(短編集)

待っている: チャンドラー短編全集3



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初公開日(参考)1968年08月
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待っている  チャンドラー短編全集 (3)   創元推理文庫 (131‐5)

1968年08月01日 待っている チャンドラー短編全集 (3) 創元推理文庫 (131‐5)

ロスアンジェルスのネオンの中を無鉄砲に、しかし一抹の感傷を抱いて歩む主人公フィリップ・マーロウ。そのマーロウに現代人の一典型を見出し、彼の魅力にひかれる読者は多い。本書はマーロウものを含めた中編、「ベイ・シティ・ブルース」「真珠は困りもの」「犬が好きだった男」異色短編「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」そして「待っている」を収録。 ●収録作品 「ベイ・シティ・ブルース」 「真珠は困りもの」 「犬が好きだった男」 「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」 「待っている」(「BOOK」データベースより)




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待っている: チャンドラー短編全集3の総合評価:8.29/10点レビュー 7件。Aランク


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(10pt)

ビンゴ教授はチャンドラー作品の異色作

東京創元社によるオリジナル短編集第3集。
収録作は「ベイ・シティ・ブルース」、「真珠は困りもの」、「犬が大好きだった男」、「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」、表題作の短編5編。

「ベイシティ・ブルース」は特に上昇志向が強く、降格された恨みから犯罪まで犯すド・スペインのキャラクターの濃さは本短編集でも異彩を放つ。

「真珠は困りもの」は恐らく親の遺産で悠々自適に暮らしているウォルター・ゲイジが婚約者の依頼で探偵を務める話。
このウォルターが坊ちゃんで、自意識過剰、自信家なところが他のチャンドラーの主人公と大いに違い、逆に他の短編に比べて特色が出た。特にウォルターがいきなり盗難の犯人と目したヘンリーに真珠が模造である事を話すところなど素人丸出しで、チャンドラーが他の探偵とウォルターをきちんと書き分けていることがよく解る。

「犬が大好きだった男」は失踪した娘の捜索を頼まれたカーマディが唯一の手掛かりとしてその娘が連れていた犬を追って、獣医、強盗犯、精神病院へと次々と場面展開していく。死人も多く、激しい銃撃戦もあり、一番ハードな作品。しかもカーマディが麻薬を打たれて病院に監禁されてしまうシーンは確か長編でもあったように記憶しているがどの作品だったのか思い出せない。ロスマクのアーチャー物でも同様のシーンがあったように思うのだが。

「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」はその題名から本格ミステリを早期させるが違う。これもうだつの上がらない亭主が主人公で、彼がビンゴ教授と名乗る奇妙な紳士から、嗅ぐと透明になるという嗅ぎ薬を手に入れる話。その透明になる薬を利用して妻の浮気相手を殺すのだが、そこから通常の透明人間譚とは違った全く予想外の展開を成す。つまりチャンドラーは警察というのは本格ミステリに描かれるようにおバカではなく、そう簡単に容疑者を信じたりするものではない、あくまで問い詰め、とことんまで追い詰めるのだ。そして自説が間違っている事に気づいても決してそれを認めないのだというアンチテーゼを示したのだとも考えられる。密室殺人とファンタジー風味の透明になれる薬をチャンドラーがブレンドするとこんな話になるのだ。

「待っている」は一夜の出来事を語った物語。それぞれの人物が何かを待っている。静かな夜に流れるラジオの音楽など、ムードは満点。限られた空間で起こる一夜の悲劇。それはトニーをこの上なくやるせない気持ちにさせる。その夜、トニーは兄を失ったが、代わりに何かを得たのか?それは解らない。

本書に収録された作品は実にヴァラエティに富んでおり、収録作には外れがない。通常のプライヴェート・アイ物もそれぞれの探偵に特色があり、面白い(特に「真珠は困りもの」のウォルター・ゲイジが秀逸)。チャンドラーらしくない「ビンゴ教授~」もアクセントになっていて、全4冊の短編集の中でこれがベスト。チャンドラーも意外と手札を持っているのが解る作品集だ。

Tetchy
WHOKS60S
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.6:
(5pt)

