語法と筆致によるハードボイルドの典型。 ●収録作品 「事件屋稼業」 「ネヴァダ・ガス」 「指さす男」 「黄色いキング」 「簡単な殺人法」(「BOOK」データベースより)




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事件屋稼業: チャンドラー短編全集2の総合評価:8.67/10点レビュー 6件。Bランク


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(8pt)

「簡単な殺人法」は必読のエッセイ

東京創元社によるオリジナル短編集第2集。
収録作は「事件屋稼業」、「ネヴァダ・ガス」、「指さす男」、「黄色いキング」の短編4編にエッセイ「簡単な殺人法」。ベストは「ネヴァダ・ガス」、「簡単な殺人法」。以下、かいつまんで感想を述べる。

「事件屋稼業」はけっこう散文的な内容で、犯人はチャンドラーの定番ともいうべき人物。しかし、依頼を受けて最初に訪れたところに死体があるっていうのはもはやチャンドラーの物語のセオリーのようになってきている。殺す対象が違うような感じもし、犯人の動機もちょっと説得力に欠ける。ただ出てくる登場人物が全て特徴的。最初のアンナからジーター、アーボガスト、ハリエットにフリスキーとワックスノーズの悪党コンビ。そしてマーティー・エステルと、一癖も二癖もある人物が勢ぞろいだ。この作品からプロットよりも雰囲気を重視しだしたのかもしれない。

「ネヴァダ・ガス」は他の短編に比べ、いきなり毒ガス車で人が処刑されるシーンという読者を惹きつける場面から幕が開けるのがまず印象深い。この導入部はハリウッド・ムービーを想起させる。この時既にチャンドラーはハリウッドの脚本家として働いていたのだろう。

「黄色いキング」のレオパーディ殺害の真相は、ちょっとアンフェア。もうちょっと何かがほしかった。レオパーディの造形は良かったが、ちょっと物足りない。
ただ1つ印象に残った文章があった。
「(スパニッシュ・バンドが低く奏でる蠱惑的なメロディは、)音楽というより、思い出に近い」
音楽に関して時折感じる感傷的なムードをこれほど的確に表した表現を私は知らない。どう逆立ちしても思いつかない文章だ。

歴史に残る名エッセイは何かと問われれば私はこの「簡単な殺人法」を挙げる。これはチャンドラーが探偵小説に関する自らの考察を述べた一種の評論。論中で古典的名作を評されているA・A・ミルンの『赤い館の秘密』、ベントリーの『トレント最後の事件』、その他作家名のみ挙げた諸作についてリアリティに欠けるという痛烈な批判をかましている。
その前段に書かれている「厳しい言葉をならべるが、ぎくりとしないでほしい。たかが言葉なのだから。」という一文はあまりにも有名。
本論では探偵(推理)小説とよく比較される純文学・普通小説を本格小説と表現している。そしてこの時代においては探偵小説は出版社としてはあまり売れない商品だと述べられており、ミステリの諸作がベストセラーランキングに上がる昨今の状況を鑑みると隔世の感がある。
チャンドラーはこの論の中で、フォーマットも変わらぬ、毎度同じような内容でタイトルと探偵のキャラクターである一定の売り上げを出す凡作について嘆かわしいと語っている。しかし私にしてみれば、チャンドラーの作品もフォーマットは変わらず、探偵や設定、そして微妙に犯行内容が違うだけと感じるので、あまり人のことは云えないのでは?と思ってしまう。
またセイヤーズの意見に関して同意を示しているのが興味深い。その中でチャンドラーは傑作という物は決して奇を衒ったもの、人智を超えたアイデアであるとは限らず、同じような題材・設定をどのように書くかによると述べている。これは私も最近、しばしば感じることで、ミステリとはアイデアではなく、書き方なのだと考えが一致していることが興味深かった。
最後に締めくくられるのは魅力のある主人公を設定すれば、それは芸術足りえる物になるという主張だ。そこに書かれる魅力ある主人公の設定はフィリップ・マーロウその人を表している。その是非については異論があろうが、間違いなくチャンドラーはアメリカ文学において偉大なる功績を残し、彼の作品が聖典の1つとなっていることから、これも文学の高みを目指した1人の作家の主義だと受け入れられる。つまり本作は最終的にはチャンドラーの小説作法について述べられているというわけだ。

