■スポンサードリンク


カラマーゾフの妹



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
カラマーゾフの妹
カラマーゾフの妹 (講談社文庫)

カラマーゾフの妹の評価: 2.83/5点 レビュー 58件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点2.83pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全21件 1~20 1/2ページ
12>>
No.21:
(4pt)

二次創作として楽しみました

『カラマーゾフの兄弟』は魂と信仰の物語ですが、本作はエンターテイメントミステリーです。登場人物を借りながら、完全に作者独自の世界が展開されています。
登場人物の会話の端々にドストエフスキーの他の作品の登場人物がチラッと出出てきたり、一部SF的なところもあったり、主人公のイワンは有名な海外ドラマの某変人捜査官を彷彿させる描写があったり。思わずニヤニヤしながら読みました。
よく書けた二次創作だなあと思います。面白かったです。
ドストエフスキーの高尚さは全くないです、念のため。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.20:
(4pt)
※削除申請(1件)

テーマは興味深いけど

これをドストエフスキー氏が読んだら、いったいどんな評価を下すことだろう。
この作品は単なる推理探偵物に過ぎない気がする。
以前、ハードカバー本で読んだ時にそう感じた。
最近、カラマーゾフの兄弟を読み直してみるとやはりドストエフスキー氏が単なる推理モノを第二部のメインテーマなどにはしていないと確信出来る。
テーマがテーマだけに、非常に「惜しい」作品である。
作者はもっとキリスト教、ひいてはロシア正教やロシアの風土、ロシア人気質の研究を充分に考証した上で、この作品を書くべきだったと思う。
アリョーシャ・カラマーゾフの13年後は「皇帝暗殺団」の組織のリーダーとみるのは正しいかも知れない。
つまりはテロリストの首魁になるわけだ。
しかし、第二部については、やはりドストエフスキー氏がどのような構想を持っていたかは依然として謎である。
いずれにせよ、この作品の登場人物たちはロシア人ではなく、日本人のそれである。日本人がロシア人のマネをしているだけだ。
追記。
俺はもうすでにこの作品を数ページ読んだだけでオチが判っていた。
当然のことながら「あの天使」がこの一連の殺人事件の黒星だ。
「神がいるからこそ、すべてにおいて許されている」
つまりは、どんな理不尽も不条理も、戦争も犯罪もすべてにおいて犯人の正体が「黒」なのは「神」だったのである。
以前から、このテーマはある種の直感めいた閃きで脳裏をよぎることがしばしばあった。
しかしながら、わたしはそれを何度も否定してきた。しかし、この作品を読んで疑惑は確信に変わってしまった。神は悪魔であり、両者は一卵性双生児だったのである。
アリョーシャはさまざまな人間を殺害して、なんら良心の呵責を感じない「快楽殺人者」であるが(彼はあのゾシマ長老さえ、殺害していた!)
これらすべての殺人の遂行及び皇帝暗殺のテロリストになることが、
「より人類の進化の為の崇高なる使命」を帯びた必要不可欠な通過点としてのイニシエーションだとするならば、
アリョーシャを殺人者にしても、なんらかの意味はあったかも知れない。
(はたして正義の殺人などあり得るか?という問題は別にして)
しかしながら、アリョーシャを単なる無邪気な変態的リビドーの持ち主、無邪気な快楽殺人者にしたまま、この作品のオチを片付けてしまう執筆態度はエンターテイメント作品としては、
面白いけど、
カラマーゾフの本格的な「第2部」などにはまったく成り得ない。
むしろ作者は、時間的な余裕が無かったのか?それとも、ロクにカラマーゾフの兄弟・第二部を執筆する構想など持っておらず、
行き当たりバッタリ式に勢いのちからだけでこの作品を書いたキライがある。
もちろん、面白ければそれで良いという意見には、わたしもやはり同意せざるを得ないが・・・
ただしかし、この作品の筆者は少なくとも「カラマーゾフ第二部」への足がかりのひとつ、
いわば、お手本のひとつを提供してくれた(良い意味でも悪い意味でも)
その事自体は称賛に値するし、敬意を払って然るべきゆえに、あえて星の数を増やして4つにした次第である。
いずれにせよ、誰かがいつかはわからないが、
本格的な「カラマーゾフの兄弟・第二部」を書いて欲しいし、
それは日本人によって達成されることを望んでやまないのはわたしだけではないだろう・・・

