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(短編集)
道化師の蝶
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道化師の蝶の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.30pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全73件 41~60 3/4ページ
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作者がそれなりに博識なのは伝わってきます。 しかし、この作品は完成品ではありません。 何度も読めば、全体の3割くらいは理解できます。 それと同時に、全部を読み解いたところで5割以上は理解できない作品であることに気づきます。 もともと5割以上の回答が用意されていないからです。 この作品を「絵画のような作品」という人が多いですが、部分的には絵が見えますが、半分以上は合わないパズルを無理やりはめ込んだようなモザイクだらけの絵画です。 「モザイクの部分は皆さんで想像して楽しんでくださいね」という事なのだろうけど、それは未完成に他ならない。 なんて事をいうと、「文学は自由だ。何でもありだ」という人もいるでしょうが、芥川賞には見合わない。 未完成品というのもありといえばありだけど、それはあくまでもニッチな人たちが楽しむものであり、文学の賞を得るような類のものではない。 芥川賞なんて取らせたら、ある意味で、この未完成品が「正解」かの様な誤解をまねくでしょう。 実際、これを読んで「これぞ文学!」と騙された人も多いでしょう。 この作品は文学ではなく、ニッチな市場で楽しむ自慰小説です。 加えて、この作者の『記法』には仕掛けがあります。 それゆえに、一度読んだだけでは理解ができず、再読を強いられます。 ここで私がその記法についてヒトコト示せば、この本は格段に読みやすくなりますが、それはこの作品にとっての生命線であり、致命的なネタバレになりかねません。 私はその記法を、『上質なもの』ではなく『不親切』と判断します。 さてこそ以上、悪口ではありません。 なぜならば、後半に収録されている『松ノ枝の記』での記述が本心であるなら、作者自身も投げっぱなしの悪ふざけであることは承知のはずですから。 | ||||
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第146回芥川賞である表題作を含む、2編を収録した本書。 「オブ・ザ・ベースボール」「これはペンです」に続く3冊目として読みましたが、冒頭の奇妙な一文からして、「お、この著者らしい不可思議な世界が展開していくぞ」と、楽しみながらページを繰ってしまうのは、著者の魅力に強く惹かれているためでしょうか。 【道化師の蝶】 「着想を捉える網」を巡る「言葉」をテーマにした本作品は、「これはペンです」の発展系であるとともに、「A・A・エイブラムス」なる人物が登場してくるところは、「オブ・ザ・ベースボール」収録の【つぎの著者につづく】の登場人物「リチャード・ジェイムス」を思わせるところもあり、興味深く読みました。 この作品の奇妙で、面白いところは、いろいろな「わたし」が登場してくるところです。 ある特定の「わたし」ではなく、章が切り替わるところで、別人格に転化しているようにも感じられます。 これが、私には、作品のテーマのひとつである「網で捉えることの出来る着想」を描いているようにも思われ、「着想」が花々を飛び回る蝶のように、様々な人格を飛び回っているのかも知れません。 【松ノ枝の記】 著者の作品は初めて、という方にはこちらがオススメ。 主人公である「わたし」が、「松ノ枝」と名付けた人物の著書を翻訳、すると、彼が、「わたし」の著書を翻訳してくれる。 お互いが翻訳者であるという不思議な関係にある二人に不協和音が生じ、「わたし」が「松ノ枝」を訪ねていくと。 というように、割とストーリーが分かりやすいものとなっているからです。 著者の手にかかると、「言葉」が、「太古の人類史」に結びついてしまう。 本当に、奇妙で面白い作品の書き手だと感じています。 (※「コメント欄」に本筋とは外れるあることを記載しました) | ||||
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なるほど、文学とは言葉遊びであることを、自分はだけど、忘れていた。 命令と応答の規則、文学に伝統を押し固めそこに規則。 自由と平等の現代は案外息苦しい。 収録二編はともに何かを求める話で、道化師の蝶はさまざまな人物が何かを求めながら、絡み合うように関係していく話。 松の枝の記は登場人物が共通の過去と未来を求める話。 そこに何かあるのか、とも思ったんだけど、作者の読み取って欲しい意図が案外古臭くも、普遍で変え難いテーマがあるような気がして、達筆で斬新な文章共々中々上質な読み物にも思えました。 | ||||
