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ポリティコン



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ポリティコンの評価: 3.76/5点 レビュー 49件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.76pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全31件 21~31 2/2ページ
<<12
No.11:
(5pt)

桐野式究極の愛

やや盛りだくさんの詰め込み過ぎで、途中でついていけなくなった読者もいそうな、
相変わらずのディープでグロテスクな世界である。
ここまで現代を笑い飛ばすことが出来れば、書いている本人はさぞや面白いに違いない。
愛読者としては、落とすところまで落とさなければ見えてこない一筋の光のような結末に、いつも満足するのであるが、
今回は、予想はしていたものの、拍子抜けするほどのハッピーエンドだった。
憎むことも裏切ることも苦しむことも愛なくしてはありえないという
醜悪も美なりの究極の恋愛小説は、桐野ワールドの新開地なのではないだろうか
ポリティコン 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:ポリティコン 上 (文春文庫)より
4167900246
No.10:
(4pt)

えーっ! これで完結なのか?

大正時代に理想社会の実現を目指してつくられた「唯腕村」が舞台です。
前半は、創設者の孫の東一が主役であり、経済的発展とは無縁の高齢化の進む村に残った若者の孤立感と焦燥、年寄りたちとの軋轢が描かれますが、過疎化の進んでいる地方の農村であれば、どこでもあり得そうであり、むしろ淡々とストーリーが進行していく印象です。
しかし、東一が自己の欲望を実現するために、「唯腕村」ブランドの農業ビジネスに手を染め虚偽を重ねるところから迷走が始まります。その犠牲になるのが、美少女マヤで彼女が後半の主役になります。

人間関係が希薄化している現代日本において人工的な共同体を維持すること、あるいは新たにつくることの困難性を描いた作品という意味で、篠田節子さんの「仮想儀礼」との共通性を感じました。
違いもあります。「仮想儀礼」においては、主人公たちは宗教ビジネスを追求したあげく破滅しますが、その破滅ぶりは徹底しています。
その点、「ポリティコン」ではビジネス的に成功し、「唯腕村」は農業ディズニーランドになります。まあ、そのユートピアの内実は、現代社会の空疎な人間関係を反映したものでしかないことを、桐野夏生さんはさりげなく描いていますが。

桐野さんの作品としては、やや、おとなし目(?)です。抑制が利いています。
もっとも気になるのが、最終章です。
え? これで終わりなの?? という感じです。
東一は結局失脚するのですが、その破滅ぶりは不徹底です。卑劣なことをした東一は、マヤに復讐され徹底的に破滅すべきだ! と、つい思ってしまうのですが。
続編があるんじゃないか…と思うのは、私だけの妄想でしょうか。


ポリティコン 上Amazon書評・レビュー:ポリティコン 上より
4163299009
No.9:
(4pt)

えーっ! これで完結なのか?

大正時代に理想社会の実現を目指してつくられた「唯腕村」が舞台です。
前半は、創設者の孫の東一が主役であり、経済的発展とは無縁の高齢化の進む村に残った若者の孤立感と焦燥、年寄りたちとの軋轢が描かれますが、過疎化の進んでいる地方の農村であれば、どこでもあり得そうであり、むしろ淡々とストーリーが進行していく印象です。
しかし、東一が自己の欲望を実現するために、「唯腕村」ブランドの農業ビジネスに手を染め虚偽を重ねるところから迷走が始まります。その犠牲になるのが、美少女マヤで彼女が後半の主役になります。

人間関係が希薄化している現代日本において人工的な共同体を維持すること、あるいは新たにつくることの困難性を描いた作品という意味で、篠田節子さんの「仮想儀礼」との共通性を感じました。
違いもあります。「仮想儀礼」においては、主人公たちは宗教ビジネスを追求したあげく破滅しますが、その破滅ぶりは徹底しています。
その点、「ポリティコン」ではビジネス的に成功し、「唯腕村」は農業ディズニーランドになります。まあ、そのユートピアの内実は、現代社会の空疎な人間関係を反映したものでしかないことを、桐野夏生さんはさりげなく描いていますが。

