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ポリティコン
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ポリティコンの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.76pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全31件 1~20 1/2ページ
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ぼくにとっては不可思議な作家というジャンルでトップ3に入るのが、桐野夏生である。読んでみないと面白いのかつまらないのか、わからない。最初は探偵・村野ミロのシリーズでエンタメ界に登場したものの、徐々にシリーズ外作品での独自性を見せ始める。その切り替えスイッチとなったのは、まぎれもなく『OUT』だったと思う。 かつてのぼくの桐野評。『ぼくがリスペクトしたいと思うクリエイターは、どちらかと言えば、馴れ、という領域を逸脱しようと、常にチャレンジする精神を維持し続けている部類の作家である。』 もう一つ。『通り一遍の評価を受けることで満足することなく、次から次へと異色の作品を出し続け、いい意味で読者の予想を裏切り続ける女流作家としては、トップ・ランナーである。』 そう、本作『ポリティコン』は、実験小説のようにも見える。一つの原始共産主義的な<村社会>を東北の一山村に作り上げた一族の血を継いで、現代の若き村長が時代に沿った変革を施してゆく、というと聴こえは良いが、この新村長となる主人公の東一(といち)は、ページを繰るにつれ、軽薄で身勝手で、獣欲に身を任せるエゴイストで、様々な意味での愚かさを全身に纏った出来の悪い男であることが明確になってゆく。それでいて妙な自信を備えていて、性格も弱いくせにプライドは強い。客観性がなく、村民たちへの思いやりも薄いし、怒りっぽい。理想を抱えているのかどうかわからないが、自分の中では何となく整理できているらしいし、これといった信念がないせいか、ある程度の危機を平気で乗り越えてしまいそうなタフさと不思議なまでの強運は備えている。それにしても読んでいて、ああやだ、こんな男は嫌だ、と嫌悪感を感じてしまう類いのキャラクターであることは間違いない。 「私は白黒つけがたい、善悪がわからない、そんな薄気味悪い中間地点にいるような人が、好きなんですね。最近、善悪だけでなく、物事をわかりやすくしようという傾向が文学でも強いと思いますが、私はそれに乗りたくないんです。人はそんなに簡単に分けることができないし、差異は常にある」 というのが、作者の言葉なので、これを読むとなるほどと思うが、この主人公が規制のキャラクターという概念から抜けているのも、かく言う作者が読者たちに向けて投じた一石のおかげなのかもしれない。 ちなみに本書の主人公は基本的には、唯腕村(いわんむら)である。大正時代にユートピアとして作り上げられた共同体としての開拓村である。そしてそこに住む個性の強い村人たちである。桐野作品の凄さはこれら村人の個性をしっかりと描き分けて造形してしまうところである。『東京島』という奇妙な場所をクリエイトした作品との共通項でもある。 そして不思議なことに、こんな内容の作品なのに、読んで面白い。リーダビリティが抜群なのである。これと言ったストーリーがない代わりに、大作ゆえに、時代のうねりのようなものが二世代三世代の村の歴史に生じていて、そこを出入りするキャラクターたちのバリエーションも桐野作品らしく個性豊かで興味深い。いわゆる「何が起こるかわからない」実験現場のような作品でもあるのだ。 さらに言えばタイトルの『ポリティコン』という言葉は作中に一度も登場しない。このあたりのアンチ・サービス精神も、作品を説明しないという桐野力学の一部なのだろう。ポリティコンとは、政治的動物のことであるらしい。本書は共同体の構築と運営を描く小さな建国神話であるようだ。読後感としては、村の規模が小さすぎるため、建国という言葉とは僕の中では全く結びつかない作品であったように思うが、ともかく。 タイトルもストーリーも含めてかように謎に満ちた作品なのだが、何となく面白く読まされてしまう。それぞれの人間の個性も、彼らの間に働く物語性と、対抗する力学のようなものも、ギリシャ喜劇でも観ているかのようで何となく親和性を覚えつつ、キャラクターの一部は愛すべきで、一部は苦手と感じてしまう。まるで読者の生きる現実世界の鏡面のような物語世界を、不思議がるのも、面白がるのも、投げ出すのも自由、といわんばかりの謎めいていて、人を食ったような大作。 桐野作品の中では異常に長い小説である。著者が五年の歳月を費やして書いた作品だと言う。人間の多様さ、罪深さ、たくましさ、愛と性、貧富、生きる方途、その他、すべてを凝縮して描き切る桐野夏生という極めて個性的な作家の、記念碑的作品であることは間違いない。 それにしても主人公の人間性の悪さが鼻について仕方がなかった。第二部が、不幸な女性マヤの側面から描かれるようになって、だいぶ心が安らいだ。彼女が如何に不幸であれ、その逞しさは伝わってくるせいかもしれない。しかし、全体を通して、東一への憎悪をエネルギーに変えて読めてしまう不思議作品であるのかもしれない。奇妙だ。こんな作品はどこにもない。 | ||||
