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ラスト・チャイルド
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【この小説が収録されている参考書籍】
ラスト・チャイルドの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全30件 21~30 2/2ページ
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物語は妹を誘拐され家族が崩壊してしまった13歳の少年ジョニーとその担当主任刑事のハントの二軸で展開していきます。事件にのめり込むあまりこちらも家庭が崩壊状態。家庭が崩壊したときの大人の有り様、13歳の受け止め方が対比されているように描かれています。ハントが神経症的にのめりこみ被害者の母に個人的な感情を持って苦悩するのに対して、妹が帰ってくると頑なに信じて行動を起こすジョニー。母親は「あきらめる力をおあたえくださいますように」と神に赦しを乞うことしかできませんが、彼の信念は変わりません。 13歳の少年がどうしてこれほどの信念を持って行動することができるのでしょうか。壊れまくった大人たちに囲まれながらも軸をぶらさず考えられるのは、ネガティブな未来を考えない純粋さ、危うさを感じました。登場人物もそこそこ多く、残り少なくなる頁をめくりながらこの風呂敷をどう収めるんだ、と思って読んでいましたが見事な手際でした。 2010年年末には必ず年間ランキング上位に上がる作品だと思います。お奨めです。 | ||||
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世評高い1冊。ハヤカワ・ポケット・ミステリを購入したのは久しぶりだ。ジョン・ハートの著作を読むのは初めて。少し読み始めて、主人公の少年の心の奥底のどうしようもない孤独感と寂寥感に胸が締め付けられた。 唯一無比の存在の双子の妹が失踪して1年。酒とクスリ漬けですっかり変わってしまった美しくて優しい母親も、町の有力者だが、暴力的なその愛人も、蒸発してしまった父親も、妹を探し放浪する先々で遭遇する人々も、唯一親身になって心配してくれるよう見える刑事も、誰も信じられない。たったひとりで妹を探し続けるその覚悟と、家族の再生を願うその健気さに愛おしさを覚えた。 そして、刑事。自らが担当し、未解決案件のひとつとして向き合わなくてはいけない筈が、当事者家族へのある想いから、もはや職分を逸脱しながら、この事件を追い続ける。その執念は、自らの家族を捨て置き、妻には去られ、一人息子との関係はぽっかりと大きな穴が開いたままだ。 連続幼児誘拐、性犯罪、連続殺人。ミステリー&サスペンスの要素を盛り込みながらも、今作が主軸に描いているのは、家族と関係し、生きていく上での苦悩と再生だ。2段組み450ページの長編は、冗長に感じる部分もあるが、それでも読み続けられるのは、その粘着性と心理描写の荒涼としたひりひりとした痛みが心に突き刺さるのと同時に、その先にいつか見えてくるであろう安寧を求めたからだ。 純正エンタメ小説ではないが、2010年度の海外ミステリーでは、屈指と思える実力作。特定の俳優をイメージしながら本を読む事って滅多にないが、今作のハント刑事は、自分の中ではケビン・ベーコンだった。 | ||||
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相変わらずのリリカルの嵐! 叙情派切ない系ミステリの王者ジョン・ハート。 もう大好き、好き過ぎます! 出だしちょっともたつく感じがしましたが、よく考えると単に僕が夏バテだっただけかもしれません。 終わり方もいい、泣ける、僕は胸が17歳の恋する乙女のようにギュンギュン鳴りまくりましたよハート先生! 内容はどうだっていいの!おすすめなの!読んで!読んでー! と強烈にお勧めしますが、ミステリ仲間の母親(76歳)に読ませたところ「まあまあね」という事でした。 ・・・・いや、えーっと リリカル系が別に好きではないリアリストには普通にお勧めします と補足しておこー。 | ||||
