待っている: チャンドラー短編全集3
- チャンドラー短篇全集 (8)
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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東京創元社によるオリジナル短編集第3集。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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作家 大沢在昌さんが讀賣新聞の書評で紹介されていたのが、本書『待っている』である。 今月は大沢在昌さん 「アフォリズム(箴言)の格好良さに、一発でやられてしまった」。中学生の時に出会った作家レイモンド・チャンドラーのことだ。「作家仲間からは、『中学生にチャンドラーがわかるのか』と言われたけど、わかってしまったんだから」。思春期の孤独感と、センチメンタルなリリシズムが響き合った。 『さらば愛しき女よ』『長いお別れ』などの長編も愛読した。 ただ、「俺の考えでは、短編の人だと思う」。締まった短編は、何度も繰り返して読んだ。 この短編集の表題作も長い作品ではないが、そのエッセンスを味わえる。ホテルの雇われ探偵であるトニー・リーゼックが、最上階の部屋にいる女性と、刑務所帰りの男が起こす問題に関わっていく。「リゼックが見せる男気、女性との会話。 チャンドラーの良さを、凝縮している。いつ読んでも素晴らしい」 チャンドラーが作り出した私立探偵フィリップ・マーロウは登場しないが、リゼックにも似た部分がある。「己のルールに従って生きていて、巨大な相手にも簡単には負けない。でも、鼻っ柱が強くてぶつかっていくほど愚かではなく、大人の分別も持ち合わせている」。『魔女の後悔』で描いた水原など、自らのキャラクターにも通じる。 「絶対に負けないスーパーマンではなく、弱さがあって、それに負けまいと歯を食いしばる場面に美しさがある」 この本も文庫版で探そうとすると、相当の出費を覚悟しなければならない。 だから私はKindle版で楽しむことにした。 | ||||
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「一、二集がまずまずの売れ行きを示しているのだろうか。再度のおすすめで、引き続きチャンドラー傑作集の三、四集を編むことになった」 と、訳者あとがきにあるが、こちらとしては実に有難いことだ。お陰で魅力的な作品を更に多く拝めることになる。 レイモンド・チャンドラーには生涯で七作品しか長編作が無い。そしてその多くが幾つかの中編作を組み合わせて書かれており、プロットが多岐に亘り、複雑で分かり難い印象を読者に与えがちである。 本書にも、長編作「湖中の女」のベースの一つとなる「ベイ・シティ・ブルース」や、同じく「さらば愛しき女よ」の一部のネタ元になっている「犬が好きだった男」が収録されているが、これらを読むと案外とシンプルなのだなと、長編作とは違った味わいを感じることになるし、また、これらが長編作にどうやって組み込まれるのかが分かって興味深いものがある。 「ベイ・シティ・ブルース」では、珍しく警官と行動を共にする羽目になった私立探偵の主人公が、受動的ともいえる態度を取っている為に、物語は何処へ向かっているのだろうという不安定さをなんとはなしに感じる筆運びであったものの、最後には探偵はチャンドラーの主人公らしくしたたかさを発揮して事件を解決に導く。 続く「真珠は困りもの」では、老婦人の盗まれた真珠の首飾りを探すことになった主人公が、事件の最中に出会った気の良い大男とやはりコンビを組む。しかし、同じコンビでも前作とこうも違うものか。こちらの二人は互いに能動的、行動的だ。幾つかのアンソロジーに組み込まれていると言う本作はなるほど出色の出来で、二人ともナイスガイ、魅力的なキャラクター造りに成功している。情のある会話も楽しい。 また、「犬が好きだった男」は一人称形式の私立探偵物で、ベーシックと言える類いの一作品であるが、初期の物である為だろうか。主人公は元気で無鉄砲、作品自体もかなり暴力性が高い。 「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」は、推理小説物ではなく、訳者をして「老残を描き、本格探偵小説を揶揄した幻想編」と表現させる、人を喰ったなかなか珍妙な作品と言える。そして、三人称形式を採っていながら、登場人物の心情にも触れるなど、非ハードボイルド的とも言える様な、他の作品との文体の変化が為されているのは、これまた妙味である。 どん尻に控えし表題作「待っている」は、ドライで淡々とした名調子、それでいて感傷的なキレのある一作だ。チャンドラー唯一の短編作だそうで、これもまた違う意味で珍しい。 レア揃いで貴重な一冊なのである。 収録作品 「ベイ・シティ・ブルース」 「真珠は困りもの」 「犬が好きだった男」 「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」 「待っている」 | ||||