桐野さんの作品としては、やや、おとなし目(?)です。抑制が利いています。
もっとも気になるのが、最終章です。
え? これで終わりなの?? という感じです。
東一は結局失脚するのですが、その破滅ぶりは不徹底です。卑劣なことをした東一は、マヤに復讐され徹底的に破滅すべきだ! と、つい思ってしまうのですが。
続編があるんじゃないか…と思うのは、私だけの妄想でしょうか。
ポリティコン 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:ポリティコン 上 (文春文庫)より
4167900246
No.8:
(4pt)

「新しい公共」というトレンドと戯れる

いつもながらこの作者は物語の設定がコンテンポラリーである。今回は庄内平野の奥の農村部に小説家羅我誠と彫刻家高浪素峰が創設した武者小路実篤の「新しき村」のようなコミューン「唯腕村」を舞台に、かつて高邁な理想を追った公共思想家たちの子孫や後継者たちの現実に翻弄されてゆく混濁を凝視している。

創始者の衣鉢を継いだ新理事長の高浪東一を軸にして、創始者の同世代の一癖もふた癖もある老人たち、インテリ崩れのいわくありげなホームレス、母親が北朝鮮でとらえられた美少女、アジア系の魅力的な女性たち、「唯腕村」の無機栽培のブランド品等を都会に流通させてひと儲けしようとたくらむ得体の知れないビジネスマンなどが次々に登場して、読む者の興味を強烈に惹きつける。希代のストーリーテラーの面目が躍如とした上巻といえよう。

私有財産と欲望を否定し、愛と平和と社会貢献の大義名分を掲げて突き進んできたユートピアの輝かしい理想が、容赦なく押し寄せる高齢化や過疎化、グローバル経済化の嵐の中で、どのようにサバイバルできるのか、またどのような思いがけない変異を見せるのか?

最近おおかたの関心を集めてきた「新しい公共」というトレンドと戯れるような著者の壮大な思考実験の行方やいかに。下巻の疾風怒濤の大爆発が待たれる。

ポリティコン 上Amazon書評・レビュー:ポリティコン 上より
4163299009
No.7:
(4pt)

「新しい公共」というトレンドと戯れる

いつもながらこの作者は物語の設定がコンテンポラリーである。今回は庄内平野の奥の農村部に小説家羅我誠と彫刻家高浪素峰が創設した武者小路実篤の「新しき村」のようなコミューン「唯腕村」を舞台に、かつて高邁な理想を追った公共思想家たちの子孫や後継者たちの現実に翻弄されてゆく混濁を凝視している。

創始者の衣鉢を継いだ新理事長の高浪東一を軸にして、創始者の同世代の一癖もふた癖もある老人たち、インテリ崩れのいわくありげなホームレス、母親が北朝鮮でとらえられた美少女、アジア系の魅力的な女性たち、「唯腕村」の無機栽培のブランド品等を都会に流通させてひと儲けしようとたくらむ得体の知れないビジネスマンなどが次々に登場して、読む者の興味を強烈に惹きつける。希代のストーリーテラーの面目が躍如とした上巻といえよう。

私有財産と欲望を否定し、愛と平和と社会貢献の大義名分を掲げて突き進んできたユートピアの輝かしい理想が、容赦なく押し寄せる高齢化や過疎化、グローバル経済化の嵐の中で、どのようにサバイバルできるのか、またどのような思いがけない変異を見せるのか?

最近おおかたの関心を集めてきた「新しい公共」というトレンドと戯れるような著者の壮大な思考実験の行方やいかに。下巻の疾風怒濤の大爆発が待たれる。
ポリティコン 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:ポリティコン 上 (文春文庫)より
4167900246
No.6:
(5pt)

読者の心の中に、「国境」を浮かび上がらせる桐野マジック!