追記その2。ドストエフスキーの性的嗜癖について。
ドストエフスキー氏が「象徴主義的手法」を持って、その諸作品中に「少女性愛への衝動」をそれとなく表現していた事は事実であり、多くのドストエフスキー研究者の指摘するところである。
しかし、それを持ってしてドストエフスキー氏を「その種の特殊性愛の持ち主」だったと断定するのは非常に危険な行為である。彼の名誉の為にあえて付け足して置きたい。
清直人著「ドストエフスキーとキリスト教・イエス主義・大地信仰・社会主義」を参考にされたい。
ここで思い出すのは「悪霊」に登場するスタヴローギンのペテルブルクでの少女凌辱のシーンであるが、
あれは、実際にドストエフスキー氏が過去においてあからさまに、赤裸々に自分の体験を作中に挿入したとする研究者がいることは事実かも知れない。
だが早急な結論を出して「アリョーシャ・カラマーゾフ」という特異なキャラクターに異常性愛の持ち主としたがる傾向には、やはり歯止めをかけねばなるまい。
アリョーシャが第二部において「シベリア流刑」になるような、犯罪行為ないし活動に巻き込まれることはおそらく事実であろうが、
それは、おそらくドストエフスキー氏の「シベリア流刑体験」とオーバーラップする内容のはずであり、
その場においてアリョーシャは「ロシアの民衆と信仰」を知り「キリスト教主義的社会主義者」の闘志となる(人格的なさらなる昇華)可能性は高い。
この、キリスト教ひいてはイエス信仰に基づくロシア唯一の「真の社会主義」こそが世界を本当に変革して救済する唯一の方法と生前ドストエフスキー氏は主張していた。
上記の事実をもってしても、カラマーゾフ第二部の構想にイエス信仰に基づく革命及び「皇帝暗殺」がテーマとなる予定であったらしい事は、
90%の確率で非常に高いと思わざるを得ない。
長々と、カラマーゾフ第二部についての予測レビューしてしまったが、これにて愚筆を置くこととしよう。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.19:
(4pt)

結構楽しめた。

カラマーゾフの兄弟を読み終わったところだったので予備知識なく手にとったのですが 当然ドストエフスキーより読みやすく楽しく読了しました。三兄弟の中ではどちらかといえばイワンが気に入っていたので 彼が探偵役という設定も個人的には受け入れやすく読後感もまずまず。けちをつける所は色々あるでしょうが カラマーゾフの兄弟の ドストエフスキーが書けなかった続編などと大層なことは思わず 気軽に楽しんでしまいましょう。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.18:
(5pt)

ミステリーとして読めばおもしろい

『カラマーゾフの兄弟』を読んだことのある人なら、手に取りたくなる小説だと思う。私は三度読んでいる。さて、ハードルを超えられたか。私は超えていると思う。あざとい面もあるが、おもしろかった。確かに、「あの犯人」には異常性を感じていた。ただ『カラマーゾフの兄弟』は総合小説だが、この本はあくまでもそれをモチーフにしたミステリーだ。そこを勘違いしないほうがいいと思う。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.17:
(4pt)