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頭の中の観念を言葉にしてみると、考えていたものと違ってくる。あるいは、聞き手や読み手に伝わる内容が違ってくる。そういう言語表現の限界について著者が考えたことを、やや無理やり小説にしたような印象だ。 小論文やエッセイとして書いても読まれないから、あえて前衛小説の仮面をかぶせたように思える。もし同じことを考えた有名人がいれば、エッセイでも(少なくとも固定ファン層には)読まれるから、あえて小説にはしなかっただろう。 話の筋を完全に理解しようと思うと、おそらく疲れる。急な場面展開があるが、あまり気にせず先へ進んだ方がいいと思う。斜め読みのつもりで読んでも、それなりに収穫のある本ではある。 ところで「飛行機の中で本が読めない」という(おそらく著者の)悩みには、非常に共感する。私は深層意識の部分で緊張していることが原因と考えるが、物理学専攻の著者の考察が(作家だから当然だが)文系的すぎて面白い。 ただし、飛行機の中に乗客の着想が舞っているというイメージには反対。あんな狭い空間に縛り付けられて、たいした発想が得られるはずがない。だからカントら哲学者は机上ではなく歩きながら思考したわけで、私は詳しくないが脳科学では身体的運動が脳活動を活発にすることが定説のはず。 | ||||
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難解という意見も多いですが、自分なりの解釈を書きます。本文からの引用あります。 これは友幸友幸とエージェントが二人編みをしているように紡ぎ出す物語だと思います。 1章:友幸友幸が書いた文章・わたし=友幸友幸' 2章:1章の謝辞・わたし=エージェント 3章:友幸友幸の人生・わたし= 友幸友幸 4章:エージェントが書いたレポート・わたし=エージェント 5章:(蝶が宿った)友幸友幸が蝶になり、1章に還る。わたし=友幸友幸 4章最後で友幸友幸がエージェントに会い、5章でそのレポートを読んだ時に気持ちが交わり、次の蝶を産む。 全体イメージ 「繰り返し語られ直すエピソードが、互いに食い違いを見せるたび、文法の方が変化していく言語」 ≒「裏と表で模様の違う刺繍。ただ変えるだけではなく、何か微妙な拘束がある。」 友幸友幸やエイブラムス氏等、登場人物の性別変化は次の文がヒントだと思います。 「友幸友幸の文章においては・・性別や年齢が変わることも多くある」 | ||||
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ボルヘス好きな人なら、許容範囲です。 | ||||
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芥川賞受賞作を手に取ったのだから、文学をしたい、と思っている。しかも何かと話題の今回の受賞作だ。主人公はアメリカ人の実業家、エイブラムスか、いや、エイブラムスは作家の友幸友幸を追跡した人物なんだけれどもその姿を友幸が描く小説世界に押し込めたのか、つまりこの小説は二層構造のバーチャル世界なのか、しかも使用者の殆どいない人工言語で描かれた(ことになっている)・・・と、この辺までは理解できる。 文学というのは情緒の世界だと私は思っているし、大抵の方も言葉は違えどそう言ってくださると思う。主人公は友幸友幸か、と狙いを定め、彼の情緒を読み取ってと行こうとするのだが、主人公は蝶のようにひらりひらりと浮遊を続け、一向につかまえどころがない。ここに至り、文学したいと思っていた私は頭を抱えてしまう。 そう、これは所謂文学じゃないんだ。自分はいま美術館めぐりをしている。そこに何か意味を持つらしい幾何学模様とか、難解な曼荼羅とかがあって・・・これは字句の芸術なのか、と選評の助けも借りて理解していく。あえて自分に引き寄せて理解しようとすれば、高校時代の数学の問題のようなものか。 A4サイズのドリルの1ページに、簡潔に書かれた問題が一つ。その問題の回答を導くために私は何行も記述していく。そしてある日、同級生のドリルに妙に既視感のある回答を見つける。問題が回答に結びつくまでに自分の脳が経験した高揚感、自分らしくぶっきらぼうに記載した回答プロセスを丸写ししたらしい同級生のおかしさ・・・。 多分、同級生は何もおかしくなく、数学を苦痛に思っていたのだろう。それと同じように、円城さんの高度な言葉遊びについていけなければ、なんだこれは、という感想しか残らない。私もどちらかというと、今回は同級生に近い。しかし、芸術的な浮遊を紡ぎながら高揚しているであろう円城さんのことは、ちょっと垣間見たつもりになれた。 | ||||
