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二流小説家



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二流小説家の評価: 3.55/5点 レビュー 100件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.55pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全100件 61~80 4/5ページ
No.40:
(1pt)

アメリカの良識

最優秀新人賞「候補作」。
つまり新人賞にノミネートされたが落選した作品。
これがこの本の正当な評価であり、この評価を下したアメリカの良識を称えたい。

この年の「新人」の中でも次点以下でしかないこの作品を日本の出版社は異常なベタぼめしまくりで、
宝島社「このミス」1位、週刊文春でも年間1位、版元早川の「ミステリ読みたい」でも年間1位だという。
本当かよ、それじゃ他のミステリは全部これ以下だってことなのか?
日本の出版社のミステリ評がいかにアテにならないか、を如実に示すサンプルとしての価値は高い。

タイトルどおり、どうってことのない二流ミステリ。
新刊で買う価値はありません。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.39:
(4pt)

サービスが盛りだくさん

ポルノ・SF・ヴァンパイア・ハードボイルドと色々なペンネームでハリー・ブロックが死刑囚から告白本を依頼されたものの、殺人事件に巻き込まれていく。

文中に入れ子の様に差し込まれるハリーによる色々なジャンルの小説がおもしろく、これだけでもう数編小説が書けるのではと思わせるサービスぶり。

ハリーを取り巻く女性がとても魅力的。しっかりものの女子高校生、被害者の双子の姉であるストリッパー、ヴァンパイア小説ファンの弁護士助手。

事件解決語のちょっとくどいかなぁと思わせるエピソードが作者の更なるサービス精神なのだろう。

知的で凝った作風なので、2作目、3作目が更に楽しみな作家です。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.38:
(1pt)

ミステリーという程ではない

レビューに多さに期待して購入。
翻訳家のフィルターを通しているからか、文章がすらすらと頭の中に入って来辛い印象。
それでも、何かとてつもない 大どんでん返しが有るのではないかと、最後まで我慢して
読み進めて行きましたが、胸をすく様な仕掛けは何処にも見当たらず……。
私の理解力が無いのか…または原文で読んだら面白い言葉遊びなどが在るのかも知れませんが。

これは1900円も掛けて購入する意味がなかったなぁ…と思ってしまいました。
主人公に特に魅力も感じませんでしたし、話中、唯一魅力的だと感じたのはクレア(女子高校生)でした。

装幀はお洒落なので本棚のオブジェとして使用するには良いかもしれません。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.37:
(4pt)

この饒舌さは心地よい

一人称語りの饒舌さと軽いノリの展開に戸惑いを覚えつつ、それでも9年も付き合ったジェインとの別れ方(捨てられ方)はそうだよなと同情し、頁を繰る速度が快調なのはひょっとして面白いかも知れないなという期待を持たせた。

ポケミスを読むのは久しぶりだったので、この快調さは良い意味でも悪い意味でも驚いた。これは章の短さと、青木千鶴さんの訳の上手さも大いに貢献していると思う。

饒舌さが揺りかごに乗っているような心地よさを感じた頃、不意に目を覚ませる事件が発生し、改めてミステリを読んでいたのだと納得する。

本書の登場人物は少ないが、女子高生やストリッパーや弁護士助手の女性が魅力的に描かれている反面、どうもいけ好かない奴等は本当に悪人だったりして、そういうところが判り易かった。

とはいえ、ラスト辺りの77章で意想外の展開になるのだが、この人物が「おもな登場人物」に記載されていなのはやや公平さを欠くのではないか。ペンネームを省き、被害者遺族の面々を入れた方が目眩ましの効果があったのではないかと思う。

ただ、最後まで饒舌さは健在で、結局また一人になるものの、一皮剥けたというか、逞しくなった印象が読後感を爽やかにしている。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.36:
(1pt)

