殺し屋 最後の仕事



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殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

2011年09月21日 殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

アイオワ州の切手ディーラーの店で、ケラーは遊説中のオハイオ州知事が何者かに射殺されたとのニュースを聞く。引退を考えていたケラーが、アルと名乗る男の依頼を最後の仕事にしようと、アイオワにやってきたのが数日前。やがてテレビに知事の暗殺犯としてケラーの顔写真が映しだされる。全国に指名手配され、ドットとも連絡が取れなくなったケラーの必死の逃亡生活が始まった―濡れ衣をはらすため、そして罠にはめた男への復讐のために。シリーズ最強と評価される傑作ミステリ。 (「BOOK」データベースより)




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殺し屋 最後の仕事の総合評価:8.38/10点レビュー 8件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

何とも不思議な余韻を残す殺し屋物語

殺し屋ケラー4作目の本書は長編でケラーに最大の危機が訪れる。
第2作品も長編だったが、構成としては連作短編集のような作りであったのに対し、本書はケラーが州知事殺しの犯人として追われるという逃亡劇が全編に亘って繰り広げられる。

今回は前短編集のうち「ケラーの遺産」と「ケラーの適応能力」に登場した謎の依頼人アルが本格的にケラーを抹殺しようとする物語だ。
不穏な空気を纏わせた正体不明のアルが本性を現してケラーたちに牙を剝く。それは実に用意周到に計画された罠で、ケラーは依頼で訪れたオハイオ州で州知事暗殺の冤罪を着せられるのだ。犯行にはケラーの指紋がべったり付いたグロッグが使われ、それが警察に凶器として押収される。そして全米にケラーの顔写真が貼り出される。

さらに衝撃的なのはケラーの相棒であったドットの死だ。頭に銃弾を2発撃ち込まれた挙句にホワイトプレーンズの自宅を放火され焼死体となって発見される。
正直この展開には目を疑った。死体は人違いではないかと何度も繰り返して読んだほどだ。それほどまでにシリーズにとって衝撃的な出来事だった。

おまけにケラーの自宅にも魔の手が伸び、彼の唯一の趣味だった切手のコレクションが軒並み押収される。つまりケラーの住まいも安全ではないため、彼は逃亡生活に踏み切るのだ。

そして流れ着いたニューオーリンズでレイプされそうになった女性を助けたことでその女性、地元で教師をしているジュリア・エミリー・ルサードの協力を得て、ニコラス・エドワーズと名乗って建築業の仕事にありつき、別の人生を歩みだす。

どうだろう、この教科書通りの起承転結の物語運び。まさに無駄のないストーリーテリングでしかも読者の予想通りにはいかないのだ。

そんなストーリーの中にはケラーという人物を改めて再認識させるエピソードが散りばめられている。

例えば自宅の切手コレクションを盗まれることに気付くシーン。通常ならばこんな状況になればコレクターならば誰もが多大なる喪失感に襲われるだろう。しかしケラーは事実は事実として受け入れるだけなのだ。
おまけに250万ドルもの資産もドットがいなくなったことで引き出せなくなるのだが、それに対しても大して執着しない。普通悪に手を染めた人間ならば金に対する執着心が人一倍強いはずなのに、ケラーにはそれがなく、あるがままに受け止め、他人事のように処理する。

これは殺し屋であるケラーが標的に対して感情移入せずに常にドライに対処することから来ているのだろう。つまり殺しをただの仕事として捉え、人の命を奪うという行為に罪悪感を覚えないのだ。
ならばケラーは精神異常者かと云えばそれも違うような気がする。但し殺しのスキルは身についており、レイプされそうになったジュリアを救うためにレイプ犯を何の躊躇いもなく殺害するのだから、心の置き方が人とは違うのだろう。麻痺しているというのが正しいのかもしれない。

しかしそんな彼でさえ、今回自身が標的となって全米で追われる身になって初めてこれまで殺害してきた人物に思いを馳せる。
特にこのシリーズの第1話とも云える証人保護プログラムで身元を変えた人物を殺害した件に関してはニコラス・エドワーズという別の人物に成りすましたことで自身のことのように彼のことを考えるのである。単なる仕事のための標的でしかなかった人々に初めてケラーは自身の感情を向けるのである。
また逃亡中にショッピングカートを回収する仕事をしている少年を見て、殺し屋稼業に就いた自分の人生について初めて過ちだったと後悔したりもする。