読者を選ぶミステリー

ロシアの文豪ドストエフスキーの遺作となった『カラマーゾフの兄弟』が実は未完であることはあまり知られていない。書かれたのは第一部のみであり、肝心なのは第二部であると冒頭で宣言しておきながら、著者のドフトエフスキーは第一部を書き上げた直後に死んでしまった。長い長い前置きである第一部はそれだけで独立した名作として読み継がれているが、志半ばで力尽きた文豪の悔しさは計り知れない。本書はそんなドストエフスキーの遺志を継ぎ、『カラマーゾフの兄弟』の続篇として書き上げられた江戸川乱歩賞受賞のミステリーである。
 舞台はカラマーゾフ事件から13年後のロシアであり、登場人物も『カラマーゾフの兄弟』で活躍した面々である。この設定からしてすでに、本作がかなりの異色作であることが分かる。ミステリーである以上フィクションであることは当然としても、既存のフィクションをそのまま継承した舞台設定というのは、乱歩賞の長い歴史の中でもほとんどないのではないか。しかも本作の著者は作中でドストエフスキーのことを「我が前任者」などと呼んでいる。ということは彼はドストエフスキーの後継者なのか。空前絶後の文豪に対する冒涜とも受け取られかねないこの大胆さは、ミステリーの世界でなければ到底許容されえないものだったろう。ドストエフスキーの信奉者であれば、著者のこの態度でもう拒絶反応を起こしてしまうかも知れない。しかしこの本は『カラマーゾフの兄弟』を読んだ読者にこそ読んでほしい。というより『カラマーゾフの兄弟』を読んでいなければ、面白さは半減するだろう(読んでいない読者にも配慮した構成にはなっているが)。そういった意味では読者を選ぶ作品ではある。
 なぜこのようなマニアックな作品が、江戸川乱歩賞などという一般大衆を読者とするミステリー賞を受賞したのか。少なくとも受賞作を毎年読んでいる一般読者は、少なからぬ違和感を持って本作を読んだはずである。特に新規なトリックが使われているわけではないし、有体に言えば『カラマーゾフの兄弟』を読んでいなければその面白さはほとんど分からない。しかし『カラマーゾフの兄弟』の読者にとっては、かなり衝撃的な内容を含んでいることは確かである。専門家ではないので分からないが、著者が綿密に調査した末の作品であることはよく分かる。その迫力に、熱意に、圧倒されての授賞だったのではないか。この作品を受賞させずに闇に葬ることに対する抵抗が票を集めたのだろう。
 それにしてもドストエフスキーが本当にこのような続篇を――細部はともかくあのような真犯人を――予定していたのだとしたら、と思うと興味は尽きない。世界中の読者はドストエフスキーのミスディレクションにまんまと引っかかり、しかもドストエフスキーの死によって真相が隠されたまま、百年以上ものあいだだまされ続けていたことになる。このような大どんでん返しを用意していながら、それを書く前に逝ってしまったドストエフスキーの無念さはいかばかりであったろう――等々、この作品のミステリーそのものよりも、本作によって炙り出される過去の名作のミステリーの方が興味深い、そんな一冊である。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.16:
(4pt)

ミステリ+歴史改変SF

カラマーゾフの兄弟は「ミステリとしても読める」と長らく言われてきたが、それを真面目にやった人はいなかった。何しろ長大な作品だし、ドストエフスキーの文章はいい加減なところも多いので、細部の瑕疵は見過ごされてきたのだ。
しかし、実際に「そういう目」で読んでみると、確かに怪しいところはある。

・後ろから殴られたはずなのに仰向けに倒れていたフョードル
・スメルジャコフの発言中にしか存在しない「フョードルの3千ルーブル」
・いつの間にか開いていた扉

いずれも現代のミステリであれば決定的な描写だ。それを踏まえて本当にミステリ仕立てで続編を書いてしまったのが本作。
もうそれだけでも面白いのだが、階差機関やロケットが登場してカオスな歴史改変SFの趣があったり、亀山郁夫の「『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する」が反映されていたりと、マニアックな仕掛けで楽しませてくれる。
もちろん不満点もある。本作では精神分析や犯罪心理学の用語が多用されるのだが、これによってキャラクターが類型化されてしまい、薄っぺらい印象を受ける。また、ドストエフスキー作品の最大の魅力である哲学的・宗教的なあれこれが捨象されており、続編と銘打ちながら文体も全く似ていないので、パスティーシュ作品としては未熟である。
とはいえそのキッチュさを楽しむことができれば、非常に良くできた作品である。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.15:
(5pt)