斜め読み

エンターテイメント系の前評判のあてにならないことと言ったら!
ああ、だまされた、もう2度と書評も帯の文句も信じないぞ、と何度思ったことか。
本書で、だまされるのは最後にしよう。
つまり、もうエンタメ系、読むのやめようっと。日本のものも、海外のものも。
好きな作家・尊敬する作家が薦めているときだけ例外的に読もうっと。
書評家や編集者の言葉はいっさい信じないことにします。
人生の貴重な時間の無駄遣い。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.35:
(4pt)

魅力的な登場人物たち。

登場人物も魅力的で、ハッとさせられるような文もあり
最後まで楽しく読めました。

冴えない二流小説家ハリーに共感できるか、
作中に散りばめられた作家論や芸術論に引き込まれるかどうか、が評価の分かれ目ではないでしょうか。
サスペンス部分にもうひと驚きがあったり、作中のSFやヴァンパイア小説が事件や登場人物の関係にリンクされていれば
最高だったんですが。(墓場で美女に裏切られる小説は事件のミスリードを匂わせて素敵でした)

ラストの主人公の言葉について疑問を持たれたレビューがありましたが、自分も一読した時はよく解らなかったのですが、
あれは現実の読者である私たちに向けた言葉ではなくハリーの小説を読んでいるであろう作中の読者に向けて
これはフィクションではなく、本当に起きた物語だと示唆する言葉だったのではないでしょうか。

つまり、この小説自体がハリーの書いた小説であって、冒頭からハリーは私たちにではなく作中の読者に語りかけていたのではないかと・・・、
思ったのですがどうでしょうか。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.34:
(1pt)

前評判が高い分だけ、落胆も大きかった。残酷でグロテスクな描写も、度を越している

私は、NHK『週刊ブックレビュー』の『おすすめの一冊』で本書を知ったのだが、そこでは、「冗長ぎりぎりのところで本筋に戻ってくる」、「最後には、そんな一見、本筋とは全く無関係な話にも、意味があったことに気付かされる」というような趣旨のことが語られていた記憶がある。 

そんな訳で、私は、読む前からある程度の我慢は覚悟していたのだが、実際に読んでみると、「冗長ぎりぎり」どころか、しばしばうんざりさせられるほど冗長そのものだったし、二度読みしても、本筋にも作中作にも、冗長さの中に格別の意味を見い出せるようなものはなかった。 

また、残酷でグロテスクな描写も、度を越している。アメリカでは、テレビや映画でのこうした描写は厳しく規制されていると思うのだが、本書のような出版物は、誰でも買えてしまうのだろうか?私は、途中から、不快・気持ち悪いを通り越して正視に耐えないこうした描写は読み飛ばすようにしたのだが、青少年や繊細な人は、本書は読まない方がいいと思う。 

ミステリ的に見ても、「史上初の三冠達成」という本書の触れ込みに、どんなあっと驚く結末が待っているのだろうと、冗長さを我慢して、最終ページまで期待をかけて読んでみたのだが、結局は何もなく、ありふれた結末のまま終わってしまった。前評判が高い分だけ、落胆も大きかったといわざるを得ない。率直にいって、この程度の結末で史上初の三冠というのでは、どんなに評価が高い他の海外新作ミステリも、読む気がしなくなってしまう。 

ところで、最終ページの本当の最後の最後にある思わせ振りな記述がどうしても気になるのだが、これが『週刊ブックレビュー』でいうところの「思いもかけない結末」だとはとても思えない。念のため、インターネットで検索を掛けて相当数の書評を読んでみたのだが、この記述については、スルーしているか「よくわからない」といっているのが大半で、少なくとも、この意味を解説している書評は一つもなかった。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.33:
(5pt)

ミステリー賞を総なめした傑作

海外ミステリーを総なめにした作品だが、噂にたがわぬ傑作だった。 売れない作家である主人公が連続殺人犯として服役中の囚人から告白本の出版を頼まれることからストーリーが始まる。 作中作として、主人公ハリーのSF小説、ポルノ小説などが組み合わされてストーリーが展開していくことになるが、全体としていろいろとてんこ盛りだがバラバラ感がなく、読者を離さない力はさすがなもの。 とはいえ、これほどこった構成にする必要があったかは疑問。 これが処女作とはすごい作家が現れたと思う。 2作目を期待して待ちたい。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.32:
(4pt)

