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獣たちの墓



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獣たちの墓の評価: 7.33/10点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.33pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(10pt)

凄惨な事件の末の安寧

『倒錯三部作』の掉尾を飾る本書では2人組のレイプ・キラーをマットが見つけ出す物語。レバノン系の麻薬ディーラー、キーナン・クーリーの妻フランシーンを誘拐し、40万ドルの身代金をせしめた後、バラバラ死体として送り返した倒錯者だ。

彼らは常習犯で過去に起こした事件も凄惨を極めている。マリー・ゴテスキンドという女性は度重なる性暴行を受けた後、無数の致命傷となる刺し傷を受け、切断された指を膣と直腸に突っ込まれた状態で発見された。

レイラ・アルヴァレスという女性は切られた指を尻に突っ込まれ、おまけに乳房を切り取られていた。

そしてこの悪魔の2人組から唯一生きて逃れたパム・キャシディも片方の乳房を切除されるという残酷極まりない仕打ちを受ける。

そんな陰惨な事件に今回は前回登場したスラムに住む少年TJが大活躍する。電話会社から公衆電話の番号を訊き出す方法だったり、ジミー・ホングとデイヴィッド・キングという凄腕ハッカーを紹介して犯人の行動範囲を限定したりとする。

特に次の誘拐事件が起きた時には犯人の顔と車のナンバーを抑えるなど八面六臂の活躍を遂げる。
正直前作に登場した時はただの小生意気なスラムの少年だとしか思えなかったが、この活躍で一気に彼が好きになった―特に400ページのTJの台詞はこの暗鬱な物語の中で思わず笑い声を挙げたほど爽快な一言だ―。

今回ミック・バルーは警察からの嫌疑を免れるため、アイルランドに逃亡中で不在であったため、物語の面白味が薄れるかと思いきや、TJがその代役を果たしてくれた。
マット・スカダーを取り巻く世界はますます濃厚になっていく。

これら三部作で語られる事件は魂が震え上がる残酷な事件ばかりだ。従って事件も展開もアクティブになっていく。
私は『墓場への切符』の感想で“静”のスカダーから“動”のスカダーに切り替わったと述べたが、それはただ人に便宜を図る程度の捜査ではこれら社会に蔓延る強烈な悪意の塊のような輩には到底立ち向かえないからだ。だからこそマットも動き、人と人との間を歩くのではなく、駆けずり回らなくてはならない。特に本書ではハッカーを使ってまで犯人の行動を摑んでいく。これは以前のスカダーシリーズでは全く考えられなかったことだ。

そしてもはやこれほどまでに強大な悪には1人の力では立ち向かえない。前作ではミック・バルーと云う犯罪者の力を借りて敵を討った。そして今回は麻薬ディーラーの持つ闇の繋がりを以て敵と相見える。
悪を以て悪を征する構図は本書でもまた引き継がれたのだ。

原題の“A Walk Among The Tombstones”とは即ちマット達被害者である悪党たちの混成チームがこの2人組と対峙する場面を表したものである。それはさながら西部劇に見られるガンマンたちの決闘シーンを髣髴させる。
しかし決定的に違うのは西部劇では悪党たちが金や町の支配権を握りたいという比較的単純な動機を持っているのに対し、発表当時の20世紀ではもはや理解し難い動機を持った怪物となっていることだ。

快楽殺人主義者である彼らのうち、首謀者であるレイモンド・カランダーはマットがこんな殺人を繰り返すのかと云う問いに次のように答える。
彼らにとって女と云う物は己の欲望を満たす存在にすぎず、おもちゃなのだ。従って彼らの手中に陥った時はもはや人間ではなく、単なる肉塊に過ぎないのだ、と。

こんな考えを持つ人間が実際に存在する世の中はもはや狂ってしまっている。“狂気の90年代”とはクーンツが当時盛んに取り上げたテーマだったが、1992年に書かれた本書もまた同じだ。
『倒錯三部作』とは時代が書かせた作品群だったのだろう。

もはや一人で生きていくのが危険になった時代に見せた一筋の光明。それは長らく独り身だったマットがついにエレインと結婚する決意を打ち明けることだ。
離婚の後、連れ合いを求めることなどなかったマットの前に現れたジャン・キーンという女性と『八百万の死にざま』で別れて、しかもアルコールとも訣別して以来、マットの傍にいたのはエレイン・マーデルだった。彼女はシリーズの最初からいたが、マットの物語が進むにつれて疎遠になっていた。しかし『墓場への切符』でエレインに訪れた災禍を機にマットとエレインは急接近していく。
私はこれら3作が『倒錯三部作』と日本の書評家たちが勝手に名付けたことがどこか心に引っかかっていたが、それはこれらの3作品が性倒錯者による陰惨な犯罪にマットが立ち向かう作品群であり、個の戦いから仲間と巨悪との戦いへの変遷であると書いてきた。しかし本書を読んでからはエレインとの再会で始まり、エレインへのプロポーズで終わる三部作でもあるのだと気付かされた。

全ては地続きで繋がっている。このマット・スカダーシリーズを読むとその感慨が一層強くなる。
1作目から読んできたからこそ味わえるマットに訪れた安寧を我が事のように思いながらしばし余韻に浸りたい、そんな気分だ。

Tetchy
WHOKS60S
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

マットスカダーシリーズは数冊目ですが

こういうシリーズものは順番に読んだ方がいいですね。
私の場合ちょっと前後したので、ミスったかな~。
でも、単体としても十分面白いと思います。

内容はミステリーなのでしょうが、ハードボイルドといった方がいいかもしれません。
犯人の幼少時代とか、どういう風に育ったのか、そういう家庭環境も知りたかったです。
話が主人公と彼を取り巻く人間模様が中心になるのは分かるのですが、犯人側から見た「目線」も欲しいところでした。


ももか
3UKDKR1P
No.1:
(6pt)

最悪なタイトルでした

内容は墓にはあまり関係ありませんでした。

わたろう
0BCEGGR4

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