黒衣の花嫁



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初公開日(参考)1982年12月
分類

長編小説

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黒衣の花嫁 (ハヤカワ・ミステリ文庫 10-4)

1982年12月31日 黒衣の花嫁 (ハヤカワ・ミステリ文庫 10-4)

ジュリーと呼ばれた女は、見送りの友人にシカゴへ行くと言いながら、途中で列車をおりてニューヨークへ舞い戻った。そして、ホテルに着くと自分の持ち物からイニシャルをすべて消していった。ジュリーはこの世から姿を消し、新しい女が生まれたのだ……やがて、彼女はつぎつぎと五人の男の花嫁となった――結婚式も挙げぬうちに喪服に身を包む冷酷な殺人鬼、黒衣の花嫁に。巨匠ウールリッチの黒のシリーズ劈頭を飾る名作。(「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

黒衣の花嫁の総合評価:8.06/10点レビュー 16件。Bランク


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(7pt)

冬の寒さがこの遣る瀬無い結末を一層身に染入らせる

ウールリッチお得意のファム・ファタール物のサスペンス。謎の美女による連続殺人事件を描いた作品だ。

被害者はそれぞれ株式仲買人に年金暮らしのホテル住まいの男、そして普通の会社員、画家に作家とそれぞれバラバラだが、殺人犯のジュリーとだけ名前の判明した女性には彼らが持つある共通項に基づいて殺害を行っている。

それぞれの被害者と謎めいた女性殺人者ジュリーとのエピソードはまさにそれ自体が短編のような読み応えで、これぞまさにウールリッチ・タッチだと存分に堪能した。

まず最初の餌食となる株式仲買人のジョン・ブリスの前に黒いドレスを身に纏った周囲の目を惹く金髪美人として登場し、スカーフをバルコニーから落としてそれを取らせて身を乗り出したところを突き落として殺害する。

次の犠牲者ミッチェルでは彼の住むホテルの部屋を予めチェックし、彼が飾る女性遍歴の写真を見て、彼の理想の女性のタイプを突き止め、赤毛の理想の女性として登場し、お酒を愉しみながら毒を盛って毒殺する。

次の一介の会社員フランク・モランは彼の5歳の子供から家族構成や家庭の情報を聞き出し、彼の妻マーガレットを偽の手紙で実家に帰らせ、その間子供の世話を頼まれた幼稚園の先生に成りすまし、彼の部屋で子供の相手をしながら、かくれんぼに参加するよう誘い込み、一度入ってしまったら外から開けないと出れない階段下の部屋に彼を閉じ込め、窒息死させる。

次の画家ファーガスンには絵のモデルとして登場し、彼が正規に手配されたモデルを断るほど見事に取り入ることに成功する。しかし夜な夜な行われるパーティーで面が割れることを恐れる綱渡りの中、ブリスの友人コーリーが現れる。彼はジュリーに逢ったことがあると思いながらも思い出せないでいると、狩りの女神ダイアナに扮した彼女は矢で彼を射ち殺す。

最後のターゲット、作家のホームズには彼の口述記録のタイピストに成りすまし、暖炉の熱でライフルの弾が暴発してお決まりの位置に据えられている書斎の椅子に座る作家に命中するよう工作するが…。

ある時は金髪の黒衣の女性、またある時は赤毛の理想の美人、またある時は赤みがかった金髪の化粧っ気のない幼稚園の先生、またある時は黒髪の画家のモデル、そしてある時は白髪交じりの髪をした中年の婦人に扮して標的となる男たちの前に姿を現す美と知性と度胸を兼ね備えた稀代の悪女ジュリー。

しかし彼女は決して自分の復讐に他者を巻き込ませようとしない。年金生活者のミッシェルを殺害した後にたまたま彼の許を訪れた彼の恋人メイベルを偽の容疑者に仕立てず、逆に自分が彼をたった今殺害したから、巻き込まれたくなかったらすぐに去るように命じる。

更にモランに近づくために息子の幼稚園の先生ミス・ベイカーに成りすまして殺害し、その後の捜査でベイカー本人が嘘のアリバイを供述したために本当に容疑者になろうとしたところを匿名の電話を警察に掛けて誤認逮捕であることを告げる。

自分の殺人に責任をもって行っている、気高さすら感じる公平さを持っている。

彼女がなぜ彼らの命を取ろうとするのか。

姿を変え、危険を承知で近づき、そして復讐を果たす。
しかし決して被害者周囲の関係のない者達には迷惑を掛けずに、時に自分が殺人を犯したことさえ話して現場から追い払い、または冤罪を掛けられそうになった者を救うために匿名で電話さえもする。

しかし周囲が振り返るほどの美貌を持ち、そして貴婦人、幼稚園の先生やタイピストなど千変万化の変身・変装ぶりを遂げるこのジュリー・キリーンという女が、殺人を犯さない間は何をしていたのか?