原作を損なうことなく、ミステリーとして昇華させた力作

果敢にもドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に挑戦し、独自の答えを描いてみせた第58回江戸川乱歩賞受賞の力作。

原作を損なうことなく、ミステリーとして続編を描くという面白いアイデアと力量には驚かされた。どのような着想からこの作品を描くに至ったのか非常に興味深かったが、巻末の高野史緒と亀山郁夫、沼野充義の鼎談を読み、納得した。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.14:
(4pt)

筋が通っている。村上春樹ならどんな続編を書くのか?

★大いにネタバレあり★

亀山訳の原作を読んでいたので読みました。
原作に残るいろんな矛盾点や現象をうまく「伏線」として利用している。
自分には全くこういう展開を予想することができなかったが

革命軍のくだりは面白いけど、話が急展開過ぎて、説得力に欠けるように感じた。
(当時、ロシアでは次作は皇帝暗殺の話になるという噂はあったそうだが)
人格交代は筋が通っていると感じた。
こんな解釈を与えられたらもう一度原作を読んで見たくなる、そういう作品。

江戸川乱歩賞の選考委員のコメントも掲載されていて読んだが、オマージュというかパロディであることは問題視されていたが、こういう試みは面白いと感じた。
読み終わってから「ハズレ」だったと思うより、過去の大作の続編と銘打てば、購入者もある程度は安心して読書できるのではないか。

まったく話は異なるが、村上春樹はエッセイなどでスメルジャコフの名前でパロディしたりしているが、彼は「カラ兄」にどういう解釈をしているのだろうか。小説の受け取り方は人それぞれであるから絶対書いてくれないだろうけど。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.13:
(5pt)

聖人君子はいない。

説得力はあった、と思う。父親殺しの最大の動機は、金目的でも恨みでもいない。
じつは「正義」だったのである。
「罪と罰」でラスコーリニコフが考え出した犯罪哲学とある意味では似ている。
大いなる善行を行おうとしている人間は、たった1つの犠牲など気にも留めない、ということです。
つまり愛する兄弟を救うために何のためらいもなく父親を殺害した。
強すぎる正義感と強固な精神力がそれをさせたのだ。
ラスコーリニコフは殺人後、精神が崩壊した単なる凡人だが
この小説の犯人はナポレオンの素質があった、ということである。

皇帝暗殺、という挿話も「大いなる善行」の1つとして描かれており
ロシア国民を救うために、皇帝の命を奪おうとする彼ら革命家の「正義」が
いかに狂信的なのかを読者に訴えかけている。
そして皇帝殺しと父親殺しを対比させており
犯人には正義を実行するために
彼らを殺す動機があったのだと暗示させている。

謎解き重視の映画や推理小説では
ときどき、犯人を捜しているはずの主人公が実は多重人格者で犯人だった
というおきて破りのオチがあるが
それを逆手にとったようなアイデアで最後まで犯人が読めなかった。

リーザの足が治ったり治らなくなったりする不思議な現象も
実はラストに結びつく伏線である。これは面白い。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.12:
(4pt)

イワンびいき

二次創作として楽しめました。
タイトルにもなっている「妹」は、わりと引っ張ったあげくにあまり重要ではなかったような。

カラマーゾフを知らない人が楽しめるかというと微妙だけど、
筆者による「カラマーゾフ事件とは何か」という章は、原作を読むよりよっぽど分かりやすいです。

『悪霊』で撲殺されたリーザや、『二重人格』の主人公ゴリャートキンなどなどが同一空間上で語られていたりして、ニヤリとしました。

イワンだけ救われてアリョーシャがとんでもない結末を迎えるラストはさすがに悲しい…。
こんなにポコポコ殺されたら、アリョーシャ好きな人が怒る気持ちも分かります(笑)。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.11:
(5pt)

意外な展開にびっくり!