再販を「待っている」

作家 大沢在昌さんが讀賣新聞の書評で紹介されていたのが、本書『待っている』である。

今月は大沢在昌さん
「アフォリズム(箴言)の格好良さに、一発でやられてしまった」。中学生の時に出会った作家レイモンド・チャンドラーのことだ。「作家仲間からは、『中学生にチャンドラーがわかるのか』と言われたけど、わかってしまったんだから」。思春期の孤独感と、センチメンタルなリリシズムが響き合った。
『さらば愛しき女よ』『長いお別れ』などの長編も愛読した。
ただ、「俺の考えでは、短編の人だと思う」。締まった短編は、何度も繰り返して読んだ。
この短編集の表題作も長い作品ではないが、そのエッセンスを味わえる。ホテルの雇われ探偵であるトニー・リーゼックが、最上階の部屋にいる女性と、刑務所帰りの男が起こす問題に関わっていく。「リゼックが見せる男気、女性との会話。 チャンドラーの良さを、凝縮している。いつ読んでも素晴らしい」
チャンドラーが作り出した私立探偵フィリップ・マーロウは登場しないが、リゼックにも似た部分がある。「己のルールに従って生きていて、巨大な相手にも簡単には負けない。でも、鼻っ柱が強くてぶつかっていくほど愚かではなく、大人の分別も持ち合わせている」。『魔女の後悔』で描いた水原など、自らのキャラクターにも通じる。
「絶対に負けないスーパーマンではなく、弱さがあって、それに負けまいと歯を食いしばる場面に美しさがある」

この本も文庫版で探そうとすると、相当の出費を覚悟しなければならない。
だから私はKindle版で楽しむことにした。
待っている  チャンドラー短編全集 (3)   創元推理文庫 (131‐5)Amazon書評・レビュー:待っている チャンドラー短編全集 (3) 創元推理文庫 (131‐5)より
4488131050
No.5:
(5pt)

人生はたった一度なのに、あやまちは何度でもくり返せるものなのね。

「一、二集がまずまずの売れ行きを示しているのだろうか。再度のおすすめで、引き続きチャンドラー傑作集の三、四集を編むことになった」
と、訳者あとがきにあるが、こちらとしては実に有難いことだ。お陰で魅力的な作品を更に多く拝めることになる。
レイモンド・チャンドラーには生涯で七作品しか長編作が無い。そしてその多くが幾つかの中編作を組み合わせて書かれており、プロットが多岐に亘り、複雑で分かり難い印象を読者に与えがちである。
本書にも、長編作「湖中の女」のベースの一つとなる「ベイ・シティ・ブルース」や、同じく「さらば愛しき女よ」の一部のネタ元になっている「犬が好きだった男」が収録されているが、これらを読むと案外とシンプルなのだなと、長編作とは違った味わいを感じることになるし、また、これらが長編作にどうやって組み込まれるのかが分かって興味深いものがある。

「ベイ・シティ・ブルース」では、珍しく警官と行動を共にする羽目になった私立探偵の主人公が、受動的ともいえる態度を取っている為に、物語は何処へ向かっているのだろうという不安定さをなんとはなしに感じる筆運びであったものの、最後には探偵はチャンドラーの主人公らしくしたたかさを発揮して事件を解決に導く。

続く「真珠は困りもの」では、老婦人の盗まれた真珠の首飾りを探すことになった主人公が、事件の最中に出会った気の良い大男とやはりコンビを組む。しかし、同じコンビでも前作とこうも違うものか。こちらの二人は互いに能動的、行動的だ。幾つかのアンソロジーに組み込まれていると言う本作はなるほど出色の出来で、二人ともナイスガイ、魅力的なキャラクター造りに成功している。情のある会話も楽しい。

また、「犬が好きだった男」は一人称形式の私立探偵物で、ベーシックと言える類いの一作品であるが、初期の物である為だろうか。主人公は元気で無鉄砲、作品自体もかなり暴力性が高い。

「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」は、推理小説物ではなく、訳者をして「老残を描き、本格探偵小説を揶揄した幻想編」と表現させる、人を喰ったなかなか珍妙な作品と言える。そして、三人称形式を採っていながら、登場人物の心情にも触れるなど、非ハードボイルド的とも言える様な、他の作品との文体の変化が為されているのは、これまた妙味である。

どん尻に控えし表題作「待っている」は、ドライで淡々とした名調子、それでいて感傷的なキレのある一作だ。チャンドラー唯一の短編作だそうで、これもまた違う意味で珍しい。
レア揃いで貴重な一冊なのである。

収録作品
「ベイ・シティ・ブルース」
「真珠は困りもの」
「犬が好きだった男」
「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」
「待っている」
待っている  チャンドラー短編全集 (3)   創元推理文庫 (131‐5)Amazon書評・レビュー:待っている チャンドラー短編全集 (3) 創元推理文庫 (131‐5)より
4488131050
No.4:
(4pt)