クイーンズの狂気

映画を見ているように、ニューヨークや主人公ハリーをはじめとする登場人物が臨場感溢れて迫ってくる。大都会に暮らす現代人のストレスや孤独感と巧みに仕掛けられたトリック。死刑執行が迫っているダリアン・クレイの狂気。それぞれの生い立ちが丁寧に書かれていて犯罪小説でありながら現代社会の病巣を描きだし、知らず知らずに主人公に感情移入してしまう。二流小説家を自認?する主人公が執筆しているSF小説やバンパイア小説なども同時進行していて、一冊で多くの楽しみ方ができる。殺害シーンなどはあまりにリアルで、日本人作家のレベルとは明らかに違う。社会の底辺で喘ぐ人々が大都会ニューヨークで生きぬいていく厳しい現実を思うと、社会環境が犯罪の芽を生んでいる側面があると感じないではいられない。.
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.31:
(5pt)

一冊で3度くらいおいしいお得小説

Edgar award finalist. A real page-turner. Unable to put it down. みたい
な。英語のエンタメ本は、読者および著者の数も半端じゃないからレベルが高い。
1ページ目から「絶対面白い」って宣言して最後までその通りだった。

腕はいいけど器用貧乏で書いても書いてもちっとも売れない、私生活もさえない
小説家、ハリー。ある日、彼が生活費稼ぎのために書いているポルノ小説のファ
ンだという死刑囚から、自伝代筆依頼が舞い込む。依頼人はいまだ解明されてい
ない連続猟奇殺人事件の犯人。世紀のベストストセラーネタにハリーは大興奮し
たのもつかの間。とんでもない事件に巻き込まれていく。

まるで「24」のような豪速展開、どんでん返しに続くどんでん返し……。ともす
ればハリウッド映画の絵コンテみたいな大雑把な作品になりかねないところだが、
構成も文章も隅々まで計算されつくされていて、読ませる。語り手であるハリー
の、物書きならではの過剰な自意識やシニカルな視点もスパイスのように効かせ
てある。しかも主人公が得意とするポルノ、安いハードボイルド、バンパイア系
ソフトSM、エロSFなどの「書き分け芸」なども随所で披露しつつ、飽きさせ
ない。さらに女性キャラはセレブ系ロリータ、ドM変態女、スナイパー/ストリッ
パー、図書館系メガネ女子、セクシーロボットと、超豪華バラエティ。

のわりに、男性キャラが地味なのが若干不満だけれども、主人公ハリーと、
宿敵だったFBI特別捜査官タウンズの男の友情にはぐっときた。彼らの出会い
はこんなかんじ。

”Ever think it's none of your business?”
”Catching killers is my business, feeding like a parasite on the
corpses of the victims is yours.”

すごくわざとらしいハードボイルドだけど、やっぱりかっこいい。
別れ際がコレ。

We had decided to like each other at last, but now that the case was
done, we had nothing left to say.

吐き捨てるような軽蔑の応酬と、無言の別れの間に、理解と共感の瞬間が何度か
訪れる。タウンズがハリーを見舞うところが不器用な男の友情マックス。萌えた。
もう一つの読みどころはダリアン・クレイ(=Darian Clay、ふざけた名前!)
の、頼んでもいない死ぬ前の自分語りのパート。カラマーゾフの大審問官ばりの
独善ぶりが全開でうんざりなんだけど引き込まれる。

エロくてグロくて実写では見たくないようなシーンも多々あるのだけれども、
どこかトボけていて救いがあるのは、やはり著者の筆力だと思う。
一冊で映画3本分以上楽しめる。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.30:
(5pt)

