新しい十五匹のネズミのフライ: ジョン・H・ワトソンの冒険



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長編小説

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新しい十五匹のネズミのフライ :ジョン・H・ワトソンの冒険

2020年01月27日 新しい十五匹のネズミのフライ :ジョン・H・ワトソンの冒険

大銀行の地下金庫から、トンネルを掘って金貨を盗み出そうとした「赤毛組合」事件。ホームズの名推理で一件落着に見えたのだが、裏にはどんでん返しの計画が潜んでいた!事件後、薬物を乱用するホームズは頼りにならず、途方に暮れるワトソンには大事件が降りかかる。堅牢な刑務所から囚人はなぜ消えたのか、「新しい十五匹のネズミのフライ」の謎とは。巨匠が贈るパスティーシュの傑作。(「BOOK」データベースより)




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新しい十五匹のネズミのフライ: ジョン・H・ワトソンの冒険の総合評価:6.71/10点レビュー 17件。Bランク


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全2件 1~2 1/1ページ
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(7pt)

奇妙なタイトルの真の意味は?

2015年、私が最も驚いたのは御大島田荘司氏がホームズ物のパスティーシュを著したことだ。彼のホームズ物のパスティーシュと云えば直木賞候補にもなった『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』が有名だが、それが発表されたのが1984年。
そう、実に30年以上の時を経て再び島田氏がホームズ物のパスティーシュを発表したのだ。

なぜ今に至って御手洗潔シリーズのモデルとも云える彼の原点であるホームズ物のパスティーシュを著したのかが私にとって不思議でならなかったが、BBCドラマの『シャーロック』の放映をきっかけに昨今ホームズ物のパスティーシュが映画、ドラマのみならず国内外で発表されており、そのいずれもが正典をリスペクトした上質なミステリになっていることがもしかしたら御大のホームズ熱を触発して書かれたのかもしれない。
そして私はホロヴィッツのドイル財団公認の“正式な”ホームズシリーズ続編である『絹の家』に続けてホームズ物を読むことになった偶然にまたもや運命の意図を感じてしまった。

さて今回島田氏が紡いだパスティーシュはなんとあの有名な「赤毛組合」の事件がホームズを誤った推理に導くように画策された事件だったというもの。その裏側では更に別の犯罪計画が潜んでいたという、まことに大胆不敵な内容だ。

今までホームズのパスティーシュは数多書かれているが、それらは正典の中から登場人物やら事件やらをエピソードとして語るに過ぎなかったが、短編そのものをミスディレクションに使用した作品はなかっただろう。

島田作品の長編には本筋に関係したサブストーリーが結構な分量で収められているのが特徴だが、上に書いたように今回はそのサブストーリーがなんと「赤毛組合」1編がまるまる収められている。ドイルの生み出したシャーロック・ホームズとワトソンから御手洗潔と石岡和己のコンビの着想を得た島田氏がとうとう師匠の作品を下地に更なる高みを目指した本格ミステリを生み出すに至ったことに私は感慨深いものを覚えてしまった。

また先に読んだ『絹の家』でもそうだが、ホームズ物のパスティーシュには正典からのネタが織り込まれているのが常道だが、本書もその例に洩れず、いや洩れないどころか島田荘司氏の奔放な想像力で読者が予想もしていなかった使い方をしている。

そういう意味では上に書いた赤毛組合の使い方も島田流のアレンジだと云えるだろう。

また『絹の家』でも感じたことだが、私はいわゆるシャーロッキアンではないので本書に織り込まれたネタを十全に理解しているとは云えない。従って本書の中には正典に含まれていたかどうか不明なネタもある。

今回は麻薬中毒で全く使い物にならなくなったホームズに代わってワトソンが事件解決に乗り出すというものだが、本書で描かれるワトソン像は御手洗シリーズの石岡君そのものだ。

ホームズ抜きでホームズ短編を独自のアイデアで書いたことを誇らしげに思えば、今までのホームズ作品の中で一番の駄作と断ぜられ―因みにその作品は「這う人」というもの―、亡くなった兄の妻に交際を申し込めば、貴方にはもっといい人がいると云われて断られ、涙で枕を濡らすいじけぶりを見せる。

また一方でホームズはどうかと云えば『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』でも見られたように、島田氏はシャーロッキアンでありながらも自作で登場させるホームズをヤク中で奇怪な行動が目立つ変人として描く。