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ぼくにとっては不可思議な作家というジャンルでトップ3に入るのが、桐野夏生である。読んでみないと面白いのかつまらないのか、わからない。最初は探偵・村野ミロのシリーズでエンタメ界に登場したものの、徐々にシリーズ外作品での独自性を見せ始める。その切り替えスイッチとなったのは、まぎれもなく『OUT』だったと思う。 かつてのぼくの桐野評。『ぼくがリスペクトしたいと思うクリエイターは、どちらかと言えば、馴れ、という領域を逸脱しようと、常にチャレンジする精神を維持し続けている部類の作家である。』 もう一つ。『通り一遍の評価を受けることで満足することなく、次から次へと異色の作品を出し続け、いい意味で読者の予想を裏切り続ける女流作家としては、トップ・ランナーである。』 そう、本作『ポリティコン』は、実験小説のようにも見える。一つの原始共産主義的な<村社会>を東北の一山村に作り上げた一族の血を継いで、現代の若き村長が時代に沿った変革を施してゆく、というと聴こえは良いが、この新村長となる主人公の東一(といち)は、ページを繰るにつれ、軽薄で身勝手で、獣欲に身を任せるエゴイストで、様々な意味での愚かさを全身に纏った出来の悪い男であることが明確になってゆく。それでいて妙な自信を備えていて、性格も弱いくせにプライドは強い。客観性がなく、村民たちへの思いやりも薄いし、怒りっぽい。理想を抱えているのかどうかわからないが、自分の中では何となく整理できているらしいし、これといった信念がないせいか、ある程度の危機を平気で乗り越えてしまいそうなタフさと不思議なまでの強運は備えている。それにしても読んでいて、ああやだ、こんな男は嫌だ、と嫌悪感を感じてしまう類いのキャラクターであることは間違いない。 「私は白黒つけがたい、善悪がわからない、そんな薄気味悪い中間地点にいるような人が、好きなんですね。最近、善悪だけでなく、物事をわかりやすくしようという傾向が文学でも強いと思いますが、私はそれに乗りたくないんです。人はそんなに簡単に分けることができないし、差異は常にある」 というのが、作者の言葉なので、これを読むとなるほどと思うが、この主人公が規制のキャラクターという概念から抜けているのも、かく言う作者が読者たちに向けて投じた一石のおかげなのかもしれない。 ちなみに本書の主人公は基本的には、唯腕村(いわんむら)である。大正時代にユートピアとして作り上げられた共同体としての開拓村である。そしてそこに住む個性の強い村人たちである。桐野作品の凄さはこれら村人の個性をしっかりと描き分けて造形してしまうところである。『東京島』という奇妙な場所をクリエイトした作品との共通項でもある。 そして不思議なことに、こんな内容の作品なのに、読んで面白い。リーダビリティが抜群なのである。これと言ったストーリーがない代わりに、大作ゆえに、時代のうねりのようなものが二世代三世代の村の歴史に生じていて、そこを出入りするキャラクターたちのバリエーションも桐野作品らしく個性豊かで興味深い。いわゆる「何が起こるかわからない」実験現場のような作品でもあるのだ。 さらに言えばタイトルの『ポリティコン』という言葉は作中に一度も登場しない。このあたりのアンチ・サービス精神も、作品を説明しないという桐野力学の一部なのだろう。ポリティコンとは、政治的動物のことであるらしい。本書は共同体の構築と運営を描く小さな建国神話であるようだ。読後感としては、村の規模が小さすぎるため、建国という言葉とは僕の中では全く結びつかない作品であったように思うが、ともかく。 タイトルもストーリーも含めてかように謎に満ちた作品なのだが、何となく面白く読まされてしまう。それぞれの人間の個性も、彼らの間に働く物語性と、対抗する力学のようなものも、ギリシャ喜劇でも観ているかのようで何となく親和性を覚えつつ、キャラクターの一部は愛すべきで、一部は苦手と感じてしまう。まるで読者の生きる現実世界の鏡面のような物語世界を、不思議がるのも、面白がるのも、投げ出すのも自由、といわんばかりの謎めいていて、人を食ったような大作。 桐野作品の中では異常に長い小説である。著者が五年の歳月を費やして書いた作品だと言う。人間の多様さ、罪深さ、たくましさ、愛と性、貧富、生きる方途、その他、すべてを凝縮して描き切る桐野夏生という極めて個性的な作家の、記念碑的作品であることは間違いない。 それにしても主人公の人間性の悪さが鼻について仕方がなかった。第二部が、不幸な女性マヤの側面から描かれるようになって、だいぶ心が安らいだ。彼女が如何に不幸であれ、その逞しさは伝わってくるせいかもしれない。しかし、全体を通して、東一への憎悪をエネルギーに変えて読めてしまう不思議作品であるのかもしれない。奇妙だ。こんな作品はどこにもない。 | ||||
