暗闇にひと突き



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初公開日(参考)1985年06月
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長編小説

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暗闇にひと突き (ハヤカワ・ミステリ文庫)

1990年08月31日 暗闇にひと突き (ハヤカワ・ミステリ文庫)

若い女性ばかり狙った、9年前の連続刺殺事件はニューヨークを震憾させた。犠牲者は皆、全身に無数の傷を受け、その見開かれた両眼は、アイスピックでひと突きされていたのだ。ブルックリンで殺されたバーバラも、当時その犠牲者の一人と考えられてしいた。が、数週間前に偶然逮捕された犯人は、バーバラ殺しだけを頑強に否定し、アリバイさえも立証されたという。警察の捜査再開も期待できず、父親はスカダーに真犯人深しを懇願したが…。暗闇に埋もれた過去を求め虚無の街を彷徨うアル中探偵スカダーの姿を哀切に描き出す傑作ハードボイルド。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

暗闇にひと突きの総合評価:8.11/10点レビュー 9件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

暗闇、それは即ち忘れたい過去

シリーズ4作目の本書ではスカダーは彼が警官時代に担当した連続殺人事件の被害者の真犯人を捜そうとする。それは彼の過去との対峙でもあった。

アイスピックを使って女性ばかりを襲う連続殺人魔。8人もの犠牲者が出た後、ぱったりと事件は沈静化する。それは当の犯人が長期強制入院させられていたからだった。
そして9年後の今、その犯人が捕まり、解った事実が8人の犠牲者のうち、その1人バーバラ・エッティンガーは自分が殺したのではないということ。その父親は彼女を殺した真犯人捜しを当時警官で事件を担当していたマットに依頼するというのが今回の話だ。

しかし9年もの歳月の変化はマットの捜査を困難にする。しかし時の流れで消え去った証拠をマットは捜すのではなく、当時事件に関係していた人たちを訪ね、その人となりに触れることで事件の真相を掴もうとする。
これは警察の捜査ではできないことだ。私立探偵の免許もなく、依頼された者たちに少々の報酬を頂いて便宜を図る男マットだからこそ、自分の直感とやり方に従って人と人の間を逍遥する。
それは警官の誰かが云った、炭鉱の中で黒猫を探すようなことだ。

それがまた否が応にも自分の警官時代の事を思い出させることになる。マットは事件を捜査することでかつて警官だった自分についても思いを巡らせるのだ。

しかし連続殺人犯をテーマに扱いながら、ブロックはなんとも地味に物語を展開させるのだろう。通常ならば連続殺人犯による犯行がリアルタイムで起きている状況下で物語を紡ぐことだろう。その方がサスペンスも盛り上がるし、また何より物語に起伏も出る。

しかし敢えてブロックはそれをある女性の過去の殺人の真相を探るモチーフとして扱うだけに留めるのだ。しかも連続殺人事件は9年も前の事件にして。
従って物語は数少ない当時を知る人を探り当てるところから始まり、また当時を知る者も既に記憶が曖昧になって実に心許ない。つまり読者は過去を探るスカダーと共に何とも手ごたえの感じない捜査の一部始終を体験するのだ。

なにゆえこのような展開をブロックは選んだのか。
やはりそれがスカダーの向き合う仕事に相応しいからだということだろう。連続殺人犯と云う敵と戦うマットはどうしても武闘派にならざるを得ないが、マットにはそんなポジティブな行為は似合わず、過去の疵を抱いて時々自分に仕事を頼む人から少しばかりの報酬を貰ってその日暮らしの生活をする、人生の落伍者には過去を辿る行為こそがお似合いなのだろう。

それを裏付けるかのようにスカダーは過去と向き合う。
当時もう1人ブルックリンで殺人鬼ルイス・ピネルの毒牙にかかった女性の捜査に携わった巡査に逢った時、自分を重ねる。その巡査バートン・ハヴァーメイヤーもまた警官を辞めた男だった。彼はまだ経験浅い頃に出くわした陰惨な事件の犠牲者と彼女の死に様を発見した彼女の子らの泣き叫ぶ声が耳に焼き付いて離れないがために。それは誤って少女を撃ち殺したことで職を辞した自分のもう1つの姿だった。

そして物語も半ば、依頼人であるチャールズ・ロンドンから事件の捜査の打ち切りを申し出られるが、スカダーはそれを拒否する。9年もの前の事件を調べるのに四苦八苦しながらもスカダーは何かが動き出していることを感じていた。しかしロンドンは過去をほじくり返すことで知らなくてもよかった娘の過去が白日の下に曝されるのを怖れていた。

前作でも抱いたのはなぜスカダーは敢えて寝た子を起こすような行為をするのかということだ。しかしその疑問について私はある一つの答えを得たような気がした。
それは自身が抱える過去の闇を忘れずに酒に溺れ、半ば死んでいるような日々を送っているからこそ、過去を忘れ去ろうとする人々が許せないのだろう。

しかし過去を抱えて今を生きるマットの生き方は決して誉められたものではない。『一ドル銀貨の遺言』では過去の過ちを消し去ろうと努力し、それぞれが成功を収めている人々がいる。過去を抱え、定職にすらつこうとしない男と過去を消し、いまを生きようとする人々。この二律背反な構図は決してスカダーが真っ当な人間ではないことを指す。

しかしこれこそが正義を貫くことの代償なのだろう。正しいことをすることは何かを捨てる事なのだとブロックはスカダーを通して我々に示しているようだ。

このマット・スカダーの物語は上昇志向の人々にはそぐわないものだろう。誰でも失敗はするし、それを糧にして今をもっと頑張ろうと生きる。マットの生き様はそんな前向きの生き方とは真逆なものだ。

