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(短編集)
片桐大三郎とXYZの悲劇
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片桐大三郎とXYZの悲劇の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.43pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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面白く読みました面白く | ||||
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著者の「猫丸先輩シリーズ」は、いわゆる”本格”推理ではなく、擬似的な論理(というか屁理屈、推論、憶測)をもてあそぶ、一種の遊戯であり、近作の短編集の書名も『猫丸先輩の推測』『猫丸先輩の空論 -超絶仮想事件簿- 』であって、書名からして『法月綸太郎の功績』などとは著者の方向性が異なることは明らかだ。 その著者の「XYZの悲劇」と題する連作短編集なのだから、これは本格推理のパロデイとして面白いのであって、本格推理そのものではないと、わかった上で読むべき本なのである。 主人公の強引な性格と行動が、推理と言うより「推測」「空論」に近い「だいたいわかった」発言に、一種の説得力を生み出している。 と同時に、いわゆる「後期クイーン的問題」すなわち「作中で探偵が最終的に提示した解決が、本当に真の解決かどうか作中では証明できないこと」の問題と、「作中で探偵が神であるかの様に振るまい、登場人物の運命を決定することについての是非」の問題をも、ちゃんと示している点で、クイーンのパロディとしては十分よくできていると思う。 しかし・・・ 作者の意図がどのあたりにあるのか、おわかりでない方もおられるようで、たとえば「ウクレレの弦は錆びない」というご指摘も、そのひとつだと思う。 このウクレレは、何ごとにも飽きっぽいバカ息子が練習用に買ってすぐに飽きた安物であり、ウクレレが放置されていた物置には、同じ息子が過去にすぐ飽きたギターやテニスラケットその他もホコリをかぶったままになっている。 練習用に買った安物にすぐ飽きたら、弦をスチールに張り替えて遊んだりもしたのであろう。 実際、安物のウクレレにスチール弦を張って失敗した人もいる、と書かれた個人ブログも実在するのだ。 しかし、ウクレレの弦がどうであったは事件の真相を推測するのに何ら関係がないため、主人公の性格・行動からしても、いちいち説明されないであろうことは明らかだ。 こちらで勝手に推測しておけば良く、作品の欠点とまでは言えない。 <ここからネタバレ注意> 「銀幕英雄一代記」の挿入は、この連作が「年代順」に書かれているかのように見せるための一種の記述トリックであり、最終話への伏線になっているのだが、そうした点を理解できない人もおられるようだ。 本格推理のパロディという芸風も、なかなか理解されない。 この著者の作品では、『星降り山荘の殺人』の、真のトリックがどこに仕掛けられているのかが、理解できない人も少なからずおられるのだから。 | ||||
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ドルリー・レーンの日本版を新劇俳優ではなく時代劇スター、それも超大物に移植した設定が愉快。 主人公は三船敏郎と萬屋錦之助と松平健を合体したような経歴で、世代の違う各スターの要素を 取り込んでいるため、時代背景などはわざとしたようにデタラメ(物価の換算、テレビの普及の時期 など)になっている。ならばもう少しユーモア要素を豊富にしても良かったのではという気もするが、 論理展開はさすがにビジビシと痛快で、特に某話の犯人指摘に仰天しない者はいないだろう。 意外な犯人とか意外な真相というのではなく、何というか・・・読んでみてくださいとしか言いようが ない。 | ||||
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耳の聞こえない大物時代劇俳優(劇中のエピソードからするとモデルは三船か・・・)が事件を解決・・・・・ということでエラリークィーンのドルリーレーンの日本版ということで、有名な○○の悲劇シリーズの4部作の設定を微妙に頂いた事件を扱っている。 勿論事件の設定はなぞっているが、トリックや結末はオリジナルであるが、レーン4部作を読んでいる人の方がより楽しめるだろう。 クィーンを意識した作品ということで、論理による絞込み推理がメインであり、本格推理短編の醍醐味を味あわせてくれる良作が揃っている。 | ||||