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1年前に妹アリッサが行方知れずとなって以来、双子の兄である13歳のジョニーの家族は崩壊していた。父親は家を出、母は薬物に溺れている。ジョニーは犯罪歴のある近隣住民を監視しながら、妹を誘拐した犯人をひとり密かに見つけ出そうとしていた。そんなある日、ある男が車に追われる現場に居合わせる。そして男はジョニーに「少女をみつけた」と言いながら絶命する…。 早川書房創立65周年&早川文庫40周年記念作品と銘打たれ、ポケット・ミステリとミステリ文庫の二形態で同時刊行された小説です。ジョン・ハートに託す早川書房の意気込みの強さを伺わせます。 前作『川は静かに流れ』同様、紡がれるのは家族の物語です。それも傷ついた家族の再生への祈りともいうべきものです。 『ラスト・チャイルド』では、妹の無事を祈りながら独自に調査を続ける健気な少年、そして彼を見守る刑事、それぞれのかかえる家族の物語が交互に綴られていきます。 『川は静かに流れ』と『ラスト・チャイルド』には贖罪というキーワードが横たわっているように思います。 『ラスト・チャイルド』の終盤で、「するべきことをするのに、遅すぎることはない」という言葉が出てきます。このしごく当たり前の戒めが、実に心に響く物語になっているといえるでしょう。 と同時に、この物語には「神様が遣わした」存在ともいえる登場人物が現れます。神の配剤が、物語を都合よくまとめるために現れるのではなく、人が生きて行く上で、天からの指針としか解釈のしようがないような不思議を感じる瞬間を表現する上で欠かせない者として描かれる。それもまた見事であるといえます。 複雑な謎解きを楽しむミステリーを求める読者向けではありませんが、家族と人生の物語であることを承知した上で読むのであれば、ジョン・ハートは今お薦めの作家だといえるでしょう。 *「双子の妹メリッサ」(457頁)は「アリッサ」の誤りです。 | ||||
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ハヤカワ文庫40周年記念作品。 全く同じタイトルの本が、文庫版(上下巻)とポケミス版(1冊)で発売された。 文庫版上下を合わせた値段とポケミスが同じお値段。 私はポケミスの形・手で触れた感触・黄色く塗られた小口の雰囲気などが好きなので、迷わずポケミス版を買った。 ポケミスは透明なビニールのカバーがついている。 このカバーは表紙を差し込むタイプのもので、まずは登場人物一覧のページまでを表紙側のカバーに入れてしまう。これで登場人物を確認したくなったとき、一発で参照できるようになる。 ポケミスの横幅は、片手で持つのに丁度良く、背表紙が柔らかいので自由に曲げて持つことができる。だから、とても読みやすい。 iPad、買った。電子ブックリーダーとして期待されているというが。 大きく、固く、そしてなんといっても、重過ぎる。 やはり本は紙が好きだ。 ポケミスで出される作品は、イギリスやフランスなど普段アメリカもののドンパチばかりのミステリを読んでいる自分には少々目新しい感じのするものが多い。 アメリカもののミステリでも、メジャーな(というかハリウッド的な?)ものより、どちらかというとマイナーな、よりマニアックなシリーズが主体であるようなイメージを持っている。 その点からすれば、この作品は例外的にアメリカのメジャーなミステリだ。 そして、どこの国のどんなジャンルの作品であっても関係なく、自分は魂を揺すぶられるような感動を覚えさせられた。でもハリウッドが映画化するときっとボロボロになるからやめてね。 出てくる人間は、みんなどこかゆがんでいる。 そんななかに何人か、ひたすら「正しい道」を歩き続ける登場人物がいる。 これ以上はネタバレになりそうなので書かないけれど、やはり「ポケミスらしい」ミステリだった。 それを正しく「ポケミスとして」堪能できて、大満足だ。 | ||||
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本作家の精神は余程健康的なのでしょう、題材そのものはうんざりするほどどろどろしたものですが、基調は一貫して前向きです。冒頭はフォークナーを思わせ、ある種の期待感を持たせますが、直ちにマークトーエンに転調します。こういった箇所があります。 「その肩にジョニーは手を置いた。口を真一文字に結び、目を爛々と輝かせて。「ちょっとした冒険をしに行くんだ」」 個人的には、この文章だけで本書を読み終えた感があります。何度も舌の上でころがせると何か甘ずっぱい花のような香が口の中全体に広がってきます。勿論、他にも同様に生き生きとした言葉があります。単純ですが、言葉が立っているのです。 素直にいい本と感じることができました。 | ||||
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ほぼ一気読みでした。 冒頭から不穏な空気で読者を惹きつけ、ぐいぐい読ませる前半の完成度はすばらしいです。 が、その分、終盤にたるみが感じられ、イライラ感がつのりました。(惜しいっ!!) 早くから大人にならざるをえない少年の物語にはむしょうに弱い私ですが、ジョニーやジャックの境遇にはうちのめされるばかり。 事件よりもなによりも、「親の資格」を考えさせられた一冊です。 余談ですが、ジョニーの母親が太ったふつうの中年女だったら、まったく違う展開になっていただろうなぁ(苦笑)。 | ||||
