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湿地
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湿地の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.87pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全44件 21~40 2/3ページ
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海外ミステリを脈絡なく読んでいたら北欧ものに行きつき、はたまた本作に 流れ着きました。 そしてアイスランドのことも初めてウィキペディアで読みました。 レイキャビクの地名を聞いたことがある程度の知識でしたので、いろいろ 驚きましたが、なんといってもその人口の少なさ!私の住んでいる市の半分でした! それでもどこでも変わらない現代の都市型の犯罪や問題が高密度で詰まっていました。 加えてアイスランド独特だろうなと思える事象が本作の決定的な要因となっています。 暗い、寒い、ジメジメするといった印象の北欧ですが、良い作家が多いですね。 その厳しい自然環境が、深い思考と執筆に没頭することの手助けとなっているのかな、 また同様に良い読者が多いのかな、などと勝手な思考を巡らせています。 本作ですが、時間軸や視点が複雑に錯綜する手法とは逆でシンプルに書かれており、 また文章も簡潔で非常に読みやすかった。 しかしながら、その淡々と書かれた文体が、傷ついた人たちの悲しみを深く描いていた と思います。 発行会社さんには、誤った過小評価をされないために、筆の乗ってきた作品から発行するのは 良い手法だと思いますが、どこかのタイミングで一作目から発刊していただけることを 期待しております。 | ||||
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次から次へと判明する不可解な事実。陰鬱な空気が相まって、文字通りズブズブと湿地に浸かって行くような物語。 アイスランドの馴染みない地名に戸惑うけど、短くサクサクと章が分かれていて読みやすく、 おもしれぇ! とページを捲る手が止まらない。 でも、容疑者が特定される頃から失速感が否めない。 ズブズブ湿地を進んでたと思ったらいつの間にか陸に上がってパソコン弄ってた、みたいな物語で、絶妙に勿体ない感じがする作品。 | ||||
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アイスランド発のミステリー小説という事で「珍しいな」と思って手を取ってみた。 日本ではアイスランドという国はよく知られておらず「アイスランドの小説ってどんなのだろう?」と興味本位で読み始めたのだが、これが予想外に面白い! 名前や地名が独特なので、最初はそれに戸惑ったが、物語のテンポが良くてどんどん物語の世界に入っていけた。 このテンポの良さって言うのが非常に大事で、とても読みやすく僕は気に入った。 最近のミステリーではもったいぶっているのか、重厚さを気取っているのか、やたら長い小説が多く無駄に長い説明や心理描写にウンザリする事が多い。 その点、本書はコンパクトにわかりやすく書かれているのが非常に読みやすくていい。 アイスランドの伝承文学であるサーガにならって短く簡潔な表現をこころがけてるそうだ。 巻末のインタビューでも著者は「形容詞をいくつも並べたりせず、簡潔で的確な表現をこころがけている」と話している。 テンポがよくて読みやすいというのは娯楽小説では非常に大事な要素で、本書が成功した要因の一つだろう。 さらに成功の要因として、アイスランド的な物を大事にしているという事があげられるだろう。 世界的なベストセラー作家となった現在でも著者はこの点を大事にしているそうだ。 インタビューでは 「常にアイスランド人読者の事を念頭に置いて書いており、他の国々で売れたからといってこの姿勢を変える事はない。なぜならアイスランド的なるものこそが世界中の読者を楽しませていると思うからだ」 と答えている。 まさにそのとおりで、僕もアイスランド独特の文化や風習、歴史を背景にした物語展開に興味をそそられ、心を奪われた。 海外でヒットしたからと言って作風を変えるのではなく、あくまでもアイスランド人であるという自分のアイデンティティを大切にしてるからこそ海外でも評価されるのだろう。 本書は派手な銃撃戦とかトリックがあるわけではない。 老人がアパートでアイスランド的な杜撰な殺され方をしたところから始まり、その背景を探っていくだけの展開だ。 アイスランド独自の社会問題をところどころ織り交ぜながら、その犯罪が周囲の人間の人生に及ぼす影響を簡潔に描いていくという作品だ。 それが、とてもテンポよく、時に家族問題や社会問題を考えさせられたり、理不尽さに怒ったりしながら読むことができ、充実した読書体験をする事ができる。 初めてこの作家の本を読んだが、一気に気に入った。 「緑衣の女」「声」を読むのも楽しみだし、さらに本シリーズの翻訳が待たれる。 いい作家をみつけたと喜んでいる。 | ||||