『真珠は困りもの』が一番の秀作です。

レイモンド・チャンドラ―短編集3を入手して読むことにした。
 ランダムでこの短編集の#2『事件屋稼業』、#1『赤い風車』、#4『雨の殺人者』と読み終えて本書#3『待っている』を読み終えた。
 本書のなかで短編の刊行年と短い感想文を下に記す。

 「ベイ・シティ ・ブルース」は、1938年
 本書のなかでマーロウが登場する唯一の中編である。
 ストーリーが紆余曲折して読み進む途中で物語が見えなくなるから前のページから読み直すこと度々。
 警察官と事件に取り組むが最後に意外な展開で終える。
 
 「真珠は困りもの」は、1939年
 本書中で評者が一番気に入った作品である。
 主人公の大酒飲みのウォルターが超大酒飲みのヘンリー・アイケルバーガーとの二人がコンビを組んで盗まれた真珠を取り返す大騒動。
 頼りなさそうなウォルターだったが・・・読者は微笑みながら読み終えるだろう。

 「犬が好きだった男」は、1936年
 この中編は、途中まで読みかって読んだ記憶が蘇ってきた。
 沖に停泊した賭博船へ犯人と失踪した女性を探偵カーマディが賭博船に乗り込んで結末を迎える。
 刑事の裏切りが「ベイ・シティ・ブルース」と似ている。

 「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」は、1951年
 チャンドラーのお遊び的な作品かな?と思える幻想的な作品。なんせ透明人間が登場するのだから。

 「待っている」は、1939年
 ホテル探偵の粋な計らいも無為に終えるというチャンドラーらしいシニカルな短編。
 
 この短編集4冊を読み終え、やはり翻訳が如何に作品を引き立てるかを知ることになった。
 チャンドラーの長編を多く訳した清水俊二さんと比べると、稲葉明雄さんの訳は残念ながら遠く及ばないと評者には思えました。
待っている  チャンドラー短編全集 (3)   創元推理文庫 (131‐5)Amazon書評・レビュー:待っている チャンドラー短編全集 (3) 創元推理文庫 (131‐5)より
4488131050
No.3:
(4pt)

十分に面白い

早川書房の新訳、新装丁がどのように良いのか書かれていないので、他の方のレビューに素直に頷けない。
この装丁に見られるスコッチだろうウイスキーが氷に注がれたクリスタルのグラス、スリムな紙巻煙草。
表紙を一見すれば、マーロウの人物を伝えて余りないいい出来だと思う。(マーロウを多少でも知ってれば)

このチャンドラーの短編集第3は、書かれた時期も初期の物で、必ずしもマーロウは登場せず、それぞれ
主人公に少しづつ異なる性格が与えられ(マーロウほど個性的でなく、甘さがみえるが…)興味深い。
翻訳も、「事件屋稼業」と比較すれば、こなれていて読みやすいし、こちらの方がストーリーも面白いと
感じる。「短編」と言うより、もう一方の書かれた「中編」がぴたっとくる長さのものに思う。

しかし、アメリカの自治体警察(日本でも戦後の連合国に占領されていた一時期そうだったが)の、
自治体有力者が警察人事を決定することによる組織的腐敗のしやすさ、また現代にも続く銃の野放し
状態が、簡単に銃が使用され、人命が軽いこと。チャンドラーを読みながら、日本のハードボイルド
との違いを感じざるを得ない。
待っている  チャンドラー短編全集 (3)   創元推理文庫 (131‐5)Amazon書評・レビュー:待っている チャンドラー短編全集 (3) 創元推理文庫 (131‐5)より
4488131050
No.2:
(2pt)

決しておもしろくない作品ではないのですが……

この本はこの本単品で十分おもしろいのですが、チャンドラーの短篇を網羅的に読みたい人には、本書をお薦めしません。
 というのも、ハヤカワ文庫より、新訳・新装丁でチャンドラー短篇全集が出ているので、東京創元社には申し訳ありませんが、そちらをおすすめします。
 しかし、チャンドラーは、自らの短篇をもとに長編を執筆していることが多く、チャンドラーの作品全てを堪能したい人は、短篇からでなく、ずばり長編から読むことをおすすめします。短篇を読んでから、長編を読むと数々のネタバレになってしまって、作品のミステリー的要素が損なわれると、私は思います。
 それら考慮の上、短篇を堪能してみるのがよいと思われます。
待っている  チャンドラー短編全集 (3)   創元推理文庫 (131‐5)Amazon書評・レビュー:待っている チャンドラー短編全集 (3) 創元推理文庫 (131‐5)より
4488131050



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