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レイモンド・チャンドラ―短編集3を入手して読むことにした。 ランダムでこの短編集の#2『事件屋稼業』、#1『赤い風車』、#4『雨の殺人者』と読み終えて本書#3『待っている』を読み終えた。 本書のなかで短編の刊行年と短い感想文を下に記す。 「ベイ・シティ ・ブルース」は、1938年 本書のなかでマーロウが登場する唯一の中編である。 ストーリーが紆余曲折して読み進む途中で物語が見えなくなるから前のページから読み直すこと度々。 警察官と事件に取り組むが最後に意外な展開で終える。 「真珠は困りもの」は、1939年 本書中で評者が一番気に入った作品である。 主人公の大酒飲みのウォルターが超大酒飲みのヘンリー・アイケルバーガーとの二人がコンビを組んで盗まれた真珠を取り返す大騒動。 頼りなさそうなウォルターだったが・・・読者は微笑みながら読み終えるだろう。 「犬が好きだった男」は、1936年 この中編は、途中まで読みかって読んだ記憶が蘇ってきた。 沖に停泊した賭博船へ犯人と失踪した女性を探偵カーマディが賭博船に乗り込んで結末を迎える。 刑事の裏切りが「ベイ・シティ・ブルース」と似ている。 「ビンゴ教授の嗅ぎ薬」は、1951年 チャンドラーのお遊び的な作品かな?と思える幻想的な作品。なんせ透明人間が登場するのだから。 「待っている」は、1939年 ホテル探偵の粋な計らいも無為に終えるというチャンドラーらしいシニカルな短編。 この短編集4冊を読み終え、やはり翻訳が如何に作品を引き立てるかを知ることになった。 チャンドラーの長編を多く訳した清水俊二さんと比べると、稲葉明雄さんの訳は残念ながら遠く及ばないと評者には思えました。 | ||||
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早川書房の新訳、新装丁がどのように良いのか書かれていないので、他の方のレビューに素直に頷けない。 この装丁に見られるスコッチだろうウイスキーが氷に注がれたクリスタルのグラス、スリムな紙巻煙草。 表紙を一見すれば、マーロウの人物を伝えて余りないいい出来だと思う。(マーロウを多少でも知ってれば) このチャンドラーの短編集第3は、書かれた時期も初期の物で、必ずしもマーロウは登場せず、それぞれ 主人公に少しづつ異なる性格が与えられ(マーロウほど個性的でなく、甘さがみえるが…)興味深い。 翻訳も、「事件屋稼業」と比較すれば、こなれていて読みやすいし、こちらの方がストーリーも面白いと 感じる。「短編」と言うより、もう一方の書かれた「中編」がぴたっとくる長さのものに思う。 しかし、アメリカの自治体警察(日本でも戦後の連合国に占領されていた一時期そうだったが)の、 自治体有力者が警察人事を決定することによる組織的腐敗のしやすさ、また現代にも続く銃の野放し 状態が、簡単に銃が使用され、人命が軽いこと。チャンドラーを読みながら、日本のハードボイルド との違いを感じざるを得ない。 | ||||
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この本はこの本単品で十分おもしろいのですが、チャンドラーの短篇を網羅的に読みたい人には、本書をお薦めしません。 というのも、ハヤカワ文庫より、新訳・新装丁でチャンドラー短篇全集が出ているので、東京創元社には申し訳ありませんが、そちらをおすすめします。 しかし、チャンドラーは、自らの短篇をもとに長編を執筆していることが多く、チャンドラーの作品全てを堪能したい人は、短篇からでなく、ずばり長編から読むことをおすすめします。短篇を読んでから、長編を読むと数々のネタバレになってしまって、作品のミステリー的要素が損なわれると、私は思います。 それら考慮の上、短篇を堪能してみるのがよいと思われます。 | ||||
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