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練りに練られた構成とシンプルで無駄のない文体 確かな表現力と豊かな想像力,意表を突くアイデア 話の筋は一見すると荒唐無稽に感じるかもしれません 「真実はただ一つ」的な視点で一生懸命に読もうとすると, 確かに難解でしょう その網をかいくぐろうとするのが著者の作戦でもあり, ことばというものと書くという行為そのものが作品のテーマだからです 書くことをめぐる考察は執拗でさえあります まるで要約や解説を拒むかのように, あらかじめ作品のなかで作品自身を解説してしまう ぜひ文庫化されて余計な尾鰭がついてしまう前に, 2作を通読されることをお勧めします 一回読んで分からなければ何度も読めばいい 短いですし,それに耐えうる文章力を持った作品だと思います | ||||
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私は、文芸春秋で本作を読んだので、同時収録されている作品は読んでいないので純粋なこの本のレビューではないかもしれません。 が、読み終わった後、何かしら残るものを感じたので、ここに書きます。 はっきり言うと、5分の1も理解せずに読破してしまいました。 しかし、理解は出来なかったのですが、何か、ほんわかとこの作品の発している香りは嗅いだ様な気がします。 単純に「良い」とか「悪い」、「面白い」、「つまらない」という二分化で評価できない作品なのです。 私は、今まで芥川賞受賞作を50作以上は読んでいるのですが、大体以下の分類に分けられます。 単純に面白かったもの。 単純につまらなかったもの。 普通なもの。 不愉快なもの。 意味不明なもの。 意味不明だけど、何か感じるもの。 意味不明で、かつ、不愉快なもの。 ・・・こんなもんでしょうか。 それで、本作「道化師の蝶」は、意味不明だけど、何か感じるもの・・・でした。 実は、このカテゴリーに入る小説と言うのは滅多にありません。 何で、意味も分かってないのに、何かを感じるのだ・・・と、言われれば、僕自身、返せる言葉が少ないですし・・・。 ただ、あくまで私個人は、この作品に今までの小説とは違う「何か」を感じたのも事実です。 人間と言うのは、矛盾した生き物です。 嫌いなんだけど、何か心のどこかで気になっていたり、好きなんだけど、冷たい態度を取ったり・・・対象は様々でしょうが、こういうアンヴィバレンツな感情をもった経験は誰でも一度はあるのではないでしょうか。 いわば、一種の二律背反的な解釈が成立する小説・・・それが、この「道化師の蝶」という作品なのです。 一つ一つの言語をパズルのピースみたいに当てはめていく・・・、そんな作業をしながら、組み合わせてみたら、いままで見たことも無いような小説、もしくは絵ができた・・・。 そんな感じで、言語を本来の意味の情報の伝達ではなく、新製品を作るみたいに、パーツとして考えていく・・・そんな小説のあり方もありだな、と、感じさせてくれる小説でした。 一度読んだら、充分な小説もありますが、この小説はそういう類の小説ではなさそうです。 つまり、評価の星3つと言うのも、4つになる可能性もあるし、5つにも6にも7にも100にも10000にもなる可能性があるのです。(時には1にもなるかもしれません・・・) 読み手の解釈で広がりが出てくる小説と言えるでしょう。 | ||||
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この小説のほんとうの値打ちは、やたら肩入れして「死んでいながら生きている猫を描こうとしている画期的小説!?」などと無闇に意気込んでいる川上弘美選手よりも、著者本人がいちばんよく分かっているのではないでしょうか。まあ世間がらあらあと騒ぎたてるような代物でないことは間違いありません。 私はともかく途中で居眠りはせずに最後まで紙上に乾いた視線を晒すだけの義理は果たしましたが、これは新しい文学的感興がむくむくと湧き起こるような瞬間は、ただの一度もありませんでした。 小説に因る人世の方法的制覇を目指して夢中で書いている本ご人はきっと楽しいのでしょうが、その醍醐味は架空の新種アルレキヌス・アルレキヌスよりも、春になれば郷里の里山に優雅に舞い飛ぶ超現実種のルエホドルフィア・ジャポニカを偏愛する私のような蝶保守的古典文学マニアをてんで満足させてくれはしませんでしたね。 文体やあらすじがどうのこうのと評しても意味がないので書きませんが、この醒めた唐人の寝言のような奇妙な日本語列を反芻していると、なぜか最近は誰も聴かなくなってしまったいにしえの現代音楽のことが思い出されてきました。 実際本作品には初めて12音音楽に挑んだかのシェーンベルクの懐かしい響きが聴こえてきますし、同時に芥川賞を受賞した田中選手の作品では新ウイーン学派の無調やノイズミュージックの乱入も散見されます。先駆する中原昌也の革命的な実験作も含めて、鴎外、漱石、芥川、荷風、谷崎、太宰、三島、大江、村上の正統派に反旗を翻そうとする「平成現代文学」がおそまきながら産声を上げようとしているのでしょうか。 | ||||