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約10年ぶりの再読。 一度しか読んでいなかったが、読後「高浪東一」という名前は心に残る程の欲の塊を見せつけられる本書。 著者の他の作品で、すぐに名前を思い出せるというと、ユリコと雅子と佐竹くらいだろうか。 美しくも、心は孤独そのものでどこにも辿り着けないマヤと、独裁者よろしく放埒な東一の物語のようにも見えるが、ただただ東一のダダ漏れな私利私欲を書き切ったように見ています。 そこに付いてくる様々な社会的な問題がこの作品を面白くしています。 ちょっと詰め込みすぎで、厚みは増しましたが、それはそれで読了した時の満足感もあります。 ここのところ、3冊まとめて桐野夏生さんを再読していますが、やはり人間の欲と、人の心の奥に見え隠れする悪意を書かせたらこの方の右に出る人は現代の存命作家さんには居ないのではないかと。 そこが本当に好きですね。 | ||||
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ユートピア:唯腕村 村人たちはお互いを全く信用しておらず、彼らの人間関係を描いている。 | ||||
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結局社会主義国家が理想に終わるのは、そこに人間が関わるためだということを再認識しました。 私有財産を持たず相互に助け合う理想郷としてつくられた唯腕村でしたが、崩壊の発端は、単なる私利私欲で、それは人間の本能でもあると思いますので、現実的には成り立たない様が描かれています。 全共闘時代の生き残りであっても、結局は私利に走る現実から見れば、福祉国家の限界はすでに分かり切っています。 東一が新たな唯腕村をつくるとすれば、それは単なる王国であり封建主義への回帰ということなのでしょうが、それが現代において成り立つならば一種の宗教でしかありえないなどと考えながら読了しました。 本書は脱北ビジネスや農業、人心掌握、世代間格差などいくつかのテーマを含んだ小説です。 後半、東一とマヤの視点が絶妙のタイミングで移り、面白く一気読みできました。 | ||||
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結局社会主義国家が理想に終わるのは、そこに人間が関わるためだということを再認識しました。 私有財産を持たず相互に助け合う理想郷としてつくられた唯腕村でしたが、崩壊の発端は、単なる私利私欲で、それは人間の本能でもあると思いますので、現実的には成り立たない様が描かれています。 全共闘時代の生き残りであっても、結局は私利に走る現実から見れば、福祉国家の限界はすでに分かり切っています。 東一が新たな唯腕村をつくるとすれば、それは単なる王国であり封建主義への回帰ということなのでしょうが、それが現代において成り立つならば一種の宗教でしかありえないなどと考えながら読了しました。 本書は脱北ビジネスや農業、人心掌握、世代間格差などいくつかのテーマを含んだ小説です。 後半、東一とマヤの視点が絶妙のタイミングで移り、面白く一気読みできました。 | ||||
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主人公東一は時代遅れで身勝手なひどい男。無骨で生命力あふれすぎる東一。 そして東一が惚れ込んだ美少女マヤは、不幸な環境から逃げ込んだ先で、だまされてヤクザに売られてしまいます。 夢中で読むことができた理由には次のようなことがあると思います。 *作者の東一に対する愛情があちこちで感じられたこと *不器用な東一と、彼と犬猿の仲である山路夫妻の対比がはっきりしていた。「人間くさい東一」対「プチブルジョアで正論を滔々と述べる山路夫妻」 *汚い世界に放り込まれても、汚い言葉を使っても、どこまでも清らかさが感じられるマヤ *清らかなマヤと他の村の女たちとの対比 最後のシーンは美を極めた形で終わりました。 | ||||
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皆が互いを愛し、助け合い、私欲を捨て、ともに生きる「理想郷」。崇高な理念のもとに作られた「夢の国」は、どのように機能不全に陥り、あるいはどのように理想とは似ても似つかないものに変質するのか。桐野氏はこのことに深い関心を寄せ、綿密な取材をもとに作品を生み出している。人間の汚くて醜い部分を容赦なく描き出し、どんな理念も理想も信じていない、信じてたまるかと挑戦的な眼差しを向ける筆者は、それでも絶望はしていない。桐野氏には、もし唯一希望を見出しうるものがあるとしたら、それは極めて個人的で私的な愛だけだ、という想いがあるのではないだろうか。 | ||||
