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マーチ博士の四人の息子



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【この小説が収録されている参考書籍】
マーチ博士の四人の息子 (ハヤカワ文庫HM)

マーチ博士の四人の息子の評価: 5.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.00pt

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(5pt)

マーチ博士の四人の息子の感想

ミステリ作家には、振り返ってみれば第一作が最高作だったというパターンが多い。処女作だけに充分な執筆時間が与えられていることも関係していると思いますが、ミステリの分野になにか変化を与えようとしている書き手であれば野心的で勢いのある作品になってくることも理由のひとつだと思います。
ブリジット・オベールのこの処女作もそれまでのミステリにはないユニークなアイディアが詰まった作品です。
マーチという医師の家に住み込みで働いている家政婦ジニーが偶然日記を見つけ、それに予告されたとおりの事件が隣家で起こってしまう。しかも、書いた人間は以前から何人もの女性を殺害していたらしい。日記の持ち主は、同居する四人の息子のうちの誰かだろう。
<殺人者の日記>と<ジニー(主人公)の日記>二つの視点のやりとりで展開するのが本書の大きな特徴です。最初は、ジニーが日記を盗み読んでいる感じなんですが、徐々に犯人もそれに気付きはじめ彼女を脅迫するような記述が目立つようになっていく。しかし、盗みの逃亡犯であるジニーも簡単には引き下がらず警察とも関わりたくないので、武装して身を守り、犯人をいぶりだそうとします。ところが、彼女が仕掛けた罠はことごとく見抜かれて失敗。なおも家じゅうを音もなく動き回り、いつの間にか書き加えた日記で殺人を予告しては実行する犯人。やがて、ジニーもその実在を疑いはじめるようになります。
後半になると、ジニーに殺人容疑がかけられる展開となり、作者としてはここでサスペンスはピークに達する手はずだったのだろうと思いますが、前に言ったとおり全て日記の文章を通して読者に伝わることなので、あまり緊急性を感じないし不自然な印象すらあるのが惜しいところです。
解決篇となるエピローグで一連の事件の真相が明らかになり、それまで拭いきれなかった違和感がここで解消されます。この結末で『してやられた』と感じるか『そりゃないだろう』と感じるかで評価は分かれると思いますが、本格ミステリの愛好家ならば、ほとんどは後者になるのではないでしょうか。違和感の正体が“あれ”なんですから……。
決して退屈な話ではないんですけど、やはりミステリを謳う以上は解決ありき、ということで厳しめの評価です。

samil1890
7F502VMK

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