特に赤毛組合の事件を解決した後のホームズの体たらくぶりはここまで書いていいのかと思うほどひどい有様だ。

さて本書の最大の謎はタイトルにも冠されている「新しい十五匹のネズミのフライ」が何を意味するのか、そしてどうやって詐欺グループは難攻不落と云われる刑務所から脱獄できたのかの2つだが、この真相はなかなか面白かった。

いやはや作者は当時御年65歳だが、まだまだこんなミステリネタを案出する柔軟な頭を持っていることに驚かされる。

但し幸か不幸かこの一月でホームズのパスティーシュ物を2作続けて読むことになり、どうしてもその2作を比べてみてしまうのだが、ホームズの作風を、いやドイルの作風を忠実に再現しているとすればやはりホロヴィッツの『絹の家』に軍配が上がるだろう。
島田流ホームズのパスティーシュは上に書いたように本家をモデルにして書かれた御手洗シリーズのテイストがどうしても滲み出ており、正典の2人の性格や為人が島田流に料理されている感が否めないからだ。

さて最後に興味深く思った一節にちょっと触れよう。

ワトソンが自ら自信作として放った「這う人」がひどい駄作だと評されて世にも出なかったのに対し、編集者に急かされてホームズの奇行を基に無理矢理書いた「まだらの紐」が大絶賛を受けたことに対してワトソンは読者の好みというのが解らなくなったと漏らす。
それをホームズは全ては嘘八百であり、そんな嘘に読者は真実を見る、だから誰も何が受けるのかは解らないから他人の評価に一喜一憂する必要はないと説く。

これは今まで数多くの作品を放ってきた作者自身が抱き、目の当たりにした傑作と凡作の見えない境についての心情のように思えた。
常に作家は全力投球をしているがどうしても礼賛される作品とそうでないものが現れる。そして作家はどんな作品が受けるのかと研究を重ねるが、渾身の作品が世評が低かったときにショックを受け、落ち込み、もはや何を書いたらいいのかが解らなくなる。それがスランプへと繋がるのだろうが、結局傑作か凡作かは受け手である読者がどのように思うのかによるので誰も解らないのだと作家生活を40年近く続けている島田氏が説いているように思える。

そして今やネットで簡単に本の感想を公共の場で云い合える環境にある中で、作者の創作意欲を喪失させるようなひどい感想が散見されることもあるが、そんなものは気にせず、己の信じた道を進めばよいと諭しているようにも感じた。

本書が島田氏にとってどんな位置づけの作品なのかは解らないが幸いにして発表当時本書は『このミス』に久々にランクインを果たした。恐らく作者自身自信作として放ったが、あまり受けないことをも想定して上のようなことをワトソンの口を借りて話したのかもしれない。

恐らくこの島田荘司という作家は死ぬまで本格ミステリのことを考え、新しい力を支援し、そしてそれに負けじと自らも作品を発表し続けるに違いない。
まだまだこんな作品が書ける島田氏をこれからも私はその作品を買い続け、そして読み続けるつもりだ。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ホームズの発狂とワトソンの大活躍

島田さんによるホームズもののパスティーシュ。そんな面白くないだろうと、あまり期待せずブックオフで購入。意外と言っては失礼ながら、これが読みやすくて面白い!赤毛連盟から始まり、そこからホームズが麻薬のやりすぎで発狂して病院送りに。主役不在でどうなることかと思えばワトソンが大活躍。中盤からは赤毛連盟で、ホームズが捕まえた悪者三人が脱獄不可能と言われる刑務所から脱獄。脱獄の手法は?そのキーワードがこの本のタイトルで、今作の最大の謎。ホームズの扱いがちょっとかわいそうながらも最後は、やはり名探偵ぶりを発揮。大満足のホームズパスティーシュでした!

タッキー
KURC2DIQ
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No.15:
(3pt)

面白い

パロディとして読むと面白いが、主人公のワトソンが、ちょっと馬鹿っぽいのと、細部に時代考証間違いがあるのが興醒め。
新しい十五匹のネズミのフライ: ジョン・H・ワトソンの冒険Amazon書評・レビュー:新しい十五匹のネズミのフライ: ジョン・H・ワトソンの冒険より
4103252340
No.14:
(3pt)

正しきパスティーシュ

これはまあタイトルの勝利だと思う。面白そう、読みたい、という気にさせるタイトルである。しかしちょっと長いかなと思う。パスティーシュなのでシャーロキアンへの目配りは行き届いているのだが、ストーリーはせいぜい中編向きだ。

ひとつ気になる箇所があった。左足をけがしたワトソンが馬車で221Bに到着して降りるシーン(P187)。「右手が触れているドアを開いて、そろそろとステップの上に、無事な方の右足を載せた」とあるが、これは左側通行のイギリスではちょっとおかしいのではないか。