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図書館で上巻を借りて、我慢出来ずに下巻は購入しました。桐野作品って感じでしたね。 しかし、先生は何故、不器用に世間の端っこで 生きている人間を書くのが上手いんでしょうか。 今回も、たっぷり、感情移入させていただきました。 | ||||
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40代、男性。 主人公の東一の根本にある「他人に認めてもらいたい」とか「気になる異性によく思われたい」とか「成功したい」という欲は、多くの男性が抱いている思いではないだろうか。しかし、それを他人や異性に見せることは大人としては恥ずかしいことであり、思いの多くは心に留めておく。時折、そんな強欲が言動になって出てしまうことがあり、ひやっとすることもあるのだが・・・。主人公の東一は、それを我慢できず、日常的にさらけ出す。 読んでいて何度も恥ずかしくなった。恥ずかしさの連続。しかし、その恥ずかしさは、自分と重なる部分があるからだ。東一を通して、自分にもある「甘え」を見た。そして、たやすく甘えをさらけ出す東一に、爽快感さえ覚えた。 東一に共感することに賛否はあろうが、共感に至った一番の要因は、筆者の描写力にある。登場人物の表情や感情がまるで映画を見ているように映像化でき、各エピソードも登場人物を肉付けするためにどれも不可欠であったと思う。読み進めるごとに、東一の行く末を早く知りたくなり、ページをめくるスピードが加速した。登場人物の魅力は「メタボラ」に匹敵すると思った。女性は東一に腹が立つでしょうね・・・。 社会生活の中で我慢している中年男性が、空想の中で自我を解放するにはうってつけのエンターテイメント小説であると思う。 | ||||
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残酷だが弱肉強食は現代の人間界でもあらゆるところに存在している。 貧富の差や老い、言葉で論じることもある意味戦い。 不器用でも、例え汚れても生きることに懸命な二人が、 他のどの登場人物より輝きとまではいかなくても強い光を発しているように感じた。 だから、壮絶な末路を見届けようと読み進めていたのに、 意外にも二人の愛に帰結する物語の結末に満足できた。 やっと零地点に到達したトイチとマヤが今後作り出す理想郷は絶望郷かもしれない。 そうであったとしても、二人の共通の動機に希望を見出したい。 必見! | ||||
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桐野 夏生さんの作品なので気になってたんですが まだ読んでなくて、購入しました。 2冊組でとても読み応えがあり面白い作品でした。満足してます。 | ||||
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上巻は東一視点で綴られ、下巻の2部からはマヤ視点。 東一は唯一の若者であるという重圧・孤独感に押しつぶされそうになりながらも やがて後継者であることからその地位を利用し、村と女性たちを私物化するとんでもないえげつない男。 どうにもならない過疎と高齢化の問題、 抑えきれない東一の欲望に腹がたって仕方ないんだけど、こんなにもドロドロと暗いのになぜかページをめくる手が止まりません。 桐野夏生のこの中毒性って、本当にヤバい。 小さい社会の中で憎しみ合い、でもそこから飛び出すこともできず、 結局は支えあっていきていく人々の村への思いは想像を超えるものがある。 信頼とか何かを守り抜かなければならないという執念の強さは生々しくもリアルに響いてきます。 最後にいきなりボロクソにやられた東一は笑っちゃうほどすがすがしかったよー。嫌な男よ、ザマーミロ!!! けど結局、10年かけて東一とマヤはやっと対等の位置に立ち、本当に信頼できる間柄になれた。 これってきっと二人が閉鎖的で特殊な共同体で生きたからこそなんだろうなぁ。 | ||||
