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鍵の掛かった男
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鍵の掛かった男の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.60pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全30件 1~20 1/2ページ
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700ページ超の分厚い本です。ここまで長いのは有栖川作品ではめずらしいですね。かといって決して読みにくくはなく、いつもの親しみやすい作風なのでさくさく進みました。 私は大阪在住なので舞台となる中之島には土地勘があり、美術館や年末のライトアップの時には必ず行く場所なので、いちいち風景が頭に浮かんで読んでいる間ずっと楽しめました。そういう意味では旅情ミステリとも言えるでしょう。 2015年の作なのでその時点の中之島ですが、そういえば島の西側はあまり行ったことがないと気がつきました。何があるのだろう、今度散策してみようと思います。 また、銀星ホテルのレトロな雰囲気もステキで、根っからホテルの仕事が好きなホテルマンがいるこんな所ならぜひ泊まってみたくなりました。ここには今、まだオープンして2年の(2023年現在)スマイルホテル大阪中之島が建っています。 この作品では死亡したホテルの長期滞在客、梨田稔の人生の軌跡がメインとなります。あとがきで有栖川氏が書いていらっしゃいますが「登場するなり死体になっている被害者にとことん向き合う」ような小説をいつか書こうと思っていたということ。なのでもしかしたら精緻なトリックと論理的な推理が好みという方には物足りないかもしれません。 実は半分くらいのところで先の展開が読めてしまいました。ネタばれするのであまり書けませんが・・。 そして犯人は当たらなかったのですが、ただこの持って行き方だと、終盤になってから「犯人は誰にしようかな」と考え始めても誰でも犯人にできそうです。 つまり伏線を巡らせて話を積み上げるのではなく、いかにも犯人らしくない人を犯人にするために、後からどうとでも犯行の動機が作れるじゃないかと思い、なんだか取ってつけたように感じてしまいました。 あと、死亡した梨田とも面識があったホテル常連客で大御所の女流作家の依頼が、アリスと火村が捜査に乗り出すきっかけになったという設定ですが、ホテルで何度か話しただけの人間がここまで思い入れを込めて真実を解明したいと思うのもちょっと不自然な気がしました。 この作家はあとは最後の謎解き場面にだけ登場するのですが、ここで重箱の隅をつつくように火村の推理の穴を問い詰めようとする会話がくどく、この人物は別に要らなかったのではないかと思ってしまいました。 それなら大阪府警の繁岡巡査部長が「自殺と断定されたんですが、何か釈然としないんですよね・・」と言い出した、という始まりの方がまだ自然な気がします。 長いので、ここは削れるんじゃないかなと思える部分もありましたが、いつまでも終わらない長いお話の中にいるのが好きな自分としては、読んでいる間中ずっと楽しかったです。やっぱり有栖川作品はいいです。 | ||||
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良い小説を読むと読後の余韻と満足感が素晴らしいものです。 これも期待を裏切らない作でした。 なかでも、面白かったのは全715頁という長編でありながら、何と探偵・火村が参入するのが、400頁間際という半分以上が過ぎてからという所。 それまではアリスが孤軍奮闘しつつも、少しずつ真相に辿り着くための材料を収集します。 それがラストから畳み掛けるかのように繋がりどんどんと、謎に光が当たる様は息をのむ展開でした。 長いだけに、読者側には結構早くから解けていた謎もありはしましたが... でも、火村英生シリーズのファンにはお勧め致しますよ。 | ||||