ミステリー以外の要素

ミステリーとしてみると、殺人事件が小説の半分近くまで起こらなかったり、主人公の二流小説家が書いた小説が途中にちりばめられたりと変な構成になっています。
主人公が書いた小説の部分が必要だったかといわれれば、ミステリーとしては必要なくてもこの小説としては必要だったのだと思います。
主人公は二流小説家というよりもダメな人で、恋人には逃げられるわ、家庭教師をして出会った女子高生には尻に敷かれるわといった調子です。
でも、そのダメさ加減や人間味あふれるところが好きです。
ミステリーとしてもよくできたお話ですけど、むしろミステリー以外の要素でこの小説を好きになった気がします。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.29:
(4pt)

楽しく読めましたよ

毎度図書館のお世話になって読ませていただきました。
語り口は翻訳家さんの工夫もあると思いますが軽くて読みやすく,さらさらと読めます。
ストーリーはよくあるといっては何ですが,巻き込まれ型で死刑囚は無実では?,真犯人は別に?といったタイプですので,ある意味新鮮味はないのですが,ストーリーのテンポはよく,どんでんもいくつかあってそれなりに練られています。ただやむをえないかもしれませんが,登場人物が結構いるためにそれぞれのキャラクターはあまり深みがなく,もし今後シリーズを考えるのであればやや弱いかなというところがあります。

とは言うものの,それなりに楽しめましたので,星4つということで(かわずに読んだという点も考慮して)つけさせていただきました。

追記:複数のペンネームを使った二流小説家が主人公ということで,点景のように毛色の違った作品が挿入されていますが,特に本筋には絡んでこないので時間のない場合は飛ばしてもよいです(読めばそれなりに話は膨らみますが)。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.28:
(1pt)

かなりがっかり

あちこちで大変評判が良いので期待して読み始めた。。。。私の好みにあわない、ということもあろうが、中身がチープすぎ。 これを傑作として推薦した方々、もうだまされまれません。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.27:
(4pt)

私としては、新しい試みの小説に思えるのですが

NHKBSプレミアムの「週刊ブックレビュー」を観て、
おもしろそうだったのでその場でアマゾンで購入。
便利な世の中になったものだ。

私が気になったのは一つの節の文章がとても短いこと。
だいたい、原稿用紙五枚から十枚の間かな。
ショートショートの分量。
だから、シャープ。
だらだらしないで、起承転結を付けた後、すぐに次の短いストーリー(アイデア・エピソード・ハプニング・その他)に進む。
読むことの苦手な人も、この分量なら読むことができる。
そして、もうちょっと読んでみようかなという気持ちにさせる。
そして、最後にはまってしまう。

デイヴィット・ゴードンは、だれか読んでもらいたい特定の人がいたのだろうか。
毎日、飽きさせないように工夫して、一節づつ書いてメールで送ったのだろうか。
そんな気のする文章である。

この小説は八十節あったから、四百五十ページの中に、八十の展開を楽しむことができる。
ちなみに本棚から適当に取り出したスティーヴン・キングの「痩せ行く男」は、二十七章だから、二十七の話で展開されている。

無駄のない削り取られた文章の中に、普通の小説の三倍もの話(アイデア・エピソード・ハプニング)を盛り込み、
退屈させないように工夫された小説。
この小説の面白さは、この試みにあるではと思うのです。

なぜなら、自分も一つのエピソードを原稿用紙五枚以内と制限を設けて小説を書いたことがあるから。(私は趣味で小説を書いています)
前半にエピソードが多いと、小説の後半を書くとき、いろんな展開を創作することができる。
この小説に、奇跡のような第四部が展開できたのは、この効果のおかげではないかしらと思うのです。
必見。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.26:
(4pt)

ミステリの可能性を徹底的に追求した逸品

ミステリ・マニアの友人に薦められて本作を手に取ったのだが、その言葉通り読み応えのある作品だった。一応、「二流小説家」である主人公が、死刑執行直前のサイコ・キラーの告白を聞いて実録物に纏めるという体裁で物語が進行するのだが、一筋縄では行かない。最初の頁を読んだ時には単なる叙述トリックかと思ったのだが、物語の進行に連れ、それでは説明の付かない点が随所に出て来る。物語が何段もの重層構造になっているのだ。スリルやサスペンスを感じると言うよりは、作者がどうやってこの物語を着地点に持って行くのかと言う"興味"で勝負している印象を受けた。