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==ネタばれありです== いつも思うのだが、桐野氏の描く人物は男も女も本能むき出しのエゴイストばっかりだ。 まともな人物がひとりもおらず、どいつもこいつも他人を卑下し、自己の快楽ばかり考えている。 前頭前野のなくなった人物ばかりで、理解しながら読み進めていくのに本当疲れる。 この作品の主人公、東一とマヤもしかり。 特に東一は圧倒的な本能と悪の権化であり、とうてい感情移入できるものではない。 (正直で純粋で可愛いとはとても思えない!) しかし、限られたコミュニテイにおいて、世間の常識や情報と 切り離されて育つとこんなわがままな人物が出来上がってしまうのだろうか。 田舎は沈黙が怖い。誰もが村八分を恐れて言いたいことを飲み込んでいる。 わずか20名程度の村民の陰謀と陰口の渦巻く唯腕村はその限りではなかったのだろうか。 ストーリーはジェットコースター的に面白いのであるが、現代社会の抱える問題を 詰め込みすぎた感じがして、すべてが消化不良である。北に拉致された母親の問題も 解決されないまま終わったし、東一の解任もあまりに急激にすぎる。 マヤの出奔後の境遇も本来ならお決まりの転落ストーリーになるはずが、 中卒の娘にしては結果オーライだし。 結末もなんだか気に入らないなあ。あいつがまだのさばって王国を築いていくってこと? | ||||
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上巻はあっという間に読み進みました。 理想を掲げた「インテリ」集団が築いた小さな世界。どこかで聞いたことはあるものの実体を知る機会がなかったが、前半克明に描かれていて好奇心も存分に満たされました。まるで映画を見たように今だって村の様子、登場人物の風貌が目に浮かぶくらいです。 トイチとマヤの場面では、マヤと一緒になって「キモイんだよお前は」と思ったりしましたが、今度はトイチがマヤを不憫に思う描写で引き込まれ、トイチと共に胸を痛めました。大人に連れてこられたすべての少年少女の生活と苦しみをとても丁寧に書いてあって、その哀れさは胸に重く沈みました。 最後でマヤが「トイチを軽蔑したことはない」というくだりがありますがそこは本当によくわかります。 トイチは下品なところもあるけど、温かさもあり清潔な心もある。 他の人物を思い出しても丁寧に描いていて誰もが一面的ではないので 読み終わったあとに全員のことが懐かしい。 こんな小説は久しぶりに読みました。私は間違いなく名作だと思います。 | ||||
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少子高齢化、地域格差、農業破綻、外国人妻、、、、 理想と現実のギャップ 読み進めるうちになぜか主人公の男に感情移入してしまう。 今の日本の縮図のような状況をなんとか打破していこうとする男、そして悲しい男の性。 悲しいから惹かれるのか。 | ||||
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理想郷から絶望郷 10年の歳月が二人を、村を、大きく変えていく。 あっというまに上下巻を読みきってしまい、今思うのは 続編がほしい。 今の日本が抱える問題と並行しながら 2015年ころに、、、。 でも 主人公の男に肩入れしちゃうなあ。 | ||||
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生きていくということは時に残酷である。 残酷なまでの性欲、物欲、金銭欲… それはまるで東日本大震災前の日本人の姿を 生き映したかのような気がしないでもない。 人間という生き物の身勝手さ、欲望、狡さを 見事に書ききっていると思う。 それはどこか破滅に向かって生き急いでいるようにも思おう。 下巻は少し物足りない感じだったが、マヤの生き様には 力強さを感じる。 | ||||
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生きていくということは時に残酷である。 残酷なまでの性欲、物欲、金銭欲… それはまるで東日本大震災前の日本人の姿を 生き映したかのような気がしないでもない。 人間という生き物の身勝手さ、欲望、狡さを 見事に書ききっていると思う。 それはどこか破滅に向かって生き急いでいるようにも思おう。 下巻は少し物足りない感じだったが、マヤの生き様には 力強さを感じる。 | ||||
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やや盛りだくさんの詰め込み過ぎで、途中でついていけなくなった読者もいそうな、 相変わらずのディープでグロテスクな世界である。 ここまで現代を笑い飛ばすことが出来れば、書いている本人はさぞや面白いに違いない。 愛読者としては、落とすところまで落とさなければ見えてこない一筋の光のような結末に、いつも満足するのであるが、 今回は、予想はしていたものの、拍子抜けするほどのハッピーエンドだった。 憎むことも裏切ることも苦しむことも愛なくしてはありえないという 醜悪も美なりの究極の恋愛小説は、桐野ワールドの新開地なのではないだろうか | ||||
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