本書は東北のある自給自足の村、「唯碗(いわん)村」を舞台に、
2名の若い男女を軸に、壮大な物語が展開するが、
私には作者・桐野氏のモチーフが、「国家とは何か」ではないかと感じられた。
国家の概念を明確にする「国境」を浮かび上がらせるために、
3つの状態の比較が、ストーリーの中で背景として描かれる。

'1・90年前の農業国日本と、現在のハイテク化された日本との比較
'2・現在日本の豊かな都会と、いまでも貧しい地方との比較
'3・日本に隣接する緊張感溢れる「ある国」と、平和ボケした日本との比較

いずれも、表現が難しいテーマだが、そこは桐野氏、
小説という枠組みの利点、登場人物をフルに活かして、
読む者の心をつかむスリリングな展開を呈示してみせる。
この本が優れているのは、あくまでも「小説」としての面白さがまずあって、
裏のテーマの深さ、重さをあまり感じさせてくれないことである。
ただし、上下2巻の大作を一気に読み終えたとき、
私の心のなかには、さまざまな感情が残ることになった。
これほどまでに、激しい読書体験をさせてくれた本は久しぶりだった。
さすがは、桐野夏生である。本当に、まいりました。

ポリティコン 上Amazon書評・レビュー:ポリティコン 上より
4163299009
No.5:
(5pt)

読者の心の中に、「国境」を浮かび上がらせる桐野マジック!

本書は東北のある自給自足の村、「唯碗(いわん)村」を舞台に、
2名の若い男女を軸に、壮大な物語が展開するが、
私には作者・桐野氏のモチーフが、「国家とは何か」ではないかと感じられた。
国家の概念を明確にする「国境」を浮かび上がらせるために、
3つの状態の比較が、ストーリーの中で背景として描かれる。

'1・90年前の農業国日本と、現在のハイテク化された日本との比較
'2・現在日本の豊かな都会と、いまでも貧しい地方との比較
'3・日本に隣接する緊張感溢れる「ある国」と、平和ボケした日本との比較

いずれも、表現が難しいテーマだが、そこは桐野氏、
小説という枠組みの利点、登場人物をフルに活かして、
読む者の心をつかむスリリングな展開を呈示してみせる。
この本が優れているのは、あくまでも「小説」としての面白さがまずあって、
裏のテーマの深さ、重さをあまり感じさせてくれないことである。
ただし、上下2巻の大作を一気に読み終えたとき、
私の心のなかには、さまざまな感情が残ることになった。
これほどまでに、激しい読書体験をさせてくれた本は久しぶりだった。
さすがは、桐野夏生である。本当に、まいりました。
ポリティコン 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:ポリティコン 上 (文春文庫)より
4167900246
No.4:
(5pt)

これは『桐野夏生版・創世記』か? 人間のむき出しの「業」を描く傑作小説

本書を読み終えた自分の感想は「人間の業こそミステリー」というものだった。
東北の山奥に、90年の前からひっそりと存在していた「唯碗(いわん)村」。
そこは自給自足の理想社会の建設を目指してつくられた村であった。
村の後継者・トイチと、この村に偶然流れ着いた少女・マヤを襲う過酷な運命。 
高齢化、人口減少、外国人妻、農業問題など、現代日本の縮図ともいえる問題。
当初、私はこの物語は、桐野氏の前作『東京島』の「島の中の東京」的に、
「村の中に、日本の縮図を埋め込んだのではないか」と思いつつ読んでいった。
しかし、トイチの圧倒的な土着的生命力と、マヤの純粋さな気持ちとの交錯により、
桐野氏の筆によって、さらなる高みまで、連れて行かれたようである。
本書は、もしかして『桐野夏生版・創世記』なのではないだろうか?
トイチがアダムでマヤがエバ。ふたりは「唯碗村」という「楽園」に住めるのか?
旧約聖書の創世記さながら、タフで魅力的な2人の男女は、
さまざまな経験を積みながら、「絶望の淵にある微かな希望」を見せてくれる。
本書は、ミステリーの女王にして、稀代のストーリーテラー・桐野夏生が、
究極の状況のもと人間の業の根本を美しく描くことに成功した、渾身の力作である。
ポリティコン 上Amazon書評・レビュー:ポリティコン 上より
4163299009
No.3:
(5pt)