しかしなぜか彼の持つペシミズムは誰もが持つ過去の疵にしみいるように響くのだ。もしかしたら一つ間違えれば自分もまた彼のような境遇に落ちていたのかもしれないと思うからだろうか。そしてその時の自分はマットのように自らの正しいと思う事の為にこれほど一途になれないだろうとまた思うのだ。だからこそマットのやり方を全否定できない自分がいるのだ。

事件の真相は実に意外なものだった。

原題は“A Stab In The Dark”。Stabという単語には「突き刺すこと」という意味以外に「人の心を傷つける事」という意味も持つ。
暗闇にひと突き。暗闇は9年前の事件のことを指す。すなわち忘れ去られようとする過去でもある。
その暗闇を突き、人の心を傷つけたのはマットその人であった。すなわちこの題名は過去を掘り起こすマットのことを指しているのだ。
読後に立ち上るもう1つの意味。実に上手い題名だ。

そして今回マットは事件で知り合った保健所の元経営者ジャニス・キーンといい仲になるが、アル中を治そうとAAの集会に出るといってそのままジャニスはマットに別れを告げる。
かつて結婚して保健所を経営しながら、好きになった女性の許へ走って子供と夫を残して失踪した過去を持つジャニスはその後9年もの間1人だった。そんな彼女に訪れたマットという安らぎは逆に心地よすぎてまた失う時が来るのを怖れたのかもしれない。アル中を断ち切る行為はすなわちマットと過ごす楽しいひと時との別れだ。まだ関係が浅いうちにいずれ訪れるであろう辛い別れを迎えないための別れだったのかもしれない。

そしてマットはまた夜の街に、アームストロングの店に向かって、酒を飲む。彼に訪れる安寧はまだまだ先のようだ。


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No.8:
(3pt)

犯罪の動機がちょっと・・・というシリーズ繋ぎ作

捕まった連続殺人犯が唯一やっていないと主張する殺人を主人公が捜査する様依頼され・・・というお話。

最後まで読んで、殺人の動機がやや弱い様に思えました。こんな理由で人を殺す事がありうるだろうか?という感じで納得できませんでした。その為、次作の傑作「八百万の死にざま」への繋ぎ作の様に思えました。解説で評論家の池上さんは犯罪の動機と主人公のスカダーの内面が呼応していて、充実した内容と書いてらっしゃいますが、私も考え様によってはそうかもとも思いますが・・・。酒を飲んだ後、記憶がなくなるという重要な場面もありますが。

この文庫が出た当時最新作だった「慈悲深い死」がファンの間で賛否両論だったそうで、酒がシリーズを担保していたのに主人公のマット・スカダーが酒を飲めなくなると、凡百の私立探偵小説と同じになると危惧されたそうで、私もそう思いましたが、その後復調して最高傑作とも言われた「墓場への切符」などで評価がまた上がったので、酒を飲めなくなってもシリーズを続けたのは正解だったかも。

本書に関して言えば、やはりシリーズの繋ぎ作だと思うのでここから読まない方がいいかも。出来ればシリーズ順で読んだ方がいい作品。繰り返しますがここから読まない様に。好きなシリーズなので褒められず残念。
暗闇にひと突き (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:暗闇にひと突き (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150774528
No.7:
(5pt)

kindleをもっと

ローレンスブロックのスカダーものやケラーシリーズは大好きです。それらのkindleもお願いします。
暗闇にひと突き (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:暗闇にひと突き (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150774528
No.6:
(5pt)

文句なしに面白い!

スカダーの孤独の深度がどんどん増していくさまが哀愁をさそうシリーズ4作目。魂が彷徨うさまは痛々しいほど。終盤でのジャンとの会話は悲しくやりきれない。「人は住まいを変える。人生もまた変わる」というスカダーのセリフが強く印象に残る。
暗闇にひと突き (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:暗闇にひと突き (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150774528
No.5:
(4pt)

静かにはじまり、静かに終わる。

主人公は酔いどれ探偵スカダー。
元々は警官だった男ですが
「ある事件」がゆえに警官を辞めています。
そして、家族の元も去りました。

まあ、とにかく、飲みます。
ちゃんと仕事もしますが、比例して飲みます。
時折失敗して、ひどい形相にもなります。

事件は9年前の連続殺人事件のうち
1例のみ別件とされた事件の再調査を
スカダーがするものです。

このスカダーはただのしがない酔いどれに見えますが
そうではありません。
ほんの少しの糸口をものにする
勘の鋭い男といえます。

現実にある盲点をひょんなことからつかんだことから
この事件の真犯人に行き着くことになるのですから。

この作品には多少のロマンスもあります。
ですがジャンルはハードボイルドですので…

真相部分は決して興奮するものではありません。
やはり、静かに幕を引いていきます。
恋の行方も…

ワクワクの作品とは対を成す、
静の極みの作品でした。
暗闇にひと突き (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:暗闇にひと突き (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150774528
No.4:
(5pt)

傑作です パッドで電子書籍を読むかと決心一歩前までゆきました

スjカダーものは、どれを読んでも面白い。スカダーの個性が初めから決まっているからだと思います。ただ全巻読むには、新刊ではなく、古書まで探さねばならないのが残念。パッドで電子書籍を読むかと、決心一歩前までゆきました。
暗闇にひと突き―マット・スカダー・シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1453))Amazon書評・レビュー:暗闇にひと突き―マット・スカダー・シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1453))より
4150014531



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