現在社会ではこのジュリーの犯行は計画的に見えてかなり危ない橋を渡ったもので、顔も隠していないどころか複数の目撃者もおり、逮捕されるのも時間の問題のように思えてならないだろう。

しかしウールリッチの抒情的かつ幻想的な語り口がそんな偶然性、現実性を霧散させ、まるで復讐を遂げようとするか弱き美女の死の魔法が成功する様を酔うが如く堪能するような作りになっている。

愛ゆえの女性の復讐譚である本書が女性がまだ男から軽んじられている時代に書かれたことを我々は知らなければならない。
作中でもプレイボーイの男がジュリーにあしらわれたのを根に持ち、憤慨する様に刑事は同情し、好感さえ覚える、そんな時代だ。そんな時代に女性の強さを強調した本書は母親と一緒に暮らしていた作者だからこそ書けたのだろう。
それでもこの徒労感漂わせる結末は何とも遣る瀬無い。冬の寒さが身に染みる夜だけにこの女性の虚しさが一層胸に迫った。

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No.15:
(4pt)

トリュフォーの映画とは違う

昔フランソワ・トリュフォー監督の映画をテレビ放送で観ました。今回はじめて原作を読んだら、映画とは違った点がありました。最初は悪女ものと見せておいて、実は皮肉たっぷりの悲劇的なラストを迎えます。5人目のターゲットのとき、作者のミスリードにまんまと引っかかってしまい、あっと驚くどんでん返しになりました。
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No.14:
(4pt)

サスペンスもの。

アイリッシュてはなくウールリッチ名義で書かれています。
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No.13:
(5pt)

『黒衣の花嫁』は、『幻の女』に劣らぬミステリの傑作

私の一番好きなミステリ『幻の女』(ウィリアム・アイリッシュ著、稲葉明雄訳、ハヤカワ・ミステリ文庫。出版元品切れだが、amazonで入手可能)の作者のもう一つの筆名名義の作品『黒衣の花嫁』(コーネル・ウールリッチ著、稲葉明雄訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)を手にしました。

株式仲買人・ブリスは17階のパーティ会場のテラスから突き落とされて死亡。みすぼらしいホテル住まいの年金生活者・ミッチェルは自分の部屋で酒に青酸カリを盛られて死亡。会社員・モランは自宅の物置に閉じ込められて窒息死。画家・ファーガスンはアトリエで心臓を矢に射貫かれて死亡。それぞれの事件の犯人と思われる女性は、事件ごとに名前も髪の色も服装も異なりますが、これらは同一犯による連続殺人事件に違いないと睨んだ刑事・ウォンガーは、2年半に亘り謎の女の足跡を追い続けます。

それぞれの殺人をし遂げるまでの息詰まるような緊迫感。じりじりと真相に迫っていく刑事の粘り強さ――『幻の女』に見劣りしないミステリの醍醐味を堪能することができました。

そして、何と、最後の最後に、思いもかけぬどんでん返しが待ち構えています。

訳者後書きに、「山本周五郎作『五瓣の椿』はこれに想を得たといわれている」と記されています。つい先日、『五瓣の椿』(山本周五郎著、新潮文庫)を読んだばかりですが、『黒衣の花嫁』の強烈な刺激が山本を衝き動かしたというのは、十分あり得ることでしょう。
黒衣の花嫁 (ハヤカワ・ミステリ文庫 10-4)Amazon書評・レビュー:黒衣の花嫁 (ハヤカワ・ミステリ文庫 10-4)より
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No.12:
(5pt)

謎の美女が、次々に4人の男を殺した理由

私の一番好きなミステリ『幻の女』(ウィリアム・アイリッシュ著、稲葉明雄訳、ハヤカワ・ミステリ文庫。出版元品切れだが、amazonで入手可能)の作者のもう一つの筆名名義の作品『黒衣の花嫁』(コーネル・ウールリッチ著、稲葉明雄訳、ハヤカワ・ミステリ文庫。出版元品切れだが、amazonで入手可能)を手にしました。