これは『桐野夏生版・創世記』か? 人間のむき出しの「業」を描く傑作小説

本書を読み終えた自分の感想は「人間の業こそミステリー」というものだった。
東北の山奥に、90年の前からひっそりと存在していた「唯碗(いわん)村」。
そこは自給自足の理想社会の建設を目指してつくられた村であった。
村の後継者・トイチと、この村に偶然流れ着いた少女・マヤを襲う過酷な運命。 
高齢化、人口減少、外国人妻、農業問題など、現代日本の縮図ともいえる問題。
当初、私はこの物語は、桐野氏の前作『東京島』の「島の中の東京」的に、
「村の中に、日本の縮図を埋め込んだのではないか」と思いつつ読んでいった。
しかし、トイチの圧倒的な土着的生命力と、マヤの純粋さな気持ちとの交錯により、
桐野氏の筆によって、さらなる高みまで、連れて行かれたようである。
本書は、もしかして『桐野夏生版・創世記』なのではないだろうか?
トイチがアダムでマヤがエバ。ふたりは「唯碗村」という「楽園」に住めるのか?
旧約聖書の創世記さながら、タフで魅力的な2人の男女は、
さまざまな経験を積みながら、「絶望の淵にある微かな希望」を見せてくれる。
本書は、ミステリーの女王にして、稀代のストーリーテラー・桐野夏生が、
究極の状況のもと人間の業の根本を美しく描くことに成功した、渾身の力作である。
ポリティコン 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:ポリティコン 上 (文春文庫)より
4167900246
No.2:
(5pt)

圧倒的な生命力

桐野夏生初の上下巻となる本作は、五年の歳月をかけた大作だという。正直、上巻の途中までは、奥の深い「桐野ジャングル」を彷徨っている感覚だった。しかし、読み終わると、不思議な開放感と、誰かとこの小説の話がしたい、という欲求が沸いてくる。特に、ラストの凄さはなんだろう。こんなラスト、誰が予想するだろうか。それほどビックリ系だが、けど、腑におちる終わり方。それと、高浪東一という、どうしようもなく俗な27歳の男性主人公が、読み進めるうちに、愛おしくなっていくのだ。男(人間)の俗な部分を、これでもかこれでもかと書き込み、それを物語という炎で成仏させている感じがする。これは筆者が人間を見つめる視点が、実はとても優しいからできることだと思った。思い返してみると、桐野夏生の作品で、殺人シーンは極めて少なくないかな(「OUT」は、死体を切り刻むけど)。大長編だけど、あっという間に読み終えてしまった。うまく言えないのだが、とてつもない生命力に満ちた本だということは間違いないと思う。福井利佐さんの装画(切り絵)も、すごくかっこいい。



ポリティコン 上Amazon書評・レビュー:ポリティコン 上より
4163299009
No.1:
(5pt)

圧倒的な生命力

桐野夏生初の上下巻となる本作は、五年の歳月をかけた大作だという。正直、上巻の途中までは、奥の深い「桐野ジャングル」を彷徨っている感覚だった。しかし、読み終わると、不思議な開放感と、誰かとこの小説の話がしたい、という欲求が沸いてくる。特に、ラストの凄さはなんだろう。こんなラスト、誰が予想するだろうか。それほどビックリ系だが、けど、腑におちる終わり方。それと、高浪東一という、どうしようもなく俗な27歳の男性主人公が、読み進めるうちに、愛おしくなっていくのだ。男(人間)の俗な部分を、これでもかこれでもかと書き込み、それを物語という炎で成仏させている感じがする。これは筆者が人間を見つめる視点が、実はとても優しいからできることだと思った。思い返してみると、桐野夏生の作品で、殺人シーンは極めて少なくないかな(「OUT」は、死体を切り刻むけど)。大長編だけど、あっという間に読み終えてしまった。うまく言えないのだが、とてつもない生命力に満ちた本だということは間違いないと思う。福井利佐さんの装画(切り絵)も、すごくかっこいい。
ポリティコン 上 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:ポリティコン 上 (文春文庫)より
4167900246

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