処刑宣告



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長編小説

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処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)

2005年01月31日 処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)

新聞の有名コラムニストに届けられた匿名の投書。それは、法では裁けぬ“悪人”たちを“ウィル=人々の意志”の名のもとに処刑する、という殺人予告状だった。はたしてロビイストやマフィアの首領が次々と殺害されてゆく。スカダーは、次のターゲットとしてウィルの処刑宣告を受けた弁護士から身辺警護を依頼された。だが対策を練ったにもかかわらず殺人は実行されてしまう…。ニューヨークを震撼させる連続予告殺人の謎にスカダーが挑む。CWAダイアモンド・ダガー賞受賞。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

処刑宣告の総合評価:7.25/10点レビュー 8件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

人はそんなに強くないからこそ起きた犯罪か

マット・スカダーシリーズ13作目の本書は前作に引き続いて連続殺人事件を扱っている。しかも不可能趣味に溢れた本格ミステリのテイストも同じく引き継がれているのが最大の特徴だろう。

今回スカダーが取り扱う事件は2つ。

1つ目はウィルと呼ばれる社会的制裁者。
誰もが認める悪人なのに裁判の結果、無罪放免になり、大手を振って世間にのさばっている、いわば法によって裁かれない悪人たちを処刑する必殺仕事人だ。ウィルはどんな巨悪であっても宣告通りに始末してきた。それがニューヨーカーたちを、いやアメリカ国民の“正義”を触発し、世間を賑わせている匿名の犯罪者だ。そんな劇場型犯罪にマットは立ち向かう。

もう1つはAAの集会で挨拶を交わす程度の知り合いだった男バイロン・レオポルドが散歩中に何者かによって殺される事件だ。
毎日何千人をも人が殺されているというニューヨークで起きた1人のHIV感染者でもある男の死。一方はマスコミとアメリカ中を賑わせている劇場型犯罪者、そしてもう一方はニューヨークの片隅で起きたHIV感染者の殺人事件。そんな極端に異なる事件にマットは対峙する。

まず解決するのは現代の仕置人ウィルの事件だ。

そしてこの事件の後、マットはもう1つのバイロン・レオポルド殺しの犯人を突き止める。

この一見関係のない2つの事件には一貫してあるテーマがある。それは病魔というキーワードだ。

この社会に蔓延する病気が犯罪を起こさせるという本書のテーマは刊行当時アメリカ社会を席巻していたエイズ、即ちHIVキャリア問題が色濃く反映されているからではないだろうか。特に患者の多かったアメリカでは日本の数倍ものセンセーショナルな病気だったのかもしれない。

人の心とはなんと弱いものだろう。挫折をバネにして再起を果たしても忌まわしい記憶は決して当人の心からは消え去ることはなく、その疵の傷みを止めるためにその手を汚す。

それらはいわゆる「魔がさす」という類のものだろう。
そして数秒間に1人が死ぬと云われているニューヨークでは1つ1つの事件が必ずしも解決されるとは限らず、恐らく彼らの殺人も次々と起こる事件の荒波に埋没する運命だったのかもしれないが、魔がさして成された殺人を抱えたまま生きるのはやはり苦しく、ある者は自らの命を絶ち、ある者は積極的に自白をし、ある者は観念して罪を告白する。

本書は現代に甦った仕置人の正体を探る本格ミステリ的な設定を持ちながら、最後に行き着くところは名探偵の神懸かった推理や驚愕のトリックが登場するわけでもない。
マットが素直に人間を見つめてきたことによって出た答えによって導かれた犯人であり、そのどれもが人間臭く、決して他人事とは思えないほど、その心の在り様がリアルに思えるのだ。
前作『死者の長い列』の解説で法月綸太郎氏は同書と本書が謎めいた連続殺人事件を扱っていることで本格ミステリとしても読める異色作だと述べていたが、とんでもない。これまでの作品同様、八百万の人間が住まうニューヨークに起こる人間の営みとそれが引き起こす人間の心の変化による犯罪を扱っているのだ。

そしてまたもや事件に遭遇することでマットの身辺に変化が訪れる。
今回は事件自体が派手なこともあって、今回はマットがなんとマスコミたちの注目の的になる。
マットがウィルの正体を突き止めたことがマスコミにリークされたからだ。これが今後彼の事件の関わり方にどんな変化が訪れるのか、ちょっと想像がつかない。

そして『処刑宣告』という物々しいタイトルとは裏腹に結末は実に暖かい。『倒錯の舞踏』以来、マットの好パートナーとして活躍してきたTJに思いもかけないプレゼントが与えられるのだ。
それはまずパソコンだ。これは恐らく機械音痴であるマットに替わって捜査のツールとして使うために与えられたようだ。
そしてマットが今まで住んでいたホテルの部屋が終の棲家として与えられる。つまり彼はマットの本当の相棒になったのだ。一介のストリート・キッズだった彼がここまでの存在になるとは思わなかっただけにこれは読者としても何とも嬉しいサプライズだった。

