黒衣の花嫁
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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ウールリッチお得意のファム・ファタール物のサスペンス。謎の美女による連続殺人事件を描いた作品だ。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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昔フランソワ・トリュフォー監督の映画をテレビ放送で観ました。今回はじめて原作を読んだら、映画とは違った点がありました。最初は悪女ものと見せておいて、実は皮肉たっぷりの悲劇的なラストを迎えます。5人目のターゲットのとき、作者のミスリードにまんまと引っかかってしまい、あっと驚くどんでん返しになりました。 | ||||
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アイリッシュてはなくウールリッチ名義で書かれています。 | ||||
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私の一番好きなミステリ『幻の女』(ウィリアム・アイリッシュ著、稲葉明雄訳、ハヤカワ・ミステリ文庫。出版元品切れだが、amazonで入手可能)の作者のもう一つの筆名名義の作品『黒衣の花嫁』(コーネル・ウールリッチ著、稲葉明雄訳、ハヤカワ・ミステリ文庫)を手にしました。 株式仲買人・ブリスは17階のパーティ会場のテラスから突き落とされて死亡。みすぼらしいホテル住まいの年金生活者・ミッチェルは自分の部屋で酒に青酸カリを盛られて死亡。会社員・モランは自宅の物置に閉じ込められて窒息死。画家・ファーガスンはアトリエで心臓を矢に射貫かれて死亡。それぞれの事件の犯人と思われる女性は、事件ごとに名前も髪の色も服装も異なりますが、これらは同一犯による連続殺人事件に違いないと睨んだ刑事・ウォンガーは、2年半に亘り謎の女の足跡を追い続けます。 それぞれの殺人をし遂げるまでの息詰まるような緊迫感。じりじりと真相に迫っていく刑事の粘り強さ――『幻の女』に見劣りしないミステリの醍醐味を堪能することができました。 そして、何と、最後の最後に、思いもかけぬどんでん返しが待ち構えています。 訳者後書きに、「山本周五郎作『五瓣の椿』はこれに想を得たといわれている」と記されています。つい先日、『五瓣の椿』(山本周五郎著、新潮文庫)を読んだばかりですが、『黒衣の花嫁』の強烈な刺激が山本を衝き動かしたというのは、十分あり得ることでしょう。 | ||||
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私の一番好きなミステリ『幻の女』(ウィリアム・アイリッシュ著、稲葉明雄訳、ハヤカワ・ミステリ文庫。出版元品切れだが、amazonで入手可能)の作者のもう一つの筆名名義の作品『黒衣の花嫁』(コーネル・ウールリッチ著、稲葉明雄訳、ハヤカワ・ミステリ文庫。出版元品切れだが、amazonで入手可能)を手にしました。 株式仲買人・ブリスは17階のパーティ会場のテラスから突き落とされて死亡。みすぼらしいホテル住まいの年金生活者・ミッチェルは自分の部屋で酒に青酸カリを盛られて死亡。会社員・モランは自宅の物置に閉じ込められて窒息死。画家・ファーガスンはアトリエで心臓を矢に射貫かれて死亡。それぞれの事件の犯人と思われる女性は、事件ごとに名前も髪の色も服装も異なりますが、これらは同一犯による連続殺人事件に違いないと睨んだ刑事・ウォンガーは、2年半に亘り謎の女の足跡を追い続けます。 それぞれの殺人をし遂げるまでの息詰まるような緊迫感。じりじりと真相に迫っていく刑事の粘り強さ――『幻の女』に見劣りしないミステリの醍醐味を堪能することができました。 そして、何と、最後の最後に、思いもかけぬどんでん返しが待ち構えています。 訳者後書きに、「山本周五郎作『五瓣の椿』はこれに想を得たといわれている」と記されています。つい先日、『五瓣の椿』(山本周五郎著、新潮文庫)を読んだばかりですが、『黒衣の花嫁』の強烈な刺激が山本を衝き動かしたというのは、十分あり得ることでしょう。 | ||||
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その女ジュリーは友に見送られて列車に乗り、マンハッタンを出てシカゴに向かうと見せかける。しかし、彼女は途中のマンハッタン125丁目駅で降り、偽名でアパートを借りる。その後、彼女は変装して身元を隠しながら、4人の男を殺し始める。4人の男たちの間には関係が見られず、ウォンガー刑事らは犯人も動機も見いだせない。果たしてジュリーの目的は何なのか、そして次なる標的は誰なのか…。 -------------------------- コーネル・ウールリッチが1940年に発表したミステリ小説です。 ジュリーが一人ずつ男に手をかけていく過程は、ウールリッチ(アイリッシュ)らしいサスペンスフルな描写で思わず手に汗握ります。殺人の道行きは一筋縄ではいかず、想定しない邪魔が入りそうになることも一再ならずあり、読者はジュリーと共に焦慮の念をもって読み進めていくことになります。つまりこの小説は終始ジュリーに肩入れして頁を繰り続けることになるのです。エンディング直前までは――。 そう、エンディングにはジュリーすら驚愕させる真相が用意されています。その暗く捻じれた実相に言葉を失うことでしょう。読者はここで一気にジュリーの心得違いを知らされ、彼女との間に大きな距離を感じることになるはずです。ずっと伴走してきた同志が俄かに見知らぬ他人へと変貌する瞬間を私は味わいました。 気持ちを深く沈ませるその結末には、ウールリッチの底意地の悪さのようなものを感じそうになりますが、このエンディングを読み解くうえで、小説が発表された1940年代という時代背景を考える必要があるのかもしれません。 ジュリーは男を破滅させる妖艶な女(ファムファタル)的存在として描かれている点が重要です。曽根田憲三『ハリウッド映画でアメリカが読める』によれば、1940年代、女性の社会進出とともにフィルム・ノワールが産声をあげます。そこに登場する妖艶な女たちは、時代が彼女たちに要請した<居るべき場所=伝統的な核家族>に引き戻されんと闘争して、やがて敗れていく存在であるというのです。 『黒衣の花嫁』でウールリッチが造形したジュリーはまさに伝統的家族社会から弾き出された存在です。だからこそ、この思いのほか苦く暗鬱なエンディングでジュリーは敗れ去る存在として描かれているといえます。それはウールリッチの底意地の悪さというよりも、時代の要請にほかならなかったと私は感じるのです。当時の多くの読者には、ジュリーの大願成就は受け入れがたいものになったことでしょう。そう考えて私はこの物語に☆を5つつけたいと思います。 -------------------------- *210頁と211頁:「イタリア産の赤ワイン」「イタリアの赤ワイン」という表現が出てきますが、原文は「Spanish red」つまり「スペイン産の赤ワイン」です。誤訳なのか、それとも私が手に入れた原著の版とこの翻訳のもととなった版とが異なるのでしょうか。 . | ||||
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