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以前は新本格と呼ばれた推理小説を結構読んでいたが、最近はすっかり読まなくなった。モラトリアム人間を決め込む関西のミステリ好きの大学生が、現実ではありえないような込み入った事件に巻き込まれ、これまた現実ではあり得ないような知恵比べの末、真犯人と複雑なトリックを暴くというパターンに、すっかり食傷気味になったというが正直なところである。こうした小説に共通しているのは、舞台設定やトリックなどの技巧に多くのエネルギーを割く一方で、人間の描き方が類型的、もっと言えば薄っぺらで、生身の人間の息吹が全く感じられないことである。おまけに、「自分はこんな複雑なトリックを作ったぞ」という作者の自己満足まで透けて見える。だから、一度解いたパズルをもう一度解こうとする人がいないように、こうした新本格の小説は一回読めば十分で、以前買った本の大半はすでにブックオフに売った。 エラリー・クイーンの影響を大きく受けている有栖川有栖の作品も新本格というカテゴリーに括られるが、他の新本格の作家に比べてそうした臭みが少ない。むかし、エラリー・クイーンが好きだったこともあり、いわば和製クイーンとして読み続けてきた。この作品も、海外出張の機内で読むのにちょうどいいと思って買ったのだが、いい意味で期待を裏切られた。 鍵のかかった男、つまり世捨て人のような人物で、過去が全く分からない主要人物(本作では被害者)というテーマは、実はあまり珍しくはない。北森鴻の「顔のない男」のように、全編その正体を追い続ける佳作もある。本作の面白さは、そもそも亡くなった人物が他殺か否かというところから始まることから、ワトソンであるアリスの捜査も、おのずと「事件」のトリックではなく、亡くなった人物の人物像を浮き彫りにすることから始まる。本作の最も面白い部分は、実はホームズの火村による謎解きではなく、作品が進むにつれて明らかになる、亡くなった人物をはじめとする登場人物の人物像にあると言ってもよい。これは、今までの有栖川有栖の作品にはなかったことである。 また、本作では中之島の描写が非常に細かい。過去の有栖川作品では、犯行の舞台の説明は詳細を極めたが、架空の町ではない実在の一区域の説明を、これだけ細かくやった作品は今までないのではないか。この中之島の描写ゆえに、亡くなった人物の人間像がより具体的になっている。いわば、中之島は本作の重要なバイプレーヤーと言ってもいい。私の知る限り、有栖川作品でこのような手法を使った作品はなかったように思う。 以上のように、本作で有栖川作品の新しい境地を見たように思ったものだが、その代償としてか新本格の面目躍如たるトリックの部分は少々弱い。そして、犯人をこのような犯行に駆り立てた動機も、現代風ではあるが、いささか取ってつけたような印象がある。だから、火村の推理も冴えているとは言い難く、トリックと動機については☆を一つ減らさざるを得なかった。 とはいえ、本作では新本格の推理小説に最も欠けている、人間描写が複雑かつ豊富になり、パズルとしての推理小説ではなく、より深みのある小説になっている。かと言って、テレビの2時間もののような、べたべたした感じは全くない。有栖川作品を含めて、新本格の作品を再読することはほぼ皆無だったが、本作については時間が経ったらもう一度読んでみたいと思っている。 | ||||
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「自殺とも他殺とも知れない死の真相を探るため、まず被害者について知ろうと躍起になっている。(中略)こんなに死者と向き合った覚えはない」。名探偵・火村英生のこの言葉が端的に示すように、本書は死者をめぐる物語であり、起こったかもしれない事件を扱うミステリである。 と書けば、ミステリファンなら思い出す原風景があるに違いない。似たようなタイプの小説をかつて読んだな…と。そう、アガサ・クリスティーである。彼女がよくモチーフにした“回想の殺人”パターン、それが下敷きになっていることはおそらく間違いない。火村の代わりに調査を行うアリスが、ポワロのやり方に何度か言及することからも、そのことは窺い知れる。 しかし、本書を読んで「クリスティーっぽい」と感じる人は少ないのではないだろうか。それは“回想の殺人”というモチーフを用いながらも、物語はむしろ社会派ミステリの趣を持っているからだと思う。ある人物の数奇な人生が徐々に浮き彫りにされていく様は、さながら宮部みゆきが紡いでみせるサーガのような小説を彷彿とさせる。 それでいて、犯人像やそこにたどり着くロジックがあくまで本格ミステリである点が、本書をさらに特殊な味わいにしている。“回想の殺人”というテーマ、圧倒的な物語、遊戯性のあるフーダニット、その三位一体にもう一つ加えるならば、大阪を舞台にした都市小説という要素だろう。僕は本書を大阪への小旅行に携行して、実際に中之島の辺りを散策しながら楽しんだ。 | ||||
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故人がどういう人物かに迫る小説は、その人が「普通な人」の場合そもそもこのような設定にしないため、どうしても読者が身構え、予想しやすくなるという難点があると思う。けれどこの本は、面白かった。作者の経験と技術がきちんと発揮されていると思う。 | ||||