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☆この話はすべてが広大な北の湿地のようなものだ。 犯罪捜査官エーレンデュル・スヴェインソン 「湿地」というタイトルから陰湿でジメジメしていて・・・と 勝手に思い込んでいて。取り寄せはしたものの長いことそのまんまに それが早朝読み始めたら、一気に終了。訳がよかったのかしらん。 アイスランドのミステリーって初めてでした。大体アイスランドって 如何いう国?検索してみるとオーロラツアーのある島国でした。 「訳者あとがき」によると国土は日本の1/3、人口32万人。 レイキャビックの町は端から端まで二時間も歩けば終わってしまうそう。 そのレイキャビックで事件は起きる。雨交じりの風が吹く10月。 殺害されたのは70歳前後の男性。一枚のメッセージが残されていた。 <おれ は あいつ> 単語は三つだけ。ここから物語は思ってもみない 方向へと進んでいく。主人公の名はエーデンデュル。犯罪捜査官。 赤毛のもじゃもじゃ(だったかと)、骨格太く頑丈そうな大柄な50歳 (これもだったかと)。パッパッと読んじゃったんで。 何日も同じ服着てても平気な現場一筋の刑事のよう。妻とはだいぶ前に離婚。 二人の子供はろくでなし。薬物中毒の不良娘との諍い、葛藤、色々が 事件の合間あいまに出てきて、時にブチ切れながらも親子の情愛がたっぷり、 これがとってもいいんだ。 「エーデンデュルは娘と居間に腰を下ろした。殺人事件の捜査と経緯を くわしく話した。頭の整理でもあった。死体の発見、アパートの臭い、 意味不明の走り書き、引き出しの奥から発見された写真、パソコンに 満載されたポルノ、墓石に刻まれた言葉、コルブリンと姉のエーリン、 ~もう一つのレイプの可能性~~エーデンデュルはできるかぎり 論理的にこれらを話した。~~」 次から次へと、事件は展開されて、あれよあれよで読んでしまいました。 全体を覆う雨、雨、雨・・・湿地という設定がくら~い感じもするけど意味があり ただひたすら面白かった。これも訳者あとがきによると、「アイスランドでは ファーストネームが正称で、姓のほうは一般に使われない」、ほんとに 変わった国だなぁとおもう。登場人物の名の一覧表が地図と共に記載されていたんで 助かりました。途中覚えられなくて困りましたので。そう。そう。印刷は変わってる。 ところどころ書体を変えたり、ゴシックにしたりして、これも読みやすさの ひとつなのかも。そうして「~どこかの国を知りたかったら、ミステリー小説を 読めばいい。一番的確な案内書~」イアン・ランキンのお言葉とか。確かにそうかも。 「湿地」って、ひょっとして映画になってるの?検索してみました。ありました。 エーレンデュル役にはイングヴァール・E・シーグルソン。詳しく知りたい「なで 検索するも、画像を少々何とか見れたかんじかな。よくわからず。 アイスランドにはアイスランド語(初めて知りました)があるものの「湿地」の訳は スウェーデン語から。とにかく訳は読みやすかったです。感謝。 次は「緑衣の女」へ。同じ訳者だからパツパッと読めるかな。期待でいっぱい。 | ||||
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レビューの表題は、主人公の捜査官エーレンデュエルの同僚の名。 アイスランドのミステリを初めて読んだが、登場する人名に面食らった。舌を噛みそうだし、誰が誰だがちょくちょく見失った。だが不思議なことに――アイスランドなど行ったこともないし興味もなかったが、間違いなく私の脳内には、暗く湿った彼の地の風景が見えてきた。アイスランドがここにあった。 日本のミステリだと、主人公の私生活の問題が、眼の前の事件と(やや安易に)リンクしたりするのだが、この小説では、内面の問題と事件が、〝心理(あるいは真理)〟の部分で絡み合う。 アーナルデュル・インドリダソン(またしても舌を噛みそうだが)、追いかけ続ける作家のひとりとなった。 | ||||
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凄く面白い作品でした。一気に読み、友達の所を巡回しています。 | ||||
