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樽
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【この小説が収録されている参考書籍】
樽の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.27pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全39件 21~39 2/2ページ
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原題 The Cask 原著1920年刊 旧訳版(大久保康雄訳)以来30年以上ぶりに再読したが、予想を上回る面白さに興奮冷めやらぬままレビューを書いている次第。 ロンドンの波止場で荷下ろしされた樽の中から金貨とともに発見される女の死体…ショッキングな発端、フランスさらにベルギーへとドーヴァー海峡を越えて拡がる捜査網。深まる樽の移動の謎と明快でスリリングな謎解きの妙。そして余りに劇的で波乱に富んだ結末。 とても100年近く前の作品とは思えないアクティブな展開を見せる傑作が新訳によって更に現代的に甦る。 付言すれば本書は日本ミステリにとってとりわけ重要な作品だ。 横溝正史の『蝶々殺人事件』(1947年刊)や鮎川哲也の『黒いトランク』(1956年刊)といった本作にインスパイアされた傑作を生み出し、現在に至るまでアリバイ崩しテーマの日本における隆盛をもたらした影響力、それは言い尽くせない程大きい。 そしてクロフツに刺激され、偉大な作品群を生み出した鮎川哲也の情熱、それと同じミステリへの無私の愛情を巻末の有栖川有栖氏による力の入った熱烈な解説にも感じるのだ。 因みに解説で触れられている鮎川哲也が本作の記述上のミスを指摘した「ヒッチコック・マガジン」での座談会は(横溝正史、鮎川哲也、中島河太郎、田中潤司・・・何という豪華メンバー!)当時の編集長であり司会を務めた小林信彦の著書『東京のドン・キホーテ』(晶文社1976年刊)にも収録されている。 | ||||
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うろ覚えなのだが、ジャズ評論家の寺島靖国氏は「名盤には2種類ある」といい、一つは内容が音楽的にすぐれているもの、もう一つは歴史的な意義のあるもの、といった意味のことをどこかで述べていた。それになぞらえて言うなら本作『樽』は後者で、これが現れた1920年という時期を考えればきわめて斬新、独創的な作品であっただろう思う。だが細部の詰め、完成度という点では後のクロフツ作品からみると「甘い」ところが多く、これをクロフツの最上作というわけにはいかない。クロフツは、『樽』で生み出したこの作風を、その後も(多少の変化はあっても、基本的には)頑ななまでに守り通す。本作が古典的名作と言われるのは、ひとえにクロフツの最初の作品だったから、ということにあるのではないかと思う。 どういうところの詰めが甘いかはネタバレになるから書かないが、興味のある方はぜひクロフツの他の作品と読み比べていただきたい。彼の書く作品はどれも面白い。 | ||||
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ミステリーのパイオニアといって良い優れた作品ー樽。これ程、地に足の着いた理に適った推理はお目に描かれません。おそらく,ほとんどの方が手本にしたと思う、アリバイ捜査のバイブルといっても過言ではないでしよう。面白いこと請け合いの大傑作ここにあり。 | ||||
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この作品がなければ、日本に溢れるアリバイ崩しものやらトラベルミステリーやらも存在したかどうか、それぐらいこの作品とクロフツの登場は、画期的な出来事だったと思います。 私がこの作品を読んだのは、高校生の時だったのですが、前半の樽から死体が発見されるまでのくだりが長くて、途中で挫折しそうになったのを記憶しています。しかしいよいよ事件が発覚してからの展開は面白く、別の樽の存在が明らかになってくるあたりで読むのがやめられなくなりました。 本作は、オリジナルが持つ特有の魅力を今尚保ち続けている古典ミステリーの一つであり、この作品を題材とした鮎川哲也の「黒いトランク」の本当の面白さを理解するには、本作を読む必要があると思います。 読んだ当時の紫を使った樽のイラストの表紙が好きでした。それが変更になってしまったのが残念です。 | ||||
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現代にはこの作品より複雑なトリックを用いた作品はたくさんある。ただ、あの時代にこの作品が描かれたという点は高く評価すべきだ。クロフツの作品全般に言える事だが、ストーリーの進行が遅く、なかなか進展しないため読んでいて疲れを感じたり、イライラしてしまうかもしれない。そのため、じっくりと腰をすえて読める人でなければ読破出来ないかもしれないが、これがクロフツなんだから、それくらいは覚悟して読むべし | ||||