本書はこの「簡単な殺人法」を読むだけでも一読の価値がある。世のハードボイルド作家はこのエッセイを読み、気持ちを奮い立たせたに違いない。卑しい街を行く騎士など男の女々しいロマンシズムが生んだ虚像だと云い捨てる作家もいるが、こんな現代だからこそ、こういう男が必要なのだ。LAに失望し、LAに希望を見出そうとした作家チャンドラーの慟哭と断固たる決意をこのエッセイと収録作を読んで感じて欲しい。

Tetchy
WHOKS60S
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.5:
(5pt)

もめごとは僕の商売さ。

「事件屋稼業」
ダサかっこいい絶妙な和訳と思う。原題は「Trouble Is My Business」である。この表題作の中で、主人公は別の節回しでしばしば軽口を叩いてみせる。
「もめごとは僕の商売さ」
彼の商売とは私立探偵。その仕事を、いや彼の生き方そのものを指した科白と言える。
原作:関川夏央、作画:谷口ジローの「新・事件屋稼業」という大変息の長い私立探偵物の漫画が有るが、勿論本作をもじっている訳だ。因みに、この漫画は寺尾 聰主演でドラマ化されているが、遺憾ながら全く別物みたいにされているので、視聴には注意を要する。
チャンドラーの良さは巧みな比喩と洒落た表現の文体であるが、前後の文章で捻りを加えて唸らせることが多く、キザな科白の一言でビシッと決めてみせるというのは意外と多くないので、なかなかその魅力を伝え難い。本作でもやはりセンスを感じる表現が多々有るが、実際に読んでみれば、その魅力は一人称形式に依るところが大きいことが分かるだろう。

だから、続く「ネヴァダ・ガス」は三人称形式である為、大分趣を異にする。客観的に事象を捉えながら、読者の視点を意識した様な文章には、まるで映画を観ているかの様な印象を受ける。
本作は比較的初期の作である。チャンドラーはやがてハリウッド映画界に関与するが、最初は原作者としてであったものの、後には脚本も手掛ける様になった。元々映画の仕事に興味があったのかもしれない。

定番と言えよう一人称形式の「事件屋稼業」「指さす男」、それとはちょっと雰囲気が違った三人称形式の小説「ネヴァダ・ガス」「黄色いキング」、さらにまた、本書には小説だけでなく、チャンドラー自身の手によるハードボイルド宣言として名高い「簡単な殺人法」も収録されている。
このバラエティーさは短中編集ならではものと言える。

収録作品
「事件屋稼業」
「ネヴァダ・ガス」
「指さす男」
「黄色いキング」
「簡単な殺人法」
チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)より
4488131042
No.4:
(5pt)