さらには赤の他人には決して明かさなかった自分の名前を初めてジュリアに打ち明ける。もうケラーはニコラス・エドワーズとして生き、ジュリアと2人幸せに過ごして暮らす覚悟がついていたのだ。

さらにケラーを追いつめる宿敵はアル、作中ではミスター“私のことはアルと呼んでくれ”とも表記されているが、恐らくこれは原文では“You Can Call Me Al”ではないだろうか。つまりポール・サイモンのヒット曲のタイトルである。
そんな風に考えて読むのもまた一興か。

閑話休題。

ケラーが逃亡者の境遇に置かれることで過去の仕事で始末した人々を回想するシーンがたびたび挿入されるため、本書はシリーズの総決算的な作品のように読める。
特にドットが亡くなった時点でブロックがこのシリーズにけりをつけようとしているのだと強く思った。

しかしそんな読者の感傷めいた思いを見事にユーモアで翻すのがブロックの筆さばきの妙だ。

しかしこの殺し屋を主人公にしながらも終始落ち着いた雰囲気で展開するこの物語はなんとも不思議な余韻を残す。

今まで書いてきたように今回ケラーは州知事暗殺の犯人に仕立て上げられ、全米に顔写真が出回り、指名手配され、逃亡の身となる。
しかしそれでもケラーには次から次へと危難が訪れるわけではない。見知った顔のマンションのドアマンには賄賂を渡して口封じをし、立ち寄ったガソリンスタンドで独り身の経営者に面が割れるくらいだ。それまでは終始逃亡者としてのケラーの猜疑心と過去に葬ったターゲットに対する思いが延々と綴られる。

やがて全米指名手配にもかかわらず、ケラーの周りにはとうとう警察の捜査の手は及ばず、ニューオーリンズでケラーの新パートナーとなるジュリアに出会ってからは髪型と色を変え、眼鏡をかけて人相が若干変わり、また新しい身分を手に入れたことで解決してしまう。

直接的にせよ関わりがないにせよ7人もの死人が出る物語である。これだけ人の生き死にも扱っていながら熱を帯びない作品も珍しい。血沸き肉踊らない殺し屋の物語なのだ。

しかしだからといって面白くないわけではない。エキサイティングには程遠いが読み進めるうちにケラーの足取りと読者自身の思いが同調するが如く、先の読めない展開を味わいながら愉しむのだ。
そう、美味しい酒をチビリチビリと呑み、悦に浸る味わいが本書の持ち味なのだ。


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No.7:
(5pt)

グーグルマップでケラーの逃避行を追ってしまいました。

評者は、ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズと泥棒バーニー・シリーズのほとんどを読んでいたが、殺し屋ケラー・シリーズは、『殺し屋』(原題:Hit Man)の一作しか読んでいなかった。
 主人公が殺し屋を稼業にしているストーリーに多少抵抗感があり、次を読むのを避けてきたが、一作目の短編集が結構面白かったのを思い出して本作『殺し屋 最後の仕事』(原題:Hit and Run)を入手して読むことにした。
 ケリーは、アルと名乗る男からの依頼でアイオワ州のデモインという街で一人の男を殺す依頼を受けて仕事に出かけていた。
 空港に迎えに来た耳毛男の指示に従って殺しの日にちが一日伸ばしにされ少々違和感を覚えながら待機していた。
 そんな折に、切手取集が趣味のケラーは、切手デーラーでスエーデンの古い切手セット5枚を600ドルの現金で支払って買ってしまった。
 その店の親父がテレビを見ながら「なんてこった」と驚きの声をあげた。
 そこでケラーは、オハイオ州知事が暗殺されたことを知り不安に襲われる。
 やはり、「アルと名乗る男」の罠に嵌ったケラーは、殺しの仕事を受けてくれる友人でもあるドットとの連絡も取れなくなり、全国ネットのTVで顔写真も出るような知事殺しの容疑者として追われる身になってしまった。
 そのあと、ドットも家ともども焼き殺されたことを知ったケラーの不安は深まるばかり。
 切手に600ドル費やして手持ちの現金が残り200ドルあまり、さて、絶体絶命のケラーの逃避行は如何に!
 出たとこ勝負で逃避行をすすめてゆくケラーの心理の綾をブロックならではの筆さばきで読ませてくれる。
 ケラーがどのようにしてこの窮地から脱出できるのか?
 読者はドットももちろん生きていて、ケラーもなんとか窮地から逃れてハッピーエンドになることを知ってはいる。
 が、著者のブロックがどのようなメニューをこれから読者に与えてくれるだろうかという興味だけでページを繰ることになるのです。
 ネタバレを一つだけ書かせてもらいますが、ドットと連絡がとれるようになったとき、電話を切るまえにドットがケラーに「これだけは守るのよ、いい?彼女を犬の散歩に行かせないこと。しっかりつかまえておくのよ」と語ったところで評者は笑ってしまったのです。
 シリーズの第一作『殺し屋』を読まれた読者なら、第四章の「犬の散歩と鉢植えの世話、引き受けます」を必ず思い出していただけると思います。
 ページが残り少なるのが惜しいような気がしながら最終ページまで楽しみながら読ませてもらいました。
殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)Amazon書評・レビュー:殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)より
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No.6:
(4pt)

