砕かれた街



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    初公開日(参考)2004年06月
    分類

    長編小説

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    砕かれた街〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

    2004年06月30日 砕かれた街〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

    世界貿易センターへのテロから一年。いまだ事件は市民ひとりひとりに暗い影を投げかけていた。いつものように掃除人が契約先のアパートメントを訪ねたところ、寝室で女性が絞殺されているのを発見する。すぐにひとりの作家が逮捕された。女とともにバーを出るのを目撃されていたのだ。事件はあっけなく解決するかに思えたが、ふたたび掃除人は仕事先で三人の女性の惨殺死体に遭遇する。作家は犯人でないのか。 (「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.50pt

    砕かれた街の総合評価:7.17/10点レビュー 6件。Cランク


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    全2件 1~2 1/1ページ
    No.2:
    (7pt)

    9・11を経たNYでの事件をブロック流に描くとこうなる

    ニューヨークに生まれ、マット・スカダーシリーズを中心にニューヨークを描いてきたブロックが9・11後のニューヨークを描いたのが本書。そこにはスカダーは描かれず、ニューヨークに住む人々を描いた群像劇の様相を呈している。

    ニューヨークで知り合いや友人の掃除代行をして生計を立てているジェリー・パンコーが出くわす殺人事件を軸にニューヨークに住む人々の生活が語られる。

    画廊を経営するスーザン・ポメランスは殺人事件の被害者マリリン・フェアチャイルドに不動産を紹介してもらった縁があった。彼女は彼女の専属の初老弁護士モーリー・ウィンタースを筆頭に男と女区別なくセックスに溺れていた。

    殺人事件の容疑者にされた小説家のジョン・ブレア・クレイトンは自分の無罪を晴らすためにモーリー・ウィンタースを弁護士として雇い、保釈金を払って釈放される。事件の話題がホットなうちに次作を物にして、ベストセラーを狙っている。

    元ニューヨーク警察本部長のフランシス・バックラムは次期市長選に乗り出そうと画策している。

    そして9・11の事件で家族を喪った男は殺人を重ねていた。
    ニューヨークの歴史の中で起こった数々の悲劇。南北戦争時に起きた徴兵暴動。ドイツ系移民をぎゅうぎゅう詰めにした遊覧船が全焼して沈没したジェネラル・スローカム号事件。150人もの針子が工場火災で亡くなった<トライアングル・シャツ>社火災事件。ニューヨーク・ギャング、マフィアの抗争。
    それらの事件はこのニューヨークという市が甦る為に捧げられた犠牲だと彼は考えた。従って彼が殺人を重ねるのはもまた9・11で破壊された市を甦らせるための人身御供を捧げるためであり、建物に放火していくは再建するためだった。

    そんな彼の正体は案に反して早々に判明する。下巻の76ページで彼の素性が警察の捜査で明らかになるのだ。
    広告会社の元調査課長である彼はしかし隠れ家を転々としながらニューヨークを離れない。寧ろ自分の痕跡を残すことで彼の名前と偶々犯罪でハンマーと鑿を使用したことから付いた綽名“ハービンジャー・ザ・カーペンター”の存在をニューヨーカーたちに知らせ、畏怖させようとする。

    一方でもう1つの物語の軸となるのは美人の画廊主スーザン・ポメランスのエスカレートするセックス・ライフだ。専属の弁護士とたまに情事を愉しむだけだったのが、ボディ・ピアスを開けたことで潜んでいた性に対する飽くなき探求心が高まり、性欲の赴くままに街を徘徊しては男たちを誘い、アブノーマルなセックスに興じる。その相手が当初殺人事件の容疑者とされていたクレイトンへと繋がっていく。

    それぞれ関係のないと思われた登場人物が次第に事件とスーザンの夜の活動によって繋がりを形成し出す。

    そう、この800万もの人間が巣食うニューヨークで起きる、9・11のある犠牲者によって引き起こされる狂信的な連続殺人はなんと1人の奔放な性活動を多種多様な人物と繰り広げる女性によって解決の糸口が見出されていくのだ。