その意味で、本作は既存のミステリに飽き足らない作者がミステリの可能性を徹底的に追求した作品と言えるだろう。ニューヨーク(現代社会 ?)が魔界であるとの皮肉も効いている。ただし、純粋本格ミステリ愛好家の中には、本作の設定に憤慨する方もいらっしゃるのではないか。それほど、ギリギリの線で勝負しているのだ。

また、作中にはミステリ論から始まって、芸術論、果ては文明論に関する作者の思惟・薀蓄が散りばめられている。好みにも依るが、私には少し煩わしく思えた。もっとスッキリとした形で物語を構成する事も出来た筈だが、敢えてそうしなかった所に作者の狙いがあるのだろう。兎に角、作者の構想に唸らされる逸品であり、一読の価値があると思う。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
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No.25:
(5pt)

こなれた文体、優れた構成。文句なしの傑作

オリジナルは2010年リリース。邦訳は、2011年3月15日リリース。既に多くのミステリー好きの方々がご存知のように、『このミステリーがすごい!』(宝島社)、『週刊文春ミステリーベスト10』(文藝春秋)、『ミステリが読みたい!』(早川書房)で、ミステリーランキング初の三冠を達成した作品である。とても期待して手に取った。

読みだしてまず感じたのは、構成の旨さだ。小説家は多くのペンネームと多様なペンネームごとの『分野』を持っている。それを逆手に取ったように、時にヴァンパイヤ小説、時にSFと上手く散りばめながら物語を進行させていく。読み手を決して退屈させない『技』が随所に効いている。

そして文体が実に優れている。連想したのは若い頃のデヴィッド・ハンドラーの作品だ。読者の心理を捉えた筆はハンドラーも超えている気がする。例えば、『さて、このあといよいよ、毎度かならずぼくが匙を投げたくなってしまう場面が訪れようとしている。つまりは、ストーリーが一気に収束し、徐々に謎が解きあかされていく場面のことだ。(342ページ)』などと言ってしまう。と思えば、物語が収束してもまだ80ページくらいあるなぁ、と感じていると、『もしこれが型通りの探偵小説なり警察小説なりであるならば、物語はすでに終わっていたはずだ。(369ページ)』と来る。凄くミステリー好きの『心理』を『探偵』しているのだ。ここが最も魅力的だと思う。

何しろ文句なしの傑作である。これからも作品をフォローしていきたい気持ちになった。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.24:
(5pt)

The Serialistとは「二流小説家」か?

原題のThe Serialistは、「続き物作家」の意味で、それを意訳して「二流小説家」との邦題となったのだと思っていました。確かに、Harry BlochはSF,サスペンス、吸血鬼ものと様々なジャンルで別々のペンネームで小説を書いており、「二流」のイメージが漂うのですが、原書中で彼を"serialist"とは呼んでいません。むしろ、"serial killer"という表現がある(冒頭にも文末にも)事から、原題はDarian Clayを念頭に置いた「連続殺人鬼」くらいの意味ではないのでしょうか?・・・それがどうしたと云われそうですが、もしClayに照準を当てて本書を読めば、作者が彼の生い立ちから最後まで深い同情を込めていることに気付くのではないでしょうか。残忍な描写もありますが、意外とスッキリとした読後感は、作者が連続殺人鬼を徹底的には突き放していない点から生じているように思われます。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.23:
(5pt)

プロットの意外性に酔いしれる

圧倒的に面白い。本作の魅力は、3つ指摘できる。

(1)プロットの意外性
ストーリーの本筋に、細かなひねりも加えて展開するサブストーリーが絡む。しかし、サブの方が決してメインの印象を散漫にしない。やはり、ミステリはプロットが最重要だということを再認識させる。