好きな作家ですのでほとんど読んでいるようです。

気にいっています。(妻が)
殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)Amazon書評・レビュー:殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)より
4576111213
No.5:
(5pt)

ケラー、引退。

ご存知「殺し屋ケラー」シリーズの最終回(のはず)。
「殺し屋ケラー」シリーズは、その飄々としたストーリーが独特の持ち味。
今回ケラーは"仕事"のために訪れたアイオワ州で、遊説中のオハイオ州知事が何者かに射殺されたとのニュースを聞く。
今回の仕事を最後に引退を考えていたケラーだが、テレビに知事の暗殺犯としてケラーの顔写真が映しだされる。
まんまと嵌められたケラー。必死の逃亡生活が始まる…。
実際、ストーリーの大部分はたいした趣向もないケラーの逃避行。
しかし読みだすと止まらない。淡々としながらも目を離せないストーリーはみごと。
ラストのオチは??。
読んでのお楽しみだが、あまりにも淡々としすぎてる?
殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)Amazon書評・レビュー:殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)より
4576111213
No.4:
(3pt)

結構冷酷な殺し屋ケラー・ファンの為の引退セレモニー話...

暗殺犯に仕立てられて、アイオワからNYまで結構きつい逃避行を強いられるが、(この辺りまでは、シリーズの何時もの展開と異なり、
後半での、凄まじいpay backの予感があったのだが....)ガス・ステーションの老店主を殺害する事で、何とか生き延びると、
後は幸運というか僥倖に恵まれっぱなしで、口の堅い恋人と新しい住まい、定職まで確保、されには
失くしたはずの膨大なコレクションがひょんな成り行きになったり、一文無しに陥ったはずが、"あの人"の機転で...
最後には、今まで以上の物を手にしたにも係わらず、復讐も...こりゃァ、ケラーファンには堪らん結末である事は間違いなかろう.
そういった作者の意向(?)に沿って本書を読了できれば、多少の筋の大まかなところに目をつむり、大満足の☆5になったんだが、
私は本シリーズに関してはそれほど熱心なファンと言うわけではなく、純粋にミステリーとして本の’裏書の粗筋’の面白さにつられて読了したのだが、
やっぱり、その方向から見ると、オハイオ州知事暗殺の種明かしもなく(実行犯は誰?その結末は?何故ケリーがダミーに?etc.)
確かに逃避行中のお話に思わず引き込まれる事は確かだが、プロット全体的には雑さが気になる。
(と言うか元々ケリー中心でそれ以外は、さして練られた物語でないのは確か、ジュリアにしても、今度は自分が消される、とかいう恐怖心はないのか?)
繰り返しになるが、私に言わせれば結構残忍で、利己的な(殺し屋が利己的なのは当たり前か...)ケリー&ドット・チームに、
どれくらい肩入れ出来るかで、評価が変わる本でしょう。
続編があるなら、今度はケラーが過去に殺した人間の関係者に徹底的に追いまくられる、その中で無くしたくない物をいっぱい手にした
ケラーが今度は如何対処していくのか、読んでみたい気がする。
殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)Amazon書評・レビュー:殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)より
4576111213
No.3:
(3pt)

いつもながら、面白いけど・・・。

解説の伊坂幸太郎氏に激しく共感。立ち読みで解説を読んでから購入というのもありかも。正直、短編連作のこれまでの作品ほど、熱中できなかったものの、ファンならやっぱりケラーがどうなってしまうのか、気になって一気に読んでしまう。公園で襲われている女性を助けて、知り合うなどなんかストーリーの安直さも感じますが、ケラーの第二の人生というか新たな居場所を確保していく様は興味深い。過去の作品のエピソードが、結構散りばめられているので、最初の「殺し屋」くらいは読んでおいたほうが楽しめるかと思います。
殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)Amazon書評・レビュー:殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)より
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