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チャイナ橙の謎



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チャイナ橙の謎の評価: 5.00/10点 レビュー 2件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.00pt

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(3pt)

当時のアメリカはチャイナブームだったのか?

本作の趣向は、狂人の仕業としか思えない奇妙な状況をいかに論理的な説明をつけるかということにあると思う。
しかしそれにしても作者はとんでもない冒険に出たものである。なんせ死体の衣類はもとより、部屋の家具・調度類全ても逆さまにされているというのだから。これにどんな合理的説明が付くのか。本作の焦点は正にそこにあると思う。

こんな手間暇をかけた殺人事件は今までに私も読んだ事がなく、かなり頭を絞った。色んな手掛かり、特に死体の上着の下を潜らせて足先から首まで通してある槍の意味や消えたネクタイの謎、などなど。

私の推理と真相についてはネタバレに語ることとして、ただ本作をこのロジックとトリックだけに注目すると陳腐だと云わざるを得ないが、クイーンの物語の味付けについても語っておこう。

本作は今までの国名シリーズにもましてモチーフとなった国に関するガジェットがふんだんに盛り込まれている。食べられたチャイナ橙の謎から、中国文化に詳しい女性による中国人の奇妙な風習についてのあれこれ、中国の稀少な地方切手の話などなど。特に中国の文化があべこべの文化であるというのはなかなか面白い着眼点だ。

曰く、中国人は人と逢ったときに相手と握手せず、自分と握手する、暑い日には冷たい物を飲まず、熱いお茶を飲む、他所の家でご馳走になるときはわざと大きな音を立てて、げっぷをする、入り口に低い塀―衝立のことだろう―を立てて、悪霊の侵入を防ぐ、云々。
中には首を傾げるような物もあったが、なるほどと思った。

そして本作の事件の底流にあるのは切手収集の世界である。『ドルリイ・レーン最後の事件』では稀覯本が事件の主眼であったが、本作では稀少な切手、それに纏わる収集家の話が散りばめられてあり、またそれが事件に大いに関与している。
特に最後に題名の真の意味が解るのにもこの趣向が大いに関わっており、作者のミスディレクションにニヤリとしてしまった。

と、こんな風に一概に明かされる事件の真相のみで評価するには勿体無い作品ではあるのだが、この謎に対して読者への挑戦状を挿入するクイーンも無茶な事をやるなぁと思わずにはいられない。特に本作では冒頭の謎が格段に奇妙であったため、期待が高くなり、それだけに落差が大きかった。

クイーンの信望者である作家法月綸太郎のデビュー作『密閉教室』に、担任の教師が本作を非難するシーンがある。確か、有名な作品ということで読んでみたが、一体あれは何なんだ、バカバカしいといった感じの非難だった。
読書中、幾度となくそのシーンが想い出されたが、それがそのまま私の言葉になってしまった。

更に本作はアメリカではクイーンの最高傑作と出版当時評されたそうである。なんともアメリカという国の懐の深さを感じるとでもいうか、こういうトンデモない話をユーモアとして解する国民性ゆえの賞賛といおうか、いやはやなんとも理解しがたい話だ。

しかし、クイーンは『ドルリイ・レーン最後の事件』以降の質の低下が気になる。『アメリカ銃の謎』からこの3作は手放しで賞賛できない物ばかりだ。
しかし第2期にまだ名作が残っているとの話。クイーンはまだ終わっていないはずだ。これからもまだ見ぬ傑作との出逢いを信じて、読んでいこう。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
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