    これはブロックなりのジョークなのだろうか?
    アラブ人のテロリストによって破壊されたニューヨークで悲劇のどん底に突き落とされた人々。どうにか傷が癒え、再興に向けて歩き出している人々が再び出くわした悪夢に対して、セックスによってそれまでの価値観を崩され、新たな自分に目覚めていく男たちを生み出す一人の女性がそれぞれの事件を繋げていく。
    つまりスーザン・ポメランスのセックスこそは再生の象徴と云っているのだろうか?

    率直に云ってスーザンが繰り広げるセックスの開拓はほとんどポルノ小説のようである。いやそのものと云っていいほど詳細に、且つ濃密に描かれている。
    これが1人の哀しきテロリストによる狂信的なニューヨークの再生を謳った暗い色調の物語を一変させているのだ。しかもこの2つは物語に上手く溶け合っているとは正直云い難い。このスーザンの物語は本当に必要だったのか、甚だ疑問である。

    さてニューヨークを舞台にしていながら探偵は出てくるものの、それはスカダーではなく、全く別の人物である。しかしそれでも本書とスカダーシリーズは同じ世界で書かれていることが明かされる。

    それは『死者の長い列』で登場した三十一人の会に所属する不動産会社を経営するエイヴァリー・デイヴィスが登場した事だ。また事件発見者のジェリー・パンコーがAAの会にも出ているなど、随所にスカダーシリーズを想起させる世界観が内包されている。

    そう考えるとニューヨークのハイソサエティの世界で奔放な性活動を繰り広げるスーザン・ポメランスはエレイン・マーデルの代役とも考えられる。つまり本書はエレインの側から事件を描いた作品なのだと。

    いやこれはやはり穿ちすぎだろう。

    ニューヨーカーであるブロックにとって9・11は途轍もないショックをもたらしたことだろう。しかしブロックが紡いだ9・11後のニューヨークは悲劇を乗り越え、それでも強かに生きている人々の姿だった。
    9・11は終わりではなく、また始まりでもない。確かに以前と以後では変わった物も事もあったが、それはニューヨークの歴史の中での通過点の1つであった。
    それが証拠に我々はまだ生きているではないか。生活を営んでいるではないか。ブロックが人生讃歌の物語を書くとこんな風になる、いい見本だと思った。


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    Tetchy
    WHOKS60S
    No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
    (8pt)

    9.11後のニューヨーク

    ローレンス・ブロックの14年ぶりのノンシリーズ作品。ストーリーとしては、連続殺人事件とそれにかかわりを持った人々の生き方を描いているのだが、真の主役は9.11の悲劇を経験したあとのニューヨークの街と人だろうか。登場人物がみんな、相当にエキセントリックであることが、あの悲惨な出来事が与えた絶望感の大きさと再生の難しさを物語っていると感じた。

    iisan
    927253Y1
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    No.4:
    (4pt)

    『生』への物語

    アメリカ屈指のハードボイルド作家、ブロックが書いたのであるから、
    本書には当然のごとく『死』そして『殺し』のシーンが多々登場する。
    ただ本書の中では、その殺人者でさえ歴然とした『悪』ではない。
    マット・スカダーシリーズで時折描かれるような倒錯したセックスシーンもふんだんに登場するにもかかわらず、
    それは『悪』に付随するものではなく、『生』に付随するものとして描かれている。
    それが鼻につくまでいかないが、ところどころ、スカダーシリーズを
    髣髴とさせる言い回しや価値観が出てくる場面もある。しかし読後の今残った感想は、強いて言うなら、本書は『ロマンス』の部類に入るのではないかということだ。
    出版社的には『サスペンス』とあるのだが、911のテロ、その1年後に突如起こる連続殺人を背景に、
    本書でブロックは、自分自身にも向けて『生』、それも『力強い生』…生きる力を描こうとしたのではないだろうか。
    砕かれた街〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)Amazon書評・レビュー:砕かれた街〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)より
    4576041282
    No.3:
    (3pt)

    SO WHAT ?

