黒い天使



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初公開日(参考)1957年01月
分類

長編小説

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黒い天使 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

2005年01月31日 黒い天使 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

夫はいつも彼女を「天使の顔」と呼んでいた。彼女を誰より愛していたのだ。それが突然そう呼ばなくなった。ある日、彼女は夫の服がないことに気づく。夫は別の女のもとへ走ろうとしていた。裏切られた彼女は狂おしい思いを抱いて夫の愛人宅を訪ねる。しかし、愛人はすでに何者かに殺されており、夫に殺害容疑が!無実を信じる彼女は、真犯人を捜して危険な探偵行に身を投じる…新訳で贈るサスペンスの第一人者の傑作。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点10.00pt

黒い天使の総合評価:9.00/10点レビュー 4件。Bランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(10pt)

夜の切なさに包まれるかのよう

妻アルバータを「天使の顔(エンジェル・フェイス)」と呼んで愛でる夫カークはいつの頃か、妻をそう呼ばなくなった。妻は気付いていた。夫が浮気している事を。しかしいつか夫は戻ってきてくれるものだと信じていた。
だが夫が荷造りをしたスーツケースを隠しているのを知ったアルバータは浮気相手である女優ミアのところへ怒鳴り込んでいく。しかし既にミアは死体となっていた。そして挙げられた容疑者は夫カーク!アルバータはミアのノートに記されていた4人の男と接触し、夫の無実を証明する証拠を摑もうとするのだった。

泣けた。静かに泣けた。夜の切なさに包まれたかのようだ。やはりウールリッチはすごい。

『喪服のランデヴー』に代表される連作短編集のように物語を紡ぎだすウールリッチのスタイルは健在。今回は夫の冤罪を晴らすべく浮気相手の4人の男と妻アルバータの物語として描かれる。
1人目はミアに魂を抜かれた元夫で人生のどん底の貧民街で暮らす男の話。次はミアを麻薬の運び屋に使っていた違法医師の話でスリラータッチのこの話がもっともぞくぞくした。3人目の男は資産家の遊び人だがとても魅力的な男との話。そして最後の男はナイトクラブを経営する裏稼業に足を突っ込んだ男の話。

最初の2人目まではおろおろしながらも勇気を振り絞って犯人かどうかを探る初々しさと危うさが出ていたアルバータだが、3人目からは百戦練磨の女詐欺師の如く、恋は売っても愛は売らず、冷えた頭で犯人かどうかを洞察する女性に成長しているのが面白い。そして一人称で語られるがゆえにその人と成りが実は男を狂わすほどの美貌を持っている事を徐々に悟らせる事となる。
アルバータという主人公の魅力はこの美貌を備えているのにも関わらず、天使の如く純粋な心を捨てきれないところにある。浮気をした夫を刑務所から出すために犯罪まで犯す彼女の不器用なまでの純粋さは、夫の愛を超えた女の意地というものも感じられ、興味深い。

特に白眉なのは3人目の男、ラッド・メイソンの章である。この男は心底アルバータを愛し、またアルバータも心を許した存在となる。しかし彼女は彼が犯人でない事を知ると去っていくのだ。犯人でない事を願いつつ、それが証明されると去らなければならないジレンマ。お互いが魂で通じ合っているのに女だけが始まった時から別れがあるのを知っているという事実は胸を苦しませる。
しかし自分が窮地に陥ったときに助けを求めたのが彼だったことから、深く愛していた事を知る。そして衝撃の事実と結末。切ない。切なすぎる。
メイソンの喪失感は特にふられた事のある者―特に男(もちろん私もそう)―なら痛切に判るだけに胸に鉛のように沈み込んでいく。

そして今回は今まで以上に特に名文が多かったと感じた。ところどころではっとさせられた。
そんな数ある名文の中から最も印象が残ったのはこの文章。

「(前略)ただ上を見るだけ―」(中略)憶い出が行く場所は下ではなく、上なのだ。

私はこの文章にこう続けたい。

だから私は上を向く。でないと涙がこぼれてしまうのだ。

誰もがロマンティストになる小説だと思った。本当にウールリッチは素晴らしい。

Tetchy
WHOKS60S
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.3:
(3pt)