原作者が生きていたら、、、と思うところもあったけど、十分楽しめました。
意外な展開が楽しかったです。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.10:
(5pt)

筆者を支えたのは「反骨精神」か

「前任者」の物語、「カラマーゾフの兄弟」を、筆者と同じく亀山訳で読んだのが、数年前。
そして、今回、その続編をものして乱歩賞に物議を醸した意欲作として話題になった本書を読了。
まずは、その手腕に、素直に驚いた、というのがある。

手腕とは、たとえば原典をいかに消化していたかとか、原典の高みにどれだけ肉薄出来てたかとか、
そういった「原典ありき」の手腕の話ではなく、純粋に、「カラマーゾフの兄弟」という強烈な問題作を
この世に残し、第二部を書くと言ったきり勝手にこの世を去った身勝手な「前任者」が残した「謎」の
数々を、いかに解きほぐし、いかにミステリーとして形作ったかの一点、それである。

そもそもカラマーゾフの兄弟はミステリーというくくりだけでは語れない物語だし、
本作はミステリーの枠で見事受賞した物語だ。土俵が、違うと言えば違う。

カラーマゾフの兄弟を、(それは、あまりにも多くの顔を持つが、あえてその一つ)ミステリーという
くくりで見た場合、その結末はある意味妥当過ぎるほど妥当であり、意外性を欠いている。
スメルジャコフかドミートリーか。
いわば「どちらかが彼を殺した」状態である。東野圭吾ファンの方、申し訳ない。
(ちなみに、彼女、ですね。こっちは)

読了した私自身の話になるが、このミステリー的結末という見方をした場合のみ、私は
若干の不満を残して本を閉じた記憶がある。もちろん、それ以外においては大変有意義な
作品であった。大審問官のくだりと幼女虐待とフェチュコーヴィチの弁護と。覚えている
シーンは未だに、他人に語り継ぎたくなる。

翻って、本作である。
うん、と、頷いた。犯人は、彼しかいない。
そう。「前任者」の物語を読んだ時から、漠然と犯人は彼であればいちばん収まりがいいような
気はしていた。しかし、それはあくまでも「漠然とした印象」であって、ここまで微に入り細をうがつ
「証明」が出来ていたわけではもちろん、ない。
いわば本作は、数年間の私自身のモヤモヤとした霧を晴らしてくれた作品である、と言える。

だからこそ、私にとっては星5つ以外の評価はありえない。

ただ。
「彼」に対して、いや、「前任者の物語」そのものを心ゆくまで愛した人たちにとっては、
本作が冒涜以上の何者でもなく、したがって大いなる失望の意を示すことを理解できないわけではない。
ミステリーという枠以外で語ってよいなら、私だって大審問官と討論するイワンを見たかったし、
美しく心優しき司祭へと我が身を高めたアレクセイも見たかったし、何より原典の一番の見所というべき、
現行宗教、あるいは社会、あるいは規範における強烈なアンチテーゼを何か一つ、指し示して
欲しかった、という欲求は当然、持っている。

しかしそれは、無理な話であろう。なにしろ前任者の物語は長大過ぎる。
乱歩賞の上限は四百字詰めで五百五十枚。手頃な文庫本一冊に収まる長さしか許されていないのだ。
そういう意味では、筆者の失敗らしい失敗とは、唯一
「カラマーゾフの兄弟を原典に選んだ」
という点でしかない。
凝集してもしきれないほど原典は長大であり、かつ、示唆に富み、アイロニカルという言葉では
語れないほど攻撃的で、かつ、面白い。
だから筆者も冒頭で述べている。
「前任者のあの名作と『同等の』作品を書こうなどと思わなければよいのである」
と。

