一ドル銀貨の遺言



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初公開日(参考)1988年11月
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長編小説

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1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)

1988年11月30日 1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)

たれ込み屋のスピナーが殺された。その二ヵ月ほど前、彼はスカダーに一通の封書を託していた―自分が死んだら開封してほしいと言って。そこに記されていたのは彼が三人の人間をゆすっていたこと、そしてその中の誰かに命を狙われていたことだった。ニューヨークを舞台に感傷的な筆で描く人気ハードボイルド。アル中探偵マット・スカダー・シリーズ。 (「BOOK」データベースより)




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一ドル銀貨の遺言の総合評価:8.17/10点レビュー 6件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

正義を貫くゆえの犠牲

マット・スカダー3作目の本書では亡くなった強請屋から預かった封筒に記された3人のうち、強請屋を殺した犯人を探り出すという、フーダニット趣向の物語。

しかしそんな趣向とは裏腹にその語り口はほろ苦さと哀切を湛えて、心に染み込むしっとりとした文体。
マットは警官時代に付き合いのあった情報屋のために警察でさえまともに捜査しない殺人事件に、自分を餌にして挑む。

ブロックの人物造形の素晴らしさは定評があるが、本書ではスカダーに強請のネタが入った封筒を預ける強請屋スピナーの造形が秀逸。その名は会話する時に一ドル銀貨を回しながら、話し相手を見ずにその回転するコインを見て話する事に由来する。この登場人物一覧表にも名前がない小男の悪党がなぜか印象に残る。

また捜査の過程で挿入されるスカダーの独白が実に心地よい。
殺された強請屋の的となっていた3人に出逢い、実際にその目で観察する人となり。いずれもが社会的に成功した人物であり、内面に強さを秘めていながらも、強請の種があり、それに屈して大金を払う弱さがあるはずだと観察する。

また自らを生贄とすることで犯人を炙り出そうとするスカダーが別れた妻の許にいる息子たちと会話した後、ふと自分も強請屋のように殺され、二度と息子たちと話せないのではないかという思いに駆られたりもする。
孤独だと思っていたからこそ自分を生贄に捧げようとしたのが、まだ自分には愛する者が残っていたことを思い出し、恐怖に駆られる、そんな心の襞を描くのが実に上手い。

しかし本書のスカダーの捜査は第三者の目から見て実は余計なお節介であり、善か悪かと問われれば悪の側としか云えないだろう。

強請られる3人は1人は建築コンサルタントとして資金繰りに四苦八苦している経営者であり、娘の平穏を大事に考える男。
1人はポルノ女優の過去を持ち、若い頃、荒んだ生活を繰り返しながらも現在は富豪の妻としてセレブリティの1人として生きる女性。
最後の一人は若い頃に事業に成功し、その資金を元手にニューヨーク州知事選に臨もうとする若き政治家。しかし彼には少年性愛という忌まわしい趣味があった。

誰しも隠したい、忘れ去りたい過去はあるものだ。人間、なんらかの失敗をせずに生きることなど不可能に等しい。
強請屋とはすなわち誰しもが陥る過去の過ちをほじくり返し、眼前に突付け、弱みに付け入り、半永久的に金をせびる、下衆の生業だ。

しかしマットはそんな仕事よりも彼が警官時代に築いた強請屋との関係を大事にし、また人殺しを嫌うがゆえに彼ら彼女らの人生に分け入り、真相を明らかにしようとする。

つまりマットは強請屋との腐れ縁の為に社会的に成功した人々たちと逢い、人殺しをした犯人を捜そうとするのだ。

これは人生の落伍者同士が持つ同族意識なのか。
いや違う。殺人と云う犯罪をもっとも忌み嫌うマットにとって町のダニとも云える強請屋の死さえも自分の身の周りにいた人間が殺されたことが許せないのだろう。警官さえも見向きもしない社会の底辺で生きる者たちへの義憤が、相手が社会の成功者であり、その安定した生活を壊すことになろうとしても敢えて火中の栗を拾おうとするのだろう。

このシリーズ3作のどれもがほろ苦い結末をもたらす。マットの側で書かれるがゆえにマットの正義に同調する趣があるが、今までの物語はそっとしておけばいいことをわざわざ掘り返して相手の生活を、将来を壊していくことばかりだ。
このマット・スカダーという男がそこまでして殺人という行為を嫌悪する思いの強さは単に自分が不慮の事故で少女を殺してしまったことによる罪悪感だけではないように思える。