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読了して思ったのは「面白いじゃん、これ!」ってこと。 なんで今まで読めなかったのか。翻訳ってつくづく大事だなあと思いましたね。 加賀山 卓朗さん、ありがとう。 とにかく、地味、テンポが遅い、つまらない、とさんざんなクロフツですが、 この作品に関しては、地道な捜査や人間味のある登場人物が好感でした。 まあ、現代の作品にくらべれば、派手さはありませんが、アリバイ崩しの部分は なかなか読ませました。 大陸と英国を結ぶ船、パリからブリュッセルに至る鉄道の旅。 1920年発行という時代の雰囲気もまた読みどころです。 捜査に関わる警部、弁護士、探偵。 それぞれが、手間を惜しまず、優雅にかつ勤勉に働く様が、とても興味深く描か れてました。 夜中まで会議したり、捜査したりしながら、優雅にカフェやレストランで食事を 楽しんだり。移動方法もまた、荷馬車で荷物を運び、人間はタクシーを利用する、 など時代の変革が感じられて面白かった。 もちろんミステリとしての先駆的役割は知られている通りです。 この「樽」から、事実を一つ一つ検証し、推理を積み上げていく緻密なミステリ が始まったのです。 長年の課題、古典ミステリの傑作が、こんなにも面白く読めて本日は大満足です。 | ||||
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フリーマン・ウィルズ・クロフツの代表作にして、 推理小説の新しい地平を開いたといわれる本書「樽」は、 これまで触手が伸びなかったのですが、 最近ミステリの古典に興味を持つようになったことから、 手が伸び、このたび読み終えました。 これまで読まなかった理由は、 「アリバイ崩し=地味=退屈」 というイメージがあったためですが、 この先入観をものの見事に覆すほどの傑作でした。 「アリバイ崩し」は、確かに出てきますが、 それはこの小説の一要素に過ぎません。 犯人像が絞り込まれていくうちに生じた壁の中に 「アリバイ」があるのであって、 小説の主眼は、 緻密な捜査を行い推理を積み重ねていくことで、 事件の真相が次第に明らかになっていく過程を 描くことにあります。 「地味」という点では、 確かに題名の「樽」からして地味。 しかし、20世紀初頭の当時としては、 一般的な運搬道具であった「樽」という日常性から、 女性の変死体という非日常性が出現する冒頭は、 衝撃的であるし、 「樽」がドーヴァー海峡を行き来していた 不可解さを解いていく過程は、 十分に興味深いものです。 そして「退屈」。 それはこの小説には全く当てはまりません。 樽を追いかけていくうちに、 生じた疑問を複数の探偵が一つ、また一つと解消し、 犯人に迫っていく過程は、 リアルかつスリリング。 次の展開が気になり、 頁を繰る手がもどかしくなること請け合いです。 1920年刊行という年月の隔たりを、 全く感じさせない傑作に巡り合えたことについて、 この上ない喜びを感じます。 | ||||
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クロフツと言えば、鉄道時刻表トリックのアリバイ崩しが有名(らしい)だが、本作は魅惑的な謎と意匠に満ちたミステリの醍醐味が味わえる名作。 冒頭に読者を惹きつける謎を提示し、証言者の話が次々と食い違っていく筋立ても魅力的で、 どのように展開していくかがまったく予測不可能で最後まではらはらしながら読むことができる。 薀蓄が語られたり、描写力が格別すごいわけでもなく、 ひたすら謎の解明に主人公達が挑んでいくストーリーなので飽きがきてしまうかもしれないけど、 推理の手際のよさが無駄なく明晰なので野暮ったくない。 | ||||
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ノンフィクションしか最近読んでいなかったのだが、急に推理小説が読みたくなって手に取った本。 読んでびっくりで、こんなに精緻に人を陥れる計略がめぐらされた推理小説は見たことがない。これを一人の頭の中で考え出せるということ自体がすばらしいこと。古典的名著といわれるのは納得。クロフツすごいぞと伝えたくなる一冊。 | ||||
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作者の代表作であると共に、ミステリ黄金時代のアリバイ崩し物の代表作。当時、最も構成美を誇っていたヴァン・ダインの「グリーン家」を上回る構成と賞賛を浴びた。作中、センセーショナルなのは冒頭の船着場の死体出現場面だけで、後はひたすらアリバイ崩しである。作者の前歴は鉄道技師で、そのため鉄道を使ったアリバイ・トリックが多いのだが、イギリスという地理的条件から、英仏海峡を跨いだ作品も多い(「英仏海峡の謎」という作品もある)。クロフツの影響を受けた日本の代表的作家は鮎川哲也氏だろう。 クロフツはクィーン等と異なり華麗なトリックこそないが、とにかく手堅い。本作は、クロフツが練りに練ったアリバイ・トリックを披露したもので、私も樽が一つのうちは謎解きについて行こうと思ったのだが、樽が二つ存在することが分かった時点で追うのを諦めた。まさしく精緻な構想である。 ミステリの黄金期を飾るアリバイ・トリック物で、後世に大きな影響を与えた名作。 | ||||
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奇抜なトリックやよけいな情景描写は無用、ただただ自分も一緒に推理することに喜びを感じる、という人ならば間違いなく十指に入る傑作と思うはず。「推理小説は二度読んで本当の良さがわかる」と言われるが、本当に二度読もうと言う気になる作品はなかなかないのが本当のところ。「樽」なら確かに二度目も十分に面白い。 | ||||