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クイーンの4部作を既読か否かで印象が変わる(と思われる)作品。 ある年代以上のミステリ好きにとっては当然の「基礎教養」であった作品群を全く読んでいない読者の受け取り方は想像しかできないが、「借景」を欠いた舞台と「意味不明」な思わせぶりな記述に低評価を下すかもしれない。 騙されたと思って、4部作を読んでから、再読することを強くお勧めします。 | ||||
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デビュー作の『日曜の夜は出たくない』以来、『過ぎゆく風はみどり色』『星降り山荘の殺人』『闇ニ笑フ』などで、大仕掛けなトリックを大胆不敵な構成で描き、「天然カー」とも呼ばれた倉知淳さん。その彼は同時に、「猫丸先輩シリーズ」などの諸作で、のどかで優しげなムードの文章の奥に、人間の底に潜む強烈な悪意とそれに対する諦観のようなものを味わわせてくれていた作家でした。 本作は御存知のようにドルリー・レーン四部作を下敷きにした、ミステリ好きへのプレゼントです。高名な著者の遺稿紛失をめぐる謎、現場の足跡を消した痕跡の意味、服を貫く穴が語る犯行の経緯の真相、などとクイーンの原典を利用しつつそれを絶妙にすり抜けていく数々のモチーフを、やはり「なぜ四部作にしたのか」と露骨に匂わせる意味ありげな装置に乗せ描き出してくれています。 かつて某映画で「初代金田一耕助」を演じたこともある三船敏郎を思い起こさざるを得ない時代劇俳優の大スターが、映画ファンなら誰もが一度は聞いたことのあるようなエピソードを巧みに生かした舞台設定で闊歩するのを、ごくフツーの女の子が聴力をなくした彼の「耳」となって、時に振り回され時に担ぎあげられ時に鯛焼き代を返せと迫られつつ、事件の現場を駆け回るシリーズです。 私の場合、連作四部作であることに意味があるのだろうと思って眺めていて、まんまとしてやられました。第一作で妙に事件の説明に無駄に見える描写が多いと思い、警察の捜査が杜撰だとか関係者の事情聴取に面白みがないとか勝手なことを感じつつ、お決まりのフレーズをひょいひょいと斜め読みしていたら、最後の作品では見事に背負い投げで場外まで飛ばされました。背筋の寒くなるような非常に後味の悪い事件から、身近で温かい話に展開していくのは北村薫の『空飛ぶ馬』の構成に似ているな、などと思ったらもう作者の術中にはまっていたわけです。 大仕掛けの中に巧みな小技が生きていて、たとえば犯人が警察と駆け引きしている時の不思議な行動の理由について猫丸先輩シリーズの「日常の謎」的な解決が示されますが、殺人事件でもあるこの事件に不釣り合いのように見えるその心理も、犯人の性格設定によって納得させられてしまいます。決して一度読んだら他の作品を手に取る気がなくなる稀代の大作というものではありませんが、十分な楽しみと手ごたえを感じさせてくれる逸品です。 むしろ、こういう締めくくりでは、また片桐座長と野々瀬乃枝のコンビの活躍を書いてもらわないわけにはいかないだろうと思わせてくれる流れと言えるでしょう。ぜひぜひ続編、できれば再び三度の「四部作」によるシリーズ化を期待しています。 | ||||
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寡作の倉知先生ですが、一方滅多に出ない新作がレベルが高いことでも知られています。 今作で探偵を務めるのは聴力を失い俳優を引退した往年の銀幕スター片桐大三郎。彼は有り余る知名度を武器に秘書を引き連れ趣味である殺人事件の捜査に邁進します。 タイトルやキャラ設定、言うまでもなくクイーンの「レーン四部作」へのオマージュです。 パロディではなくオマージュなので、設定や状況は似通っていてもギャグではなく(倉知先生らしいユーモアはありますが)まっとうなミステリになっています。 作品ごとの長さも各編二段組約100ページのボリュームがあり、発端から解決まで間然とすることなく楽しめます。 一つの証拠から事件を解決しラスト片桐の犯人に対する人を食った発言が楽しい「ぎゅうぎゅう詰めの殺意」。 『被害者はなぜウクレレで殺されていたのか』という疑問から犯人を一気に導く過程が見事な「極めて陽気で呑気な凶器」。 冒頭の伏線と片桐の言動の真意が驚愕の展開見せる「途切れ途切れの誘拐」。 レーン四部作読者であればニヤリとする「片桐大三郎最後の季節」。 全編通して素晴らしいのは倉知先生の哲学である「初心者にも分かりやすいミステリを書くこと」というテーマが貫かれていること。どの事件も分かりやすい構図と一発で理解できる真相を持ち合わせているのに謎はしっかりと伏せられています。 「星降り荘の殺人」「壺中の天国」に続く倉知先生の新しい代表作になると思う一冊です。 (それからアマゾンのデータは間違っていて本当は399ページあります) | ||||
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