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昨晩10時頃に読み始めて、今朝3時頃読了。途中で止められなくなり、久々の一気読みでした。 味わいは、レヘイン「ミスティック・リバー」+「愛しきものはすべて、去り行く」x キング「グリーン・マイル」。 これまでも数多くの小説の題材とされた小児拉致誘拐物として、犯人の正体も含めて、 ありがちな展開なのだが、主人公にわずか13歳の中学生を堂々と据えて、拉致物のストーリー展開とは別に、 少年の意地の戦いをファンタジックに(「グリーン・マイル」風)、それでいながら犯人に纏わるどんでん返しを用意した サーヴィスの行き届いたエンターテェインメントに仕上げて貰えれば、多少の都合の良さには目を瞑らざるを得ない。 (主人公が偶然、都合よく、脱走犯、犯人すべてが一堂に会する事故の目撃者になる、というのは有り得ない?!) ジョニーって、ガキなのだが、高倉健のヤクザ映画の様な、イーストウッドを子供にした様な格好の良さ! なにしろ母親をひたすら守り、悪い奴には拳銃片手に殴りこみ?! それにしても、作者ジョン・ハートって、一作目はそれほどでもなかったのだが、二作目(「凍てついた墓碑銘」に似た物語) から、いっぺんに爆発して、ついにキングに挑戦しはじめたのか? | ||||
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ミステリーとしての高い完成度は言うまでもなく、もの悲しさの中に家族愛や友情が溢れる叙情小説です。前2作と同様、人間が持つ罪悪感や欺瞞、愛情、正義感を見事に描ききっており、心に響きます。翻訳も素晴らしく、さすが出版社が記念作品と銘打っているだけのことはあります。前2作も感動しましたが、私は本作品が一番気に入りました。ポケットミステリーから同時出版されていることを知らず、文庫本上下巻を購入しました。価格は同じで、解説も含め内容は同一のようです。持ち歩きには、ポケットミステリー版が良かったかもしれません。まだ気は早いですが、海外ミステリーの今年度ベスト3に入ることは間違いないと思います。 | ||||
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本書は、「早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品」で、ポケミスと文庫同時発売である。デビュー作『キングの死』、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」ベスト・ノヴェル(最優秀長編賞)の’08年度受賞作『川は静かに流れ』に次ぐジョン・ハートの長編第3作で、すでに’09年度「CWA(英国推理作家協会)賞」の最優秀スリラー賞を受賞しており、’09年度「MWA賞」ベスト・ノヴェルの有力候補としてノミネートされてもいる。 13才の少年ジョニーの家族は1年前に崩壊した。双子の妹アリッサが誘拐されて行方不明になり、ほどなく父親も謎の失踪を遂げた。住む家も失い、残された母親は薬物におぼれるようになり、ふたりの住居の世話をした父親の雇い主の実業家ケンが母親目当てに足繁く訪れるようになる。しかしジョニーは、学校を頻繁にサボり、ひたすら家族の再生を願って、独自に資料を集め、ひとりアリッサの行方を捜し続ける。一方刑事のハントもメリッサの事件にのめりこみ、妻に逃げられ、思春期のひとり息子との関係に苦慮している。 だが、ようやく事件が動き出す。脱走した服役囚、殺害された大学教授、ジョニーが目をつけた性犯罪常習犯。それらの人々が絡み、謎が解け始めるのだ。しかしひとつの謎の先が見えてくると、また別のものがあらわれたりして、ミステリーとしての興趣の点では、本書は前2作を上回る。さらに、文中に太文字で挿入されるジョニーやハント刑事たちの“モノローグ”のような内面描写が実に効果的で臨場感を増している。 読者は、けなげで勇敢で強い意志を持ったジョニーの行動や、ハント刑事の執念の捜査や推理を追ってゆくうちに、意外で、なんともやりきれない真相にたどりつく。そこでも真犯人一家の家族崩壊が見られる。物語の最後の一行で読者はなんとか救われたような感慨を持つのだが、本書はミステリーらしい謎解きとあいまって、アメリカ・ミステリー界の「新帝王」とも称されるジョン・ハートが訴えかける家族崩壊の悲劇の物語でもあり、味読に値する秀作である。 | ||||
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