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大阪の小さなホテルで長期滞在の老人が死んだ。 警察は自殺と断定したが、彼の人物をよく知る女性作家は納得がいかず、後輩の有栖川に調査を依頼する。 謎に包まれた人物の過去を探る異色篇である。 三分の二を過ぎるまで火村が登場せず、有栖が孤軍奮闘するという点も異色だ。 少しづつ謎のベールがはがされ、茫洋としていた像が鮮明になっていく。これもまたミステリの楽しみだ。 火村が登場した時には「待ってました!」と快哉を上げた。 犯人を追い詰める論理は、いつもながら良い出来だ。動機がいかにも現代的で感心した。 | ||||
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普通、本格ミステリというのは誰が犯人でいかに犯行を行ったかを解き明かしていくものだ。 だがこの本は王道路線からはズラしている。 シンプルな探偵vs犯人を期待してる人にとっては肩透かしだろう。 この本の秀逸なところは殺された男(=鍵の掛かった男)が、 一体どんな人物だったのか、どんな秘密を抱えていたのか、これでもかというほど被害者を追いかけていく構成になっているところ。 殺された男の生涯を丹念に追跡していくことにより、ともすれば「人間を描いていない」と評されがちな本格ミステリとは一線を画すできになっていると思う | ||||
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タイトルにも記載しましたがこんなにアリスがひとりで頑張ったのは初めてでは。 火村シリーズと付き合いの長い人向けかなと思います。 | ||||
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2015年に出た単行本の文庫化。 731ページという分厚さである。 大阪・中之島のホテルに5年も逗留しつづけた「鍵の掛かった男」の正体を明らかにしていく物語だ。 鍵の掛かったというと密室を思い浮かべるが、この場合は謎めいた過去の分からない男の子とを、こう評しているのである。 じっくりと有栖が探求していく過程は楽しめたが、真相自体はそれほどでもないような。 この厚さが必要だったかは疑問。 | ||||
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大阪中之島に佇む「銀星ホテル」で人生を閉じた 履歴の定かでない老人の死は、自殺ではなく他殺ではなかったのか。 その人柄に惹かれ親しく過ごした先輩作家の依頼を受け、 火村と有栖が捜査に乗り出します。 ところが、火村は大学の仕事のために参加が遅れ 有栖の単独捜査が延々と続きます。 地味な聞き込みが淡々と進むのです。 ところが、ここが面白い。 何の展開も盛り上がりも無いのですが、楽しくて仕方ないのです。 「鍵の掛かった男」の素性が少しづつ少しづつ つまびらかになり、その履歴が生き生きと色づいてくるだけでなく、 大阪中之島と、そこに建つ銀星ホテルが、 ボクの目の前に、実感を持って姿を現すのです。 ボクは、物語中盤で、 銀製ホテルの客になったような錯覚を覚え、 ああ、あの人はもう居ないのだと、悲しくなってしまいました。 そして、ようやく姿を見せた火村が、 有栖が集めたパズルの断片を組み立てたとき、 絡み合う人生の、残酷な運命が、まざまざと浮かび上がるのです。 作者が社会問題や国のありように没頭していた時期は戸惑いましたが、 (でも、「闇の喇叭」は最良のジュブナイルです。 あの終盤の、痛々しさは、言葉にできません。 ぜひぜひ、若い人に読んでいただきたい。) 「怪しい店」と今作で、ボクたちの好きな有栖川有栖が ようやく、帰ってきてくれたと、実感しました。 いつまでもいつまでも、ついていきますよ。 | ||||
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数年前からこの作家の作品を読まなくなって、持っていたシリーズも手放していました。(だんだんチープな感じになっていたので)この本はタイトルに惹かれてたまたま買いました。あまり期待してなかったのですが、これがおもしろくて正直びっくりでした。これをきっかけにブーム再来という感じで、火村探偵シリーズ本を買い漁っています。内容は一人の男の背景をじっくり描いていくストーリー展開で、時間がないときに読むには向きません。はらはらどきどきはありませんがじわじわ盛り上がります。後半までガマンして読むことが大事です。読後には何とも言えない切ない感じになります。たぶんまた数年後に本棚から取りだして読むと思うような本です。(国名シリーズのような短編好みの人にはちょっとつらいかも。) | ||||