まっとうな商売では生きられない人々には優しく、自身の安寧の為に殺人を犯した、もしくは犯さざるを得なかった巷間の人々に厳しい眼差しを向ける、この落ちぶれた元警官の無免許探偵をもっと理解するために今後の彼の生き様を見ていこうと思う。


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No.5:
(3pt)

回る1ドル銀貨

何故、そんなことをそこまでするのか?と思うけれどだからこそのハードボイルドなのでしょう。おいおいちょっとそう急ぎなさんなって推理が多いのはアルコールがまだ足りんのか飲みすぎなのか。このシリーズは面白い。
1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)Amazon書評・レビュー:1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)より
4576881663
No.4:
(4pt)

軽いながらも読み応えのあるシリーズ第三作

無免許の私立探偵の主人公の元に殺されたタレコミ屋が一通の封筒を託し・・・というお話。
タレコミ屋が三人の人物を強請っていた事が判り、自ら強請を装い主人公のマット・スカダーがその三人の周辺を探るが・・・という展開はあまり新味はないし、実際によくあるタイプの類型的なミステリですが、主人公を始め、端役までキャラクター造形がしっかりしていて、お話も小味ながらもきちっと纏まっていて、尚且つ文章が巧いので最後まで飽きさせずに読めます。
この時点では後の私立探偵小説/ネオ・ハードボイルドを代表する連作になる予見を感じさせるとか、後出しじゃんけんみたいな事は言えませんが、読んで損のない、短いながらも読み応えのある小説になっております。
関口氏のマット・スカダーのキャラクターがどういう風采でどういう信念で生きているかをこの時点で翻訳されていた作品から読み解く解説によると、イマイチマット・スカダーというキャラがはっきりしない部分が多いとの由で、私も読みながらあまりマットがどういう人かよく判らないのに気づきました。この辺は著者もまだ偉大なシリーズを書こうとか大志がなかったのかなとか思いました。
軽いながらも読み応えのあるシリーズ三作目。機会があったら是非。
1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)Amazon書評・レビュー:1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)より
4576881663
No.3:
(5pt)

すらすらと読めます。

レビューの高評価に引かれて購読しましたが、期待を裏切らない仕上がりの作品だと思います。それほどの長編ではないので、サクサクと読み進められます。人気シリーズだそうですが、確かにおもしろく読めました。雰囲気のある翻訳も良いと思います。この作者は多作だそうですが、他の作品も読みたくなりました。ハードボイルド好きの方にはお勧めです。
1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)Amazon書評・レビュー:1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)より
4576881663
No.2:
(4pt)

じみーな物語

殺された強請屋に託された強請のネタを手がかりに、殺人犯をアル中探偵、Matt Scudderが追い求める・・・といったお話です。

ストーリー展開としては、テンポも悪く、謎や伏線の張り方も今一つといった印象です。しかし、全体を覆う鬱屈とした雰囲気と人間模様で読ませます。ストーリーよりもスタイルで読ませるといったところでしょうか。

主人公の行動に、いくらなんでもこれは許されないだろうと思うものがありますが、そこを除けば、暗い感じのミステリーが好きな人なら読んで損はしないでしょう。

英語は若干、代名詞が何を指しているのか分かりにくいと思いますが、手ごろな分量ですし、登場人物も少なく、読みやすい部類に入るでしょう。
1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)Amazon書評・レビュー:1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)より
4576881663
No.1:
(5pt)

そんなマット・スカダーが好き

もしマット・スカダーが今も警官でアル中じゃなかったら殺害された友人の為にゆすり屋になりすまし捨身で捜査しただろうか。今の彼だから執念と命懸けで正面から取り組み真相を暴く事が出来るのであり、アル中だからこそ罪悪感に苛まれ死者に対して蝋燭に火を灯す事が出来るのでしょう。きっと飲まない生活が来たとしても彼は死者への弔いは忘れる事はなく銀貨をテーブルの上で回してくれると信じています。そんな心優しい彼に好感を持ちました!
1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)Amazon書評・レビュー:1ドル銀貨の遺言 (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)より
4576881663



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