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三部からなっており、それぞれに刑事(=探偵)が殺人事件を追っていくわけなんだけど、まずは樽がドンと出てきて読者の興味を引くわけよね。ついで事件となり刑事が事件を追うわけなんだけど、次々と状況証拠が揃い犯人があがるわけ。今度は犯人と思しき男の友人達が無実を証明するという観点から捜査を始めていく。こういう組み立てで主役交代があって視点が二転三転するけど、それすらも気にならないほどよくできている。余計なものは一切なくただひたすらに足を使って証拠を集め、推理を組み立て、犯人の嘘を見抜いていくという展開に心は躍ったよ。名探偵が推理を披露し暴いた犯人は意外な人物だった・・・という派手さはないが、とても堅実でしっかりしたストーリーに大満足の一冊。最近の作家さんにはないものがあって逆に新鮮でもあり面白かった。 | ||||
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優れた推理小説はどれもそうだけど、捜査の過程がほんとに面白い。この作品はいわゆる凡人型の探偵が足でコツコツと証拠を調べあげていく。凝りに凝った殺人トリックを、天才探偵が一瞬にして見破ってしまう小説が好きな方には退屈かもしれないが、そんな名探偵コナン風のものをアホらしいと思う大人の読者にはかなり楽しいはずだ。 | ||||
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視点となる登場人物が二転三転するため、最初は戸惑うかもしれませんが、読み進めるにつれて事件の展開に引き込まれていきます。難としては、訳が少々古く、「馬方」(「御者」のこと?)などイメージの合わない訳語がところどころ見られる点です。 | ||||
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有名ですが昨今の日本の新しいミステリー小説とは,ものすごく雰囲気が異なります。おちゃらけゼロ。ひたすら事件を追っていきます。戦前の作品ですが,イギリスを中心とした時刻表通りに運行される交通機関が舞台の作品です。この作品を気に入った人は,「黒いトランク」がお勧めです。作者が,樽のトリックは間違っている!,といって書いた作品だそうです。でも,どこか間違っているのか,良く読まないと分からないかも。また,「瀬戸内海の惨劇」もお薦めです。 | ||||
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有名ですが昨今の日本の新しいミステリー小説とは,ものすごく雰囲気が異なります。おちゃらけゼロ。ひたすら事件を追っていきます。戦前の作品ですが,イギリスを中心とした時刻表通りに運行される交通機関が舞台の作品です。この作品を気に入った人は,「黒いトランク」がお勧めです。作者が,樽のトリックは間違っている!,といって書いた作品だそうです。でも,どこか間違っているのか,良く読まないと分からないかも。また,「瀬戸内海の惨劇」もお薦めです。 | ||||
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パリ発ロンドン着の荷物の中にやたらと頑丈な造りの樽が1つ。その中には夜会服姿の美しい淑女の死体が・・・!クロフツ氏はトラベル・ミステリーの元祖だそうです。デビューはアガサ・クリスティと同年。ドーバー海峡を渡る場面が何度もありますが、行程があまり詳しく述べられていない為、最初はうっかり、電車だと思って読んでしまい、????。そうです、当時はユーロスターなんて走っていません(^^;)! | ||||
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推理小説の新たな境地を切り開いたとされるクロフツの代表作の一つ。死体の入った樽の行方を追って、刑事が英・仏両国にまたがった捜査を繰り広げ、淡々と犯人を追っていく。天才的な探偵の類は出てこず、その代わり警察・探偵の緻密な捜査を堪能できるのがこの作品の醍醐味といえよう。刑事のひたすら「足」を使った聞き込みや証拠探しに、いつしか自分も参加している。初めは読みにくいかもしれないが、慣れてくるとその一歩一歩進んでいくストーリー展開にはまっていってしまう。地味な作風ながらも、読み応え充分で満足できる。 | ||||
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クロフツの「樽」と言えば、E.クィーンやA.クリスティの諸作品と並ぶ古典中の古典。ボリュームもあり、何故今更読む必要があるのかと思われる方もいらっしゃるでしょう。確かに時代背景は古いし、殺人事件が続々と発生するというような派手さもありません。しかし、本書のアリバイ崩しの見事さは、下手な日本のミステリーには遠く及びません。私は本書以後、かなりの数のミステリーを読んだと自負していますが、アリバイ崩しというジャンルだけに限らずとも、本書を凌ぐミステリーに出会うことは滅多にありませんでした。解決不可能と思われた謎が、最後にスラスラと解き明かされる快感は、まさに本格ミステリーの王道。初読から10年以上が経っても、あの時感じた感動は、トリック自体を忘れてしまったにも拘わらず、未だに胸に深く残ります。ミステリーファンを自称する若い人には是非読んでいただきたい1冊です。 | ||||
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