(短編集)
シャッフル航法
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複雑過剰に配した意味が、「意味なんて無意味だ」ということを逆説的に示すことで、何かを理解しようという枠組みそのものを壊していく。これはSFにしかできない純文学的試みとは言えないだろうか。加えてほとんどの作品において、執筆自体に自覚的な様が描かれることで、「フィクションにおける現実」と、「現実における現実」との境界が溶け合って、物語なりの現実性がこちら側に溶出してくるような感がある。 だから円城文学とは総じて解体的(脱構築的と言うべきか?)である。そうしてすべてが自己消滅的に解体された後になお残る、統合された何か。それはもはや語りに乗らないのだが、確かにあると感じさせてくれる。だからこそ「理解できなくても面白い」と人に言わしめるのだろう(ガジェットや奇想など、表面上の物珍しさに囚われていると、一番おいしいところを食べ損ねることになる)。 作品としてのクオリティから言うと、「イグノラムス・イグノラビムス」が頭一つ抜けている印象がある。宇宙食材商、ワープ鴨、センチマーニという奇想が物語として自然に統合されている様は見事としか言いようがない。 「(Atlas)3」には意外な主題の深さがある。僕が殺されても僕で居続ける、という哲学の思考実験じみた着想を用いつつ、魂の所在を示すという試みは見かけ以上に示唆的だ。なぜならカメラ(=観測者)とは書き手でもありえ、また読み手でもありえるのだから。 | ||||
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既存レビューの評価が高すぎますね。 別にバランスを取るために、などと言う目的ありきではなく単純につまらなかったので星1とします。 短編集なので読みやすいことは読みやすいです。 あまりのつまらなさに読み疲れたころには終わってくれますので読了は容易いでしょう。 文章は平易ですが著者の意図と言うか思考・世界像が見えてきません。(嗜好はわかりますが) とりあえず万人受けしないどころか一部のコアなマニアにしか受けない類のもので 娯楽作品とはとうてい呼べないものになっています。 大抵の人は一読しただけでは「???」で終わること請け合いです。 新しい世界に踏み込みたい人は試しに読んでみてはいかがでしょう? 自分は以降、この著者の作品はいかなる形であれ手にしない決意を固めました。 | ||||
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表題作の他、「内在天文学」、「イグノラムス・イグノラビルス」、「φ」、「つじつま」、「犀が通る」、「Beaver Weaver」、「(Atlas)3」、「リスを実装する」及び「Printable」の全10の作品から構成される短編集。前作(伊藤計劃氏との共著)のハードな「屍者の帝国」の反動からか、作者本来のリラックスしたムードが漂っている。特に、表題作は、金子邦彦氏(作者は金子先生の研究室に在籍していた)「カオスの紡ぐ夢の中で」中で、<円城塔>という名前の"小説自動生成プログラム"が登場した事を知らないと理解出来ない。即ち、表題作はそれを実践した(実際にプログラムを作成した由)もので、作者の遊び心が窺えると共に、「果たして人間と機械(人工知能)の間に"差"は存在するのか」という問い掛けをしている様に映った(金子先生曰く、「複雑系の研究に一番適している題材は小説だ」)。 「内在天文学」はある種の認識論であり、「イグノラムス・イグノラビルス」の直訳は「我々は知らない。知ることはないだろう」である事から、ある種の不可知論である。これらをロマン溢れる(ある意味では難解な!)語り口で寓話として仕上げている点が作者の真骨頂であろう。「φ」は筒井に良く見られる実験小説だが、その意匠が表題作と相通じている点が面白い。取り留めの無い話の様な「犀が通る」は、微妙な"線"で「内在天文学」と絡んでいて可笑しい上に、作者の持ち味である位相幾何学的風味が良く出ている佳作。「Beaver Weaver」は「Self-Reference ENGINE」を想起させる従来の作者の作風に一番近い短編で楽しめるが、話が膨らみ過ぎて流石に収束不能に陥ってしまった感が否めない。「リスを実装する」及び「Printable」は共に掌編だが、表題作と同様に所謂<2045年問題>を意識しているとの印象を受けた。 個人的には「犀が通る」までの抒情性を加味した短編が好みだが、それ以降の短編も作者特有の持ち味が良く出ている。院生時代の夢(宿題?)を実現した表題作を初めとして、<円城ワールド>全開の傑作短編集と言って良いのではないか。 | ||||
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円城塔の作品は自分の中で「物語の要素を含んだ論文」のような位置にある。 中に何が詰まっているのか皆目見当がつかないこともあるが、しかし面白いという希有な体験を教えてくれた点で無二の作家でもある。 副題の添えにある通り、ここに収められた10本の内の7本は、大森望編集のSFアンソロジー「NOVA」からのものとなっている。 雑感だが「NOVA」からの作品は他のSF作家・作品へのオマージュが色濃かったり、取り分け語る手法・ギミック自体をテクニカルにしている傾向があるだろう。 以下、10本の中で理解できて(笑)、気にいったものをいくつか。 ・「イグノラムス・イグノラビムス」 →カート・ヴォネガットの「タイタンの妖女」風に、「自由意思」の存在を記述する触手もの。感動的で、しかし無常な読後感を感じさせる一編。個人的にはこの10本の中で白眉の出来だと思う。 ・「φ」 →終わり際にその本懐を披露するギミック・タイプ。現代音楽の図形楽譜のような最後の見開きには一見の価値がある。 ・「つじつま」 →生まれてこない赤子がすくすくと成長したらというある種の不条理な「もしも」の話。シリアスが空回りするコミカルさが、シュールな笑いをもたらしている。 ・「Printable」 →円城塔の一貫しての試みとして「これはペンです」のようなものがある。つまり「被創造物がものを自在に作り出したとしたら」というものだ。 そしてそれを人に置き換えた場合の「もしも」が語られ、最後には全てを包み込む結末が待っている。語るものと語られるものと物語とが危うい「=(イコール)」で結ばされ、ここまでいくと作中のシステムが評論と思想を内包してしまうので、いっそミラン・クンデラ的な感さえある。 読み手の頭をシャッフルさせる、考えたら考えた分だけ酩酊できる短編集だと思う。 | ||||
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本書は 10篇の短編からなる作品集です。 内訳的にはSF専門誌、及びSFアンソロジー集NOVAからの初出が7編。文芸誌から2編。Kindleから1篇となっており、全体的にSFテイストが強めとなっています。 が、円城塔という作家はそういったジャンルを飛び越えているというか、シュレディンガーの猫のようにSFと文学の両方に重ね合わせで存在している作家 で、さらに定義づけると「円城塔」の書く「円城塔成分」が多数含まれたものが「円城塔というジャンル」であるとまでいえますので 「Self-Reference ENGINE」から円城塔へ入ったかたでも「オブ・ザ・ベースボール」や「道化師の蝶」から入った方でもアニメ「スペース・ダンディ」の円城塔脚本回で円城塔の名前が気になった方でも安心して読めます。といううか堪能できますよ。 難解といわれる円城塔作品ですが、今回は各話適度なボリュームで苦労することはありません。それでも、すんなり腑に落ちる作品もあれば、 ゴリゴリ頭を使う作品もあります。インプットの方法が違うのにアウトプットでは常に面白いという結論にたどりつくのが本作品集の魅力であると いえましょう。 絶対のお勧め本です。 本編とはまったく関係ないのですが、初出一覧で「つじつま」の初出が草原SF文庫となっていますが、これは創元SF文庫の誤植ではないでしょうか? | ||||
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