かわいい女
- フィリップ・マーロウ (12)
- 拳銃 (222)
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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『大いなる眠り』から『湖中の女』までチャンドラーはほぼ年1作のペースでコンスタントに作品を発表していたが、本作は6年と非常に長いスパンを空けて発表されている。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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レイモンド・チャンドラーの長編五作目である本書は、前作『湖中の女』から6年を経た1949年に世に出たものだ。 その間、著者はハリウッド映画に携わっていたという。 そこで得た経験を活かしたかったのか、それとも映画界のきらびやかな表面に隠された虚飾に満ちた内実を知り、嫌気が差したのだろうか。物語は、中盤からハリウッド映画界に関わっていくのだが、それまでの作品ではあまり見かけることのなかった性的な表現、描写が結構な割合で書かれている。 物語は、田舎町から出て来た垢抜けないオファメイ・クエストという娘が私立探偵フィリップ・マーロウを訪ね、一年前にベイ・シティに出た兄の行方が分からなくなったので探して欲しいと依頼するところから始まる。 最初からオファメイに不実なものを感じていながらも、依頼を受け、彼女の兄オリンの捜索を始めたマーロウは、様々な登場人物と出会う。 その中にはアル中もいれば、恐喝者もいれば、ハリウッド女優や医師、ギャングもいれば、お馴染みの警察も、そして勿論死人もいる。 これらの登場人物たちが絡み合い、意外にも複雑に物語は進行し、それだけ死体の数も増えていくのだった。 前作『湖中の女』が、第二次世界大戦中に書かれたものだった為か、ちょっと暗い雰囲気の作風だったのが、本作ではだいぶ派手さやワイルドさが目立ち、いかにもパルプ・マガジン的だ。ひょっとして、当時の流行りにでも関係しているのだろうか。 主人公のフィリップ・マーロウも、タフガイさを取り戻し、警官にも検事にもギャングにも屈せず、依頼人に不利になるならば法律までも無視するという、自分のルールに則り行動をしている。 また、タイトルに載せた様な軽妙な記述も数多い。 大体が、『かわいい女』という題名である。原題は『The Little Sister』、訳すれば『妹ちゃん』とでも言うところか。 しかし、勿論のこと、彼女は『かわいい女』ではあり得ない。 | ||||
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レビューに、“チャンドラー自身が失敗作と認めていたらしい"とかいてあった……読んでみて、そうだろうなと思いました。……こういう話だと知っていたら、読まなかった。……レビューを読んでから買えばよかった。……特に、キザなセリフが鼻につく。……それと、アメリカ人て、人と口聞くたびに、相手を殴りたくなるらしくて、アメリカに行くのが怖くなりました。……行く予定ないけど。 | ||||
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謎解きミステリーの面白さよりは、フィリップ・マーロウの人間的な魅力で読ませる作品という印象を受ける。ここでのマーロウは人間的な弱さを持つ私立探偵で、シャーロック・ホームズのようなスーパーヒーローではない。女性には振り回されっ放し、麻薬入りタバコを吸わされたり、警察に逮捕されたりで、散々な目に遭うのもハードボイルドとは程遠いキャラクターである。それがかえって親しみやすいのかもしれない。文学愛好者にとっては、比喩をふんだんに使った彼独特の言い回しも魅力的に映るだろう。とはいえ、ヒロインから兄の失踪事件を20ドルで引き受けるというのはプロらしくない。相次いで起こる殺人事件にしても背後関係や関連人物の関わり合いが複雑で、ストレートに伝わってこない箇所が多々あり、読んでいてもどかしさが募る。マーロウによる一人称で書かれている割には、ストーリーの流れが不可解で不自然。その理由は読者への分かりやすい説明がないからだと思われる。作品の出来栄えとしては、「ロング・グッドバイ」(The Long Goodbye)、「さらば愛しき女よ」(Farewell , My Lovely)に一歩譲る。 