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特にこれといったどんでん返し的な展開はないのでミステリというより刑事モノといった方がいいかもしれません。 カーチェイスなど派手なシーンもなく、やつれた刑事が黙々と証言者に会いに行ったり、証拠と向き合う、地味なシーンが多いです。 私はとにかく事件の展開が気になる、筋を追いたい派なのでこのトーンの低さがツボでした。 どんでん返しがないとは書きましたが、遺伝病やアイスランドの地質など意外な要素が事件に絡み合って来て、そういう意味での知的刺激はたっぷりありました。 | ||||
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2000年に発表された本作品は、2012年に邦訳され、その年末の各社ミステリランキングで上位を獲得しています。 最近、翻訳が増えた北欧ミステリのひとつで、アイスランドの作家による著作です。 作品の舞台は、そのアイスランドの首都、レイキャビク。 集合住宅の地下の一室内で、老人が頭部を殴打され、殺されていた。 室内からは、謎のメッセージが書かれた紙と、墓石を写した写真が見つかる。 単なる偶発的な殺人でないと確信したエーレンデュル捜査官は、被害者の周辺と、過去を探っていくが。 題名の「湿地」とは、現場が湿地帯であったことによるものですが、もちろんほかにも事件の重要な鍵となる事柄に関係しています。 紙の本で350頁程度と、最近の長編ミステリとしては、それほど長くなく、文章も簡潔、ストーリー展開も早いので、難なく読みこなせる作品ではないかと思います。 ただし、いわゆるどんでん返し系ではないので、そうした意外性を求める方には、十分満足できないかもしれません。 しかしながら、高く評価されるだけあって、中だるみすることなく、一挙にラストまで読み進めることのできる魅力を兼ね備えた作品であることは、強調しておきたいと思います。 特に、誰が犯人か、ということよりも、なぜこの犯罪が起きたのか、という興味で読んでいくと、本書の趣旨にも繋がり、楽しむことができるのではないでしょうか。 アイスランドという、あまり日本人の知らない国での殺人事件。 作品には、この国の気候や風土がよく表れているので、そうした部分に触れながら、推理の旅をしてみるのも、また一興ではないかと感じています。 | ||||
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アイスランドが舞台の小説を読むのが初めてで「エーレンデュル」とか「シグルデュルオーリ」とか、人の名前や地名に慣れるまでに若干苦労しました。 雰囲気もしょっぱなから暗くて重たくて、冬の曇天みたいに陰鬱な気分になったけど、なぜか次へ次へと読んでしまうパワーがあります。 『おれはあいつ』と殺人現場に残された言葉。 最初は全く意味がわからないけど、真実が明らかになってからその言葉をもう一度見ると、もう、ほんとに悲しい。 ちょっと救いのある結末にならないのかと祈るように思っていたけど、でも、やっぱりこうまで深い悲しみを背負ったら、だめなんだろう。 ほかのシリーズも読んでみたくなりました。 | ||||
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アイスランドの人名や地名になじみがなく、レイキャビク以外は頭になかなか入らないのですが、話が進むうちに面白さの方が勝ってきます。 何度も登場人物をチェックしました。 その手間を差し引いても十分面白いです。 | ||||
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ガラスの鍵賞受賞 ミステリが読みたい!2013年海外編第1位 アイスランドミステリ アイスランド警察の捜査官エーレンデュル・スヴェインソンを主人公とするシリーズの三作目にして、日本語訳一作目。 耳慣れないアイスランドの固有名詞と格闘しながらながらぼちぼち読み進めるかと思って購入したものの、ぐいぐい読ませるのがアーナルデュル・インドリダソンの筆勢。 訳者あとがきに、スウェーデン語から訳すと聞いた作者の反応が書かれている。「アーナルデュルはわたしにどの言語から訳すのかと訊き、わたしがスウェーデン語から訳すというと、うれしそうにうなずいた。スウェーデン語とアイスランド語はともに古ノルド語を土台としていて、言葉のニュアンスや雰囲気が近い。それに、アイスランド語からスウェーデン語に訳したイルヴァ・ヘレルードの翻訳がとてもいいと聞いていると彼は満足そうに言った」 | ||||