さらに、前任者の物語に「ある重大な事実を発見した」ことが、執筆動機である、と。

あくまでも私自身の評価ではあるが、その試みは見事に成功している、と思う。
彼以外の犯人はあり得ないし、その決着に至る証拠固めも「妥当」である。
少なくとも、ズルはしていない。私は以前「ダ・ヴィンチ・コード」を読了した時、
この決着はズルだ、と思った。それは、歴史的謎の終着駅が最後の最後には個人、家庭の問題に
帰属してしまったことの怒りが原因だ。

少なくとも、(本作は原典ともどもフィクションである、という違いはあるが)ドストエフスキー
という「歴史」の謎は、きちんと歴史的に集結、帰属していると思う。そういう点で、
その慧眼には素直に、恐れ入る。ミステリーで、原典ありきでこれだけの謎を思いつけるって、
すごいことなんですよ。ほんと。

だから、本作は紛う方なくミステリーであり、ミステリーとしてきちんと集結しており、
なおかつ成功している。

何の文句があるというのか。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.9:
(4pt)

高野さん流のカラマーゾフ

私は、読む前から「ドストエフスキーが書いたものではない。パロディーだ。」と意気込みを入れてから読み始めたので、楽しく読めました。(もちろん、納得いかない部分もあります。たとえば、アリョーシャがああいう感じに至った経緯が不十分だなと感じました。)

この物語をドストエフスキーが書いたというのなら、間違いなく☆は4つもあげられないでしょう。多くの方が言われているとおり、ドストエフスキーの複眼的な視点・多重的な思想が盛り込まれていないからです。

しかし、これはあくまで高野さんの作品であり、江戸川乱歩賞審査員も本書の最後のページで述べているように、高野さん流カラマーゾフを評価したものです。そう割り切って読むと、かなり面白く読めるのではないでしょうか。ミステリー小説色が強いです。ビリーミリガンとなんとかにんのなんとか、っていう(すいません、本の名前忘れましたが、多重人格のお話のあれです)本がお好きな方にはおすすめです。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.8:
(4pt)

別の話だと思えば、良いんじゃない…?

あの「カラマーゾフの兄弟」の後日談だという。
 党首フョードルの死から13年、内務省未解決事件特別捜査官
として、二男イワンがカラマーゾフ家に戻ってきた。
 すでに、犯人である長男ドミートリーはシベリアで刑期中に
死亡している。
 終わったはずの事件なのに、なぜ?
 新しい捜査法や犯罪心理学を取り入れ、徐々に真実が暴かれて
ゆくなか、事件を取材していたジャーナリストが殺された!
 13年前のカラマーゾフの人間関係の暗い闇に、いま光が入る。

 本来、第二部として予定されていた続編は、ドストエフスキーの
死によって日の目を見ることはなかった。
 残されたいくつかのアイデアをもとに、本書を描いた著者の自由な
想像力と卓抜な構成力は、見事だと思う。
 ロシア文学好きの人が気に入らないのは、やむを得ないでしょう。
 「モンテクリスト伯」にもあったし、続編が書かれるのは名作の証明
ではないでしょうかね。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.7:
(4pt)

真犯人は誰?

カラマ-ゾフの兄弟を読み終ったばかりだったので、タイトルに惹かれて購入しました。記憶が鮮明なうちに読むとより楽しめます。 スメルジヤコフ犯人説に違和感を持ったひとにはオススメです。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.6:
(4pt)

カラマーゾフ的なんだよ

ミステリーものはほとんど読みませんが、前任者作品ファンとしてこれは読まずにおりゃりょうか!
カラマーゾフの兄弟に舞台を借りたミステリーとしてとても楽しく読めました。本編のオチも良かった。
また前任者の作品を読み返して『カラマーゾフ的』というものについて再確認したくなりました。

そういえば、行方不明の二人のその後は?やはり?理由は?
そういう想像の余地が用意してあるところもいいですね。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.5:
(4pt)