マットを取り巻く人々とマット本人の世界はますます彩りを豊かにしていく。アル中で子供を誤って銃で撃ち殺した元警官という忌まわしい過去を背負った中年男の姿はもはやないと云ってもいいだろう。
しかし本書はどれだけ歳月を重ねても人の抱えた心の疵はなかなか消えないことを謳っている。あまりに順調なマットの人生に今後途轍もない暗雲が訪れそうである意味怖い気がする。
この平穏はしばしの休息なのか。
まあ、そんなことは考えずにまずはこのハッピーエンドがもたらす幸福感に浸ることにしよう。


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No.7:
(3pt)

クリスマスプレゼント

アメリカのクリスマスプレゼントは豪華だな。経済の指標になってるくらいだから我々とは別世界の規模なんだろう。スカダー・エレイン・TJのプレゼント交換もなかなかの豪華版。スカダーからTJへのプレゼントは豪華かつ愛情のこもった素晴らしいもの。ふたりの新たなる出発点を暗示してるのだろうか。終わり良ければすべて良し。
処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)Amazon書評・レビュー:処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)より
4576050222
No.6:
(3pt)

またもや2度買い

またしても、家の中のどこかにある本を購入してしまった。もっとも、内容の大半を忘れており、飽きずに読めた。凝った(凝りすぎた)ストーリーで、なぜか他の作品のように没入するところまでには至らなかった。鮮明に覚えていたのはTJとのラストシーンで、結局のところ、自分は殺人事件の謎解きよりも、こういう場面を好んで読むのだということを再認識させられた。
処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)Amazon書評・レビュー:処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)より
4576050222
No.5:
(4pt)

少しネアカになったスカダー。

評者は、マット・スカダー・シリーズを、出版時系列で読んできていなかったので最近になつて読んだ記憶にない作品をピックアップして読むようになった。
 本作『処刑宣告』も読んだ記憶がないので入手して読むことにした。
 訳者の田口俊樹氏が「訳者あとがき」で、「今やネクラ探偵というキャッチフレーズはあたらない。アルコール依存と言う心の病は生涯背負っていかなければならないものだとしても、探偵免許を習得し、エレインと結婚もし、所得の申告もし、慈善団体に寄付までしている今のスカダーは、まさに善良な市民探偵である」と記述していた。
 なるほどネアカとまでは感じないものの、たしかにスカダーの性格描写に以前のような陰影を感じさせるところはなくなったのが少々物足りなさを覚えたのは否めないだろう。
 が、生命保険を売買を仲介する会社など暗いテーマも本作には登場している。 
 本作『処刑宣告』では「フーダニット」と「ホワイダニット」を上手く織り込んだブロックならではのミステリー作品となっている。
 巻末でスカダーがTJへのクリスマスプレゼントを引き渡すシーンに「ほろり」とさせてくれた。
処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)Amazon書評・レビュー:処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)より
4576050222
No.4:
(2pt)

なぜこうなった・・・

スカダー・シリーズの魅力は「誰も見向きもしないような」もしくは「犯罪がおこなわれたことさえ誰も知らないような」事件を解決するのが醍醐味なのに今回はニューヨーク中の刑事が投入されても解決を見ず、新聞もこぞって毎日書きたてるような事件を解決する。

派手な事件なのにつまらない。
鮮やかに解決するのにかっこよくない。

プロットがどうのというより「スカダーらしくない」の一言に尽きる。
処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)Amazon書評・レビュー:処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)より
4576050222
No.3:
(4pt)

罪から救われたスカダー

ここまで来たか、というのが初読の印象である。
再三指摘されているように、スカダー・シリーズは「罪と罰」の物語である。
幼い少女を射殺してしまったというスカダーの持つ「原罪」は、自身の離婚と、家族との離別がその根底にあると、作者であるブロックは自己分析している。自分の家族への罪悪感が、罪を抱えたスカダーという男を生み出したのだと。
それを踏まえて読むと、今作は非常に興味深い。ミステリ的趣向が前面に出されてはいるけれど、実はミステリとしては完全に破綻していて(なんと中盤でアッサリ「犯人」が分かってしまう)しかしその破綻した部分こそがスカダー・シリーズの魅力であり、特徴でもある。
現実は、ミステリのように綺麗に解決したりはしない。その現実に、スカダーはずっと苦しめられてきた。だからこそ、今作の「犯人」が選んだ結末には驚かされる。前作に引き続き、スカダーが「神の役を演ずる」必要はもはやないのである。
処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)Amazon書評・レビュー:処刑宣告 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)より
4576050222



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