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成吉思汗の秘密
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成吉思汗の秘密の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.28pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全5件 1~5 1/1ページ
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本邦歴史ミステリのパイオニア的作品であります。 …が、実のところ、そうしたミステリ史的評価を抜きにすると決して褒められた作品とはいえません。現在にもしも同一内容の作品が新作として出版されたなら、総スカンでしょう。 作中で『時の娘』が引き合いに出されておりますが、通説に対する異議申し立てとして正攻法で歴史を検証した『時の娘』のアプローチとは方向性がまるで異なり、初めから突飛な真相をいかにして成り立たせるかという見地から書かれております。 歴史ミステリを看板にかかげた作品としての一番の問題は、作中、神津や松下が調べたり、推理したことになっている事柄が、ほとんど小谷部全一郎氏や末松謙澄氏の義経=成吉思汗説の流用で、作者のオリジナル要素は意外に乏しいという点でしょうか。何故先人の研究という形で紹介しなかったのか理解に苦しみます。 同一人説の推理にしても、地名の語呂合わせや風俗の類似性といったこじつけ、百パーセント否定しきれないなら肯定してもかまわないという「悪魔の証明」的論理に頼る部分が多く、とうてい実証的といえるものではありません。中盤に神津対井村の対決がありますが、井村の方が正論過ぎるくらいに正論を主張しているため、作者の意図とは逆さまに、同一人説に納得するより、トンデモ説に染まってしまった人間にその説が誤りだと納得させる行為の徒労ぶりをアピールする結果になっております。 和製歴史ミステリの始まりが本作とされることは、ある意味で現在にいたるまでのトンデモ志向を象徴するものといえます。 | ||||
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無論謎説き推理小説としては難がある。実証不能の歴史上の事実にいかに推量を加えたとて、門外漢の著者に新事実が究明できる、訳がないのだから。ただ呆れるのは高木の創造した名探偵・神津恭介にたいする著者の異常なまでの感情移入と自己陶酔ぶりであり、およそ高木彬光という男は、「何もわかってない奴だ」と言うことを暴露してしまっている。 いくら名探偵で二枚目、かは知らないが、「仕事と研究以外興味のない石木」みたいな神津のような男が「女性のあこがれの的」な訳があるか、また「女に興味がない」などと吹聴して回る男に女が興味を示すか、考えたらわかりそうなものだが、何もわかっていない高木は、「こんな男がいたら女にモテモテに違いない」と、思い込んでそのモテぶりを過剰に描写するが、いかに若い時の石坂浩二や草刈正雄のような顔をしていたって、神津恭介みたいな男が現実に存在したら女から総スカン食らうのは間違いのない事実であり、それを「頭がよくて二枚目なら、女にモテモテに違いない」と、考えた高木の浅はかさが如実に表れてしまっている。これは恐らく自分自身の投影であり、一高から京大・中島飛行機とエリートコースを歩んだ自分自身をオーバーラップ、したいのだろうが、その割に全然女にもてなかったのを顔のせいにし、「これでツラさえよかったら女にモテモテなのに」と夢想し、「それで女に興味がない、なんて男がいたら、カッコいい、なあ」と思い込んでこういう歪んだキャラクターを創造したのだ、ということがわかってしまって読んでいて悲しくなる。 大体東大コンプレックスの強すぎるのが高木、という男の顕著な特徴であり、何かと「東大、東大」と無意味に不必要に東大、という言葉を連発するところにこの男の異常さが現れている(冒頭神津が入院する件で、怪我か病気かも知らない松下研三に、「神津さんが東大の外科に入院したと!」と叫ばせるところなどまさにその例で、どこに入院しようと関係ないと思うが)。その癖大麻鎮子が休職させられたとなると、松下に「東大横暴だ」「東大ばかりにお天道さまが通るもんですか」と、意味もなく無関係に憤慨させるところなどこの男のコンプレックスの根の深さを如実に表しており、何事もうまく行かなかったのを学校のせいにし、「東大さえ出ていれば」というねたみのあからさまなこと、とても京都大学を卒業した人間とも思えない。ようは女にもてなかったのまで学校のせいにし、「京大だからモテなかったんだ」という意識の裏返しで、同じ男として同情に堪えない、のである。「俺はこんなに頭がいいのに、何故女にもてないんだろう」真面目に考えて神津恭介という、「東大助教授で名探偵で二枚目で、しかも女に興味がない(彼が思う)カッコいい男」を創り上げて現実から目を背け溜飲を下げていた可哀そうな奴、という実像が見えてしまって同情の念、しか湧いてこない。 そのコンプレックスをバネに希代の流行作家にのし上がった、のは立派、かもしれんが、さてそんなコンプレックスとは無縁な人生を送った私と高木とはどちらの方が幸せな生涯を送った、ことになるのか。 | ||||
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歴史ファンならずとも「そうだったら、すごいことだな」と思いをはせるのが、歴史上の英雄が死なずに別地で生き延びる伝説だ。 イエス・キリストが青森県に渡ったとか、源義経がモンゴルに行って成吉思汗になったとか、明智光秀が天海和尚になって徳川幕府を支えたとか、豊臣秀頼が薩摩に行って隠遁生活を送ったとか。 その中でも最も有名なのが、源義経がモンゴルに行って成吉思汗になったことだろう。 何せ、ぼくがその伝説を聞いたのは小学校の社会の授業なのだから! この『成吉思汗の秘密』では、神津恭介が、なんと入院中にその秘密を暴くというモノ。 小説の中だから、どうとでも話を作れるので、どこまでが資料に基づいた推測でと言うのは分からない。 でもまあ、ほかの歴史検証エンターティメントもどのように資料を解釈しているのかは分からないので、同じことだが。 (でもだったら、わざわざ神津恭介に登場してもらわなくても、高木彬光として持論を展開すればいいのに、紛らわしいとちょっと思う) 神津恭介と井村博士とのやりとりで、推測の検証になっているのだが、最後の心中事件で一件落着というのは解せない。 高木彬光が、「そろそろお時間となりました」と強引に終わりに持っていったようで。。。 | ||||
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「時の娘」に触発されて書いたと思われる。ベッド・ディテクティブに歴史推理を組み合わせたもの。義経の大陸脱出説は昔からあり、特に北海道には義経伝説が残っている箇所が多いと言う。それだけ義経の人気が昔から高かった証拠だろう。 この手の小説は決定的な証拠を提示できないだけに、どこまで書けば読者を"納得"させられるかが勝負になる。また、先人の説との重複も避けねばならず検証が大変だ。実際、作者は「邪馬台国の秘密」という同種の小説を書き、ある歴史学者の批判を受けて廃刊に追い込まれるという苦い経験をしている。日本人は潔癖過ぎるのだろう。J.テイが「時の娘」を書いた際、その結論は既に発表済みの説だったそうである。 本作は「邪馬台国の秘密」に比べると、内容的におとなしく新鮮味がない。画期的なアイデアがないのだ。最後はロマンスで締めているが、これで納得できるとは思えないなぁ。 | ||||
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神津恭介が友人と繰り広げる歴史談義が楽しい。これを読んでいたら、家族から〈歴史談義の途中で殺人が起こったりしないの?〉って言われました。当然の疑問ですが、終わりまで純粋に歴史推理なのでした。オカルトに傾いた結論は少し疑問だけれど、のどかで読みやすい本。 | ||||
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