株式仲買人・ブリスは17階のパーティ会場のテラスから突き落とされて死亡。みすぼらしいホテル住まいの年金生活者・ミッチェルは自分の部屋で酒に青酸カリを盛られて死亡。会社員・モランは自宅の物置に閉じ込められて窒息死。画家・ファーガスンはアトリエで心臓を矢に射貫かれて死亡。それぞれの事件の犯人と思われる女性は、事件ごとに名前も髪の色も服装も異なりますが、これらは同一犯による連続殺人事件に違いないと睨んだ刑事・ウォンガーは、2年半に亘り謎の女の足跡を追い続けます。

それぞれの殺人をし遂げるまでの息詰まるような緊迫感。じりじりと真相に迫っていく刑事の粘り強さ――『幻の女』に見劣りしないミステリの醍醐味を堪能することができました。

そして、何と、最後の最後に、思いもかけぬどんでん返しが待ち構えています。

訳者後書きに、「山本周五郎作『五瓣の椿』はこれに想を得たといわれている」と記されています。つい先日、『五瓣の椿』(山本周五郎著、新潮文庫)を読んだばかりですが、『黒衣の花嫁』の強烈な刺激が山本を衝き動かしたというのは、十分あり得ることでしょう。
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No.11:
(5pt)

(2018年―第2冊)1940年という時代の要請が生んだジュリーという女の物語

その女ジュリーは友に見送られて列車に乗り、マンハッタンを出てシカゴに向かうと見せかける。しかし、彼女は途中のマンハッタン125丁目駅で降り、偽名でアパートを借りる。その後、彼女は変装して身元を隠しながら、4人の男を殺し始める。4人の男たちの間には関係が見られず、ウォンガー刑事らは犯人も動機も見いだせない。果たしてジュリーの目的は何なのか、そして次なる標的は誰なのか…。
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 コーネル・ウールリッチが1940年に発表したミステリ小説です。
 ジュリーが一人ずつ男に手をかけていく過程は、ウールリッチ(アイリッシュ)らしいサスペンスフルな描写で思わず手に汗握ります。殺人の道行きは一筋縄ではいかず、想定しない邪魔が入りそうになることも一再ならずあり、読者はジュリーと共に焦慮の念をもって読み進めていくことになります。つまりこの小説は終始ジュリーに肩入れして頁を繰り続けることになるのです。エンディング直前までは――。
 
 そう、エンディングにはジュリーすら驚愕させる真相が用意されています。その暗く捻じれた実相に言葉を失うことでしょう。読者はここで一気にジュリーの心得違いを知らされ、彼女との間に大きな距離を感じることになるはずです。ずっと伴走してきた同志が俄かに見知らぬ他人へと変貌する瞬間を私は味わいました。
 気持ちを深く沈ませるその結末には、ウールリッチの底意地の悪さのようなものを感じそうになりますが、このエンディングを読み解くうえで、小説が発表された1940年代という時代背景を考える必要があるのかもしれません。
 ジュリーは男を破滅させる妖艶な女(ファムファタル)的存在として描かれている点が重要です。曽根田憲三『ハリウッド映画でアメリカが読める』によれば、1940年代、女性の社会進出とともにフィルム・ノワールが産声をあげます。そこに登場する妖艶な女たちは、時代が彼女たちに要請した<居るべき場所=伝統的な核家族>に引き戻されんと闘争して、やがて敗れていく存在であるというのです。
『黒衣の花嫁』でウールリッチが造形したジュリーはまさに伝統的家族社会から弾き出された存在です。だからこそ、この思いのほか苦く暗鬱なエンディングでジュリーは敗れ去る存在として描かれているといえます。それはウールリッチの底意地の悪さというよりも、時代の要請にほかならなかったと私は感じるのです。当時の多くの読者には、ジュリーの大願成就は受け入れがたいものになったことでしょう。そう考えて私はこの物語に☆を5つつけたいと思います。
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*210頁と211頁:「イタリア産の赤ワイン」「イタリアの赤ワイン」という表現が出てきますが、原文は「Spanish red」つまり「スペイン産の赤ワイン」です。誤訳なのか、それとも私が手に入れた原著の版とこの翻訳のもととなった版とが異なるのでしょうか。

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黒衣の花嫁 (ハヤカワ・ミステリ文庫 10-4)Amazon書評・レビュー:黒衣の花嫁 (ハヤカワ・ミステリ文庫 10-4)より
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