左脳で楽しむ小説

評判が良くないようなので、怖いもの見たさで読んでみました。イギリスは食べ物が不味い、という話を連想します。前評判を気にして現地に行ってみると、確かに不味いものもあるが、美味しいものも結構あるじゃないか。そんな感じで、意外と楽しめました。まず、著者が、ドストエフスキーの大作をよく読んで、その隙間を縫って、用意周到に大胆な虚構を構築した点に驚きました。その上、フョードル・カラマーゾフ殺人事件の概要を整理して追ったり、3千ルーブルがどれくらいの金額かを具体的に説明してくれたり、なかなか親切な設計です。SFの話題は余計だと思いますが、全体的に、左脳を刺激するミステリーらしい文章だと思います。問題は、右脳を刺激する情緒の部分が弱いことでしょう。更に、アリョーシャの描き方には多くの不満が残ると思います。著者は冒頭で、偉大な前任者(ドストエフスキー)と同等の作品を書くことなど出来ない相談、と割り切っていますが、アレクセイ・カラマーゾフの生涯については、この作品を読めば納得してもらえるだろう、という意図を述べています。でも、これが難しい。なるほど、そういうことか!と感心するか、魅力が無いじゃないか、と不満を募らせるか、評価が大きく割れるところでしょう。もっとも、アレクセイ・カラマーゾフの生涯を魅力的に描くためには、精神世界の深みを徹底的に見つめ、ドストエフスキーと同等の境地に達する必要がありそうで、今となっては誰にも描くことができない世界なのかもしれません。とはいえ、ドストエフスキーの大作に一石を投じた功績は過小評価されるべきではなく、今後この作品がどのように読者に受容されていくのか、大いに関心があります。今は先ず、現代日本のミステリー小説として、左脳で楽しむ作品、と割り切って読むことをお奨めする次第です。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.4:
(4pt)

着想がいい

着想がいい。文章がうまい。同じ人物を愛称でも書いているので、読みにくい。

 これから乱歩賞に応募する方は、「マネをしないように」という選評があるが、それは、この作品がうまく描かれすぎであるということ。

 文豪の描いた本編と比べて否定論が多いが、過去の「見劣り乱歩賞作品」よりは、ずっとましだと思います。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.3:
(5pt)

スチームパンク風SF推理ロシア文学

面白かったです。この作品に「ドストエフスキー」を求めるのは筋違いかなぁ。作者は第二部の構成、構想をアレンジして物語を紡いでいるわけで決して続編を書いているつもりじゃ無いと思う。事実原作(だれ訳かはさておき)を読んでいなくても充分面白いし、読めば更に深く楽しめます。ちょっぴりのスチームパンク風SF世界と乱歩推理小説とパラレルワールド的ロシア文学世界。頭柔らかくして楽しみましょう!おすすめです。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508
No.2:
(4pt)

ノラもまた考えた。

廊下へ出てうしろの扉をばたんとしめたときに考えた。
帰ろうかしら。
太宰はたった一行で人形の家をひっくり返したが、
高野史緒氏は三百頁でひっくり返した。

昔同級生が斜陽の続編を書いて井伏鱒二に見せた。
井伏曰く「太宰は二人いらない。」

本作品は高野史緒氏が書いたのであって
ドストエーフスキイのふりをした高野史緒氏が書いたわけではありません。
世の中に文章としての物語が誕生した時に既に語り継がれた物語や、
日記が下地としてあるのですから気にしません。

亀山版を読んでまだ二年しか経ちませんので、
鮮やかにオリジナルが蘇り、それはそれで懐かしく愉しいです。

題名からカラマーゾフを消して「死霊の妹」にしておけば
ドストエーフスキイファンに怒られずに済んだでしょう。

カラマーゾフの兄弟を記憶に留めている方にはお勧めです。
「罪と罰」も物語の中に織り込まれていますが、他の作品も登場させたら
更に面白くなるのではないでしょうか。

村上春樹氏がロシア語に翻訳すれば、モスクワで爆発的に売れるでしょう。

妹の設定に必然性を感じずマイナス1です。
カラマーゾフの妹Amazon書評・レビュー:カラマーゾフの妹より
4062178508

スポンサードリンク

  



12>>
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!