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黒い天使
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黒い天使の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
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アイリッシュ/ウールリッチは中学生の頃「幻の女」と「夜は千の目を持つ」を読んでいます。その後、映画やドラマの原作として接した作品もいくつかあるので、外出自粛の2020年のGW娯楽として、完全に未経験の作品であるこれを選択しました。 アイリッシュはやはり文章がうまいです。黙読しているのにムーディな音楽がバックグラウンドに聞こえてくるようだし、さほど具体的に容貌を示されない登場人物たちが、なぜか古いフィルムのようなセピアカラーで脳裏に浮かぶし。 が、読み進み一旦の盛り上がりの後、いよいよこれからが佳境だな、と思う頃、明らかな疵に驚きました。え、これまで何十年も、米国でも日本でも他の国でも、誰もこれを指摘しなかったのか?と。 終盤の主人公の行動は、どう考えても論理矛盾だと思うのです。 そして思い出しました。なぜ中学生の自分が「幻の女」と「夜は千の目を持つ」から先に進まなかったのか。 この2作も破綻があるように思えて、理屈っぽい中学生にはロマンチックな雰囲気や文章なんぞよりそちらのほうが気になり、この作家を読み続けなかったんだ、と。 つまり、アイリッシュ/ウールリッチとはそういう作家なのでしょう。理屈のうえで多少無理があっても、文章と展開の力で読ませてしまう。むしろ「絵空事に文句を言ってどうするんだ?」と思わせ、長年愛読者を保ってきた、という。 ただ、この作品の疵に関しては、1パラグラフ、あるいは1センテンス補うだけで(エクスキューズめいてしまうとはいえ)回避できたんじゃないかな、と思います。私としてはちょっともったいない、という気がしてなりません。 他の人はどう感じるか意見を聞いてみたい作品です。その意味では、Kindle本を購入したので友人に貸せないのが残念です。 | ||||
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旧版の黒沼健訳「黒い天使」の解説で都筑道夫氏は「個人の好みでいわせてもらえば、わたしはこの作家のすべての作品を通じて、この『黒い天使』がいちばん好きだ。」と述べていて、「この長編にウールリッチという作家の特徴がいちばんよくでているような気がする」として次の3点を挙げている。 1 本質的に短篇作家であり、長篇の場合も、エピソードの独立が目につく構成をとることが多い。 2 女を書くのがうまい。ことに窮地に立った若い女性を書かせては比類がない。 3 ということは彼は本質的にロマンティズムの作家であり、都会的な感傷と孤独感と恐怖をその中にもりこんだ点に彼の独自性がある。 この作品はそれぞれのプロットがしっかりしていて、はじめはゆっくりと話が進むが、後半終わりにかけて一気に読ませる面白さがあり、読後感も決して悪くない。新訳になって字が大きくなり読みやすくなったのはありがたい。 | ||||
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本作はデビュー作『黒衣の花嫁』とよく似ています。『黒衣の花嫁』は女性が復讐の為に人を次々と殺していく話ですが、こちらは夫の無実を信じる女性が容疑者のもとを次々と訪れ、犯人かどうかを確認するというストーリー。もちろん実際に犯人なのは一人だけですが、一人一人の容疑者と彼女との関わりがそれぞれ興味深いエピソードになっており、短編をいくつか重ねることによってひとつの長編を作るというウールリッチの得意技が心行くまで展開されています。詩情というレベルを飛び越えてメロドラマチックな情感をかき立てる独特の文体も、本作においてもっともよく表れているような気がします。ついでに、推理小説としては論理的な欠陥を抱えているというのもウールリッチ作品の特徴のひとつですが(?)、本作の欠陥は非常にわかりやすく、かつ解説でもその点が触れられているので、その面でもウールリッチらしさというものを堪能できます。 | ||||
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