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有栖川有栖さんの小説は初見でございますが、これぞミステリ。読んで損はしない! | ||||
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読み終わったあとの感想は、単純に「面白かった」でした。幾重にも鍵のかかった男の鍵を探しだし、一つずつ扉を開けていく… 結構後半まで、自殺か他殺かわからなくてそれも良かったです。傑作と言える一冊です。 また、火村、有栖川がちょうど私の年齢と同じぐらいなので震災時の年齢や30代が感じる自殺の動機の考え方に思い入れが出来ました(笑) | ||||
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火村と有栖の誕生した年が明確に記載されているのが収穫だった。 | ||||
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有栖川らしい作品の最後だった気がします。最後の展開が急に展開されるのでそれまでの関係が長すぎる気が | ||||
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最近は短編集ばかりだった火村シリーズの待望の長編でシリーズ最長ボリュームである。 今回火村は最期に謎解きで登場するだけ、ほぼ有栖川氏が主人公となる展開だ。 このシリーズは従来はアリバイやら密室などの本格らしいトリック主体のものだったが、今回は本格らしいトリックはかなりシンプルで、それよりも被害者の隠された半生を描く事に主眼が置かれている。 本格派の有栖川氏としては珍しく今回は端的に言えば、東野圭吾が書くようなミステリーに挑戦した作品だ。 かなりの長編ながら展開がうまいので最後まで地味な事件ながら引っ張っていく。 読み応えのある長編ミステリーに仕上がっている。 | ||||
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大阪市中之島の銀星ホテルで梨田老人が死んだ。年齢は70歳くらい。警察は首つり自殺と判定したが、同宿していたある女流作家は納得できない。そこで推理作家の有栖川有栖に真相解明を依頼したのである。快諾した有栖川は、友人と共に真実の解明に挑む。 中之島は大阪の中心地である。市役所、大銀行、中央公会堂などの歴史的建造物が保存されているばかりでなく、現在も新しい建物が次々建てられてゆく若い土地でもある。こういったことが、他の日本のミステリーと同様に書き込まれ、旅情を掻き立てられる。ホテルの朝食にお粥があって、普通の関東人は食べつづけないだろうが、おいしい梅干が添えてある。でも、一番大阪風なのは有栖川の発言である。「逆転したのに、同じ回の裏に再逆転のホームランを打たれたようなものだ」と言うような趣旨のことを言うが、なるほど。人生を野球にたとえますね。 そうこうしているうちに、友人の大学教員、火村の援助も受けて、彼は真相にせまる。 | ||||
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私にとって久々のヒットでした。 アンティークなのに清潔でこじんまりした、こんなホテルに私も泊まってみたい! 読んでる間、まるでこのホテルに滞在しているような錯覚に陥る一冊。 | ||||
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今まで何作も読んできましたが、やはり面白いです。今回は、殺人事件ではなく、殺人かどうかわからない、いったい誰なのかわからない人物の人生を探っていきます。謎解きの前に謎がある、といった構成でしょうか。ホテルに集う人々のお話や、ホテルで働く人たちの立ち居振舞いも素敵でした。推理小説でありながらいつもながら表現が美しく、アリス、火村コンビの活躍を今後も期待しています。 | ||||
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犯人さがしより、一人の人間の過去を求めていくお話ですよね。 私は満足しましたが、物足りない読者もいらっしゃるかとは思いました。 それよりも… いつもは人物紹介的に描かれ物語の風景でしかない火村先生のナゾとか秘密とかに皆が言及しすぎじゃないですか?? 次の長編で主題になって、シリーズ終了とかに… ならないでほしいです。(気にしすぎ?) | ||||
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