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略歴に書かれたこの経歴を見れば「すごいよ」「圧倒されたよ」「さすがは芥川賞受賞作だ」と感じた方もおられるでしょう。 私の正直な感想は「意味がさっぱりわからない。 読んでも苦痛で何も残らない。 時間の無駄とはこういこと」です。 これが逆に「高卒」だったら何人の方が上記の感想を持つだろう、と思います。 芥川賞候補にもならなかったのではないか、と思います。 作者は「わからない方がいるのは自分の不甲斐なさ」と言われていますが、「賢い自分が書いているのだから、理解しろよ」と迫られている感じがして、読後感もよくありませんでした。 | ||||
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では、 この本は一体いつどこでどのように読むべきなのでしょうか 私には読めませんでした 何が言いたいのかがわからなかったです 友人が話題になっている共食いを買ったので 私は芥川賞同時受賞のこれを買いましたが 正直、共食いを買ったほうが良かったかな、といった感想です 私がこの本を理解出来ないだけですので この本が悪いとは言いませんが 私が読めなかったので、やはり私の評価は下がらざるを得ないわけで 新しく購入を考えている方に 万人向けでは無い本ですよ と、一言言いたかったのでレビューを書かせていただきました お目汚し失礼致しました | ||||
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好きと嫌いの二択しかない作品です まあまあ好きかも。なんてことはなくて、好きな人はハッキリと好きだと言えるし、嫌いな人は嫌いだとキッパリ言います 普段純文学に触れる機会が少ないためか最初の方は内容が理解出来ませんでした 何を言いたいのか、何を伝えたいのか 只とつとつと文字をなぞるだけ ひたすら「わたし」の語りが続きます 特に二章は会話も少なく、言語に関する論文や研究書を読んでいる錯覚を覚えました 三章の友幸友幸(おそらく)の記憶語りから面白くなってきて無心で読み進めました 所々聞き慣れない表現で疑問符を浮かべたりもしましたが面白かったです そこまでモチベーションが保てないと、つまらない作品と思ってしまうかとおもわれます 抽象的で曖昧かつ最後まで濁した表現なので、最後をハッキリとさせたい、どういうことなのか読了後にスッキリさせたいと思う人には向きません 友幸友幸とは記憶に寄生する蝶の名前の一つでA・A・エイブラムス氏が言うところの「着想」というのがこの蝶ってことなのでしょうか? ハッキリ出来ず、私はもやもやが残りました | ||||
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『あなたは蝶を捕まえてなどいないのですよ。蝶に勝手についてきただけだ』87頁11項 ※ 学校では、自分の考えを訳をいれて話すことをもとめます。「訳」それは特に低学年の児童には大事な思考の網なのです。様々な経験を表現したり理解したりするために、学校の国語教育では経験をすくいとる網(語彙や規律)をたくさん用意しています。「いつ、どこで、だれが、どうした」「どうしてかというと」「□□とくらべると分かることは」云々。 こうして網(語彙や規律)を習得することで人は形作られ、成長していくのです。網の数こそ、学識であり、知恵であり、行動力そのもの。たくさんの網をもち自分の力で生き抜いていってほしいと願うばかりです。 でも、網を使えば使うほどに気づかされるのは、一つの言葉のすくいとれる意味の曖昧さ。「やさしい」この言葉の網がすくいとる意味は、どれだけ多いことか。「やさしい」を使う人の数はたくさんおり、その人それぞれに経験想起される内容は多岐にわたり、付随される意味も含めると無数に意味は広がります。 一つの言葉ですら非常に曖昧さを伴うのです。 この物語で描かれる、作家『友幸友幸』も数多の網を習得。20もの言語を使うことができる人物であるならなおさら、使い分けるのは困難をともなう。 我々教員が、子どもに伝えていること。 一つの言葉で人を生かしもし、一つの言葉で人を殺すこともできるよ。 ああ、大博打を打って、人は言葉を使っているのだなぁ。ああそんなことに気を遣うんだったらば、唯一の意味しかない言葉があったら、どれだけ便利だろう。でも、唯一の意味しかない言葉があったら、どれだけつまらないだろう。意味と言葉の間にひらひら舞う蝶のように、人の言葉も美しさを垣間見る作品でした。 | ||||