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エーレンデュルというベテラン刑事を主人公とした警察小説シリーズの一作の様だが、私は作者の作品は初読。アイスランド作家のミステリも初読。このエーレンデュルが物語の半ばで、 「この話は全てが広大な北の湿地のようなものだ」 と嘆息する台詞が本作の陰鬱でジメジメとした雰囲気を良く醸し出している。物語の発端は、アパートの地下部屋での老人の撲殺事件。すぐに、この老人がかつて、起訴こそ免れたものの、レイプ犯だった事が判明する。その被害者も判明した上に、被害者の娘(ウイドル)が4歳で死亡し、それを悲嘆した被害者も自殺した事も判明する。ここまでは、警察捜査の結果という事もあってテンポ良く進み、、読者が推理に参加する余地はなく、せいぜい「被害者の関係者の復讐じゃないの」、と想像するのが関の山。ところが、ウイドルがレイプ犯の子供であった可能性、ウイドルの墓を掘り返した(!)結果、ウイドルの脳が盗まれているという事実、レイプ犯が別の事件も起こしていて、ウイドル以外の子供が存在する可能性が示唆されるに及んで、読者は禍々しくも茫洋とした雰囲気に気圧される。 ここからが本作の真骨頂で、その内容は読んで頂くしかないが、胸が痛むものである。最初は煩く感じたエーレンデュルが抱えている父娘問題も、本作のテーマと上手く絡んでいる辺りにも作者の力量を感じた。「レイプ事件」を題材にして、親子(血縁)問題、それに係わるDNA鑑定等の遺伝子工学技術が社会・家族に与える影響、一般に福祉国家と考えられている北欧特有(アイスランド特有?)の社会問題等を重厚に描き切った秀作だと思った。 | ||||
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全編に陰鬱な陰を感じる重厚なミステリー。近年、次々と傑作ミステリーを輩出している北欧ミステリー界であるが、本作も噂に違わぬ傑作だった。確かにこの作家は只者ではない。 アイスランドのレイキャヴィクのアパートで起きた独り暮らしの老人が被害者となった殺人事件。杜撰な典型的なアイスランドの殺人と思われたが…事件を捜査する警察犯罪捜査官のエーレンデュルは被害者の過去を遡り、予想を超える事件の真相に辿り着く。クラシカルなスタイルのミステリーと思いきや… そして、この重厚なミステリーをさらに味わい深いものにしているのは、作品の中に描かれる複数の家族の姿であろう。過去の事件に翻弄され、苦悩し続ける家族の姿と迷いや苦悩から脱却し、再生していく家族の姿が見事なスパイスとなっている。 | ||||
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私自身アイスランドと言ったら「ビヨーク」と、火山が多い国、2008年の金融危機ぐらいしか思い浮かびませんでした。 でも、1000年の歴史があったり、単一民族であったり等、アイスランドと言う国を知ることが出来る興味深い本だと思いました。 ミステリーとしては普通。 やはり、北欧ミステリーは登場人物の名前が難しいです。 | ||||
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「湿地」という地味なタイトルだが、読了すると、ピッタリという事に驚かされる。独りの老人が自宅で殺されるという、これも地味な出だしだが、微かな手掛かりから、その奥底に過去の忌まわしい出来事が解き明かされて行き、ずしんと読み応えがある。 主人公の離婚歴のある捜査官も魅力がある。家庭に悩みを抱えているのだが、生身の人間として、彼の娘に語る口調に共感してしまう。300頁余りで、楽に読めると思ったが、内容が深く重いので考えさせられる事が多く、思いのほか時間がかかった。 アイスランドの推理小説を読むのは初めてで、最初、登場人物の名前に戸惑ったりするが、訳が巧いのか人物像が映像的に浮び、一人一人に存在感がある。二人の女性が二人とも中絶しなかった事に、多少個人的な違和感が残るものの、それに勝るストーリーの展開は圧巻だ。 シリーズ作品だと知り、これは外せないなと思った。 | ||||
