ラー
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BC2624年にタイムトラベルした考古学者の前に、ギザの三大ピラミッドは、「建設途中」ではなく、「すでに数千年前に作られた建造物であり、その当時は修復中」というトリッキーなアイデアで描かれる。 これだけだったら、他のレビュアー様も指摘のように、パラレルワールドないしループやターンといった時間と歴史の交錯で、すこし不思議風に違う世界の謎を解く「観光旅行系SF」になる(それはそれで筆者は大好物。ひととき現実逃避したいではないか) ところが、(この世界線では)いつ誰のものとも分からない「神の手」で作られたピラミッドに、クフ王は自分の名を刻印することで建造者の栄誉を横取りしようとするという、歴史の簒奪者として現れる。 そのクフ王に対する未来人は、パピルスに描かれた「魔術師」としてクフ王と対決し、そのパピルスの記述の意図的な誤記からクフ王の意図を読み解き、古代の王が持つ滅亡と死への恐れ、そして不滅と永遠への憧憬から「この世ならぬ知識を持った者」として、古代も未来もない、死と存在への畏怖と恐怖を超えようとする人類の欲望と意志の業を描き出す。 この作品から8年後「カラマーゾフの妹」で江戸川乱歩賞に輝く著者の異才は、「現実から少し異なった世界線の世界の謎を解く」形で2004年の「ラー」でも歴々と現れていた。 しかしこの錯綜した作品の真価は、第四王朝の古代王の真意を解き明かす謎解きではない。 「明日太陽が現れないかもしれない」「太陽は夜、地平線の下を天の船に乗って朝にまた地平線から昇る」と、コペルニクス以後の世界に棲息する時代の人間にとっては稚気愛すべき、と言いたくなる宗教的世界観に対し、突然「世界は本当に、公式に正式に正しいとされている大系どおりのものなのか」「真理は人に信じられて真理なのか。真理であっても信じられないものは真実と言えるのか」と、現代も古代もない存在論の相対化をつきつける。 その果てにあるのは、どの神話も世界観も救済も解決もしない、死と滅亡を忌み恐れる人類の存在と時間への畏怖である。 この本は最後に、人類の野望も世界の謎もまた滅び行き、その時を透徹する人類の相対化によって、死もまた宇宙に溶け込んでいる形で死と滅亡を受容する視座を示唆しているように思われる(筆者の偏見と誤読です) 物静かでスペクタクルとは言えない内容にもかかわらず、静謐なドラマと、そして何よりも気品のある世界観と文体によって、類例のない品のある異世界と、そして普遍的な死と生の世界観を扱ったSFを読んだ満足感を味わった。 主人公の名は作中で出てくるが、それは本名ではなく、俗名は最後まで明かされない。 マイクル・スワンウィック「大潮の道」もプルースト「失われた時を求めて」もそうだったが、当作は作中の名が紀元前27世紀で意味する名前の方がよほど重要な機能を果たすので、匿名である作中の名が上記2作よりもより重要な意味を果たしている。 最後の一文が「劇終」を感じさせてまた良い。 上梓から18年、古典というべき香気を放っていた。 | ||||
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独特な、日本人離れした視野の広い、高野 史緒ワールドを堪能しました。 | ||||
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高野さんといえば音楽SF(ムジカマキーナ・カントアンジェリコ・ヴァスラフ)で有名ですが、今回は歴史を前面に出してきました。 歴史に現代科学を自然と織り交ぜることで絶妙な不安定さを持つ世界を描いています。 一気に読み終えてしまいました。 また次作が楽しみです。 | ||||
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ピラミッドの謎に魅せられ、紀元前2624年のエジプトへ時間跳躍する現代人ジェディの物語。 なかなか読ませる佳作です。 僕は、時間SFが好きで半村良の「戦国自衛隊」を大昔に読んだ中年SFファンなのですが、なんだか「ラー」を読んで”あの頃”を思い出してしまいました。 それから「ピラミッド」って、何でこんなに好奇心をくすぐるのかなぁ・・ ピラミッドの真実を知りたい!!! そんな気持ちをお持ちの方は、主人公ジェディと一緒に物語の中を旅して下さい。 あわせて、コリン・ウイルソンの「アトランティスの遺産」を一読されると、面白いですよ。 | ||||
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この作品は、前作「アイオーン」に続き、宗教を背景としたものです。しかし、高野先生特有の狂気めいたものはあまり感じられません。 そして、注目すべきところは、主人公「ジェディ」と「メトフェル」の心の動きだと思います。この作品は確かに「SF小説」だといえますが、それだけでは囲いきれない程の奥の深さ、そして「意味」もまたあります。夢中になれる本なので、ぜひおすすめできます。 | ||||
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