(2)作者の小説観の披露
ミステリにこんなの要らない、という意見もあるかと思う(実際、本書を読んだ家人は、このパートが繰り返し挿入されるのがうざい、と言っていた)。
しかし、本好き・小説好きには、この部分もたまらなく楽しいのだ。

(3)濡れ場を含む、女性描写の痛快さ
これは男性読者だけの楽しみかもしれないが、女性登場人物の描写が魅力的である。これは、性的に魅力があるキャラとの濡れ場だけでなく、じゃじゃ馬風、現実派風などのキャラがそれぞれ異彩を放っている。

やはり、売れる小説は、いろいろなエンタメ的要素を含んでいるんだなあと感じられた。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.22:
(4pt)

主人公は二流でも物語は一流

題名通りなかなか花開く機会のない「二流」の主人公が、
猟奇殺人で社会を騒然とさせ脚光を浴びた「一流」の死刑囚の独白本を
手がけるチャンスを得た所から物語が動き始めます。
独白本を手がける条件として死刑囚の依頼を請け負う主人公。
そんなある日、死刑囚が刑務所にいるにも関わらず再び猟奇殺人が、、、
そして第一容疑者は主人公!?

他の登場人物も親友がゲイだったり、パートナーがしっかり者の女子高生だったり
主人公とロマンスに堕ちるのがストリッパーだったり、ニューヨークならではの
人間模様もちりばめられています。特に女子高生の場面ごとの出で立ちなど細かく描写されており、
作者の几帳面さというか女性に対する分析意欲が端々に見て取れます。

話の合間には主人公の連載作品の一部を挿入したりしながら物語の相互連携を深めて一気に
結末まで読み進めさせる勢いを持たせてくれました。

翻訳本ということでやや期待は薄かったのですがあっという間に読了。
ミステリーとして様々な所で評価されていると帯にありましたが、
オチはそこまでではないです。しかし物語を勢いよく読ませてくれる全体感は良い印象でした。


二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456
No.21:
(5pt)

著者が用意した結末はちょっとばかり手の混んだありがちなものではなかった

「ぼく」こと小説家のハリー・ブロックは、ニューヨークの北50キロのシンシン刑務所に向かった。12年前に4人の女性を殺し服役中のダリアン・グレイから、ハリーのもとに告白本の執筆を依頼する手紙が届いたからだ。ダリアンは一切の供述を拒否しつづけ、3カ月後に死刑が執行されることになっている。
ハリーは、さえない中年作家。ドラキュラ物、SF、ポルノ、ミステリなどをいくつかのペンネームを使って書いているものの、これといったヒット作はなく、家庭教師でなんとか食いつないでいる。恋人に逃げられ、教え子の女子高校生のクレアには、足元を見られているというていたらくぶり。告白本をものにすることは、ハリーにとって有名作家になる千載一遇のチャンスだと、クレアにけしかけられた。
ダリアンは真実を告白するかわりに、彼の熱烈な女性ファンと彼を主人公にした、彼のためだけのポルノを書けという条件を提示した。ダリアンの女性弁護士キャロル・フロスキーの条件は、死刑が執行されるまでダリアンに関して知りえた秘密は一切公開してはならないというものだった。刑の執行が遅れたり減刑されたりすれば、告白本を書いたとしても金を手にできない。
ハリーは、依頼どおりダリアンの女性ファンたちを取材し、ポルノを書き始めた。ところが、ダリアンの手口そっくりの猟奇的な女性連続殺人が起きてしまう。ひょっとして、ダリアンは12年前のシリアルキラーではないのか、真犯人は野放しのままなのか。ここから話は急展開し、脱力気味のユーモアに満ちた書きっぷりは影を潜める。
ハリーのいくつかの作品が所々にレトリックとして差し込まれ、文学論や作家論、犯罪心理論が繰り広ろげらる。ミステリ通の著者が用意した結末は、ちょっとばかり手の混んだくらいのありがちなものではない。



二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018456

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