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本書はアイスランド警察の犯罪捜査官エーレンデュル・スヴェイソンが主人公のシリーズ第三作。 首都レイキャビク北部の町のアパートで老人の他殺体が見つかる。頭部を一撃、凶器は灰皿、計画性のないずさんな犯行、典型的なアイスランドの殺人と思われた事件。ところが、現場に残された<おれはあいつ>と書かれた謎のメモと一枚の写真が、現在と過去を結ぶ壮大なミステリの幕開けとなる。 作者はマスコミで簡潔な文章を、映画評論でストーリーテリングを学んだだけあり、文章も物語もテンポが良くて非常に読みやすい。全編を通して降りしきる陰鬱な雨も実に効果的だ。 登場人物の造形も手堅い。主人公エーレンデュルは50歳。決して特別に優れた警官ではない。私生活では娘に振り回される人間味に溢れた大人の男だ。同僚も個性的でユーモアのセンスがある。 本書のさらなる魅力は、アイスランドという国柄、歴史、人種、言語などが詳述されていることだろう。作者はアイスランドを書きたいがためにミステリという器を選び、半ば必然的に傑作をものにした。 シリーズ第四作目にあたり、世評の高い「緑衣の女」も東京創元社から近刊予定。本書に魅了された方はお見逃しなく。 | ||||
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本は綺麗でした。内容も抜群!どこで止めたら良いのかわからなくなるくらい一気に読みました。 | ||||
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人口32万人の北欧の小国、アイルランドから届いたミステリーの傑作です。 秋の冷たい雨が降りしきる首都レイキャヴィクが犯罪の舞台です。湿地を埋め立てた住宅地の古いアパートで老人が殺害されます。ノートの切れ端に謎の言葉が残されていました。主人公のエーレンデュル刑事は現場一筋で、腕はいいが上司や部下たちとはうまくいっていません。彼は離婚してやもめ暮らしが長く、二人の子供は薬物中毒のうえ家出中と辛いプライベートを抱えています。無口で無愛想で、何を考えているかわからない刑事ですが、有能で人間味にあふれた人物に描かれています。 文章は的確であり、簡潔でリズムよく、展開が早くて読みやすい。おまけに人物の造型が巧みなので端役にいたるまで存在感があります。少し読んだだけで、たいへんな筆力をもった作家だとわかりました。 ネタバレになるので詳しく書けませんが、心が凍りつくような悲惨な事実が次々に明らかになります。過去の犯罪が火種となって罪無き者が死に至るのです。犯人の推理や捜査の過程よりもこの国の悲惨な人間模様を語ることに作者のねらいがあるように感じました。 陰鬱なアイルランドの秋の雨を背景に語られる悲しい物語です。しかし、読後に重い気分にならずにすんだのはエーレンデュル刑事の抑えた感情表現に、とりわけ最後の一言に救われる思いがしたからでしょう。 | ||||
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十月、アイルランドのレイキャヴィク。北の湿地にあるアパートで老人の死体が発見された。麻薬中毒者か強盗による単純な殺人に思えたが、“おれはあいつ”という意味不明のメッセージが残されていた。計画的な殺人なのか。レイキャヴィク警察犯罪捜査官エーレンデュルが調べると、1968年に4歳で亡くなった少女の墓石の写真が見つかる。少女の死因は悪性脳腫瘍で、母親は3年後に自殺していた。老人とどのような関係があるのだろうか。エーレンデュルは父としての辛い役割を果たしながらも捜査を続ける・・・さぁ、彼がたどりつく衝撃的な真相とは何か。詳細はお読みください。 著者は北欧5カ国の最優秀ミステリ作品に与えられる“ガラスの鍵”賞を本書と次の作品で連続受賞している。 | ||||
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ミステリの多くが事件を発端として、なぜそれが起きなくてはならなかったのかを追って過去へと遡る。だが、この作品は血のつながりをめぐるミステリであり、過去へと時間を遡行することそれ自体が二重、三重の意味で作品のモチーフとなっている。そのためか、読んでいるうちに登場人物の行為のいくつかが象徴的なふるまいに見えてくる。古いアルバムの中の退色した写真を見る行為、死者の眠っていた墓を掘り返すという行為、最新技術でDNAを鑑定する行為、いずれもミステリではおなじみの出来事なのだが、この作品では、それらがいずれも過去へと時間を遡る行為であることにあらためて気づかされ、まるで神聖で儀式的な行為であるかのように感じられてくる。実に不思議な読書体験だった。文体はきわめて叙述的で、描かれる事件も虚飾を排したものだが、読み手はまさに神話劇のような、人の営みにまつわるどうにも逃れえぬものを目の当たりにせざるを得ない。ページ数にしては思いがけない重い読後感は、おそらくそこに由来するのではないか。 | ||||
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