    9・11NY-それこそ「八百万」の思いがニューヨーカーにはあるに違いない。僕たちはメディアを通じての、いささかエキセントリックな反応しか見聞きすることはないけれど、本人が意識していない影響や、他人が理解し得ない反応もきっとあるはずだ。スカダーやバーニイを通じて、リリカルで残酷で、時にはユーモラスなNYを描いてきたローレンス・ブロックが、この題材を放っておくはずがない。
    しかし「9・11」が、どーんと居座る類の話ではない。むしろわざと描かないことで、NYの人々への深く消し去ることのできない喪失感や悲しみを表現しようとしているーさすが大御所ブロック!と言いたいところなんですが、それは決して成功しているとは言えません。登場してくるニューヨーカーはさすがに流麗な筆捌きにかかると、ヴィヴィッドに描かれはするけれど、うまく描かれれば描かれるほど「だから何なの?」と思えてきちゃうんですよね。冗長でとりとめがなく、要点もぼやけている。そしてやたら長い。ひとつひとつのエピソードを短編にして、お洒落な雑誌に載せれば、ものすごく楽しめるモノになったのじゃないのかなーと思いました。しかし!よーく考えてみると今までの彼の作品に「要点」なんてあったっけ?あの暗いスカダーものでさえ、彼の作品は「エンタテイメント」であったはず。その彼に「要点」を求めるほど、あるいはその彼があの「事件」を取り上げざるを得なかったほど、あの「事件」というのはとてつもなく大きな影を落としたんじゃないのかなーと思います。解説によれば本書は一気呵成に書き上げられたとか。そうまでして書きたかったのか、あるいはまとめ切れなかったのか。
    僕は前者だと思いたい。だからもうすこし熟成させたこの「事件」に関する、彼の作品を読んでみたいのです。
    砕かれた街〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)Amazon書評・レビュー:砕かれた街〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)より
    4576041282
    No.2:
    (3pt)

    ブロックらしい小説?!

    911のあとを生きる人たちの苦悩を描いた小説ですが、数人の登場人物を軸として展開するのですが、感情移入できないのが読んでいてシンドイ感じがしました。個人的におもしろかったと思うのは、作家の新作がオークションで高値をつけていくくだりです。エージェントが活躍して、完成前に出版社が多額のアドバンスを支払ったりするのは、小説も映画などでもアメリカでは日常的ですが、そのへんの話がおもしろかったです。全体としては上手にまとまっていて、さすが文章教室やら作家になるための本などを出してるローレンス・ブロックらしく、小説のセオリーをはずさずに書けてるので損はありません。でも登場するのが金銭的には成功してる人たちばかりで陰鬱なのも皮肉なのかなぁと。私もブロックファンとしては、やっぱり暗いといわれようとも読後に哀しくなるにせよ、スカダーものの新作を待っている1人です。
    砕かれた街〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)Amazon書評・レビュー:砕かれた街〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)より
    4576041282
    No.1:
    (4pt)

    しまりがないが面白い

    主人公が誰だかはっきりしないんですね。画廊の女主人なのか、被疑者の小説家なのか、犯人の男なのか、元市警本部長なのか・・・、元警察官ののんだくれ探偵が出てきて一時期待しましたが瞬間的な活躍で、結局、誰に対しても感情移入ができなくて、読書の形としてはストーリーを追いかけるということになります。で、ストーリーとしては、9/11後のニューヨークで、連続殺人事件の犯人が、微妙に交錯する人間模様に絡んでくるというL.ブロックの作品ならではで、冗漫さは感じるもののなかなか面白い展開です。特に異常なセックス描写には驚きです。私としてはマットスカダーの新作を早く読みたいのですが、この本はこの本で充分楽しめました。
    砕かれた街〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)Amazon書評・レビュー:砕かれた街〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)より
    4576041282



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