「簡単な殺人法」は、チャンドラーファン必読です。

評者は、チャンドラーの長編は、『大いなる眠り』(1939年)から『プレイバック』(1958年)まで清水俊二訳で全7作を読んでいた。
 8作目の『プードル・スプリングス物語』は、第四章からロバート・B・パーカーが結末まで書いているので読んでいない。
 なぜかチャンドラーの短編を、いままで読んだことがなかったので遅まきながら読むことにした。
 とりあえず入手して読むことにしたのは、『チャンドラー短編全集2 事件屋稼業』である。
 チャンドラーが小説を書き始めたのは、44歳の1932年であり、最初の長編『大いなる眠り』は、1939年である。
 本書のなかの短編がいつごろ書かれたものか不明だが、どの短編も長編とは少しことなり簡単に殺人が描かれ、すこし荒っぽいように感じた。
 といってもチャンドラーらしいプロットで構築されたストーリーで一気に読ませる迫力があるから、この短編集は、多分30年代に書かれたものだろうと想像したが・・・。
 フィリップ・マーロウが登場するのは、「事件屋稼業」と「指さす男」の二作であり、あとの「ネヴァダ・ガス」の主人公は賭博を生業にしている男であり、「黄色いキング」は、ホテルの雇われ探偵である。
 「簡単な殺人法」は、小説ではなくチャンドラーの探偵小説への考えを吐露している興味深い考察である。
 ハメットの功績を称え、イギリス古典探偵小説の型にはまったような小説への皮肉ともとれる解説もしてる。
 ハメットに影響を受けた作家を、パーシヴァル・ワイルドの『審問』、レイモンド・ポストゲイトの『十二人の評決』などの例を挙げている。
 が、チャンドラー自身がもっとも影響を受けているのもダシール・ハメットなのは広く知られている。
 この「簡単な殺人法」は、チャンドラーが小説というものにたいしてもっている考えかたを吐露する論文であるが、彼の小説にたいして如何に造詣が深いかを知ることができて興味深かった。
 一気加勢に書き上げたようなチャンドラーの短編を、久しぶりに楽しみながら読み終え、他の短編集も探して読んでみようと思いながら読み終えたのです。
 <追記>
 短編集の1「赤い風」を読み、訳者あとがきで各短編の作品年が記してあったので下に記します。
 『事件屋稼業』は、1939年に、『ダイム・ディテクティヴ・マンスリー』誌に掲載。
 『ネヴァダ・ガス』は、1935年に、『ブラック・マスク』誌に掲載。
 『指さす男』は、1934年に、『ブラック・マスク』誌に掲載。
 『黄色いキング』は、1938年に、『ダイム・ディテクティヴ・マンスリー』誌に掲載。
 『簡単な殺人法』は、1950年に、米『ホウトン・ミフリン』社と英『ハミッシュ・ハミルトン社より同時刊行。
チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)より
4488131042
No.3:
(4pt)

もう少し訳語が現代風になっても…

チャンドラーの短編集が、これと第3集「待っている」が並んで古本屋の棚に置いてあり、手に取った。
この短編集にはマーロウものや、主人公が探偵家業のジョン・デルーズ、スティーブ・グレイスのもの等
を含んでいる。
多分、翻訳者稲葉明雄さんの考え方があって、なるべく日本語で表現することを意識しているのだとは思うが、
普段から普通に使われて皆さんの理解しているカタカナ表記ももう少し使われても良いように思う。ある意味、
古色蒼然に近い言葉や、むしろ現在ではカタカナのほうが理解しやすいとも思われるし…。
例えば、イグニッション・キー(スイッチ)、スロープ、ランプ・シェードなどを使ったら、読む人の頭にも
すっと入ると思うが。
集められた短編が、多少、玉石混交気味に感じて☆は、3.5~4といった感じ。
チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)より
4488131042
No.2:
(4pt)

チャンドラー短編全集 事件屋稼業(創元推理文庫)...

ドラマティックな展開で、しゃれた言い回しが、とても面白いです。
チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)より
4488131042
No.1:
(4pt)

創元さん、次版では原題をつけて下さいね

チャンドラー短編全集の第2巻。『事件屋稼業』『ネヴァダ・ガス』『指さす男』『黄色いキング』の4作に、“ハード・ボイルド宣言”と呼ばれる有名なエッセイ『簡単な殺人法』が併録されています。初期作品が多く、本来は主人公の名前はフィリップ・マーロウではないのですが、一部の作品についてはチャンドラーの死後に主人公がマーロウに変えられています。本家マーロウの長編群と比べると、マフィアの登場する比率が高いことや主人公が荒っぽいことなど、ダシール・ハメットの影響が色濃いことを感じさせます。

『簡単な殺人法』はイギリスの影響が強い本格ミステリをリアルでないものとして断罪し、一方でハメットの作品を褒めちぎっています。本格を批判する際のチャンドラーの筆致は正面からの批判というよりもジョークと紙一重の皮肉といった感じで、まるでマーロウの台詞を聞いているようです。ところで、解説には「原題は第1巻にまとめて書いたので省略する」と書いてあるのですが、1巻の解説に原題が書かれているのは1巻に収録されている作品だけですよ。
チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:チャンドラー短編全集 事件屋稼業 (創元推理文庫)より
4488131042



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