訳者の清水俊二氏は映画字幕翻訳の草分けともいえる人。この本は決して読みにくくはないが、言い回しに古さを感じる。タイトルの Little Sister は「かわいい女」と訳されているが、ニュアンス的には「年下の妹」が正しい訳だと思う。というのも、ここでのヒロインは「姉(売り出し中の新進女優)に対する妹(依頼人)」という位置付けで、この姉妹が事件のカギを握る人物となるからだ。村上春樹訳は未読だが、「リトルシスター」となっていて、このほうがピンとくる。 舞台がハリウッドなので、ショービジネス関連の女優、麻薬、医者などが事件に大きくかかわってくるのも興味深い。チャンドラー自身、映画界との関係が深く、脚本も書いている。スタジオ内は男と女がセックスのやりたい放題、というくだりも映画界の内実を知るチャンドラーだからこそ書くことができたのだろう。 マーロウを主人公とする主要作はほとんど映画化されていて、この作品も1969年、ポール・ボガート監督、ジェームズ・ガーナー主演の「かわいい女」(Marlowe)として製作された。未見なので、機会があれば観てみたい。 | ||||
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購入したけどまた表紙デザインが違ってた!これでこの本だけで2回め‼ | ||||
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レイモンド・チャンドラー7作品をランダムで読んできたが、最後になった『かわいい女』(1949年、清水俊二訳、創元推理文庫 )を読む終むことにした。 物語は、売出し中の映画女優メイヴィス・ウェルトと元ギャングのレストランのオーナーであるスティールグレイヴにまつわるスキャンダルをテーマにしている。 メイヴィス・ウェルトの妹オファメイ・クェストがマーロウの事務所を訪れ、兄のオリンを探してほしいと依頼するところかから幕を開ける。 巻末の中島河太郎氏の解説でチャンドラーが、かって推理小説について述べていたことを下の・・・内に転載したい。 ・・・ 彼は「殺人小説はまったく厄介な骨の折れる仕事で、疑問と解決がきちんとしていなければならない代物だ」といい、「推理小説は、ゆっくりと話を洗い上げてて行って、ことの真相を明らかにする要領が必要である。読者の辛抱強さを試すことなのだ。これが文芸として肝要な深遠な形式だなどと、論ずるつもりはない。推理小説にそんな深遠なものはない。ただ組立の技術あるのみで、それもきわめて貧弱なものだ。そのくせ推理小説は、もっとも月並みな作品でさえ、なかなかうまく書けないものである」と述べている。 ・・・ 本作『かわいい女』は、チャンドラーが述べていたことを絵にかいたような作品のようである。 チャンドラーの7作を比べると、この『かわいい女』は、辛抱強さを試されたようで、決して秀作とは言い難い作品だと思いながら読みすすんでしまった。 この作品を書いていたころのチャンドラーは、映画界の仕事に関わっていたから、映画界の嫌なところをリアルに挿入してる。 たとえば、映画俳優のマネジャーを業とする映画界の黒幕シェリダン・バウルを、高慢でムカつく人物として描いていたのは、チャンドラー自身の経験からなのだろう。 中島氏の解説で知ったのだが、チャンドラーは、古典的作品に対する舌鋒は鋭く、ミルンの『赤い館の秘密』やベントリーの『トレント最後の事件』を批判し、さらにクリステイやクロフツをも槍玉ににあげ、セイヤーズの作品など辛辣に酷評している。 評者は、このところブロックやウィングフィールドなどを好み、さらにチャンドラーやハメットを、最近になって読みなおし始めたのが何故なか、いまさらながら気が付いたのである。 読者の趣好の問題だからあくまで評者だけの感想を述べたのですが・・・。 チャンドラーは、ヒッチコック監督の映画『見知らぬ乗客』の脚本に参画し、ヒッチコックと仲が悪くて、あげくに原作にもケチをつけていたというエピソードを何かで読んだ記憶である。 『太陽がいっぱい』で一躍有名になったパトリシア・ハイスミスの『見知らぬ乗客』を、読んでみたくなってしまったのです。 読み終えたら、この映画化された『見知らぬ乗客』DVDも入手して、何十年ぶりになるが観てみようと思いながら本書を読み終えたのです。 | ||||
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