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何の予備知識無しに一読してみたが、あまりの掴みどころのなさに面食らった。 言葉が複雑かつ、巧妙に絡みあっていて、難解な文章はどこか無機質だが美しく、まるで言葉で表す幾何学模様のようだ。 下手に理知的な頭で読むと混乱してきて先に進まない。 前衛的な絵画を見たり、現代音楽を聴いている感覚に似ている。 それこそが正に帯に書かれるような「現代言語表現の最前線!」だということなのだろう。 文学的に優れている作品であることに変わりはないのだが、純粋に物語を楽しむような種類の本ではなかったようだ。 | ||||
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どんな小説か、と訊ねられれば言葉につまる。どんなストーリーか、読んだそばから、折々のシーンのそれぞれの関連を忘れてしまっていた。 難解さがまた自分のような理解力のない人間にとって小説の総体をつかみにくく感じさせる その要素がこの作品の魅力でもあるのだろうけれど。 乱暴に単純に言えば、言葉についての考察を小説のかたちにまとめている本である 観念的と一言に言い切れない具体性はある はじめの数頁読んだとき、これ、小説なのか?という思いが何度かよぎった 自分はこういう小説には出会ったことが少ないので、良い(というかほんとに奇妙な)体験ができたと思う し 言葉がどうなりたち、どう発酵していき、どう伝わっていくか、などということを考える必要性をあまり感じなかった自分にとって興味深い内容だった 良くも悪くも教科書を丸暗記したような小説の結構ではないので、そういう本に惹かれる方は一読してみては | ||||
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話題の田中氏の作品より、実は芥川賞らしい作品だと思いました。 着想をつかまえて事業へ展開できることが事業家の技であるというくだりは、 現代日本がグローバルするさなかへの日本企業や政治家への課題のようにも思えました。 経済が冷え込むととかく着想をつかむ網を持った人がいなくなり、保守的になることが ありますが、そんなときにこの小説が選ばれたことは、月並みながら時代が彼の小説を欲しているのだと思います。 しかしながら、トモユキトモユキを探し続ける話は、いささか長くなりすぎ、中だるみ感を 受けました。 それと、手芸話は、作者の趣味らしいですが、 いまひとつ、共感できないかな? | ||||
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前半はすごく興味深く読んだ。 読みやすい文体と安部公房のような独特の世界観。 けれど、読み終わったあと、何も掴めなかった。 世界観は好きだが、ただでさえの独特な雰囲気、それに重ねたあえて不親切な展開。 なかなかうまく飲み込めず、私には消化できなかった。 こういう小説を面白いといえば、格好が良さそうなものだが、わからないものはわからないので正直にわからないと書く。 | ||||
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一言で言えば、非常に観念的で難解な作品です。 逆に言えば、だからこそ「芥川賞」なのかも知れません。 全体を通して、「言葉」「書くこと」を哲学的に突き詰めようとしているように思えます。 その哲学的なものを、ユーモアを交えながら書いているので、その瞬間、瞬間は非常に楽しく読むことが出来ます。 でも、結局、何を読んだのか解らない。 ですから、「難解」の一言です。 | ||||
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芥川賞受賞作かぁ〜ということで何となく手に取り、初めて著者の作品を読みました。 結果、期待以上でした。 私はこれを、円城氏の人間の思考の限界への挑戦であると感じました。 今までにない新しい小説と言われているのも耳にしましたが、本作品に関して言えばむしろ、古代ギリシアから今日に至るまで、様々な人々感じ紡いできた書き手として王道を行く作品だと思います。 カントとかヘーゲルとかを読んで、思惟することを好む人は結構楽しめるのではと思います。。 地球上にあるいかなる人間の言語おいても、話者は数、時、場所など表すことができるようになっているし、同じような思考をもっていたりします。 これはつまり人間が言葉でとらえる前の何か、この小説でいうところの「蝶」が存在しているのです。 そんな蝶をひたすら人間の作り出した「虫取り網」で追いかける人々の姿は、円城氏でもあるでしょうし、その他の書き手でもあるし、また潜在的にすべての人間である。なんて幻想的な形而上学でしょう。 彼のほかの作品も是非読んでみたくなりました。 | ||||
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