調べてみると、イギリスの左側通行の起源は中世にさかのぼるようで、すでにホームズの時代は左側通行だったろう。ではワトソンは歩道とは反対側に降りたのかと思ったら、「歩道の石が、まるで柔らかな物質に変わったようで、ぐにゃりと沈んだ」という表記がある。では馬車が右側駐車したのだろうか…。

と、どうでもいいことを云々するのは、まあホームズものの楽しみ方のひとつでもあるので、そういう意味でも正しきパスティーシュであることは間違いない。

【追記】 著者によるあとがきの中で『緋色の研究』の緋色に「ひしょく」とルビが打ってあるのはなぜだろう? 緋色は「ひいろ」ではなく「ひしょく」と読むのが正しい、という話など聞いたこともない。
新しい十五匹のネズミのフライ :ジョン・H・ワトソンの冒険Amazon書評・レビュー:新しい十五匹のネズミのフライ :ジョン・H・ワトソンの冒険より
4101033153
No.13:
(4pt)

つまりパロディ作品だったのですね・・

昔々にシャーロック・ホームズを愛読していたので、うろ覚えだったのが良かったのかなと思いますが、正直これって良いのかな・・・(著作権など)と心配になりました。本のどこにも「パロディです」や「コナン・ドイルに捧ぐ」など書いていないため、困惑しました。
私の拙い読書歴で、正式な書籍で堂々とパロディを書いているものに出会ったことがなく、かなり戸惑いました。
後から赤毛同盟を読んでみると、本当にそのまんま引用していますよね。ホームズが覚醒剤打つところなんて15ページ以上に渡って四つのサインそのまま引用です。要はホームズの薬中毒を踏まえて、赤毛同盟をちょっと膨らませた内容です。
ホームズファンの人は読まない方がいいかも・・・?かなり情けないホームズで、さして熱狂的なファンでもない自分でもちょっとしたショックでした。滑稽で、そこを哀しく感じました。

島田さんの作品自体は好きで以前はよく読んでいたのですが(御手洗シリーズなど)、一時期から急に俗っぽくなり、特に女性がたくさん出るようになってからの劣化が酷かったため、長く読んでいなかったのですが、たまたま手に取る機会があり読みましたが、個人的にはモヤモヤしながらも久々にしっかりとした推理小説を楽しめました。辞書並みに厚いですが、意外とすらすらと読め、最後のあたりは時間を忘れました。
この機会にシャーロック・ホームズを読み直そうかというきっかけになりました。
新しい十五匹のネズミのフライ: ジョン・H・ワトソンの冒険Amazon書評・レビュー:新しい十五匹のネズミのフライ: ジョン・H・ワトソンの冒険より
4103252340
No.12:
(3pt)

新しい趣向が欲しかったけど・・・

シャーロキアンとはおかしな趣向の持ち主で、ホームズ物語を絶賛するだけでなくケチをつけるのも熱心である。あの話の展開はおかしい、とかあの事件の真犯人は別にいるとか。「赤毛組合」「まだらの紐」「バスカヴィル家の犬」・・・有名どころの事件をネタに「これが真相だ」の解釈は昔からある。そういう意味で島田氏の今回作、聞いたことがある解釈なので、とくに斬新とは感じなかった。ワトスンが主役級の活躍をする展開も、ホームズ著作の内幕も、既成の作品と大同小異。せっかくの長編作、どこかあっといわせる新趣向はないものか・・・。
あるとすれば脱獄方法を秘めているらしい題名にもなっている暗号だが、これも残念、なんだこのあっけなさはが正直な感想。英語の文章なんだからそこを考慮して解かねば、は盲点だったが。ひとつらなりの文章で、最初の単語はこういうふうに解く、あとの単語は別のやり方で解く、こういうのはフェアなんだろうか。
読む者の意表を突くだけがミステリーじゃない、ははぁ展開が読めたぞ、そら思った通りだ、も面白さのひとつではあろうが・・・。ほぼ予想どおりと読んできて、暗号解読で意表を突かれた。がっかりの意味で。
ワトスンのせっかくの大活躍、恋が実らなかった理由もそんなのありか。もうちょっとラストを盛り上げねば。
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4103252340
No.11:
(3pt)

謎は魅力的と思うが・・・

メイントリックは実質一個だけ。幻想的でいい謎とは思うけど、全盛期の島田荘司なら短編集のレベル。リーダビリティの高い文章はぐいぐい読ませてくれるが、島田荘司を期待する者としては食い足りないなあ。
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4101033153



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