明らかな疵がある作品だが...それを超えて愛読されてきた、ということだろうか

アイリッシュ/ウールリッチは中学生の頃「幻の女」と「夜は千の目を持つ」を読んでいます。その後、映画やドラマの原作として接した作品もいくつかあるので、外出自粛の2020年のGW娯楽として、完全に未経験の作品であるこれを選択しました。

アイリッシュはやはり文章がうまいです。黙読しているのにムーディな音楽がバックグラウンドに聞こえてくるようだし、さほど具体的に容貌を示されない登場人物たちが、なぜか古いフィルムのようなセピアカラーで脳裏に浮かぶし。

が、読み進み一旦の盛り上がりの後、いよいよこれからが佳境だな、と思う頃、明らかな疵に驚きました。え、これまで何十年も、米国でも日本でも他の国でも、誰もこれを指摘しなかったのか?と。
終盤の主人公の行動は、どう考えても論理矛盾だと思うのです。

そして思い出しました。なぜ中学生の自分が「幻の女」と「夜は千の目を持つ」から先に進まなかったのか。
この2作も破綻があるように思えて、理屈っぽい中学生にはロマンチックな雰囲気や文章なんぞよりそちらのほうが気になり、この作家を読み続けなかったんだ、と。

つまり、アイリッシュ/ウールリッチとはそういう作家なのでしょう。理屈のうえで多少無理があっても、文章と展開の力で読ませてしまう。むしろ「絵空事に文句を言ってどうするんだ?」と思わせ、長年愛読者を保ってきた、という。

ただ、この作品の疵に関しては、1パラグラフ、あるいは1センテンス補うだけで(エクスキューズめいてしまうとはいえ)回避できたんじゃないかな、と思います。私としてはちょっともったいない、という気がしてなりません。

他の人はどう感じるか意見を聞いてみたい作品です。その意味では、Kindle本を購入したので友人に貸せないのが残念です。
黒い天使 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 373)Amazon書評・レビュー:黒い天使 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 373)より
4150003734
No.2:
(5pt)

最後は一気に読ませる切れ味は抜群

旧版の黒沼健訳「黒い天使」の解説で都筑道夫氏は「個人の好みでいわせてもらえば、わたしはこの作家のすべての作品を通じて、この『黒い天使』がいちばん好きだ。」と述べていて、「この長編にウールリッチという作家の特徴がいちばんよくでているような気がする」として次の3点を挙げている。
1 本質的に短篇作家であり、長篇の場合も、エピソードの独立が目につく構成をとることが多い。
2 女を書くのがうまい。ことに窮地に立った若い女性を書かせては比類がない。
3 ということは彼は本質的にロマンティズムの作家であり、都会的な感傷と孤独感と恐怖をその中にもりこんだ点に彼の独自性がある。
この作品はそれぞれのプロットがしっかりしていて、はじめはゆっくりと話が進むが、後半終わりにかけて一気に読ませる面白さがあり、読後感も決して悪くない。新訳になって字が大きくなり読みやすくなったのはありがたい。
黒い天使 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 373)Amazon書評・レビュー:黒い天使 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 373)より
4150003734
No.1:
(5pt)

あらゆる面でウールリッチらしい作品

本作はデビュー作『黒衣の花嫁』とよく似ています。『黒衣の花嫁』は女性が復讐の為に人を次々と殺していく話ですが、こちらは夫の無実を信じる女性が容疑者のもとを次々と訪れ、犯人かどうかを確認するというストーリー。もちろん実際に犯人なのは一人だけですが、一人一人の容疑者と彼女との関わりがそれぞれ興味深いエピソードになっており、短編をいくつか重ねることによってひとつの長編を作るというウールリッチの得意技が心行くまで展開されています。詩情というレベルを飛び越えてメロドラマチックな情感をかき立てる独特の文体も、本作においてもっともよく表れているような気がします。ついでに、推理小説としては論理的な欠陥を抱えているというのもウールリッチ作品の特徴のひとつですが(?)、本作の欠陥は非常にわかりやすく、かつ解説でもその点が触れられているので、その面でもウールリッチらしさというものを堪能できます。
黒い天使 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 373)Amazon書評・レビュー:黒い天使 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 373)より
4150003734



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